2023/10/17(火)に、Tangerine株式会社の成田氏をゲストに迎え、アプリを活用したプラスアルファの顧客体験の実現や、店内行動データの活用方法についての共催セミナーを実施しました!※本記事は、2023年10月にnoteで公開された記事の転載です。
今回は、トークセッションの後編とFAQをお届けします。
話し手
Tangerine株式会社
取締役COO 成田 雅弘
アパレル業界にて大手含む複数社で店長やSV、MD計画(仕入れ・VMD立案・販促)、マーケティングなどに従事。その後東芝テック株式会社にてリテールサービスの新規事業企画などを担当。2020年にTangerine株式会社に入社。現在は執行役員としてStore360事業部全体を統括。
メグリ株式会社
プランナー 篠田 健吾
2014年 入社。メグリが受託開発を中心に行っていた頃からWebサイト・アプリの分析および企画を担当。『MGRe』のサービス開始後は営業担当として新規案件の提案業務に注力。現在は『MGRe』のプロダクト開発チームでプランニング担当として新機能の企画や改善検討に勤しむ日々。
トークセッション:店内行動データを未購入者に対してどう活用するのか?
成田さん:では、店内行動データの未購入者に対する活用についてですね。
そもそもチェックインデータをとる意味は、来店したが商品を買わなかったお客様をしっかりとあぶり出せる点かな、と思っています。
前提として、ECの中でのリターゲティング施策って、当たり前のように実施されていますよね。
例えば、かご落ちのユーザーを追従したり、商品ページを見たユーザーをリターゲティングしたりなど、当然のように行われています。
また、施策によるCVRをしっかりとデータで測っているので、商品を買ってもらうためには母数をいかに増やすか、という施策に走るオペレーションになっているのかなと…。
では、ECで実施している上記のような施策を、店舗でどう実施するかとなった時に、やはりチェックインデータって必要ですよね、という結論になるんですね。
■出典:セミナー資料より抜粋
成田さん:上記の表をご覧ください。
私たちがマーケティングで使用しているデータになるのですが、左と右でブルーとオレンジに色が分かれています。
左側(ブルー)は、2ヶ月間に店舗で購入をしたことのあるお客様が、購入までに何回来店しているかというデータです。
これを見ると、2ヶ月間で商品を購入した方の約70%は、1回来店されていることが分かります。
つまり、約30%の方って、2~4回ほど店舗へ足を運んでから1回の購買に至っているわけなんですよ。
なので、意思決定まで数回店舗へ足を運ぶお客様は一定数いらっしゃいますよね、というファクトになるデータだと思っています。
さらに言うと、この約30%のお客様は、実は1回目で商品を購入されるお客様よりも客単価が少し高いんですよね。
仮に私たちのサービスを導入していただいた際には、まずこのデータをしっかり取りましょうね、というのを最初にしています。
そうすると、今度は何が見えてくるのかというと、右側(オレンジ)をご覧ください。
こちらは、期間を少し延ばして3ヶ月で見たときの未購入者のデータです。
3ヶ月間に1回しか来店していないお客様かつ購買まで至っていないお客様が約65%となっており、2、3回足を運んだが未購入のお客様が約30%いらっしゃるということが分かります。
そうすると、左側(ブルー)の複数回来店して購入に至る方の客単価が高いというエビデンスがあると、右側の2、3回来店しているのにドロップしてしまっているお客様は、何かひと押しがあれば売上に繋がるロイヤルカスタマーに近いお客様の可能性があるのでは?と考察することができます。
前半のトークセッションで、私たちのサービスとしてビーコンのお話しをしましたが、ビーコン施策の強みはお客様の来店時に施策が打てるという点です。
一方、弱みとして店舗にいないとき、つまりビーコンの電波を受信していないときには何もできないというところなんですよね。
ただ、この辺りのデータは取れるので、MGReさんと連携をすればこういった方々に対してもリモートプッシュが打てるようになります。
それによって、再来店や購入の一押しになる施策に繋がるのではないかな、と思っていますね。
篠田:まさにそうですね。
リターゲティングのアプローチをどういう手段でやるか、という時に、アプリさえ入っていれば「プッシュ通知」という強力な手段が使えますよね。
現状では、プッシュ通知がなければ、そもそもの手段がないかなと…。
基本的にお客様が誰かわからない状態なので、DMは送れませんよね。
こういったお客様に対して接点が取れる手段を持っておく、という意味でアプリを最初に入れていただくのは有効です。
なので、先ほど紹介してくださったファクトのデータがあると、さらにその重要度がはっきりわかりますよね。
成田さん:本当にそうなんですよね。
基本的には私たちのデータは外部出力ができるので、データを取り込んでさえいただければ全てユーザーIDをキープした状態で可視化ができます。
将来的には、この辺りを自動で連携できるようなってくると、来店した方へのアプローチ方法というのもだいぶ進化していくのかなと思っています。
■出典:セミナー資料より抜粋
成田さん:先ほどからずっと「チェックインデータ」としつこく叫んでいるのですが(笑)、チェックインデータ起点でのOMO分析って何なんだろうな、というところですね。
上の画像をご覧ください。
小さくて恐縮なのですが、いわゆるPVですね。
ECの商品ページにランディングした数、カートに入れた数、CVRなどを見られるような「Store360」のダッシュボードです。
基本的には、GAを見るのと同じような見方です。
ただ、私たちが取っているデータの違いは、全て来店をしたことのある人をトリガーにしている点です。
つまり、来店されたことのない方の数字は全て省いているんですよね。
ここで出るPV数って、来店したことのある方が来店後にどれくらいランディングされて、商品を見てカートに入れたか、そして購入にまで至ったか、というところを追いかけています。
なので、私たちが取っているCVは、必ずどこかの店舗に来店したことのあるお客様のデータとなります。
この辺りも、OMOとして非常に重要な要素になってくるのかなというところですね。
篠田:アプリ側も、アプリを起点にECで買われたお客様の単価やCV数というのは、ニーズとしてすごくありますね。
来店されたけど未購入のお客様の潜在的な行動をきちんと見て、どれくらいのパフォーマンスが出ているのか、という部分をデータで出していただけると、接客のやり方も少し変わってくるかと思います。
あとは、店舗に行ってからECを回遊している方に対して、少し違うアプローチができるよね、といったことも見えてきそうですよね。
なので、このデータは、今までの単純なリテール向けのアプリ単体で考えたときには取れなかったデータなので、うまく組み合わせて施策まで持っていけると非常に面白いかなと思います。
成田さん:来店するお客様の大半が商品を見た後にECで買っています、というデータが取れ始めると、POSの売上高だけ見て前年比割れです、という評価が違ってくるのではないかなと。
きちんと自社ブランドに対して貢献できています、というデータになってくるので、店舗スタッフからすると喉から手が出るほど欲しいデータかと自負しています(笑)。
篠田:それは、本当にそう思います(笑)。
例えば、駅ビルのお店であれば、ショールーミングの店舗として非常に重要だ、ということが分かりますもんね。
成田さん:そうなんですよ!
かつ、そこで先ほどお伝えしたビーコン施策まで入ると、接客したスタッフの情報を紐づけることができます。
やはり、どこの何がきっかけで購買に至ったか、というのは、店舗をしっかりとトラッキングすることで見えてくるので、非常に重要かなと思っていますね。
篠田:私たちとしても、やはりアプリだけでは収集できなかったデータ、いわゆる顧客接点の部分ですね。
タンジェリンさんのサービスは、そこをしっかりと見てもらえるものだと思っているので、ぜひご利用していただきたい機能ですね。
成田さん:ありがとうございます。
チェックインデータは、すごく重要ではあるもののアプリ単体ではなかなか取れないですよね…。
一方で、私たちにはできないことがアプリ側でできます、という機能もあるので、そこは裏側の連携で解決していきたいですね。
篠田:そうですね。
お互いの強みを組み合わせて、トータルで顧客体験をよくしていけたらいいですね。
FAQ
Q:お客様がアプリをインストールさえしていれば、チェックインデータが取得できるのでしょうか?
篠田:iOSのプライバシーが厳しくなってきているという事情はあるものの、やはりアプリのインストールだけではなく、店内で起動していただく必要があります。
その上で、起動していただくための施策が重要かなと。
お客様にとって、アプリを起動することでメリットのある体験の提供がポイントになると思うのですが、いかがでしょうか?
成田さん:おっしゃる通りですね。
「Store360」のサービスにフォーカスしたお話しをすると、データを取得するためにSDKが入っていることが前提にはなります。
かつ、ビーコンという規格なので、基本的にはお客様側での位置情報の許諾が必要になってきます。
なので、位置情報の許諾をどう取っていくかというところですよね。
アプリを使われる方は分かると思うのですが、位置情報を「常に許可」という一番強い許諾をいただけると、バックグラウンドの情報まで取得できます。
ただ、それは嫌だと感じる方が多いのが実情です。
そうすると、「アプリ使用中のみ許可」になってくるかなと思うので、アプリを店内で使うと良いことがあるよ、という施策は重要になりますね。
あと、私たちのサービスであるビーコンの特徴なのですが、タンジェリン独自の規格があり、位置情報なしにBluetooth許諾だけでチェックインデータが取れます。
ただ、iOS限定となっています。
この仕組みによって、アプリユーザーの約70~80%の方は網羅できるのかなと思います。
篠田:そうですよね。
常に位置情報を許可というのは、かなりストレスがあるので難しいですよね。
Q:店内でアプリを起動してもらうための具体的なコツや施策などありますか?
篠田:先ほど、商品の追加情報を読み込めるバーコードを棚などに仕込む施策をお伝えしましたが、タンジェリンさんの方で何か施策ができる機能などありますか?
成田さん:はい、もちろんあります!
一番は利用されているお客様が多いのが、弊社のSDKでできる「来店スタンプ」という機能ですね。
店舗に着いてアプリを開くとスタンプが1個押せます、というシンプルな仕組みとなっています。もちろんスタンプの数は任意で変更可能です。
1日1回しか押せませんという制限を置いたうえで、スタンプを5個貯めるとクーポンやノベルティをプレゼント、というような施策がシンプルで効果的かなと思っています。
あとは、「来店ポイント」を少なからず付与するケースもありますね。
来店ごとのポイント贈呈なので、店舗に来てポイントを貯めるためにアプリを起動しなくてはなりません。
また、ビーコンの設置の方法を工夫するのもおすすめです。
まれに入口だけかすめてスタンプやポイントを取っていくお客様もいらっしゃるので(笑)、店舗の奥の方の方で電波を受信しないとポイントはつきませんよ、という設定をしていただくのがいいかと思います。
篠田:私たちもクライアント様と会話をしていく中で、未購入のお客様にまで来店ポイントやスタンプをあげるのはどうなんだ、というお話しが出ることがあります。
ただ、先ほどあったように、未購入の潜在顧客のお客様に対してアプローチできる手段が手に入ると考えたら、来店ポイントやスタンプといった施策は安いものなのではないかと思っていて…。
そこに対する販促費を割り切っていただければ、投資の価値があるんじゃないかなと思いますね。
成田さん:そうですね。私もそこの価値はすごくあると思います。
Q:MGReさんのアプリはSDKに対応していますか?また、組み込む際の費用は別途でしょうか?
篠田:はい、おっしゃる通りです。
いわゆるアプリプラットフォームでは結構珍しいと思うのですが、MGReではMAなどのSDK対応が可能です。
費用に関しては、SDKごとに組み込みの内容が違ってくるので、別途お見積もりという形を取らせていただいております。
ただ、SDKによって多少の価格の差はありますが、そんなに高くはないと思うのでまずはご相談ください。
Q:チェックインデータをCSVでエクスポートしてプッシュ通知に活用することは可能でしょうか?
篠田:はい、可能です。
ユーザーIDが入っている状態でCSVにてエクスポートいただければ、MGReの方は手動でCSVをインポートしてプッシュ通知の設定が可能です。
もしシステム連携をしていただければ、自動連携によるプッシュ通知を送ることもできます。
なので、手動でも自動でも対応は可能です。
成田さん:リターゲティングをプッシュ通知で実施するのは、非常に有効的かなと思いますし、リターンが大きいですよね。
篠田:本当にリターゲティングができる、というところは大きいですよね。
成田さん:そうなんですよね。
プッシュ通知によるリターゲティングの可能性って非常に大きいと思っていて、例えば最終来店日から2ヶ月経ったユーザーをターゲットにプッシュを送ることもできます。
なので、離反防止という点でも有効な施策かなと。
あとは、60日の間に来店を1~2回していたお客様が、ある時から90日も空いていたとなった時に、クーポンなどをプッシュ通知でお知らせして来店につなげる、という施策が打てるのもチェックインデータの可能性のひとつかなと思っています。
篠田:なるほど、ありがとうございます。
チェックインデータの可能性は、まだまだ広がっていきそうですね。
では、今回のウェビナーは以上になります。
貴重なお話しをありがとうございました。
成田さん:はい、ありがとうございました。
まとめ
今回は、後編のトークセッションとFAQをお届けしました!
前編では、【アプリを活用した顧客体験として、何がプラスアルファで実現できるのか?】というテーマでトークセッションを行っております!
ぜひこちらもあわせてご参考ください😊