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相手の予想を少しだけ裏切る。ピンチの場面で仲間を守る。些細なことから生まれる信頼。これまでのそんな経験を総動員して育てたい新しいメディア

スパイスは“ほんの少しの裏切り”

大学では「マスメディアの法と倫理」を研究するゼミに所属し、ひらすらディベートを行っていました。例えば「おバカブームに賛成か反対か」(当時はおバカブームの全盛期でした!懐かしい)という議題に対して、2名1チームのペア対抗で討論するようなことをしていました。ディベートの1週間前に議題とチームが発表され、自分の意見とは関係なくランダムに反対派・賛成派に振り分けられるので、とにかく当日までに相手を論破できる情報を無理やり探し出しては討論にのぞんでいました。

このディベートでは、相手の切り札を予想する想像力と、想定外のことを言われてもポーカーフェイスを保てる強いハートが要求されます。この経験から導き出された勝ちパターンは“ほんの少しの裏切り”でした。

対戦相手や観客の想定範囲内のことしか言わないと場が白けますが、逆にあまりにも検討違いのことばかり言っていると、それこそ自分が“おバカ認定”されてしまいます。つまり大事なのは、少しだけ想定外のことを織り交ぜて周囲の予想を裏切りながらも、本筋に話を持っていくことなのです。そんなことをいつも意識しながらディベートをしていたことが、今の自分の原型になっている気がします。

「全然いいんだよ、気にすんな。いつもありがとな」

社会人の始めに勤めた会社はインターネット広告代理店で、配属先はリスティング広告の運用を行う部署でした。パソコンに対する苦手意識を持っていた私を待ち受けていたのは、100万行を超えるエクセル地獄。なぜこの集計が必要なのか分からないまま、膨大な量のデータと毎日格闘しているうちに、作業の先にある目的を完全に見失っていました。

そして、「辞めたい」が口癖のようになっていた社会人1年目の冬。その頃の私は1ヶ月に数億円を預けてくれる大口のお客様のデータ集計を担当していました。ある日、いつものように淡々と作業をこなしていたら、真っ青な顔をした営業マンが飛び込んできたのです。その時、私は呑気にアポイントの時間でも間違えたのかなと思っていました。

でもその後の営業マンの「佐武、お前が担当したレポートが間違っていた。これじゃ訪問の意味がないと追い返されたよ」という言葉に一瞬頭が真っ白になり、何が起こっているのか理解できない状態に。とにかく「とんでもないことをしでかした」、「これは始末書レベルで怒られる」という焦りと不安で頭がいっぱいになりました。

ところが、パニックを起こしかけていた私に、営業マンが次にかけてくれた言葉は「全然いいんだよ、気にすんな。いつもありがとな。楽しくいこうよ」でした。それが、あまりにも予想外の言葉だったので、また頭が真っ白に。大口顧客を失ってしまうかもしれない瀬戸際の状況で、こんな言葉をかけてくれる人がいるのかと心底驚きました。そして、「こういう人になりたい」という目標ができたのは、この出来事からでした。

きっと“働く”ことの意味を、自分の中で見つけられた瞬間がこのときだったのだと思います。

営業経験で学んだ「些細なことから信頼が生まれる」ということ

インターネット以外の広告も勉強したいという思いから、2社目は総合広告代理店に入社し、4年間営業として勤務しました。そこはデザイナーやコピーライターが多く在席している会社で、雑誌の撮影や動画のコンペなどを行っていて、前職と同じ広告業界なのに、まるで知らない世界に飛び込んだような新鮮な感覚がありました。いわゆる“手に職”といわれる仕事をしている人達に囲まれて、対等に話ができるのかとコンプレックスを感じることもありました。 「A案とB案、どっちがいい?」と聞かれたときに、なんとなくの意見はあっても何故そう思うのかを上手く伝えられずもどかしい思いもたくさん経験しました。お客様と社内のデザイナーの意見が合わずに、快く修正をしてもらえないときもしばしばあった当時、自分なりに意識していたことは、

・お客様と現場をつなぐ心地よいクッションのような存在になること ・クリエイティブという正解のないものを正解に導くために誰よりも“言語化”すること

の2つでした。 なぜそう思うのか?をなるべく相手に伝わりやすいように言葉にして伝え、そこで言われたことを一度受け止めて咀嚼してから、社内に伝えるようにしていました。

新しいお客様の担当になったある日。撮影中のお客様との雑談で「なぜ自分を担当に希望してくれたのか」という話題になったことがありました。自分の中ではてっきりフットワークが軽く、頼みやすいからだと思い込んでいたのですが、どうやらそれが理由ではない様子。 競合とのコンペの後、お客様がふと窓から外を見たら両手で大事そうに商品を抱えて帰る自分が見えたのだそうです。その商品を大切に扱う姿を見て信用できると思ったとのこと。

その時は何だか拍子抜けして笑ってしまいましたが、そんな些細なことから信頼が生まれることもあるんだなと思ったことを今でも覚えています。

そして、LiBへ

私が LiBに入社したのは、2016年4月でした。 1 社目の同じチームで働いていた先輩に声をかけてもらったのが入社のきっかけです。それは自分が28歳の春で、元々興味のあったフードコーディネーターの資格を取ったタイミングでした。今までの社会人生活で経験したことと、自分がこれからやりたいことを両立できる場所であると感じたことが、入社の一番の決め手になったと思います。

フードコーディネーターとメディア運営の両立については『2枚目の名刺マガジン』にインタビューが掲載されています。 http://magazine.nimaime.com/interview_satakeasami/

入社してからは、LiBzLIFEという働く女性のためのメディアを担当しています。LiBに入社するまでは広告代理店で働いていたので、自社サービスを育てていく経験は初めて。少人数のチームで運営しているため、記事の執筆からライターとのやりとり、会社との交渉や撮影のコーディネートにまで幅広く関わっています。また、数値への感度も重要なので、新卒時代にやっていたレポートまわりの経験から、2社目で経験した営業や交渉、そしてクリエイティブに対する考え方まで、今までやってきたことが全て試されているような環境に身を置いていると感じています。LiBzLIFEチームはデザイナー、エンジニアという専門性の高いメンバーで構成されているので、互いに背中を預けつつ、互いを支えあわないと成り立ちません。この1年は立ち上げたばかりのLiBzLIFEというメディアにどういう色をつけていくのか、試行錯誤を繰り返しては少しずつ前進するという日々を送っています。

直近の目標は「LiBzLIFEを世の中に広めて、少しでも”働く女性“の毎日が楽しくなるお手伝いをする」こと。人生の選択肢や新しいチャレンジの可能性が広がるというような大きな選択ももちろん、いつもは買わない服を選んでみたり、ちょっと冒険したメニューを注文してみたりと、LiBzLIFEを通じて毎日の些細な選択を、その日一日を彩るような素敵な選択にできるよう後押しできたらと思っています。 私は「働く女性=忙しい」という疲れたイメージではなく、自然体でシャンとして頑張っている女性が今の時代には合うのではないかと思うのです。

サイト設立1周年という区切りを迎え、次の1年でどんなメディアに育てることができるのか、今からワクワクしています。

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