イノベーションプラス代表の小坂さんへインタビューを行いました。
4回に分けてどんな会社なのか、語って頂きます。
ゼロから、価値を創造する仕事へ
Q イノベーションプラスを作った背景を教えてください。
A イノベーションプラスは初め、2007年にコンサルティング会社として起業しました。
ソフトバンクモバイルの前身の、英国ボーダフォン・ジャパンにコンサルタントとして従事している時に、新事業の創造プランとして「MVNO(モバイルヴァーチャルネットワークオペレーター:仮想移動体通信事業者)」というコンセプトを作ったのです。
MVNOというのは、格安携帯サービスとして話題になってご存知の方も多いかもしれませんね。回線網や設備はNTTドコモやソフトバンク等から借り、携帯電話端末は自社で用意して、通信事業を提供することなんです。
このコンセプトをディズニージャパンさんに提案したところ、先方から「是非やりたい」とのお返事をいただき、開発を進めることになりました。
その後、約2年の準備期間を費やし、“ディズニーモバイル”がリリースされることになりました。それを経て、「今後日本で、MVNOがより消費者に身近に浸透したら、すごいことになるぞ!」ということで、MVNOを支援するコンサルティング会社としてイノベーションプラスを立ち上げたのです。
“ユーザーエクスペリエンスとは?”に気づかせてくれた、iPadとの出合い
Q(上の流れから)失敗もたくさんしてきたと伺いました。
Aはい。たくさんの失敗から今があると感じています。
バーチャルなモバイルキャリアと言っても、事業を行うにあたり、初期コストが数10億から100億円くらいかかるわけです。簡単には始められないですよね。
実際、数社をコンサルティングさせていただきましたが、特段“凄い”ことになんかならず・・・。今の姿になるまでに、涙も汗もたくさん流してきましたよ。
そういう時期を経た2010年に、Apple社から「iPad」という「魔法の端末みたいなモノ」が発売されて、大企業でこぞって大量購入し始めたのです。でもそこからが問題でした。
それぞれの企業が、自社の課題を解決するために導入したiPad。
「さて、魔法の端末はあるけれど、一体これをどう使えばいいんだろうか?」と。
その結果、新しいことに喜んで参加していく弊社に多くの相談をいただくことになったのです。当時はタブレット専業会社のようでしたよ。
あの時から、魔法の端末をただのパソコンの代わりとして使うのではなく、UI(ユーザーインターフェース:ユーザーとコンピュータとが情報をやり取りをする際に接する、機器やソフトウェアの操作画面や操作方法)/UX(ユーザーエクスペリエンス:ユーザーが製品・サービスを通じて得られる体験)にこだわり、今までなかった使い勝手や、使い心地を提案するんだ、とひたすら考え抜く日々が続きました。iPad の後、iPhone、Androidのスマートフォンへと我々の活動のフィールドが広がっていくのですが、毎度毎度、試行錯誤していますよ。
未来の価値を創造することは、面白い
Q これまでの仕事の中での、心震えた瞬間、について教えてください。
A 2007年に“イノベーション”と日本で言っている人なんて、ほとんどいませんでした。
新たな価値を創造して社会に変化をもたらす“イノベーション”を“プラス”するという活動のなかで、NVIDIAさんという半導体(GPU)メーカーさんから、「今後、ノートパソコンに変わって「タブレット」が時代をリードする」という話を伺い、それに飛びつきました。スケルトンのケースに基盤があるだけの製品モックを購入し、AndroidOSにSONYさんのFeLiCaをつなげて、ビジネスで利用できるシーンを想像して模索していました。業務用システム、KIOSK端末、POSレジ、決済端末などを独自開発し、対象顧客にプレゼンテーションして、いいところまでいくのに、採用されない。時代に早すぎたアイデアは、受け入れられないこともある。今では、iPadでPOSレジなんて、当たり前になっているのだけどね。
そんな中で、ぐるなびさんから、「今までの“ボタン操作のPOSレジ”ではなく、スマートなUI/UXの独自タブレットシステムを作りたい」というお話をいただき、1年半くらいかけて、ぐるなび会員管理システム、POSレジ、日本初のモバイル端末での電子マネー決済までの仕組みを作り上げました。また、アルバイトでもマニュアルを見なくてもすぐに使える操作性であると高い評価をいただき、iPodタッチを使ったOES(オーダーエントリーシステム:飲食店向け注文入力システム)まで開発させていただきました。
タブレットについては、基盤だけの状態からメーカーさんと製品開発を行って、企業で採用されるようになるまで、本当に長い道のりでした。ぐるなびさんのシステムが完成し、“お客様へのリアルタイムホスピタリティ”を提供する端末として、5万店舗に導入していくという目標をお伺いした時は、感激してうれし涙がこぼれました。
”イノベーション”って、いいな!と改めて思いましたよ。