コロナショックでオフラインイベントが軒並み開催中止を余儀なくされ、オンラインイベントへと大きな人の流れができています。イードのイベント事業もまたオンラインイベントへと移行し、直近のイベントでは1000人規模の集客を実現するなど、オンラインイベント市場で着実に成果を上げています。大規模な集客を達成した背景や、オンラインならではのメリット、オフラインとの垣根を超えるために必要な要素など、オンラインイベントの現状をイベント事業担当者に聞きました。
鈇田 幸雄 2017年にイードへ中途入社。前職で17年間セミナー事業に携わった経験を活かし、新設のイベント事業部で有料セミナー事業を開始。2019年7月からは5G/MaaSビジネス開発部に統合され、同部署で次長を担う。
ープロフィールにもありますが、鈇田さんは前職でもイベント事業を手掛けておられたんですよね?
そうですね。そこで有料または協賛イベント事業を17年やって、イードに入社してからもイベント事業を続けているので、イベント事業に携わって20年になります。
ー20年…!ほぼ一世代ですね。イードではどのようなイベントを開催しているのですか?
そもそも5G/MaaSビジネス開発部では、大きく分けてコンサル事業とイベント事業、加えてe燃費というメディアの運営を行っていて、そのうちのイベント事業を私が担当しているという形です。イベントは自動車メディア「レスポンス」の読者に向けて行っており、テーマごとに有識者や大手企業の事業責任者やベンチャー企業の経営者などのキーマンを招聘して、業界の一歩先を行く最先端の情報を提供しております。ご参加者は、大手企業の新規事業、企画、営業、開発部門の管理職クラスの方々が中心となります。
ー自動車業界に関するセミナーなんですね。
はい。基本的にはCASE(※1)やMaaS(※2)という自動車業界の今とこれからをテーマにして、3-4万円/名という価格帯の有料セミナー、あるいは参加費無料の協賛セミナーを月間2~3回程度企画開催しています。100年に1度と言われる自動車業界の大変革期に対応するべく、モビリティの変革にかかわる最先端の情報をセミナーで提供し、さらに深堀りした情報はレポートにまとめたりもしています。
(※1)CASEは、Connected、Autonomous、Shared & Services、Electricの頭文字をとった造語。2016年のパリモーターショーにおいて、ダイムラーAG・CEOでメルセデス・ベンツの会長を務めるディエター・チェッチェ氏が発表した中長期戦略の中で用いたのが始まり(引用元:https://jidounten-lab.com/y-case-connected-autonomous-shared-electric)
(※2)Mobility as a Service:ICT を活用して交通をクラウド化し、公共交通か否か、またその運営主体にかかわらず、マイカー以外のすべての交通手段によるモビリティ(移動)を 1 つのサービスとしてとらえ、シームレスにつなぐ新たな「移動」の概念(引用元:https://www.mlit.go.jp/pri/kikanshi/pdf/2018/69_1.pdf)
ーそもそもで恐縮なのですが、3-4万円/名という高単価なイベントに参加する人たちって何を求めているのでしょうか?
端的にいうと“ビジネスに活かせるかどうか”だと思います。ご参加者の多くは新規事業企画や商品企画など、業界のこれからを見通して戦略を立てていかなければならない立場の人たちなので、そのためのネタ探しやネットワークづくりを目的にセミナーに参加しています。なので、セミナーで提供する情報は半歩先を行くものでないと価値はありません。時流に沿ったテーマを設定し、適切なスピーチができる講師をアサインして初めてセミナーを開催する意義が生まれます。
ー常に半歩先の情報をキャッチして、提供する必要があるのですね。コロナショックでオフラインイベントの開催は難しくなったと思うのですが、現状はオンラインでの開催ですか?
はい。4月以降のイベントはすべてオンラインで行っており、来期(7月~)のイベントも、スポンサーの意向などでぜひオフラインで、とならない限りはすべてのイベントをオンラインで行うことを予定しております。といっても以前から遠方の方向けにセミナーの配信などは行っておりましたので、オンラインへ移行するからといって大きな混乱はありませんでした。むしろ会場の準備やキャパシティの概念が取り払われたことのメリットを感じています。実際5月29日に開催した「スマートシティ2020」という協賛セミナー(参加費無料)には、1036件という申し込みがありました。オフラインイベントですと、無料セミナーであっても300名程度が多い中で、これは会場が必要ないオンラインという形態だからこそ実現できた数だと思いますし、オンラインイベントに対する需要の大きさを実感しました。
ー1000件!それはオフラインだと会場準備だけでも相当な労力ですね。オンラインイベントのポテンシャルへ期待が膨らみますが、課題などはあるのでしょうか?
オンラインイベントの場を、いかにネットワークづくりとして活用するかは今後の課題だと思います。20年前はインターネットでの情報収集もスムーズに出来ないため、セミナー会場で得られる情報の価値は高かったと思います。今は検索すれば簡単に必要な情報が手に入る時代です。それでもイベントへ足を運んでいただける価値は、検索では得られない情報の収集の他に、ネットワークづくりができるという点にあります。SanSanがオンライン名刺交換サービスをリリースするなどの動きは出てきているので、まずは名刺交換が出来るような仕組みが出来れば、今後オンラインイベントの価値はさらに高まっていくのではと考えています。
ー今後はどのようなイベントを開催予定ですか?
直近では、6月26日に「With/Afterコロナ時代のクルマ活用~「クルマ×エンタメ」の可能性~」というオンラインセミナーを開催予定です。カーシェアリングなどが普及し、車は所有する時代から利用する時代へシフトしたと言われて久しいですが、実はコロナショックをきっかけに、移動とプライベート空間が共存する車を所有することの価値を見直す動きが出てきていることが分かりました。例えばドライブインシアターなどが、ソーシャルディスタンスを守りながらオフラインで人が集まれるエンターテインメントとして注目され始めていたり。コロナ時代が車に新たな価値を付与するのでは…という切り口でセミナーを行います。
ークルマ×エンタメ、面白そうです…!最後に、イベントを開催する上でのこだわりなどがあれば教えてください。
セミナー参加費の無料/有料を問わず、登壇者や協賛社、ご参加者などイベントに関わるすべての人に価値を感じてもらえるようなイベントを開催することを常に考えています。そのためにも業界の動向にアンテナを張り、参加する意義のあるセミナーを提供し続けたいと思います。
ーありがとうございました!