記念すべき第1回目のインタビューは、株式会社まうまうの代表取締役 "山口さん"。
地元長崎県の「食」をテーマに事業を展開する山口さんに、今までのキャリアや考え方、一緒に働きたい人物像まで赤裸々に語っていただきました。
ストーリーを読んでいただければ、株式会社まうまうの雰囲気が分かっていただけると思います。
ぜひ最後まで読んでくださいね。
ーー自己紹介、これまでのご経歴を教えてください。
長崎県松浦市出身の1977年生まれです。
2020年6月に株式会社まうまうを設立しました。
会社を設立する前は、マーケティングに加えて、ブランディングの仕事もしていました。
今も大手食品メーカーや製薬会社のブランディング業務に携わっています。
株式会社まうまうは現在、3店舗の飲食店を運営しており、飲食店のイメージが強いかと思います。
しかし、私自身はマーケティングやブランディングに関わる仕事が多く、飲食の運営は初めてなんです。
ーー大学を卒業後、マーケティング会社に入ったのは、どのような経緯だったのでしょうか?
当時は、インターンという制度はありませんでしたが、アルバイトはありました。
それが面白そうだと思ったのがきっかけで、そのまま新卒入社しました。
大学時代のアルバイトでは、仕事にのめり込み、学校にもあまり行かなくなりました。
会社のホワイトボードに「学校」と書いて、1時間だけ学校に行って、仕事に戻ってくるような生活をしていましたね。
大学を卒業し、会社に入社した年に変化がありました。
売り上げの1/3を占める取引先の食品メーカーで、食中毒事件があったんです。
会社の中でも大きな売り上げを占めていたので、ダメージは大きくて…。
それに伴い、多くの人が辞めていったんですよね。
多くの人が辞めたことで、普通だったら新卒ではできないような仕事が自分にも降ってきました。
それがめちゃくちゃ楽しかったんです。「仕事が楽しい!」と思いながらずっとやっていて、大手食品メーカーや大手製薬会社と仕事をしていました。
その中で、チーズ業界の仕事をやることになり、輸入チーズのGI(地理的表示)*の仕事にも関わるようになりました。
*GI(地理的表示)とは、名前から産地を特定、品質を保持できる特定の名称のことです。
例えば「神戸牛」は、神戸で育てた特定の牛しか名乗れないですよね。これが地理的表示です。
GIには、飼育期間や地域など、さまざまなルールや基準があります。偽物が出ないように、海外と日本で交渉と契約を結びます。その交渉にチーズの団体側として関わっていました。
そのご縁が今も繋がっていて、大使館のマーケティングやプロモーション活動もしています。
この時期、会社の社長が代替わりをしました。
社内の体制が変わったのも、自分が会社を立ち上げたきっかけのひとつです。
ーー会社を立ち上げるきっかけは、他にもあったのでしょうか?
同じタイミングでコロナが流行り、生産者の人たちが困っているのを目にしました。
僕は、地元が長崎県で、自分の父が漁師で生産者の一人です。自分にも何かできないかと考えました。
会社を立ち上げたのは、生産者の支援をしたいなと考えたのが大きなきっかけでした。
知り合いのネットワークを通じて魚を卸したり、ECサイトを作って販売したり、飲食店に交渉して卸したり、考えられることは一通り行いました。
ですが、魚のビジネスって、生産者が豊かになりづらいビジネスモデルなんですよ。
魚って、産地によって値段が変わらないですよね。
長崎県産の鯛と神奈川県産の鯛は、豊洲市場で価格に差が出ない。
そうすると、豊洲で販売される長崎県産の鯛は、物流分だけ値引きされた状態で販売されることになります。物流分だけ利益が少なくなります。このような流れでは、儲かるわけがありません。
そして、このおかしい状況を打破する人がどこにもいない。
「豊洲で赤字になるのは当たり前」という考えにも納得できませんでした。
豊洲市場のいろんな場所に行って様子を見ましたが、既存の物流では生産者は幸せになれないと判断し、物流と販路の開拓を決めました。今は、物流と販路の開拓だけでなく、飲食店にマッチする加工方法、提供方法などをテストしている状態です。
ーーお店を作ったのも、そのような背景があったんですね。
おっしゃる通りです。
今の飲食店にマッチする加工方法、提供方法などを探るために、自分の店を作りました。
飲食店を作った時の考えのひとつに「生産者にお金が落ちないと意味がない」という気持ちがあります。
なので、料理人は使わないと決めました。
料理人を使うと、料理がプレゼンテーションとして提供される。
そうすると、お客さんは、地元や生産者、食材ではなく料理人につきます。
私は、地元や生産者、食材にファンがついてほしいと考えています。
だから、メニュー開発はプロに携わってもらいますが、オペレーションは素人でもできるものにしたいと考えました。
弊社の食材の8割は、冷凍加工品です。
冷凍加工品と聞くと、良くないイメージを持つ方もいますが、弊社の食材は、水揚げした後、すぐ捌いて、急速冷凍をかけています。新鮮な状態で加工している自信があります。
超一流の料理人が作る、めちゃくちゃおいしいものではないけど、できるだけ多くの人たちに美味しく、地元に近い状態で届けています。地元の味に近い状態で提供するには、地元で加工してもらうのが一番です。また、結果として、他にも良いことがたくさんありました。
まずは、地元にお金を落としやすいこと。
魚を魚のまま売るより、加工して売った方が利益は取れますよね。
2つ目の利点は、人手不足を補える点です。
コロナで飲食業界から離れたプロがたくさんいて、コロナが明けて、プロの人手が不足しているのが現状です。店舗拡大していくときに、お店の課題は料理人と物件なので、加工品をうまく活用することで、人の面でのハードルは下がります。すると、店舗の拡大、物流の拡大、どちらも効率よくなります。地元に対しても、買う力がスピーディに強くなっていくと考えます。
みんなが受け入れやすい加工法を模索して提供することで、プロでなくでもおいしい調理ができることを目指しています。
3つ目の利点は、加工するとロスが減ること。
今、高架下や横丁など、バックヤードが小さい店が増えています。
ロスが少ない加工品をベースにすれば、集客が不安定な中でもフードロスは減らせます。
また、地元で加工して運送すれば、エコにもつながります。
例えば、鯛の1匹の可食部は4割ほどで、残りの6割くらいは捨てられる部分なんです。
6割もゴミとなってしまう魚を丸々1匹運んで、結局捨てるっておかしいと思いませんか?
運送効率も悪いし、単純にエコじゃないですよね。
このような理由から、最適な加工法は何なのか、みんなが受け入れやすい加工法は何なのかを日々探っています。その情報は、今後地元にもできるだけフィードバックしたいと考えています。
ーー地元にも、飲食店にもやさしい選択ですね。実際に運営されているお店はどんな雰囲気ですか?
うちの店は、基本的に長崎県民優遇の店です!その理由は、縁を繋ぎたかったからです。
私自身が初めて持ってきた食材でもないし、いろんな人に支えられてやっているので、自分が始めたビジネスという感覚はありません。皆んなのつながりを引き継いだ感覚なんです。
だから「みなさんが引き継いだご縁を、みなさんと楽しみましょう」という感じで行なっています。
別に長崎出身じゃなくても、修学旅行で行ったとか、おじいちゃんが住んでたとか、友達の地元が長崎とかどんな事でも大丈夫です。そういうのって全部ご縁だと思っています。
そういう考えの元で、うちは「長崎県民優遇の店」としてやっています。
うちは、店をイベントスペースとしても使っているので、生産者の人が店頭に立ってお客様とコミュニケーションを取るなどして、口コミの波及効果を最大化しようと思っていたら、長崎県人会とか、同窓会とかの集まりでも使っていただけるようになりました。
長崎に関して、強力な口コミの発信源になり、長崎の人たちが集う場所にあり、そこで育まれた食材を扱う店舗数を増やして展開したり、卸すお店が増えて行ったりすることが、生産者にとって良いことだと考えています。
ーー食を通したマーケティング会社みたいな感じですね。
私は、自分なりの仮説と戦略の元で動いて、完全にマーケティングをやっていますが、外から見たら、普通に飲食店だと思います。(笑)
ただ私は、飲食店オーナーになりたかったわけではないので、飲食店の経営には全く興味がありません。自分なりの方法で、地元の生産者が幸せになれる方法を見つけたかった。そして、今のやり方に至っている感じです。
ーーお父様が漁師だったと聞きましたが、今も物流面などで山口さんが関わっているのですか?
そこが難しいところというか、信用してもらうって本当に大変なんだなと。UターンやIターンをした人で、この手の話は良く聞きますが、それは私にとっても同じです。
ここまで、偉そうなこと言ってますけど、地元の信頼はまだまだだと感じています。
ありがたいことに、自治体や関係者の皆様からの知名度は、それなりにあるかと思いますが、生産者から見た自分達の知名度は、まだまだで…。
地元生産者からの信頼を確立させるには、やはり規模が大切になってくるんです。
いやらしい話をすると、お金をなんぼ落とすか。
飲食チェーンへの食材提案で、商品カタログを持参して「鯛があって、鯵があって〜」と説明して「ぜひお願いします」って言われるじゃないですか。
翌日、発注しようと思ったら「在庫がなくなりました」と言われたこともあります。
やはり、すぐに現金化しやすいところに卸してしまうし、当たり前ですが新規客は大切にされません。
結果、こちらとしてはビジネスパートナーに迷惑をかけますし、欲しいものを欲しいタイミングで買えない状態になってしまいます。ビジネスとしては、完全にアウトですよね。
瞬間最大風速でお金を増やすには輸出事業が一番いいんですけど、やっぱり続かないんですよ。
あと、シンプルに楽しくないです。ムダも多いし、誰が喜んでくれるのか見えない。
今まで、食品とそれを食べるお客様と距離が近いマーケティングをたくさんやらせてもらって、それが楽しいですね。
ーー今も長崎にはよく帰られるんですか?
帰る頻度は、意外に少ないです。
団体の東京支部などに行って、打ち合わせをすることも多くあります。
ですが、より良い生産者と出会うために、五島列島や壱岐にいくこともあります。
やはりその土地に行くのは、大事だと思っています。お互いに愛は深まりますよね。
相手も、顔の見えない相手より、足を運んでくれる人を大事にしたいと思いますからね。
目標と展望について
ーー今後の目標について教えてください。
今後の目標は、売り上げで言うと、5年で20億円を達成したいですね。
一部、wantedlyでは5年で10億円の記載になってると思いますけど、本当の目標は20億円です!
ーー20億円という数字には、何か意図があるんですか?
それくらい行けばいいかなと。
バイイングパワー(大手小売業が持っている大きな仕入れや購買力)を鑑みても、発言力を持てる数値かなと思います。もうひとつの理由は、前職の会社の売り上げを超えたいなと思ったからです。
求める人物像について
ーー今後はどんな方と一緒に働きたいですか?学歴などは関係ありますか?
学歴は、全くこだわってないですね。高卒、大学新卒、インターンすべて大歓迎です!
弊社の1店舗は、店長が20歳で、もう1店舗は16歳なんです。
「高卒だから…」と自分自身が引け目に感じるのは、良くないと思います。
勿体無いと思う人もいれば、いい覚悟だねと思う人もいる。
弊社の社員は、若いうちから、自分の意思と価値観で物事を決めないといけない立場になっています。
これは、すごいなと思いますし、リスペクトもあります。
大谷翔平も高卒です。でも聞いたことないでしょ、大谷翔平が「俺、高卒なんで…」とか。
学歴なんて、そんなもんってことだと思います。
ーー学歴で人は決められませんね。
学歴なんて、関係ないです。
「自分で決める」という経験があるか否かは、大きいと思います。
たまに、付属高校から、エスカレーター方式ではなく、違う大学に行くとか、意味が分からないから学校は行かないとかいう人がいるじゃないですか。
そういうレールを外れた人の方がおもしろくて良いですね。
これは偏見ですけど、附属高校からエスカレーター方式で大学に上がった人は全員不採用でもいいと思っています。(笑)
僕は、まず偏見から入るようにしてるので、取引先でもお客様でも、一度全部決めつけてます。(笑)
偏見満々で臨むんですけど「意外と〇〇だな」って、すぐに変わるんですよ。
思ってもないことが分かると、すごく楽しくなります。
とにかく、学歴云々より「長崎や地方の生産者を盛り上げたい」とか、立ち上げのフェーズを一緒に楽しんでくれる仲間だったらウェルカムです!
【インタビューを終えて】
3店舗の飲食店を運営し、長崎の生産者のみならず、全国の生産者に寄り添う山口さん。
やっているのは、飲食店運営ではなく「食」のマーケティングであり、生産者の力になりたいという姿が印象的でした。
「食やマーケティングで、生産者の力になりたい!」「0→1の立ち上げフェーズに携わりたい!」と考えている方は、ぜひお気軽にメッセージを送ってみてくださいね。
それでは、次のインタビューもお楽しみに!