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多様性のある空間こそが「未来の福祉」のあるべき形

「たたかいの世界からあたたかい世界に」これが空手やボクシング、キックボクシングなどの格闘技のたたかいの世界にいた男の台詞だだとは誰が想像ができようか。林昌則さんは、過去会社に勤めながら格闘技選手として試合に出場、また子どもから大人まで空手の指導を行っていた経験もあり、現在は山奥に移住してニートやひきこもりなど様々な生きづらさを抱えた人たちの支援をしている、まさに異色の経歴の持ち主。今回このプロジェクトの発起人として、全国から募集するラボメンバー(起業家)と一緒に事業を立ち上げる共同創業者だ。

不登校・ひきこもり・ニートを一方的に支援するのではなく、共に生活しながら互いの生き方を尊重し、新しい価値を生み出す場づくりを目指す。そんな「未来の福祉」を発信するプロジェクトが今加賀で始まろうとしている。


自身も子どもの時に不登校に。自分の弱さを幾度も痛感。

「小学生の時、学校の授業に意味を見出せず不登校になりました。でもとある先生が僕の気持ちを正面から受け止め、学ぶことの大切さを教えてくれたんです。その後は一度も学校を休んだことはありません。しかし、中学校の時にまた壁にぶち当たりました。田舎の小学校から人数多い中学校に行ったことで内気で恥かしがり屋の自分は授業中、先生から指名されても恥ずかしくて答えられず指名を拒否していました。ただ運動は好きだったので、野球部に入って将来は甲子園に行ってプロになると決心し県内の強豪校に通いましたが、レギュラーどころか球拾いの毎日。そのままやさぐれていって、生活が荒れ、事件を起こし野球部をクビになりました。」


たたかいの世界からあたたかい世界に

「そこで次に始めたのがボクシング。これが自分に合っていて、高校を出ると同時にプロを目指して大阪に出たものの、誘惑に負けてボクシングをせずに遊びまくる日々。母親の死がきっかけで地元に戻って就職しましたが、物足りなさを常に感じる日を過ごしていました。そこで始めたのがキックボクシング。チャンピオンとタイトルマッチするぐらい上り詰めましたよ。そして選手をやりながら子どもたちに空手を教える立場になりました。また、青年にも空手を指導していましたが、その中には不良少年もいました。道場では一所懸命稽古するのですが空手をケンカの道具に使っているものもいて、私の指導の問題ではないかと、いろんな指導者に会いにいったり全国の不良少年の更生施設を周り、福祉という分野に少しずつのめり込んでいきました。北海道のとある施設を見学した際に、大自然の中で入居者が自ら田畑を耕し、採れた野菜を調理して、皆で食卓を囲む様子に感動しました。そこにいる人たちは皆が生き生きとしていて、自分もこんな施設を作りたいと思うようになりました。」

林さんはこうした様々な経験を経て、自らそうした人たちを受け入れ支えるための仕組みを模索しはじめる。地元近くの中山間地域に移住し、空き物件を自らの手で改修。そこにひきこもり・ニート・不良少年を含む数多くの人を受け入れ、共に生活をしながら社会で自立していけるよう支援を続けてきた。この取り組みはまだまだ道半ばだが、Next Commons Labのプロジェクトとして参画することで、事業として加速させることを目指している。



自然の力で人はみるみる変わる

今まで10数人を受け入れてきた林さん。彼らは施設に入居しどう変化していったのだろうか。

「最初は全く元気がありませんでした。この施設に入居して、自然の中で生活し色々な体験をする中で、何かと怒るようになった。怒るというのは感情が芽生えてきた証で、元気になっている証拠です。多くの人は元気になってこの施設を出て行きます。ここで手作りの結婚式も挙げた人もいますし、事業を起こすまでできるようになった人もいます。」

このような変化は、これまで受け入れてきた人々に多少の差があるにしろ必ず現れるものだという。

「他に目に見える変化としては昼夜逆転の解消でしょうか。大自然の中だと、自然と規則正しい生活になりますね。あとは、喋らなかった人が喋るようになってコミュニケーションが活発になる。農作業や登山をしたりして身体を動かすので、皆元気になりますね。」


今の福祉に必要なのは「愛」と「調和」

林さんから見て、今の福祉の課題はどこにあるのだろうか。

「今は障害者・高齢者・ひきこもり・子ども、とそれぞれの施設があり専門家がいて分類されています。そのことでかえって問題が複雑になり解決できないように感じます。いろんな人が調和しあって相乗効果が生まれることもあると思うんです。ひきこもりの人をよく高齢者のところに連れていくのですが、普段自分は役に立たないと感じているひきこもりの人が、高齢者から肩もみを頼まれる。そして終わったあとには感謝される。必要とされる実感が芽生えるんですよね。もう一つ個人的に相性がいいと思っているのは子ども。子どもはいつでも遊びたい。だから引きこもろうとする人を外に出す。子どもにはあまり抵抗できない。そして自然と足が外にむく。ひきこもりの方と子ども・高齢者の関係はこれからも新しい形が作れそうな気がしています。

そしてこちらから何かをさせていただくと相手から喜ばれこれが自分の喜びにもなります。そんなお互いが慮れる関係を築くことが必要だと思います。やはり一番大切なのは「愛」でしょうね。」



「愛は近きより」

長い間色々な福祉の形を試行錯誤してきた林さん。そんな林さんが日頃大事にしていることがある。

「「愛は近きより」。一番大切なのは家族。「世のため人のため」はできるけど、自分に近い人に対してはなかなかできない。社会に貢献している人でも家族が犠牲になっているところもあります。だから何より自分の家族を大切にしないといけない。でも自分を大事にすることがもっと大切。自分を絶対犠牲にしてはいけない。これについては、ボロボロになるまで色々やってきて初めて自分で気づきましたよ。」


色々な人との繋がりがある社会をつくりたい

今回のプロジェクト「未来の福祉」は、林さんのこれまで培ってきたビジョンの延長線上にある。林さんが目指す「未来の福祉」について伺ってみた。

「トータルで色々な人の繋がりが見られる福祉でしょうか。不登校・ひきこもり・ニート・高齢者など色々な生きづらさを抱えた人が多くいるけども、その方々に対してそれぞれの専門家を貼り付けて面倒を見るのではなく、そういった人同士が自発的に横のつながりをもって調和していくことが理想の社会、そして目指す福祉の形であると信じています。」

どんな起業家と一緒に事業を立ち上げたいか、求める人材について、林さんは最後に話してくれた。

「やっぱり自身にひきこもりや不良など心の痛みを持った経験がある人、つまりそういった人たちの気持ちがわかる人に門を叩いてほしいですね。自分にない考え=新しい発想を持っている人、つまりぶっ飛んだ考えをもった人が加賀に来てほしいです。既成概念を壊してくれる人にどんどん新しい価値を創ってほしいと思います。」


林さんが現在活動している山中温泉ひがしたに地区は、赤瓦で葺かれた屋根の民家が残る集落であり、平成23年に国の重要伝統的建造物群保存地区にも選定されている。豊かな自然や美しい景観はもちろん、昔ながらの暮らしが住民の協力によって今でも続いている。この限界集落が社会を変えるきっかけの場所になる、と林さんは本気で考えている。


「未来の福祉」プロジェクトについて


<東京と大阪で説明会も開催予定!>

第4回 : 2017年6月18日(日)14:00〜16:00 (東京) 

FabCafe MTRL (ファブカフェマテリアル)東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア2F

第5回 : 2017年6月19日(月)19:30〜21:30 (大阪) 

ハローライフ大阪 大阪府大阪市西区靭本町1-16-14


お申し込みはこちらから

http://nextcommonslab.jp/archives/ncl-kaga-briefing2/

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