「お父さんの腰の調子が悪くてクリニックに通ってるけど、治らないのよ」
ある日、私のもとに母から連絡が入った。
「検査はしたの? クリニックの先生に相談してみたら?」
私のアドバイスを受けた両親は、クリニックに相談。大学病院での検査を経て病名が判明したものの、治療の過程で新たな病気が見つかり、別の病院で精密検査をすることになった。
不安がる母に代わり、診断結果と治療方針説明の場には、私と父が出席することに。病名や現在の状態、今後の治療について説明する主治医に対して、私は原因や遺伝の有無、治療のリスクや生活するうえで気を付けることなどを確認していった。
手術と通院治療を経た父は、数ヵ月に一度の検査通院に落ち着いている。
親の治療に伴走して気づいたこと
今回、親の治療に伴走して気づいたことがある。患者と医師の双方向コミュニケーションが、満足度の高い医療体験につながった、ということだ。
「何が原因でこの状態になり、いつまでにどのような治療を行うのか」
「治療にはどのようなリスクがあり、今後の生活はどうなるのか」
病気が分かったとき、患者自身や家族の不安をあげればきりがない。
今回、私たち患者と家族の不安解消に、医療従事者が寄り添ってくれている安心感があった。
医療従事者だけでなく、患者側ができることもあると感じた。かかりつけ医に検査の相談をしたり、「前の病院ではこのような説明を受けました」と、自身の持っている情報を医師とすり合わせることで、より密度の濃いコミュニケーションにつながったと感じている。
そんなちょっとした工夫の大切さに気づけたのは、カケハシの広報・PRとして働き始めたことがきっかけだ。
入社前の私は、医療従事者とのコミュケーションに対して、完全に受け身のスタンスだった。医師や薬剤師の説明を聞き、気になったことがあっても「ささいなことだし……」と飲み込んで指示に従う。これが”当たり前”だと思い込んでいた。
カケハシでは、より質の高い医療体験を生み出すために工夫を重ねる人たちの姿を数多く見てきた。自分のなかの”当たり前”が、少しずつ崩れていった。
コミュニケーションの可能性
カケハシと出会っていなかったら、症状が緩和しない父に、かかりつけ医への相談を提案できなかったかもしれない。治療方針説明の場に同席しても、主治医の話を淡々と聞くだけにとどまっていたかもしれない。
患者から医療従事者に相談してみる。治療にどんなハードルがあって、患者やその家族に何ができるのかを確認してみる。ほんの少しの工夫が、コミュニケーションのきっかけと、満足度の高い医療体験につながった気がする。
もちろん、コミュニケーションが難しいこともあるはずだ。
医療従事者は、どのタイミングにどんな言葉で伝えればよいか迷うこともあるはず。患者やその家族は、何を聞いてよいか見当がつかないこともあるはず。
そんなとき、カケハシのプロダクトが、両者の背中を押すような存在になれたら……。コミュニケーションの可能性を信じて、私はこれからも共感の輪を広げる活動をしていく。
こちらはカケハシ Advent Calendar 2023 の記事となります。