今回は、11/11(月)に行われた「第2回 弁護士×BizSide Meetup」のイベントレポートをお伝えします!
前回に引き続き、「弁護士が法務を飛び出し、ビジネスの「主役」として活躍するには」をテーマに、ビジネスの最先端で活躍するマネーフォワードシンカ代表取締役の金坂さんをお招きし、弁護士出身者の笹原さん・酒井さんと共に、弁護士・法務パーソンのビジネスサイドでの活躍の可能性についてパネルディスカッションを行いました。
オフレコの内容も多く、すべてをここに書くことができないのが残念ですが、ぜひ雰囲気だけでも味わってください!
アドバイザリーから、ビジネスサイドへ
まずは、金坂さんがマネーフォワードに参画したきっかけのお話からスタートし、クライアントに対してアドバイスをする立場の"アドバイザリー"と、ビジネスサイドで働く"プリンシパル"の違いの話に。両者は、明らかに立ち位置が違うといいます。
Q. マネーフォワードに参画したきっかけ(金坂氏)
(金坂)マネーフォワードのサービスを元から使っていて、外から見て金融の世界を変えていけるポテンシャルを感じていました。遊びに行ったらメンバーと盛り上がってしまい、1週間位で入社を決めました(笑)。
ゴールドマンサックスでアドバイザリーの仕事をして有意義な面はありました。でも、自分がいなくてもプロジェクトはうまく回っていくだろうなと。そこで、ヒトがいないところに行ってみようと思ったんですね。
Q. ビジネスサイドで活躍できたのは、ゴールドマン・サックス時代の経験があるからでは?(金坂氏)
(金坂)CFOの資金調達は結局のところ契約で、ごりごり交渉を進めていかなければならないので、そこでゴールドマン時代の経験は役に立ちました。また、マネーフォワードは金融機関との提携が多いのですが、その交渉を進めるときにゴールドマン時代の人脈を活用できたので、そういう面でも役に立っています。
逆に、金融の専門知識は不可欠なものの、ある程度は学んでいける部分です。僕自身IPOを経験したことがなかったので、上場経験のあるCFOに話を聞きに行って勉強するなどはやっていました。
Q. アドバイザリー時代の経験のうち、役に立っていないものはあるか?
(金坂)明確に役に立っていないものは無いですが、アドバイザリーとプリンシパルでは立ち位置が違うという意識はあります。アドバイザリーはクライアントに対して「こういうリスクがあります」と言うのが仕事です。一方、事業会社側としては、どこまでリスクを取れるかの意思決定をしなければならない。アドバイザリーの意識のまま事業会社に入って「こういうリスクがあります」という意見を言うと、「じゃあどうするの?」と聞かれます。
(酒井)Holmesは「契約」のマネジメントシステムなので、お客様の持っている「契約」をお客様より理解していないと、Holmesのサービスや使い方を提案することができません。そのため、契約そのものに対する理解、契約にまつわる業務、どういった部署が関与してくるのか、などの点について、弁護士としての経験からくる想像力を働かせることができるので、その部分はストレートに役に立っています。逆に弁護士の経験がないと、お客様よりお客様の契約を理解する、ということが難しいと思います。
逆に、契約「書」の中身の話、こういう事例では条項の中身をこうすべき、こういうリスクがある、というのような点は全く役立ちません。また、金坂さんの話にもありましたが、アドバイザリーの頭でいると「リスクがある/ない」の思考になってしまい、「じゃあどうするの?」の問いに答えられないので、Holmesにジョインした最初の1週間で完全にアンラーニングしました。
これからの時代の新しいキャリア論
次に、金坂さん・酒井が、それぞれのキャリアを歩んできた上でのキャリア論についての話題へと移ります。アドバイザリーと事業者の立ち位置の違いは、キャリアを決める上での大きな指標になっているようです。
Q. 西村あさひでのキャリアに後ろ髪を引かれなかったか?(酒井)
(酒井)とても悩みましたが、最終的には全く迷いがなくなりました。ちなみに、留学直前に担当したある統合案件で、クライアントの担当者一人ひとりが、会社の命運をかけた状況で、上長に相談することなくどんどん意思決定をしている姿に衝撃を受けました。そのような素晴らしいクライアントをサポートできる幸せを感じたと同時に、アドバイザリーとしてビジネスに関与することの限界を知りました。それがビジネスサイドに興味を感じたきっかけです。
Q. アドバイザリーに戻りたいとは思わなかったか?(金坂氏)
(金坂)戻りたいと思って、マネーフォワードシンカを作りました(笑)。ちょっと変な話ですが、僕はマッチングが好きなんですよ。人と人、会社と会社が出会って、そこに新しい価値が生まれるのが面白い。それはアドバイザリーの立場でこそ経験できるので、マネーフォワードシンカでそのような事をやっています。
Q. 法律事務所を立ち上げようとは思わなかったのか?(酒井)
(酒井)真剣に考えていました。具体的には、自分で新しい法律事務所を立ち上げつつ、それとセットになるリーガルテックスタートアップを起業するつもりでした。エンジニアの方も見つかり、共同創業者になってくれそうな人も見つかり、エンジニアの方も見つかっていました。弁護士として、法律事務所として社会に新しいインパクトを生み出せないかと。ですが、あまりに弁護士に染まりすぎて、大風呂敷を広げられなくなっていたんです。無責任なことを言えなくなっちゃったんですよ。
(一同:うなずき、笑いが漏れる)
(酒井)広げた風呂敷をたためないことに対する拒否感というか…そのせいで、あまり大きなビジョンを描けていない、これでは社会に貢献することはできないと思いました。その一方で、笹原が、もの凄い大風呂敷を広げているのを見て、この能力は今の自分には無いなと思いました。それで、事務所立ち上げ・起業はやめて、Holmesにジョインすることに。
現在は、自分で会社をやるよりも、社会に大きな爪痕を残す会社のメンバーであることにやりがいを感じています。
Q. これからの時代のキャリアについて(金坂氏)
(金坂)一人ひとりが、色々な事業や組織に関わっていく流れになると思っています。僕はマネーフォワードの経営陣としての仕事をしつつ、アドバイザリーの仕事もして…という立ち位置です。これに関連して会場からの質問で面白いと思ったのは、「アドバイザリーとしてしてはいけないことってなんですか?」。アドバイザリーはサポート役なので、勝手に意思決定をしてはいけない。あくまで、プリンシパルの意思決定に参考になる意見を述べて、サポートするのが役目です。話を戻すと、こういった点を意識した上で、色々な働き方・キャリアがあって良いと思いますね。弁護士のインハウスやCLO以外のキャリアも全然ありです。CLOの肩書きを持ちつつセールスで活躍されている方もいらっしゃいます。要は、お客様のためになるなら何をやっても良いんですよ。スタートアップは良い意味でその辺が緩く、チャレンジしやすい環境だと思います。
ビジネスサイドで活躍するために必要なもの
話は核心に迫ります。弁護士がビジネスサイドに出て活躍するために必要なものは何か。金坂さんも酒井も、司法試験に合格した弁護士が持つ能力はビジネスに直結するという意見で一致しています。
Q. 弁護士がビジネスサイドで活躍するための適性は何か?
(金坂)司法試験に受かるという点で、法的知識の他にも論理的思考力があるはずで、それはビジネスに役立つと思います。でも、結局のところ「自分が何をやりたいか」ではないでしょうか。そこがはっきりしていれば何をやっても良い。
(酒井)司法試験を乗り越えることって、弁護士業界内では当たり前ですけど、一歩外に出たらすごく難しいことじゃないですか。司法試験を乗り越えたという事がすでに強力な武器だと思うんです。分解すると、論理的な思考力とか、問題を発見する能力とか。それらはビジネスに直結するスキルなので、活躍できるポテンシャルはあります。
Q. 弁護士になる前からビジネスサイドを意識していたか?
(酒井)全く考えていなくて、笹原との出会いがきっかけで意識しました。彼は、自分で弁護士事務所を経営して、それではやりたいことができないと言って会社を経営しようとしていた。その時点で「2ステップくらい先に行かれているな」という感覚がありました。笹原が「弁護士の仕事には価値があるけれど、それをやるのは自分でなくても良い。事を為したい」と言っていて、それに感化されました。
(笹原)僕からも少しだけ。もともと弁護士として事務所を経営していて、ずっと「世の中から紛争裁判を無くしたい」と思っていました。裁判に勝ってもクライアントが真に嬉しそうじゃないからです。そこではカネ・時間・手間など様々なものが失われている。なので、いわゆる予防法務のようなことをやろうとしていたんです。しかし、弁護士が個人としていくら「契約が大事ですよ」「紛争裁判は大変だから予防が大事ですよ」と言っても、個人(または個人の集団としての事務所)が社会全体にインパクトを与えるのは難しいと痛感しました。ご存じの通り、民事裁判の根っこには「契約」があります。「契約」が最適化されていれば、紛争は起こらない。しかし、「契約が大事ですよ!」という正義・正論で世の中は動きません。そうであれば、誰もが使えるプロダクトを提供して、使っていくうちに自然と契約が最適化され、紛争裁判が消えていくアプローチを取る必要があると。これはもう弁護士としてどうこう、という次元ではなく、ビジネスとして立ち上げる必要があると考えて、Holmesを作ったんです。
Q. ビジネスサイドで活躍するためには、アドバイザリーを経験すべき?
(金坂)やったらやったで役に立つと思いますが、必須とは思いません。自分を鍛え上げられる環境かどうかが大事だと思います。最初からビジネスサイドに行ってもいいし、ある程度、弁護士としての経験を積んでからでもいいと思います。
(酒井)同意見です。「ビジネスサイドに行く」という意識を持っていないと、チャンスが巡ってきたときにそれを掴みに行けない。いつでもチャンスを掴みに行けるような心持ちを持ち続けることと、飛び込んだら活躍できるように研鑽を積むこと。そのためには研鑽を積める環境にいることが大事です。
Q. ビジネスサイドで「こういう人を採用したい!」という要素は何か?
(金坂)大事なのはカルチャーフィットです。その会社が掲げるビジョンやミッション、世界観に共感できるか。プロダクトが好きかどうか。やりたいと思えるか。
(酒井)会社のメンバーに対する共感と、事業に対する共感、その2つを兼ね備えていることです。両方に対する強い共感がないと、荒波を超えていかなければならないベンチャーで成果を出すのは難しいです。
最後に一言
(金坂)これから私も皆さんも、長い年月働くと思うので、5年くらい他のことをやっても戻ってこれます。色々な経験を積むことで自分のエッジを作っていけるので、今までやってこなかったことに、あえて踏み出すチャレンジをしてほしいです。
(酒井)金坂さんはロールモデルがない中でパイオニアとして活躍して、いま全く違う価値を生み出しています。幸いなことに、弁護士ではそういったロールモデルがいません。逆にいえば、これは千載一遇のチャンスだと思いますし、私もだからこそチャレンジしています。目の前に広がっているチャンスを取りに行くか行かないかだけです。考えた上で取りに行かないという選択をするのもアリだと思いますが、せっかくこういうイベントに来ていただいたので、ぜひそういったことを「考える」という機会を持ってみてください。
懇親会は登壇者が各テーブルを回って交流!
パネルディスカッションのあとは、お酒を飲みながらの懇親会が行われました!今回は、前回のイベントを踏まえて、参加者が登壇者と濃密に交流できるよう、参加者のいる各テーブルに登壇者が回って、ざっくばらんに話をするスタイルに。キャリアやビジネスについて様々な質問や意見を交わして、大変盛り上がりました!
「第3回 弁護士×BizSide Meetup」開催決定!!!
今回も前回に引き続き、弁護士がビジネスサイドで活躍するための知見に富んだ、大変有意義なMeetupになりました。参加者の皆さんも、今後のキャリアについて真剣に考えている様子で、弁護士が新しい領域に進出していく未来を予感しました。
Holmesでは、すでに「第3回 弁護士×BizSide Meetup」の開催が決定しています。次回は、キャピタリスト編として、Coral Capitalの澤山陽平さんと、Global Capital Partnersの野本遼平さんをお招きして、12/13(金)に開催予定です!
今回、満席ということで残念ながら参加できなかった方も、ぜひ第3回にご参加ください!(詳細については近日公開予定です。)
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