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【前編】次世代薬歴システム「Musubi」に込めた思い

次世代薬歴システム「Musubi」を通して、患者側へ価値ある医療体験を提供することが、私たちKAKEHASHIのミッションです。代表取締役CEOの中尾豊が「医療と患者をつなぐカケハシ」「医療と明るい未来をつなぐカケハシ」になりたいとKAKEHASHIを創業しました。今回は、その意志の源泉と未来にかける思いを中尾自身が前編後編にわたり紹介します。


単なる業務改善ではない。医療体験の価値を高めていく仕組は何か?

私たちKAKEHASHIが提供するサービス、次世代電子薬歴システム「Musubi」。私たちはこれを、単なる業務効率化ツールとして開発したのではありません。

「Musubi」はその名のとおり、医療の一端を担う薬剤師と患者間を良好なコミュニケーションでむすぶ仕組みです。これがめざすものの本質は、患者の医療体験の価値を高めていくことにあるのです。

「Musubi」立ち上げの背景には、私が前職時代に抱いていた”医療現場に対する想い”があります。それは「患者が負担のない医療体験をするには、どうするのが一番いいんだろう?」という疑問でした。

私は新卒から製薬会社のMRとして医療の現場にかかわってきました。日本では、国民皆保険で誰でも質のよい医療を受ける機会に恵まれています。その半面、多くの患者が訪れるがゆえに待ち時間が長くなる傾向に…。体調が悪いなかでの待ち時間や大きな病院内での移動など、患者の負担は計り知れません。しかし患者が負担なく、満足のいく医療体験を得るということは、そう簡単ではないのです。

日本は医療の質は高い一方で、患者の医療体験という面では、まだまだ改善の余地はある――漠然とではありますが、そんな思いが高じてきました。

やがて、その思いを具現化して、患者の医療体験の価値を高めていく事業を立ち上げようと考えるようになったのです。そこで、いっしょに事業を育てていく仲間探しがはじまりました。

実は、最初から起業ありきだったわけではありません。まずは、さまざまな企業と話す機会を得たものの、医療の現場の肌感覚をもって同じ目線で話をできる会社には出会えませんでした。そこで、自分で立ち上げるしかないという結論になったのです。その後は、なるべく多くの人に会い、自分なりの事業プランをぶつけてみてディスカッションをしてみること。そんななか出会ったのが、共同創業者である現COOの中川貴史です。

患者に価値ある体験を与えられて、事業として成り立つ領域は何なのかーー。中川と共に40個近いビジネスモデルを考え抜いた末、見えてきたものが「Musubi」だったのです。


薬剤師として働く母の姿を通してよく知っていた、薬剤師の価値

なぜ薬剤師向けのシステムなのか――その答えは、患者に価値を出すためのタッチポイントはどこなのか、患者に対してもっと価値を出せる人は誰なのかを徹底的に調べたところから浮かび上がってきたものです。

薬剤師には、高度な専門知識を活用して病院と連携し、薬の効果や副作用を確認しながら、よりよい服薬ケアにつなげていく役割があります。また患者と対話を重ね、患者さんに新たな気付きを与える生活アドバイスをする「健康のサポート」をしていくこともできます。

しかし、薬剤師はその本来の価値を発揮できていないシーンが多いように感じていました。それは薬剤師自身の問題だけではなく、多くの要因が絡んでいたのです。

薬剤師の現場では、大量の書類や薬の管理など、患者と接点のない業務が膨大に存在します。また病院とカルテの共有ができないため、患者に一から症状などをヒアリングしなければなりません。一方で患者側は、「早く薬を出してほしい」という以上のニーズが薬局では生まれにくい。そうした現場では、対話やサポートよりもスピードを重視せざるをえない状況があるのです。

じつは、私の母親は薬剤師です。学生時代は、祖父のクリニックでおやつを食べてからバスケットの練習に出ていく日常のなかで、医師である祖父と薬剤師である母の対話を聞いていました。

「この薬は出したほうがいいんじゃない?」「この薬は不要なんじゃないかな」と、専門性を生かして医師と連携し治療を組み立ていくその姿を見ていたので、薬剤師は適切な環境にあれば患者に価値を出せるというのは、自分の中に大前提としてありました。

薬局という多くの患者が必ず通る場に、高い専門性をもってサポートができる人材がいるのに、その価値が十分に出せていないのなら、出すべきだーー。では価値を出せていないのはなぜなのか、薬局のオペレーションにどんな問題があるのか洗い出して改善すればよいのではないか。

それが、私たちがたどりついたソリューションだったのです。

==後編につづく==

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