この記事はカケハシアドベントカレンダー2023 3日目の記事です。
https://adventar.org/calendars/8587
こんにちは。カケハシで新規サービスに関わるプロダクトマネージャーを担当している山本です。
プロダクトマネージャーという仕事は、一般的にはビジネス・顧客・開発のトライアングルを機能させる役割だと定義されています。
そのため求められるスキルもさまざまで、プロダクトロードマップ作成や仕様策定といったプロダクトそのものに関する知見はもちろん、Webマーケティング、データ分析やユーザリサーチ、プロジェクトマネジメント、エンジニアとしての経験もしくはエンジニアと会話できるだけの技術知見、デザイン関連の知見など幅広くカバーする必要があります。だからこそ全てを一人で担いきるのは難しいんですよね……。
出典:https://productlogic.org/2014/06/22/the-product-management-triangle/
一方で、こうした一つひとつのスキルはもちろん大事なのですが、自分自身プロダクトマネージャーもしくはそのマネージャーなどを10年近くやってきたなかで思うのは、それ以上に「顧客の状況を正しく理解すること」「さまざまなスキルを持ったメンバーのコラボレーションを生み出し、チームとしての価値を最大化すること」といったソフトスキルがとても重要だということです。
また、その前提にある「顧客」と「社内のメンバー」に対する理解の“解像度”をいかに高めるか、ということに尽きるんだよなと感じる場面が多々あります。
今回はこの、プロダクトマネージャーに必要な“解像度”について、「顧客」と「社内(異職種コラボレーション)」の2つの切り口から考えてみたいと思います。
なお「解像度」に関しては、すでにご覧になった方も多いと思いますが、こちらの本がおススメです。
目次
- これがなくては始まらない、顧客に対する解像度
- 物事を進めるために不可欠な、社内に対する解像度
- 特に意識したい、エンジニアとのコミュニケーション
- プロダクトマネージャーに限らず大事なこと
これがなくては始まらない、顧客に対する解像度
カケハシは現在、5つの薬局向けプロダクトを提供しており、そのすべてを数百~数千店舗以上の薬局にご利用いただいています。
これだけのユーザーにお使いいただけている背景を考えると、プロダクト開発の観点としては“顧客解像度の高さ”が大きく影響していると思っています。
私が担当したプロダクト「Musubi AI在庫管理」の立ち上げ当時を思い返してみると、私自身は当初、薬局の在庫管理に関しては全く無知の状態でした。
ですが、カケハシの社内には薬剤師メンバーが何人も在籍しているんですね。そのため「現状の在庫管理にはどんな課題があるのか」「こんなことができると本当は嬉しい」という詳しい話を社内で気軽に聞くことができました。
また、プロダクト開発に協力的なユーザー薬局様が非常に多く、普段から懇意にさせてもらっている方もちらほらいらっしゃいます。
何度となく薬局の現場にヒアリングに伺うことができ、伺うたびに何度も詳細に教えていただくことができて、ある意味、業界の素人である自分でも解像度高く業務を理解することが可能な状況がありました。
ちなみに、こうしたヒアリングを行なう際、自分なりに気をつけていることをご紹介すると……
1. 「そうなんですね」「他のお客さまもよく言われます」など、相手がポジティブに話せる状況を作り出す。
2. N数は最低でも10程度は確保する。すると、だいたい共通しているポイントや、環境に依存しているポイント(特定顧客に特有もしくはあまりメジャーではない課題)などの分類がみえてくるので、その中で課題の重要度を相対的に捉えるようにする。
3. 基本的にはファクトをベースに5W1Hで具体的にお話を伺う。その過程で、例えば「どうなったら一番嬉しいですか?」「それはなぜですか?」といった抽象的な質問を挟み、より立体的に事象を把握するようにする。
このような質問を繰り返すことで、プロダクト開発に必要な顧客の課題に対する「広さ」「深さ」「構造」「時間」の解像度を得ることができます。
まずは、この顧客解像度に基づいたプロダクトコンセプトや機能設計ができることが最重要です。これがなければメンバーからの信頼を勝ち取ることはできませんし、まずは顧客解像度を圧倒的に高めることが大前提だと思います。
物事を進めるために不可欠な、社内に対する解像度
その上で大切になってくるのが、対社内(他職種コラボレーション)の解像度です。
プロダクト開発の現場では、実は同じ課題・同じ事象について話しているにも関わらず、抽象/具体のレベル感だったり、見ている角度が違ったりすることで、コミュニケーションに齟齬が生じる場面が少なくありません。
こうしたときに、例えばある人が抽象的な話をしているのであれば、具体的なケースに掘り下げて考えてみたり、あえて逆の立場からの観点を具体的にあげてみて物事をみる角度をずらしてみたりと、視野や視点を変えることで合意形成を図っていくことが重要です。
プロダクトマネージャーとしてのこうした振る舞いには、一緒に働くメンバー(他職種)に対する一定以上の解像度が不可欠だと思います。
まず、各領域の基本的な知識は一通りもっておきたいところです。相手の発言を構造的に理解できれば大丈夫なので、自分としてはエンジニアリング、データサイエンス、デザイン、マーケティング、カスタマーサクセス、セールス、経営といった各領域の入門書レベルの本を読み、そのうえでその領域の方と会話をしたりX(旧Twitter)やnoteで各領域の最新トレンドを押さえるようにしています。
より簡単にできることでは、さまざまな職種の方と話をしてみるのはとても有効だと思います。営業について見識を深めたいのなら、例えば営業同行してみるだけで、その方がどういう前提でどういう発言をしているのかなど、より理解できるようになっていきます。
この「相手が、どういう視点・前提からその言葉を発しているのか」を考えながら仕事を進めることが、プロダクトマネージャーとして合意形成をはかり、スムーズに物事を進めるための一つのポイントだというのが私の考えです。
どの角度・視点から、どのような抽象度で、課題/事象を捉えているかを理解するのが大事。
特に意識したい、エンジニアとのコミュニケーション
私自身もそうなのですが、エンジニア出身でないプロダクトマネージャーが、エンジニアとのコミュニケーションに悩むケースは少なくないのではないでしょうか?
社内向けのドキュメントになってしまうのですが、当社VPoEの湯前が「エンジニアを理解したい人に向けて」と題して自身が感じているソフトウェアエンジニアならではの特徴・性格についてまとめた文章があり、とてもおもしろく読みました。
一部をご紹介すると……
VPoE湯前の社内向けドキュメントから一部を抜粋。
もちろんすべてに当てはまる話ではなく、あくまで湯前自身が彼の周辺で見かけるケースをまとめたものになるわけですが、私としても過去から現在にいたる同僚エンジニアを思い返してみて「たしかに」と思うところが多くありました。
特にこの「言われたことだけをやりたくない」という点は、プロダクトマネージャーがエンジニアと一緒に仕事をする上でポイントになる部分だとも言えると思います。
エンジニアとの仕事では(エンジニアに限らないかもしれません)、課題解決の手段を一緒に考える姿勢がまず大事です。特にSaaS事業者などエンジニアが同僚であるケースであれば、普段からエンジニアと会話をする機会も多く、課題解決の手段を一緒に考えるケースは自ずと多くなるでしょう。
ポイントは、湯前のドキュメントにある「仕様は決めて欲しい」の部分の塩梅かなと思っています。どこまで決めてほしいかは、エンジニア個人によってかなり違ってくる印象です。
抽象/具体のバランスがどのあたりにあるのが、そのエンジニアにとってカンファタブルなのかを察知しながら、議論を進め、仕様として決めにいく動き。これができるかどうかが、チームの納得感を高く保ってプロダクト開発を進めるためのカギになると思います。
ひとえにエンジニアといっても、当然ながら、一人ひとりスタンスは異なるもの。
プロダクトマネージャーに限らず大事なこと
と、ここまでお話してきましたが、これってプロダクトマネージャーに限らずどの仕事にも必要なスキルだと思うんです。
カケハシでは毎月「全体会議」(全社で行なう振り返りセッション)を開催しており、メンバーが10分スピーチをする「リレースピーチ」というコーナーがあるのですが、先日、大手クライアント向けのCSチームに所属する谷川が、自身の仕事にカケハシのValueを照らし合わせて、下記のような話をしていました。
部門を超えて課題解決をするために、顧客の状況を正しく理解し、認識齟齬なく伝えるかつ、より動きやすくするために、他部門の状況をしっかり把握した上で伝える。
カケハシには「価値貢献」「無知の知」「変幻自在」というValueがあります。
意味するところはそれぞれ異なるのですが、背景には「さまざまな職種が立場に固執することなく協力して、大きな価値を創出するために必要な考え方」というベースの価値観があると思っています。
プロダクト開発はもちろんそうですし、どのような仕事であっても、成し遂げたいことが大きければ大きいほど、こうしたスキルやスタンスは必須になってくるでしょう。
私自身も、組織のマネージャーとして意識しなければと常々思っているところです。
プロダクトマネージャーやプロダクトマーケティングマネージャー(PMM)といった自身のバックグラウンドに近いメンバーだけではなく、データサイエンティスト、エンジニア、デザイナー、CS、営業、製薬会社バックグラウンドのBizdevや執行役員……などなど、カケハシで活躍する多種多様なメンバーと直接的に関わり、そのメンバー同士の掛け算を最大化することが自分の役割だと思って仕事をしています。
さて、前々から仕込んできた新規サービスも、紆余曲折を経ていよいよ2024年頃には大きな花を咲かせてくれそうな気配です。まだまだご一緒できる方を求めていますので、興味をお持ちいただけたら、まずはぜひカジュアルにお話しましょう!
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