就職活動や転職活動中の皆さんにとって、その会社に入社した後のキャリアパスは関心事の一つだと思います。また、キャリアの模索は、働く間ずっと続きますよね。アイティメディアでは、キャリアの幅を広げる「希望業務自己申告制度」(以降自己申告制度)を設け、社員がイキイキ働ける環境を作る試みをしています。
これは、現在担っている職務に関係なく、自らが挑戦したい職務に携わる希望を、社員が経営陣と人事に直接申告できる制度です。背景には、社員ひとりひとりの価値発揮を最大化するために、社員の「やりたいこと」を実現するのがベストであるという当社の考えがあります(※)。自ら動くことで希望を叶え、よりよい形で価値発揮してほしいという意図が込められた制度です。
この制度の長所として、異動だけでなく、兼務やプロジェクトアサインも選択肢としており、人員計画などに縛られない、より多様な挑戦機会の検討が可能であることが挙げられます。また、制度利用を希望したメンバーは、異動希望先の役員との面談を経て審査が行われ、人事から結果とその背景をフィードバックします。なお、希望者の心理的安全性を担保するため、自己申告制度を利用しての異動であることは、異動決定のタイミングで直属の上長に共有される以外は公開されません。
今回は、自己申告制度を利用して、営業から編集記者にキャリアチェンジしたITmedia ビジネスオンライン編集部の秋山未里と、同じく営業から企画にキャリアチェンジしたITメディア企画部の浦本康平に、人事部の木幡がインタビューしました。上段でお伝えした通り、通常は自己申告制度を利用しての異動だと公表されることはありませんが、今回は実際に制度を利用してキャリアチェンジをした社員の生の声をお届けする目的で、2人から特別に許可を得られたため記事化しています。
――インタビューにご協力いただきありがとうございます! まずは、自己申告制度を利用した理由から教えてもらえますか?
秋山: 自己申告制度が始まったのは2019年からですが、私は、もともと異動したいという希望があったので、チャンスがあるなら逃さない方がいいと思い、利用しました。また、新卒で入社して以降、営業を3年経験したので、ここで他の職種に移るのはいいタイミングだと考えたことも理由です。
浦本: 私も異動を希望しており、直属の上司にもその旨を伝えていました。しかし、上司経由だけでなく直接上層部に異動の意思を伝えたら、どんなフィードバックがもらえるのかが気になり、制度を利用してみようと考えました。
――では、実際に自己申告制度を利用してみてどうでした?
秋山: 自分がどうしたいかだけでなく、会社への貢献という視点で、希望するキャリアを実現することの意味を考え、説明する機会になりました。「編集記者をやってみたい」「せっかくなら若いうちに編集記者を経験したい」という自分中心的な理由だけでは、経営陣に納得してもらえません。「会社にとってこういう人材になりたい」「こういう仕事で会社に貢献をしたい」と話すことで、思考の整理になりましたね。
浦本: 私は、今の部署に異動するまで、正直なところ紆余曲折があったんです。最初は編集記者を希望していたのですが、経営陣や人事側からの提案を受ける形で、商品企画や営業支援を行う企画の部署に異動しました。その過程の中で、自分は何に魅力を感じてこの会社に入ったのか? 自分が仕事をする中で充実感を得られる瞬間はいつか?など、自身の根本的なキャリアへの考え方を再確認する機会が得られました。
加えて、自分がやりたいと思っていたことと、自分の適性・周囲が期待していることが異なっていることに気づくことができたのも大きいですね。私の場合は、自己申告制度を通して自分を客観視する機会となり、周囲の方が評価・期待してくださっている点をより伸ばす方向に舵を切るきっかけになりました。
――制度を利用したことで、思考の整理や新たな気付きが得られたということですね。ちなみにお二人は、どんなキャリアプランを描き、異動したいと思ったんですか?
秋山: 私は、新しいメディアやビジネスモデルを作ることができる人材になるという目標を持っています。新卒で入社し、営業配属になったのは希望通りだったのですが、だからと言って、ずっと営業で仕事をしたいわけではありませんでした。メディアをプロデュースできる人材を目指すために、利益を生み出す2つの軸である営業と編集記者、どちらもやってみたかったからなんです。
また、編集記者は他職種の経験の応用ができるわけではなく、基礎スキルを身に付けるのに体力がいる仕事だと思うので、時間的にも融通が利く若いうちにやりたい気持ちもありました。
浦本: 私がもともとこの会社に入社したのは、メディア事業として健全な収益モデル(※)を構築できているのが魅力だと感じたからなんです。つまり、メディアを本業としてきちんと利益を生み出し、その利益を読者に還元するサイクルが回っているということですね。メディアビジネスによりに近い部署で仕事がしてみたいというのが、異動にあたって抱いていた思いでした。現在所属しているITメディア企画部では、日々メディアの売上をウォッチし、更に売上を伸ばしていくために新しい広告商品や企画を作ったり、営業の方と連携して商品や企画をどのように見せれば効果的かを考えたりなど、日々臨機応変に動くことが求められる点が面白そうだと感じました。
※アイティメディアのビジネスモデルについては、今さら聞けないアイティメディアのビジネスモデルをご覧ください。
異動前を振り返ってみると、営業を3年間経験して仕事にも慣れ、だいたいの流れはつかめてきていました。ただ、「業務フローがこんな風に改善されたらいいのに」「こんな企画があったら売りやすいのに」と感じることが多くなってきて、営業の方が困っていることや求めていることに共感できる自分だからこそ、提供できる価値もあるのではないかと思い、挑戦してみようと考えたんです。
――実際に異動してみてよかったことや、もっと覚悟が必要だったと思うことはありますか?
秋山: 当社には、営業と編集記者を両方経験していて、どちらの考え方もバランスよく分かる人は現在あまりいません。異動したことで、自分ならではのポジションがあるのに気付けたのはよかったですね。現在は、編集記者の基礎となるスキルを――まだまだ半人前ではありますが――一通り教わったところなのですが、営業の経験から社内のことはよく分かっているので、この段階でも個々の業務の価値がすぐ理解できるアドバンテージはあります。また、営業時代からのつながりを生かして、担当していた企業に取材に行くなど、過去の経験が役立っていると感じます。覚悟が必要だったと思うことは……あまり思い浮かばないですね(笑)。
浦本: よかったことは、メディア事業の現場により近づけたことですね。企画を立てるうえで必要な事業戦略の情報も早めに収集できるので、経営層の意図を自分たちで咀嚼して、注力商品を生み出す中で、異動前よりも自身の目線が一段階上がったと思います。あと、企画は会社の中でさまざまな部署のハブとなる立場なので、営業時代に培った社内の人脈は結構生かされていますね。
逆に異動してみて大変だったことは、連携する部署が非常に多いため、各所とのコミュニケーションに割く時間や量が非常に多くなることです。仕事をしている時間の半分以上は社内外の打合せや社内チャットに費やしています。この前ログを確認したら、私の社内チャットの発言数が全社3番目くらいで驚きました(笑)。
――忙しいながらもかなり充実しているんだろうなということが伝わってきました! 異動前後でキャリアに対する考え方に変化はありましたか?
秋山: 私の場合、やりたいことは大きく変わっていませんが、選択肢が広がって、良い意味で迷いが生じているといえるかもしれません。編集記者の仕事を極めて、スペシャリストとしてプロジェクトをまわしていくのも一つだし、あるいは管理職として組織を導いていく道もあると気付きました。いろいろな方向からありたい姿が実現できると気付けたんです。もちろん、実際に選ぶのは先のことですが、キャリアの解像度が上がって、さまざまな道が見えてきた感じですね。
浦本: 私は当初の希望とは異なる部署に異動を決めたこともあり、新しい考え方が生まれました。もともとメディアビジネスに携わりたいと考えており、それには編集記者の経験が必要だと思っていました。しかし、必ずしも自分が書く必要はなくて、チームで働いているのだからもっと得意な人に任せる道もあるのではないかと気づいたんです。各領域の専門の編集記者とうまく連携することで、自分のやりたいことが実現できるかもしれないと考えるようになりました。
今振り返ってみると、正直「編集記者しか選択肢にはない」と固執していた部分はあったかもしれません。私の場合、同じゴールを目指すのでも、違う角度からアプローチできる方法を考えてみたところ、より自身の適性が生かしてチームに貢献でき、仕事の充実感にもつながる道を見つけることができたのではないかと思います。
――異動によって前向きな変化があったんですね! ところでおふたりが異動に向けて何か努力したことはありますか?
浦本: 秋山さんは本が書けるくらいあるでしょ(笑)。
秋山: 確かに、いろいろあるかもしれません(笑)。
先ほども話しましたが、私が異動を希望した当初は自己申告制度がなく、2019年に新設されるまでは、できることは何でもやろうと考えていましたね。どんなに強く希望していても、誰にも言わなければ分かってもらえないですし、当社の社員は、ポジションに関係なく気さくに話を聞いてくれるので、とにかくたくさんの人に編集部に異動したいとは言っていました。機会を見つけて、営業本部長や編集部門の役員など、さまざまな人に伝えました。異動したいと言えば、必ず理由を聞かれるので、それをアウトプットすることで思考の整理になりましたし、私が話す異動希望理由へのフィードバックがポジションごとに違うのも、勉強になりました。
あとは、営業が嫌だから異動したいという気持ちはなかったので、あくまでも営業で成果を出したうえで編集部に異動したいことが伝わるように心掛けていました。その他にも、メルマガの本文やタイアップ記事の構成案を書いたり、企画を考えたり、編集部と一緒に行う仕事への関与度を高めることを意識していましたね。
浦本: 私は異動のために特別に行ったことはあまりないかもしれません。強いて言うなら、ゼロベースから企画を作って顧客に提案するのは、営業として日ごろからやっていましたね。もともと当社の既存の商品を当てはめるだけでは対応しきれない業界を担当していたこともあり、とにかく顧客の抱えている課題をヒアリングして、当社では何が提供できるかを考えるところから始まるのが普通でした。当社の持つ商材を組み合わせて提案するだけでなく、既存の商品に無いサービスでもうまく社内を説得すれば実現できそうなアイデアをまとめて、「顧客の抱えている課題を、こんな座組の商品で解決したいのだけど、実現可能か?」と社内の企画部の方によく相談していました。企画は作ってもらうのではなく、私も一緒に作っていくというスタンスで仕事をしていました。
また、広告出稿を頂いた際は、結果を丁寧にフィードバックすることを心がけていました。広告の効果が思わしくなければ、いつかクライアントは離れていってしまいます。営業担当として顧客には投資対効果を最大化してもらいたいと考えており、タイアップ記事を実施した際はアクセス解析ツールなどを用いてデータを分析し、読者の反応が得られた点や狙いが外れた点などを細かく話し合いました。商品や企画を磨き続けようという姿勢は現在の企画の仕事にもつながっていると思います。
――営業としての最低限の仕事をするのではなく、プラスアルファで他の部署の貢献になるような取り組みをしていたのがおふたりの共通点ですね。では、今後の目標を聞かせていただけますか?
秋山: まずは編集記者として一人前になることです。そして、記事を書く以外にも、特集の企画、新しい読者を計画的に集めることなど誌面づくり全般に関わっていきたいですね。自分個人の力もつけつつ、ITmediaビジネスオンライン自体の価値を高める仕事をしていきたいです。
浦本: まず、現在の私のミッションであるイベント関連の商品の売り上げを作ることをしっかり実現したいです。
また、現在は既存の業務をこなしていくだけで精一杯なのですが、今後はより視聴者の体験が高まるようなイベントの見せ方も工夫していきたいですね。新型コロナウイルスの流行から1年が経ちますが、以前のように会場に集まって催しを行うことはまだまだ敬遠されています。当社含めて多くのイベントがオンラインに切り替わっているものの、最適解と呼べるものは多くないと感じています。正解がないからこそ、社内の各所のメンバーとより連携して小さな工夫やチャレンジを沢山積み重ねて、より良いものを作っていきたいです。
――最後に、キャリアチェンジを考えている人にメッセージをお願いします!
秋山: キャリアチェンジをしてみたいと思った時に、同様の経歴を持つロールモデルがいるかどうか、みなさんよく気にしますよね。ロールモデルがいなければ、その希望を実現するのは難しいんじゃないかと考えて諦めてしまう人もいるかもしれません。でも、ロールモデルがいないことは決してネガティブではなく、「そのポジションが空いている!」と私は考えます。例えば、私の場合は、営業から編集記者にキャリアチェンジした社員は少ないので、両方の視点を持ち合わせた人材として重宝されるかも! と考えたわけです。ロールモデルがいるかいないかで選択肢を狭めることなく、自分がやりたいことに挑戦してみるのがいいんじゃないでしょうか。
浦本: 私は「自分がやりたいことと、周囲から期待されていることや評価されていることは違う場合もある」と学んで、周囲に求められることで力を発揮するという選択肢もありだと思うようになりました。じゃあ、周囲から求められることって何? 自分の力が一番発揮できるのはどこ? と考えると、意外と自分だけじゃ分からないんですよね。他者からフィードバックを得るほうが、具体的な選択肢が見えてきます。客観的な評価や期待されていることを認識するために、まずは「自分はこんなことに挑戦したいんですが、どうでしょう?」と確認できる機会があるのであれば、活用してみるのが大事なんじゃないでしょうか。
――素敵なアドバイスありがとうございます! お二人の今後に期待ですね! 本日はどうもありがとうございました。
キャリアチェンジは誰しも勇気のいることですが、その挑戦の意思を言葉にすることで、得られるものもたくさんあります。自分のキャリアを作るのは、他でもない自分自身です。この文章を読んでくださっている皆さんには、ありたい姿を実現するために考え、行動を起こしていただきたいですし、当社にはその挑戦を受け入れる土壌がありますよ。
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