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大学発の技術で、より良い膝の治療を患者に届ける。【採択企業紹介/Hiroshima Global Connection】

貿易・投資促進と開発途上国研究を通じ、日本の経済・社会の更なる発展に貢献することを目指している「JETRO」。70カ所を超える海外事務所のほか、東京本部を始めとする国内50の事務所による国内外ネットワークをフルに活用し、対日投資の促進、農林水産物・食品の輸出や中堅・中小企業等の海外展開支援に機動的かつ効率的に取り組むとともに、調査や研究を通じ日本の企業活動や通商政策に貢献しています。ジェトロ広島では、県内においてイノベーションエコシステムを創出するために、海外展開を目指すスタートアップを対象に、成果の創出や事業の発展に繋げていくことを目的とした支援プログラム「Hiroshima Global Connection」を広島県と協力のうえ実施しています。

今回は「Hiroshima Global Connection」採択企業である「Flying Cell」にインタビューを行いました。企業の事業内容や海外展開への取り組みについてお聞きしています。

Flying Cell

広島大学の発明技術であるナノ粒子の鉄剤を用いた磁気ターゲティングで、細胞を磁場で誘導・集積させる治療法を研究。臨床研究を終了し、その結果を踏まえ治験を開始している。磁性化細胞を用いた変形性膝関節症治療では、患者侵襲性が低く膝軟骨本来の硝子軟骨の再生が期待できる新たな製品を提供予定。磁気ターゲティング技術は、軟骨以外の失われた組織の再生、効率的ながん治療にも応用できるものと捉え、技術を用いて、世界中のより多くの患者に貢献することを目指す。

<会社概要>

HP:https://flyingcell.co.jp/

本社:広島県広島市南区霞1丁目2番3号 広島大学霞キャンパス内

設立:2020年9月 

資本金:5,000万円

従業員数:2人

兼古 憲生(かねこ のりお)
北海道出身。日本の製薬会社に30年勤務し、経営計画と海外事業に取り組む。駐在先から帰国後は広島に在住。広島から世界に向けて患者への貢献を目指す。 

「普通の生活」を守るための膝治療

ーーまずは事業概要について教えて下さい。

兼古さん:

加齢や生活習慣に伴って年齢とともに起きる変形性膝関節症やスポーツなどで急激な力がかかって軟骨が剥がれてしまう軟骨欠損になると、痛みがずっと続いて、元には戻らず進行していってしまいます。広島大学の持つ技術を活かして、それらの疾患の細胞治療に取り組むのが我々の事業となっています。

ーーどのような思いで製品を作ろうと思ったのでしょうか?

兼古さん:

膝を悪くすると普通の生活ができなくなってくるので、それを契機に認知症になる方や、お孫さんや犬と遊べなくなる方が多くおられます。膝が悪くなってしまうと、その方の生活の質や、時にはキャリアにも影響を与えてしまうため、それらを予防したいという思いがあります。

ーー海外展開にも目を向けていらっしゃるそうですね。

兼古さん:

医薬品に関しては、グローバルで必要とされるデータは共通のため、海外がひとつの市場で、そこにそれぞれの国があるという意識が強いです。中でもアメリカは、一番大きなターゲットとして捉えています。アメリカには上半身が大きく、下半身が華奢な方がたくさんいらっしゃるので変形性膝関節症になる患者さんが多いためです。また、プロスポーツの一番大きな市場はアメリカなので、軟骨欠損になる方も多いのが現状です。患者さんのニーズはもちろんですが、それらの現状から一番ビジネス化されていく可能性が高いのもアメリカだと考えています。

プログラムを通して気付いた海外のスタンダード

ーー今回の「Hiroshima Global Connection」に参加した経緯も教えて下さい。

兼古さん:

プログラムを実施していた去年から今年にかけてがちょうど私たちにとっても都合の良い時期であったことに加え、今後の進出を見据えているボストンやベイエリアに関連がありそうな内容だったからです。それからJETRO広島の方は普段からすごくサポートしてくれていて、セミナーやアクセラレーションプログラムなどこれまでに色々受けてきたものもほとんどがJETRO広島の紹介でした。それらで築いてきた信頼関係も今回のプログラムへの参加に繋がりました。

ーー今回のプログラムに参加してみて良かったことはどのあたりでしょうか。

兼古さん:

JETRO広島の方たちとの関係は、今の会社が海外に向けて立てている色んなアンテナの基盤になっているので、JETRO広島の活動には常に助けられていると感じています。その中で、アメリカでのピッチをした際に多くの方に同じことを言われるという経験をしまして、アメリカのスタンダードに気づけたことは今後に役立ちそうだと思っています。

ーープログラムの改善点もお聞かせください。

兼古さん:

1週間の渡航期間で現地には3日間ほど滞在したのですが、最初から事業を説明しないといけないようなこともあって、説明を少ししただけでピッチの時間が終わってしまうということもありました。現地で会う方には事業の説明をする機会として事前に1〜2回オンラインで会っていると、もう少し深堀りしてもらったり、ヒントをもらったりできるのではないかと思います。

ーー今後はどんな展望がありますか

兼古さん:

国内で進めてきた治験のデータが夏に出るので、やはり最大の市場であるアメリカにコンタクトしたいと思います。今後1〜2年はアメリカでのデータ収集をすることになりそうなので、現地のパートナーを見つけるということも優先してやっていきたいですね。データが集まり次第、再生医療の基準がクリアになっていて、かつ我が社の技術が使える、もしくは評価してもらえる制度が整っている欧州などにアクセスしようと思っています。

ーー最後にPRポイントをいただけますか。

兼古さん:

これまでのひざの治療は、効果は大きいものの大掛かりな手術をするため患者さんにとって侵襲性が大きい方法や、患者にとって負担は少ないけれど効果は出づらいといった方法で行われてきました。例えばアメリカでは、変形性膝関節症の人たちは鎮痛剤や理学療法のために年間に2,000ドル使っています。それに対して弊社の治療方法は患者にとって負担が少ないだけでなく、きちんと効果も出せるものとなっているため、生涯支出も約3分の1程度に抑えることができます。私自身も、膝を大事にすることで「今飼っている犬と散歩し続けたい」という願いを叶えたいと思っています。


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