【IM×新生銀行】金融とIT、異分野の知見を組み合わせたサービス展開で、あらゆる分野で「データ活用が当たり前」の未来をつくる
インティメート・マージャーと新生銀行の共同出資により、2020年3月に設立された新会社「クレジットスコア株式会社(以下、クレジットスコア)」。
Webマーケティング業界の最前線に立つインティメート・マージャーと、多種多様な金融サービスを展開する新生銀行様との連携は、社会にどんな価値をもたらすのでしょうか。
コンサルティング本部本部長の村井、開発本部本部長の木村、そして新生銀行のグループデジタル戦略部GMの樋口雄飛様にもご協力を頂き、協業に至った経緯や組織体制、今後の展開について聞きました。
■新生銀行 樋口(ひぐち)様 プロフィール
所属:新生銀行 グループデジタル戦略部 GM
当部は2021年10月に部として発足した組織です。前身の内室としての活動は主にデータサイエンスの観点から当行グループ各社の与信やマーケティング、不正検知等における課題解決や、インティメート・マージャー(IM)様との新規ビジネス企画等を推進してきました。現在はそれらに加えて所謂DX推進の役割を担い、デジタル領域のCoEとしてグループ横断での課題整理や体制構築に取り組んでいます。部としては立ち上がったばかりですが、私自身がコンサルファーム出身でメンバーも若手のデータサイエンティストやグループ内のIT畑や営業畑から来た者、非金融の事業会社から転職で来た者など、多様なバックグラウンドを持つ人材と一緒に既存の概念にとらわれず日々チャレンジを続けています。
■プロフィール
正面左
氏名:木村(きむら)
所属:取締役/開発本部 本部長
正面右
氏名:村井(むらい)
所属:コンサルティング本部 本部長/経営企画室 室長
新市場を開拓したいというニーズが重なり、合弁会社の設立へ
―データ活用に取り組むインティメート・マージャーと、多様な金融商品を扱う新生銀行様。異分野の2社が連携し、クレジットスコアを立ち上げた経緯を教えてください。
村井:新生銀行様が新しい事業の開発を検討していた時期に、ステークホルダーを通じて、当社に声がかかったことがきっかけです。パートナー企業の選定にあたっては、「データ活用の知見が豊富にある会社」という周囲の評価も後押しになったのではないかと思います。
木村:当社としても、データ活用の市場をさらに広げたいという思いがありました。近年、既存のビジネスと最新のIT技術を結び付けるX-Tech(クロステック)の発展が期待されていますが、中でも金融業界のFinTech(フィンテック)は開拓の余地が大きく、魅力的な分野です。この機会にぜひチャレンジしたいと思い、協業を決めました。
時代の変化に応えながら、金融業界の常識を変えるサービスを開発
―新たな領域で事業を興したいという希望がマッチし、合弁会社の設立に至ったんですね。現在、クレジットスコアではどのようなサービスを提供しているのでしょうか?
村井:「データを使って金融業界の課題を解決する」ことを最終目標として、さまざまな取り組みを始めています。代表的な例が、クレジットやローンを申し込む顧客の信用度を測るスコアリングサービスです。これまでは金融機関が保持するデータしか参照できず、未知の顧客に対しては評価が難しい状況でした。しかし、新生銀行様の金融実績データと当社が持つオーディエンスデータをもとに機械学習を駆使すれば、より正確なスコアリングが行えます。結果として、優良な顧客がスムーズに審査を通過でき、金融機関は信頼性の高い相手への貸し付けが可能になる。サービスを通じて、両者にメリットを提供できるんです。
木村:そのほか、金融商品のプロモーションのため、個人を特定できないよう加工した「匿名加工データ」を使ってターゲティングを行うこともあります。近年は3rd Party Cookieの規制をはじめ、個人情報の取り扱いを厳格化する動きが急速に進んでいます。こうした社会状況を捉え、適切な対応を取っていくことも、事業を進めるうえでは欠かせません。
樋口様:金融業界、特にクレジットカードやローンにおけるマーケティングとリスクマネジメントは表裏一体の関係にあります。リスクが高い人ばかりを集客すると、審査を通過できない、または審査を通過しても金融機関側のポートフォリオの品質の悪化に繋がります。また、直近はWEB広告費用も高騰しているため、費用対効果の高い広告をどう運用するか、という点も課題です。両者のデータを掛け合わせて活用することで、当行視点ではリスクが適合する方への適切なマーケティングや、魅力的なセグメントの方にはより良いオファーが出せるような効率的な運用が可能になります。また何より重要なのはお客様視点で考えた際、広告や販促の情報は届くのに、いざ申し込んだら審査が通らない、というケースや、自分が全く興味関心の無いサービスの広告・DMを何度も受ける、といった不快な体験を減らすことができ、結果的に良質な顧客体験へと繋げることができます。
それぞれの強みを生かす連携のあり方を考える
―クレジットスコア株式会社において、新生銀行様、インティメート・マージャーはそれぞれどんな役割を担っているのでしょうか?
村井:クライアントとなる金融機関へのヒアリングやサービスの提案などは、クレジットスコア株式会社として新生銀行様、インティメート・マージャーの両者が行います。新生銀行様には金融業界ならではの悩みや商習慣の知識がありますし、当社はデータ活用のノウハウを蓄えています。お互いの強みを生かすことで、スムーズに議論を進められています。
樋口様:そうですね。当行は、金融業界のドメイン知識や、クライアント側に立った時のリアルな課題認識等を提供する役割を担っています。例えば共同での事業企画時に、早期の段階から業界特有の法令や慣習にかかる知識提供ができますので、方向感を定めるうえで貢献できているかと思います。また金融機関の審査の観点をもとに、クライアントのアドテク関連のデータを評価する機能を持ちます。これは例えばクライアントの持つインプレッション(広告が表示される数)やコンバージョン(広告による成果)等の実績数値を、金融機関における審査の視点でみることで、個社だけではできないアイディアの発想に繋げています。
木村:商品を開発する段階では、新生銀行様、インティメート・マージャー、そしてクレジットスコアの3社で役割を分担することが多いですね。まずはインティメート・マージャーが集約したオーディエンスデータを新生銀行様に渡し、新生銀行様のほうで、保有する金融実績データとともに匿名加工を行います。処理されたデータを受け取ったクレジットスコアは、AIを用いてスコアリングモデルなどのシステムを構築。その後、商品を公開するまでのサポートはインティメート・マージャーが担当します。合弁会社の中だけでなく、企業同士の連携を深めることで、充実したサービスを提供できています。
―インティメート・マージャーとの協働で気付いた点や面白さについてエピソードがあれば教えてください。
樋口様:スタートアップやアドテク業界の常識と、銀行・金融業界の常識が異なる点ですね。例えば新しい施策を共同で行う場合でも、インティメート・マージャー様側は簗島社長のGoさえあれば比較的スムーズに動き出して、すぐに手を動かして作ってしまおうとなることが多いです。一方で、金融機関で施策を行う際は、業種柄ステークホルダーが多いことから機動性ではかなわない反面、幅広い金融ソリューション・顧客チャネル・人材の力を活用することで貢献できている部分があります。大切なのは相互の価値観やポジションの違いを認めつつ、どうすればベストな選択肢が採れるか粘り強く議論することだと思います。またむしろそうした差異があることこそ、JVの楽しさだったり価値の本質だと考えています。
金融業界にとどまらず、幅広い領域にデータ活用が浸透する未来へ
―おのおのの知見を最大限に生かすため、連携の方法を工夫しているんですね。今後、クレジットスコアの業務を通じて、社会にどのような価値を提供できると考えていますか?
樋口様:まず率直に言って金融業界全体はまだまだアド(広告)領域が遅れています(笑)。それには勿論当行も含まれますが、だからこそ金融に特化した、より効果的なアドテク活用のソリューション提供が必要です。企業側はもっと安価に、ユーザ側にとってももっと快適な広告の提供ができるようになる余地がたくさんあります。例えば、法人/個人向けの金融商品へのインセンティブ付与や、顧客からのデータ提供に対して明確なベネフィットをお返しする仕組み、そして個々人にパーソナライズされた最適な金融商品のオファーや快適なレコメンド等。そういった新しい価値を提供できるようになっていけると嬉しいですし、それ以外にもまだまだ貢献できることはあると思っています。今後もインティメート・マージャー様と実りある協業体制を継続していけると幸いです。
木村:金融業界で扱うデータはセンシティブなものが多く、データ活用を進める際にはさまざまな規則への対応が求められます。実際に、クレジットスコアではクライアントの金融機関と話し合いを重ね、規則の本質を明らかにしたうえでシステムをつくり上げていきました。こうした取り組みを続けることによって、適切な費用対効果を発揮し、個人情報保護にも配慮したデータ活用の仕組みが構築できるはずです。サービスが普及すれば、「データを使って金融業界の課題を解決する」という目標が達成される日も遠くないのではないでしょうか。
村井:新生銀行様とのやりとりを通じて、金融面のニーズやソリューションへの理解が深まったことも貴重な財産です。インティメート・マージャーの業務では出会えなかった発想を得て、大きくビジネスチャンスが広がりました。直近では、オーディエンスデータをもとに資金が必要な企業を発掘し、タイムリーに融資を行うシステムの開発に取り組み始めています。あらゆる分野において「データを使って解決するのが当たり前」な世界をつくるために、これからも協業しながら挑戦を続けていきます。