ホームレス状態を生み出さないニホンに 認定NPO法人Homedoor
ホームレス状態を生み出さない日本にすべく、HUBchari事業を中心に活動する認定NPO法人です
http://www.homedoor.org/homusetsu6/
前回の記事をご覧いただいた方、ありがとうございました。「NPOで働く」がどういうことか、少し理解を深めていただけたのなら、とても嬉しいです。
さて、今回は私が働くHomedoorで出会った人について、少し書きたいと思います。Homedoorはホームレス支援をしている団体です。ホームレスというと高齢の男性や身なりが見すぼらしい人を想像する方が多いのではないかなと思います。しかし、実際は20代から70代まで幅広く相談に来られます。(昨年の相談者平均年齢は44.6歳でした。)キャリーケースを引っ張って来所されるその姿は旅行者にしか見えないくらいこざっぱりされている方も多いです。
そんな素朴な疑問に、実際に相談に来られたNさんを例に、今日はお答えできればなと思っています。
2017年6月末、相談来所されたNさん(40代男性)。
大学を卒業後、大手テーマパークや飲食店の正社員として働いていましたが、友人の連帯保証人になったことをきっかけに借金をしてしまいます。支払いが困難になり、仕事を辞めて九州の実家に戻ります。
借金は親がなんとか返済してくれましたが、そのことがきっかけとなり実家には居づらくなります。そこで、大阪に行き、友人宅に泊めてもらいながら派遣の仕事を開始しました。
しかし、ずっと居候するわけにもいかず、友人宅を出てネットカフェで寝泊まりし始めました。その後は日払いの仕事を主にしていましたが、食費や宿泊代がかさみ生活は苦しくなります。
ネットカフェは場所や時間にもよりますが、およそ一泊2,000円。月にすると60,000円となります。「この金額を払うなら1Rのもっと安い家を借りればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、身分証や連絡の取れる電話番号、保証人がいないと家を借りるのは難しいのが現実です。初期費用も安くとも10万円ほどかかるため、家を借りるには高いハードルがあるのです。
ほどなくして、携帯電話も止まってしまいました。仕事は携帯電話が必須だったため働くことができなくなり、わずかな貯金を泣く泣く切り崩す生活が始まります。宿泊代がなくなったら、24時間営業の量販店をウロウロしたりバスの待合室で座ったりして、夜が明けるのを待つ。そんな生活を繰り返していました。ある時、わずかに入った収入でネットカフェに行き、パソコンで「大阪 困った」と検索したところ、Homedoorが出てきて、すぐ来所されました。
電話代を払っていないスマートフォンでもフリーWi-Fiがあるところだとインターネット検索ができるようになったので、若い世代の人がHomedoorを知る機会がここ数年でぐっと増えました。
「生活保護などの制度を使うよりも、自分で働いて生活を立て直したい」という意欲が強かったNさんには、Homedoorの自転車対策の仕事をしてもらうことに。働きながら少しずつお金を貯め、まずは携帯電話を購入することができました。
電話を持てたことにより、就職活動も再開。大手チェーン店のアルバイトとして働き始めます。アパートを借りるための貯金もでき、ついに自分名義の部屋を借りることができました。貯金は10万円ほどの初期費用に充てたため、洗濯機や炊飯器などの最低限必要な家財は、ご寄付いただいたものをモノギフトを通じてお渡しさせていただきました。
布団を運びに部屋を訪問した際、「Homedoorのおかげで、ここまで来れました」と笑顔で言ってくれたNさんの姿が心に残ります。アルバイトを続けながら、就職活動を続け、現在では大手企業の契約社員になったNさん。どれだけ本人が努力をしても、周囲のサポートがなければホームレス生活に完全に終止符を打つことは難しかったのではないでしょうか。
みんなが同じ原因でホームレスになっていれば、用意する制度や支援もひとつで済みます。しかし、ホームレスになってしまうのには、10人いれば10の理由があります。だれひとりとして同じ理由でホームレスになった人はいません。だからこそ、ホームレス支援は非常に難しいのです。さまざまな社会課題が複雑に絡まりあって、奇怪な形で成り立っています。
私たちは、そんな多様なバックグラウンドを持つ人たちに、ひとつでも多くの選択肢を用意したいと思い、2010年から活動をしています。その人の人生においてとても大きな分岐となる場所に一緒に立たせてもらえる、尊い仕事だと思っています。そんな私たちが「どんな選択肢を用意しているか」はまた後日書きたいと思います。
直接話を聞いてみたいなと思われた方は、12/1のホムセツ@東京・五反田にぜひお越しください。