インヴァスト証券が提供する『トライオート』は、取引ルールを作成し、それに従って24時間、感情に左右されることなくFX(外国為替)とETFのトレードができる画期的なサービスだ。リスク管理などにも工夫をこらし、テクノロジーの力で、初心者から中・上級者まで多くのユーザーの健全な資産形成に貢献している。
2022年に登場したAIに任せるトレード『マイメイト』とともに、インヴァスト証券の主力商品である『トライオート』。自分好みのAIを選んでトレードを任せる『マイメイト』に対して、『トライオート』は、トレードの条件を決め、売買を自動的に繰り返すサービスだ。経験や投資スタイルによって2つのサービスを使い分けることで、多様な投資機会を提供する。
今回は、プロダクトオーナーを務める取締役副社長 伊藤誠規に、進化を続ける『トライオート』の開発経緯や特長、ポリシーなどを聞いた。
取締役副社長 伊藤 誠規
※2023年4月より代表取締役社長に就任
お客様が勝てる方法を考え抜いた結果、トライオートが生まれた
―『トライオート』開発コンセプト、経緯などを教えてください。―『トライオート』開発コンセプト、経緯などを教えてください。
伊藤:『トライオート』で取り扱っているFXとETFはレバレッジを活用した取引で、基本的にハイリスクハイリターンです。本来ならプロの投資家向けの取引ですが、多くの会社は、個人投資家のお客様が自身の考えに基づいて手動で取引するタイプのサービスを提供しています。そのなかで、当社はシステムで売買を自動的に繰り返す『トライオート』をスタートしました。というのも手動では感情に流され、失敗してしまうことも少なくないからです。
実際、『トライオート』が誕生した2014年は、FXが金融商品として広く認知されるようになった頃ですが、リスクが高いので、新しく始める人の多くが損をして退場するという状況でした。多くの方がなぜ損失をだしてしまうかというと感情や裁量が入るから、次いで資金管理の難しさでした。過度にリスクをとったり、損失が出てもズルズルと持ち続けてしまったり、かと思えば、利益が出ると嬉しくて手放してしまったり。人はなかなか冷静にトレードできません。ならば感情を排して、「いくらになったら売る」といったルールを決めて、あとは機械的に取引すればいい。実際、そのほうが利益を出しているケースが多いのです。このように、本当にお客様が勝てる方法は何かと考えたとき、トライオートの提供に行きついたという経緯です。
―トライオートは「いくらになったら買う」「いくらになったら売る」などの条件を設定すると、自動で繰り返す仕組みですね。
伊藤:そうです。お客様には、これから上に行きそうか、下に行きそうか、あまり変わらない、といったある程度の予想を立ててもらいます。それに基づいて設定し、あとは自動で繰り返す。無感情で取引する仕組みです。加えて、資金管理もテクノロジーでサポートします。少ない資金で大きな取引をするので、リスクをコントロールするために、運用の目安となる資金をご提案し、お客様に長くお使いいただけるようにしています。テクノロジーによるサポートで、一部の富裕層やプロの投資家だけではなく、一般の人もリスクの高い商品を資産形成に活かせるようにすることが、我々の基本的なコンセプトです。
―まさに「デリバティブとテクノロジーで、資産運用の未来をつくる。」というミッションの通りですね。
伊藤:それともう一つ、我々が大事にしているコンセプトが「ノーコードで使える」ことです。エンジニアにしかわからない難しいプログラミングは必要なく、直観的にボタンをタップすれば、誰でも自分がやりたい運用ができる、適切なリスク管理ができるプラットフォーム。そのようなものを提供したいという思いがあります。
新機能続々!相場の予想を線で描くだけでロジックができる「チャートメイク」
―改めて『トライオート』の特長、強みはどんな点でしょうか。
伊藤:大前提として、システムで自動的に売買を行うシステム自体が珍しいです。同業の他社は基本的に手動で取引するものが多いです。細かい機能の話をすると、トライオートには「ビルダー」という自分だけの取引ルールを作る機能があって、これは業界トップクラスの、豊富な条件を設定できます。ただ取引を繰り返すのではなく、自分の値動きの予想を細かくルールに反映できる点が強みだと思います。「いくらになったら買うか」「いくらになったら売るか」だけではなく、その後もさらに「いくら下がったらまた買うか」「いくら上がったらまた売るか」と、永続的なルールを設定して取引を繰り返すことができます。
資産形成を図るためには、継続的な取引で利益をコツコツと積み上げる、中長期的な運用がポイントになります。そのための運用方法やリスク管理がテクノロジーでサポートされていることが最大の強みです。
そして、先日リリースしたのが「チャートメイク」という機能です。これはまさにノーコードを追求した機能で、過去のチャートを基に、その先の一年間の値動きを予想してひとつの線で描くと、それに合わせた取引ルールの設定が提案されるというもの。「ビルダー」の設定が難しいという声を反映してできた機能です。お客様は、相場の予想をひとつの線で描くだけで、FXやETFのトレードを始められます。これは、日本どころか世界を見渡しても、ほかにないのではと思っています。もちろん、取引に慣れてきた方はビルダーですべてを設定できますが、入口として、この「チャートメイク」のような初心者の方にわかりやすい機能も入れている点が『トライオート』の特長です。
また、FXに詳しいアナリストやストラテジストなど、金融業界で有名な方が作った取引ルールも用意しており、作成者と今後の方向性や相場観が合致すれば、選ぶだけで取引を始めることもできます。最近、特に人気があるのが金融ブロガーさんです。ブロガーさんが作った取引ルールも選択できます。『トライオート』は自分の取引ルールを作れる事が魅力ですが、こういった予め用意されたルールを選ぶこともできて、初心者の方から中・上級者まで幅広くお使いいただける設計になっています。
―おもしろいですね。そのようなユニークなアイデアはどのように出てきて、形になっていくのでしょうか。
伊藤:普段の会話から、ですね。「自分で設定するって難しいよね」、「じゃあ有名な方に作ってもらおうよ」とか、「でも自分の相場観と違うこともあるよね。心に思った通りにササっと設定できないかな」などと話しているうちに。特にカスタマーサポートにいただくお客様の声を大切にしています。先日も、お客様10名ほどに「今、どんなことで困っていますか」とか、「どんな機能があったら便利ですか」といったことをヒアリングさせていただきました。そのような場も頻繁に設けています。
最近では、予約制で1時間、個別にお客様のお問い合わせに対応する「トライオート・コンシェルジュ」もスタートしました。改めてじっくり話を伺うと、お客様の声の中にはたくさんのヒントがあり、お客様がつまずくポイント、困りごとがよくわかります。このような取り組みが、必ず次のサービスに活かされるので、この循環を大切にしたいです。
何か具体的なプロセスや、アイデアソンのようなものがあるわけではありませんが、日頃からお客様の声に耳を傾け、関係する様々な部署の人たちでざっくばらんに話すなかで企画が上がり、開発に進んでいくスタイルです。今後もこのような形で、お客様がより良い資産形成を行っていただける仕組みを作っていきたいと思っています。
―『マイメイト』スタートのタイミングで、いくつかあったサービスを『トライオート』と『マイメイト』の2つに絞りました。経緯や狙いなども教えてください。
伊藤:以前は、『FX24』『シストレ24』などほかの商品もありましたが、これらをすべて統合しました。『トライオート』と『マイメイト』にリソースを集中し、従来の商品の機能をさらに進化させて取り込んだ形です。お客様にも、入口を2つに絞ることでわかりやすくしました。
取引を任せることができる『マイメイト』と取引のルールを作ることができる『トライオート』に分けましたが、始めやすいのは、確実に『マイメイト』だと思います。強化学習したAIに任せる、つまり誰かの英知を借りて取引するほうが、最初は入りやすいでしょう。で、慣れて知識がつき、だんだん自分で取引戦略をつくりたいと思うようになったときや、上昇、下降、レンジなど、相場観を持って取引したい場合は『トライオート』へ。『トライオート』は初めての方でも使えるサービスではありますが、中級者、上級者の方にも活用いただけるサービスだと思います。
リニューアルと開発内製化を経て高まった経験値。『マイメイト』成功に結び付く
―少し前に『トライオート』を全面的にリニューアルしたとお聞きしました。
伊藤:はい。2年ちょっと前に全面リニューアルをして、UI/UXの部分を大きく変えました。お客様とのコミュニケーションをとるのは「取引画面」なので、よりわかりやすく変えようと考えたのです。その際に、それまで外注していた開発を内製に切り替えました。UI/UXの細かい改善などお客様への価値提供のスピードを上げるためです。外注だとできない事やリリースまでに時間を要することも多いですからね。
正確には「内製」といっても、新たな外部パートナーの方に入ってもらい、開発を社内に取り込んだ形です。もちろん性能が上がったり、裏の仕組みも進化したりと、様々にアップデートもしているのですが、リニューアルのいちばんの目的は、画面をわかりやすくすることと、よりよいものをいち早くお客様に届ける体制を確立することでした。
ただし、これは本当に大変でした。それまで、社内には本格的な開発機能がなく、初めての内製化。数字の計算一つをとってもどのようにできているのか、すべてドキュメントに落とさなくてはいけません。エンジニアの金融知識も、当時はまだそれほど蓄積されていませんでした。でも、苦労しながらも内製化することで、会社として知識、経験、コミュニケーションのレベルが格段に上がり、お客様に良いものを提供できるようになりました。
ただ、リニューアル直後はUI/UXが大きく変わったこともあり、当初はお客様から使いづらいという声もありました。その後もお客様の意見も聞きながら改善を加えて、ようやくこの1年余りで落ち着いてきたと思います。
開発陣の経験値が上がるにつれて、改修スピードも上がっています。今も常に新しい機能を開発しているので、今後はますますお客様への提供スピードとクオリティーが上がっていくと思います。大変でしたが、お客様により良い価値をお届けするためにも、社内にとっても意味のあるリニューアルでした。で、このときのリニューアルを率いた汪とZackが、そのあと『マイメイト』に参画し、開発を成功させるというストーリーにつながっていきます。それだけ、社内の開発力が上がったということです。
―サービスを提供する上でのポリシーやお客様への思いなどをお聞かせください。
伊藤: FXをはじめとするデリバティブは、小さな資金で大きな取引ができる優れた金融商品です。その分、リスクがあります。例えるならF1マシンのようなもの。一般人が街中でF1マシンに乗ったら事故を起こしますよね。でも『マイメイト』や『トライオート』は、それを技術でサポートして事故を防ぐ。資金効率の高いデリバティブを、できる限りリスクを抑え、わかりやすさを追求する商品にしていきたいと思っています。そしてお客様に、短期ではなく中長期で運用していただき、資産形成に活用していただきたいです。
デリバティブ取引で大きな利益が出ることを全面的に打ち出している会社もあります。しかし本来、資産運用は少しずつ積み上げるもの。当社のサービスも、始めた当初は損失が出る方もいます。でも、長く繰り返すことで、いつかマイナス分をプラス分が超えていく。実際、半年、1年と長く取引することで、コツコツと利益を出せている方は本当に多いです。お客様にはそのようなスタイルで取り組んでほしいですし、そのためにもテクノロジーでリスクとリターンを適切にコントロールできるようにすることが、我々のすべきことだと考えています。
まだまだ進化を続ける『トライオート』。一人ひとりが考え、やり切る組織に
―最後に、今後の展望や決意などもお願いします。
伊藤:リニューアル直後は大変な時期もありましたが、今はようやく安定運用のフェーズに入ったところです。しかし、ここで歩みを止めることはありません。また大きいことをやろうと計画中です。もっと使いやすく、もっとわかりやすく、もっとお客様の収益に貢献でき、もっとリスク管理ができるものを、ずっと追求していきます。今の機能のクオリティーを上げ、それが終わったら次のステップへ。そのためのメンバーも加わり、今は土台作りが進んでいるところです。例えばアセットクラスの追加などもしないといけませんし、具体的な話も出てきています。
次のステップに行くためには、社内のみんなの技術、知識レベルも上げていかなくてはいけません。一人ひとりが考える力、やり切る力をどんどんつけてほしい。それが最終的にお客様のところに届きます。「自分の担当はここだけ」というのではなく、「お客様に何を届けるんだっけ」「そのためにはどうするのが正しいんだっけ」ということを、一人ひとりが考えるチームでありたいです。「デリバティブとテクノロジーで、資産運用の未来をつくる。」というミッションから逆算すると、やるべきことは自然と出てくるはずです。そう考えられる組織でありたいし、私自身もそのために全力でみんなをサポートしていくつもりです。
―ありがとうございます。これからの『トライオート』が楽しみです。