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映画の中に1つの世界をつくる人でなく、会社の中に世界をつくり、1人の人生を変えたい。

学生時代 映画監督を目指し渡米

ミーカンパニー代表 前田です。私が最初にフルコミットした企業はロサンゼルスにある映画・映像プロダクションでした。大学では情報システムを先行していましたが、プログラムそのものには熱中できず、コンピュータで生み出す映像やグラフィックに熱中していました。

当時は個人のパソコンでグラフィックデザインや映像制作ができるようになり、3DCGまでもが個人で作れるようになりつつあった時代でした。大学在学中、MEGADEMO(メガデモ)を知り、プログラムで映像を作れることに衝撃を覚え、コンピューター、映像、映画の世界に入っていきました。

ハリウッドでの極貧生活

私はデザインや映像を学ぼうと考え、大学にもほとんど行かずに、表参道のデザイン事務所や、GONZOというアニメーション制作会社のCG部門でアルバイトをしていましたが、映像の最高峰といえば、ハリウッドだ!・・と考え、大学を辞めてハリウッドに渡米しました。その後、自分で制作した映像作品と履歴書を、ハリウッドの映像会社に郵送し、なんとか入社することができました。一番下っ端なので生活はギリギリで、お昼はベーグル1つ。豪華な日でも路地裏の屋台で売っているチキンサンドイッチを1つだけ食べるという極貧生活でした。毎晩遅くまで働くことで、1年半くらいでリードアニメーターのポジションをいただきましたが、現地の生活に疲れ帰国することにしました。

マーケティングをデザインする会社へ

その後、私は日本にあるネットベンチャー企業に入社し、バーチャル3Dの企画&UI/UXデザインを担当しました。その会社は1年ちょっとで無くなってしまったので、すぐ後にナショナル企業のセールスプロモーション&マーケティング支援を行う企業にデザイナーとして転職しました。最初は企業のチラシ1枚のデザインの仕事から入り、映像、ショールーム、展示会、Webなどを企業のマーケティング戦略やプロダクトにフィットするデザインを提案していました。WebやITを使ったデジタルマーケティング業務を多く経験し、様々な企業広告・マーケティング戦略に触れるうちに、経営とデザインが密接につながっていること、そして多くの企業ではデザインと戦略は整合が取れていないことを感じていました。取締役も経験させていただきましたが、自分の経営力不足を感じ、グロービス経営大学院の門を叩き入学。グロービスでの3年間は仕事も勉強も大変でしたが、生きる意味「命を燃やす意味」を問われる場でした。

優しい経営との出会い

その後、グロービスのご縁で、群馬の山奥にあるバネメーカー「中里スプリング製作所」の社長とお会いする機会をいただきました。その時の衝撃は今でも覚えています。彼の経営スタイルは、MBAでは学べない経営理論や斬新なルールで組織運営されていました。例えば「従業員に顧客を切る権利を与えている事」は、従業員に過度な納期要求や圧力をかける顧客に対しては、従業員から顧客を切ることができる制度です。中里スプリングでは、当時会社の売上の6割を占める顧客がいて、従業員要望で取引を取りやめたという話も聞きました。
 企業の成長重視の経営では選択することが難しかったと思います。他にも「風邪でも出社する日は黄色いジャケットを着ること」なども面白い。少しの風邪でも他の社員に迷惑をかけないよう無理して出社する人がいて、本人も辛い中仕事をすることになる。周りも本人が辛いことが分からないとお互いに幸せではないとのことから作ったルールのようです。風邪の場合は出社しないというルールが理想かもしれませんが、製造現場の業務習慣など考えると、出社してもいいからジャケットを切るという彼独自が持つ、人間に対するあいまいさと、優しさの結果生まれたルールだと思いました。
 中里社長の様々な経営の考え方を聞き、自分だったらどのような経営ができるのだろう?と経営に興味を抱いたことが起業のきっかけです。


映画監督と経営者の共通点

映画監督から起業?と 不思議な顔をされることも多く、自分でも人から言われるまで気が付かなかったのですが、映画監督と経営者には共通点がある気がします。それは、映画監督は映画の中に世界を創り上げ、映画を通じて社会を変えていくのに対し、経営者は会社の中に世界をつくり、サービスを通じて、社会全体の世界を変えるとう点で似ているのだなと。

社会をデザインする

私がデザインについて興味を抱いたきっかけは、大学での学生時代に日産のカーデザイナーの話を聞いた時のことです。彼(車のプロダクトデザイナー)は、5年先の世界を想像し、社会にフィットした車をデザインしている。つまり、彼は車をデザインするのではなく、社会をデザインしているのだと。当時の私にとっては衝撃的で、その時からグラフィックやプロダクトをデザインするを行うのでなく、社会をデザインできる人になりたいと考えるようになりました。

 私がデザインの中で最も熱中した分野はCI(corporate identity:コーポレート・アイディンティティ)です。CIの本質は、企業のアイデンティティ・コンセプトそのものであり、コンセプトを小さなマークに落とし込んだものがロゴマークです。企業の価値を伝えやすくするために極限まで情報を削ぎ落とし、企業戦略と整合性を保ちながら自社の価値をみつめ、人の記憶に残る形に落とし込みます。この一連のプロセスの結果生まれるものがロゴです。

 CIを考えるプロセスの中で整合性を取る必要があるのが経営戦略であり、デザインと経営がつながる部分になります。CIは企業の経営と密接な関係にあり、経営は社会の潮流を反映するため、CIが好きなのだと思います。CIの権威はPAOSの中西さんですが、話をどうしてもお聞きしたかったのでグロービスにお呼びして、経営とデザインについてセミナー講演をしていただいたこともあります。

出会いを事業ドメインに選んだ理由

私の場合、起業することを決めた後に、何をやるか考えました。市場性や自分の得意分野を事業ドメインにするのではなく、根源的な価値観に基づくものにしようと考え、自分の過去の決断を振り返っていました。

振り返ると、映像に熱中できたのは、大学時代の友人のお蔭であり、
デザインに感動できたのは、日産のカーデザイナーさんのお陰であり、
経営者として一歩踏み出せたのは、中里スプリングの中里社長のお蔭です。
振り返ると、この他にも様々な人と出会い、影響を受け、私という価値が形成され、生かしていただいているのだと改めて気づきました。一方で社会ではインターネットが普及し、ネット上の出会いが増えている頃でした。出会い系サービスが問題視され、社会問題となっていました。出会いそのものは悪ではないのに、出会いという言葉が本来の輝きを失っていました。 また一方で、家族の形が変わり、独居・孤独死の問題や、大量リストラや、介護離職を背景に社縁が無い人が増加している事など、人と人との縁が切れていく、また薄まっていく時代背景もありました。

私は人との出会いに生かされ、社会では人との出会いが薄まり、人と人の縁のデザインが必要とされる社会を考えました。このことから「人と人の出会い」をデザインすることを事業ドメインにしようと考えるに至りました。

医療のマッチング問題を解決するSCUEL

起業後は、ミスマッチが問題となっている業界やテーマについて調査しました。その中で最も課題を感じたテーマが、「難病患者と医師とのマッチング」でした。多くの難病患者の方は、自らの疾患名が分からない状態が長期間続きます。症状が出始めてから数年間の間に、様々な病院を受診して病名が判明すれば早い方で、10年くらいかかることもあるけれど、判明するだけラッキーと笑って話す方もいる世界です。難病について知ったことをきっかけにして、医療制度や医療提供体制を学び、難病以外の領域でも、医療サービスと患者のマッチングについてもなんとかならないか?と考えました。

最初に行ったのは、病院検索アプリの開発です。当時iPhoneが出始めであった事もあり、スマホでの医療機関検索ニーズはもっと高まると考えていました。医療機関の基本データは他社から購入し、アプリを公開しました。最初はメディア等で話題になったものの、結果としてはGoogle検索を超えることができず、またデータが間違っているというクレームを多く受け、利用者も伸びずにサービスはうまくいきませんでした。

 この失敗から、マッチングの基本はデータであり、データベースの質が重要だと理解しました。そのためデータベースを他社に依存するのではなく、時間はかかってもゼロからデータベースを自社開発することに取り組みました。最初は基本的な病院の情報から集め、治療に関するものを揃えたところで、パソコン版のscuel.meを立ち上げました。平行して医療機関データを深掘りし、薬局、介護とデータの幅も広げていったところ、多くの企業でデータに困っていることを知り、SCUELデータをライセンス提供するビジネスを立ち上げました。そして、現在のSCUELデータベースが出来上がっていくことになります。


今取り組んでいること

ミーカンパニーは、日本の医療情報インフラをデザインする医療の会社であり、
オープンデータをデザインするデータの会社であり、社会をデザインする会社です。

社員の努力とお客様の支えがあり、医療機関・薬局・介護事業所のデータは日本一充実していると対外的にもお伝えできるほど、多くの企業様に採用いただくようになりました。次のステップはさらなるデータ基盤の安定化・データ精度向上に加え、豊富なデータを日本中の企業、医療機関、患者に届けるためにサービス化することです。

写真を撮るように、データを扱える社会にできないか考えています。業界向けに必要なデータは異なりますし、患者の立場によっても異なります。どの順番で誰にどのデータをどうやって届けていくか?を考え、事業化に向けて取り組んでいます。また、社内文化については、リモートワークならではの課題も多く出ていますが、コミュニケーションのとり方、ワークフローなどを調整しながら、働きやすく、現代社会にフィットする優しい会社をデザインしていきたいと考えています。

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