こんにちは。ランサーズの曽根です。「そねせん」シリーズの第9回目です。前回のブレインストーミング=ブレストに続き、今回はプロジェクトマネジメント=プロマネについて書いていきたいと思います。
今現在もだいたい10個近くのプロジェクトを、オーナー(=責任者)の役割やマネージャー(=担当者)の役割やメンバー(=参加者)の立場で携わっていますが、どれもタイプが全く違うようで、うまく推進していくうえで、それなりに共通するものはあると感じます。
これもわりと一般的なテーマかと思うので、世の中にこれ系をテーマにした書があふれているかもしれませんが、あらためて基本に立ち返るという意味もこめて今回のテーマに選びました。ぜひ皆さんも今進めているプロジェクトのことなど想像しながら読んでいただけると幸いです。
プロジェクト(=計画・案件)の基本は、タスク(=仕事・業務)の管理から
そもそも、プロジェクトとは何でしょう。
プレゼンやブレストと同様、日本語にしづらい言葉の一つでもありますね。プレゼンなら発表や提示、ブレストなら自由討論や意見交換、プロジェクトなら計画や案件、といった感じでしょうか(あらためて、ビジネス用語って横文字多いですね)。
プロジェクトをもう少しかみ砕くと、一定期間の内に、多くの人を巻き込んで、何らかのゴールの達成に向かうための、(多くの場合)非定常的な計画、といったところでしょうか。プロジェクトの対義語に近いものが、タスク(=単発や定常的な仕事)という感じです。
イメージとしてわかりやすいのは、たとえば新規事業の立ち上げ、組織の変革、社内のイベント、大規模なカンファレンス、などでしょう。
ぼく自身も、コンサルにいたときは3年半の間に、小売から通信やハイテクまでいろいろな業界のクライアントと、戦略から新規事業や組織までさまざまな経営課題・テーマにかかわる、20個近くのプロジェクトを経験しました(一つあたりでは、平均で2-3か月、3-4人ほどのチームでした)。
大規模かつ大人数で取り組むような長期間のプロジェクト(=計画・案件)も、それを推進していくうえで、これを細分化して個々人のタスク(=業務・作業)に分解していくことが必要になってきます。
そういう意味において、プロジェクトマネジメントを行ううえで、その基礎は一つひとつの単位になる仕事の管理、いわばタスクマネジメント(=仕事・業務の管理)にあります。
タスク管理においては、以下のあたりが重要になってくるかと思います。
仕事の目的の明確化(目的=仕事をする意味)
仕事の目標の明確化(目標=具体的な目的の達成指標)
業務内容の見える化(常に関係者へ情報共有ができる)
業務進捗の見える化(何かあれば関係者がサポート・解決できる)
これは、あとで出てくるプロマネの基本的な問いと相似形、というかほぼ同じものです。
プロジェクトそのものが大規模になったり、一人のかかえるプロジェクトがたくさんになったりしてくると、プロジェクトそのものの優先順位づけをすることになりますが、どんな場合も基本はタスクマネジメントにある、と考えておくと気が楽になるかもしれませんね。
プロマネにおける基本的な7つの問い―ゴール、チーム、スケジュール、進捗を問う
そんなたくさんプロジェクトを抱えるような人たちが、どうやってプロジェクトを管理しているのか。
たとえばコンサル、あるいは開発などはこうしたプロジェクトベースでの仕事が大半であり、いかにうまくプロジェクトを推進するかに苦心していると思います。
プロジェクトマネジメントをするうえでの基本的な問いを並べておきます。
1. プロジェクトのゴールは明確に設定されていますか?
2. そのゴールは、関係者と「握れて」いますか?
3. プロジェクトの責任者・担当者は明確になっていますか?
4. プロジェクトチームのメンバーは適切にアサインされていますか?
5. ゴールに向けたマイルストーン(中間的な到達点)はありますか?
6. ゴールの達成に向けた逆引きのスケジュールはありますか?
7. 現在の進捗はいつでも見せられる・共有できるようになっていますか?
括りとしては、1と2がプロジェクトの目的やゴールを明確にするための問い、3と4がプロジェクトのチーム構成を明確にするための問い、5-6がプロジェクトのスケジュールを明確にするための問い、7がプロジェクトの進捗を明確にするための問い、という感じです。
それぞれ、多少のコツのようなものがあると思うので、以下に記してみます。
プロジェクトのゴール設定:いつでもプロジェクトの目的やゴールが見えるようにしておく。資料化しておく、紙に印刷してはりだす、など。地味だけど、目的やゴールを何度も言い続けることも重要。さらに欲を言えば、皆が一言で聞いてそのゴールをイメージでき、ワクワクするようなネーミングがつけられていると理想。
プロジェクトのチーム構成:とにかくあいまいにならないようにする。スポンサー=意思決定者としてのオーナー、コントローラー=現場責任者としてのマネージャー、の設定は必須。あとは必要な役割ごとに分担してわりふる。大規模な事務局
プロジェクトのスケジュール:長期間のプロジェクトの場合は特に、最終的なゴール達成の手前にいくつかの中間的なマイルストーン(=到達点)を設定する。ステップ1、ステップ2というような形で刻む。そのうえで、各ステップタスクに落とし込み、必要な工数を計算したうえで詳細なスケジュール表に落とし込んでいく。
プロジェクトの進捗:立てたスケジュールに対して進捗に遅れが出た場合、問題があった場合は適切なアラートがあがるようにしておく。複雑なプロジェクトであるほど、個別業務の進捗や細部の問題は見えなくなる。これが一目でわかるようシンプルになっていると理想(例:各業務の進捗状況を信号機であらわす)。
どれも基本的なことを書いているように見えるかと思いますが、どんなプロジェクトも、多少の差異はあれど、これらのポイントはしっかりおさえられたうえでマネジメントされているのではないかと思います。
ゴール達成が困難になった際には、早めに立場の違いやトレードオフをのりこえる
では、ここまで書いてきたことを着実に実践すればすべてのプロジェクトがうまくいくかというと、そううまくはいかないというのもまた事実です。
「もうあと3日かぁ。この人数じゃ期日に間に合わないよ・・・」
「AにするかBにするか悩ましいんだけど、これ誰が決めるんだっけ?」
「XさんとYさんのそりがあわなくて、ちょっと遅れてるんだよね・・・」
「いや、そもそもこのプロジェクトって何のためにやってたんだっけ?」
プロジェクトが始まったあと、こうした声があがってくるのはよくあることです。大規模なプロジェクトになればなるほど。(個人的には、理想的なプロジェクトのチーム人数は6人までだと思っています)
特にゴールの設定は重要。個人的な感覚値としては、プロジェクトが失敗するケースの6-7割は、ゴールや目標の設定のあいまいさに起因すると思います。
プロジェクトがうまくいかなくなりだすと、たいていの場合、最初のプロジェクトの目標設定、いうならばプロジェクトの青写真=設計図にどうしても目がいてしまうものです。
また、目標が明示されていない場合、あるいはプロジェクトが長期になればなるほど、市場や競合など、環境の変化によって当初の前提条件が忘れ去られて、目標の認識がいつの間にか変わってしまうこともよくあります。
そこでよく言われるのは、なゴールや目標の設定を“SMART”にしておくということ。
S=Specific(具体的に)
M=Measurable(測定可能な)
A=Achievable(達成可能な)
R=Related(関連性の高い)
T=Time-bound(時間成約のある)
とはいえ、どれだけゴールや目標が明確でも、プロジェクトのゴール達成が困難になったときにその状況をどう突破するか、が重要になります。
たとえば新規プロダクトの開発プロジェクトであれば、Quality(=品質:プロダクトにもりこむ機能)、Cost(=予算:かけられる人数・コスト)、Delivery(=納期:リリースするまでの期間)、のQCDのどれかを調整する必要が出てきます。
機能をおとしてリリースするのか、人員をさらに投下するのか、期限を遅らせるのか。いわゆる、トレードオフの問題です。
同じ価値基準(例:最速を重要とする、最良を重要とする、最安を重要とする)が共有されていれば、だいたいこうした決断はスムーズになされます。
難しいのは、こうしたトレードオフのある決断を行ううえで、立場や考え方の違うメンバーが多くいるケース。
最も良いものを出したい企画チーム、最も早く出したい開発チーム、最も安くコストをおさえたい管理チーム、が共存しているようなケースです。
そいったケースにおける解決策はとてもシンプル。意思決定者や責任者が強烈なリーダーシップをもって決断することです。
そういう意味で、ゴール・目標の設定とあわせて、プロジェクトのオーナーや意思決定者(マネージャーや現場担当ではなく)を明確に定めておき、上記のような難しい状況・局面が生じたら、早めにこの解決にあたることです。
皆さんもプロジェクトのゴール達成が困難な状況になった場合には、上記のような点に気を付けてみるとよいかもしれません。
今回のポイント
というわけで今回のまとめです。
プロジェクト(=計画・案件)の基本は、タスク(=仕事・業務)の管理から
プロマネにおける基本的な7つの問い―ゴール、チーム、スケジュール、進捗を問う
ゴール達成が困難になった際には、早めに立場の違いやトレードオフをのりこえる
最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。これまでのキャリア10年強で携わったプロジェクトの数を数えたら、50を超えていました。うちいくつ成功や失敗をしてきたかな、などと考えながら書いていましたが、本当に記憶に残る大成功・大失敗のプロジェクトはそのうちの一握り。1割くらいですかね。でも、振り返ってみると、どのプロジェクトのマネジメントにおいても、基本の動作は変わらないと思います。
ビジネス・ノウハウ編の最後となる次回は、生産性をテーマに書きたいと思います。主に会議のあり方や時間の使い方を中心に書きます。この6月くらいから時間の使い方を変えることで生産性をぐっと上げることができたのですが、そのあたりのコツのようなものもぜひ書けたらと思います。
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・第20回:「開き直り」の境地で51/49の意思決定し、自らの人生の主権を握る
【番外・総集編】
・ 番外編①:エン・ジャパン主催の「ワーク&プライベート・シナジー勉強会」での登壇
・ 番外編②:ランサーズ勉強会(L-Academy)の「戦略ケーススタディ」のレポート
・ 総集編(前半):「一億総デザイン社会」を生きるためのキャリアと仕事の考え方
・ 総集編(後半):「VUCA時代」を勝ち抜くための事業と組織の考え方