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なにをやっているのか

太平洋を望む「千葉勝浦店」
国道1号線に面した「浜名湖店」
汎用ロードサイドホテルチェーン「ファミリーロッジ旅籠屋」の経営と運営。 アメリカを中心に世界中に無数に存在するMOTEL(ラブホテルではありません)スタイルの宿泊施設を日本で初めて誕生させ、かつ唯一全国に展開しています。 現在、全国各地60ヶ所以上で営業、すべて直営店です。その特徴と内容は、以下のとおり。 ●汎用性・・・観光・ビジネス、ファミリー・ひとり旅を問わず、誰でも自由に宿泊可能な客室構成 ●宿泊特化・・食堂・温泉・娯楽施設・売店などの施設や付加的サービスを行わないサービス形態 ●郊外立地・・市街地やリゾート地ではなく、車で便利な郊外の幹線道路沿いの立地 ●経済性・・・広い客室や必要十分な快適機能を確保しつつ、親子4人で1室1万円~という料金 経済的な料金だけでなく、お仕着せのサービスを排したシンプルで自由なスタイルが好評をいただき、約6割を占めるリピーターに支えられ、すでに延320万人を超える方々にご利用いただいています。現在、高速道路のSA・PA内の3店舗を含め、全国各地に60店舗以上(いずれも直営)を営業しており、創業の目的である車で旅する人が誰でも気軽に利用できる宿泊施設として、日本に欠落していた車社会のインフラを支える存在になりつつあるところです。 店舗の場所を含め、詳しくはウェブサイトをご覧ください。 http://www.hatagoya.co.jp/ ・・・アメリカを車で旅すると、行く先々の街や村で、MOTELという看板を掲げたミニホテルを数多く目にします。モーテルというと、日本ではカップル専用のラブホテルを連想してしまいますが、本来は、車で旅する人が誰でも気楽に利用できる、素泊まりのミニホテルのこと。ほとんど何のサービスもないかわりに、とても自由で、驚くほど安く泊まれる庶民の宿なのです。 高級ホテルと違い、ゴージャスでリッチな気分を満喫するというわけにはいきませんが、子供連れの家族旅行や友人とのドライブ、そしてビジネスでの宿泊には、必要十分な施設と言えます。実際、アメリカでは、店舗数が1000を超えるチェーンが10以上もあるなど、その数はガソリンスタンドやコンビニエンスストアなどよりはるかに多く、車社会になくてはならないインフラ施設として人々の生活を支えています。 「ファミリーロッジ旅籠屋」の構想は、こうした自由で経済的な宿泊施設を日本にも実現させることを目的にスタートしました。2度のアメリカ視察を経て、1995年8月、待望の1号店が栃木県・鬼怒川温泉近くに誕生しました。日本では先例のない業態の宿泊施設であり、バブル崩壊後の景気後退時期の開業ではありましたが、予想を越える多くのご利用と「こんな宿泊施設を待ち望んでいた」との声を数多くいただき、3年後の1998年からは当初の目的どおりチェーン展開に向けた活動を開始しました。その後、2006年3月には東京湾岸エリアに「東京新木場店」をオープン、2008年には念願であった高速道路SA・PA内への出店も実現(現在3店舗)し、着実に全国へ展開しつつあるところです。 無名の「旅籠屋」がこのように短期間で多くの支持を受けた背景には、旅行スタイルの変化があります。新しいニーズにマッチした施設が求められています。しかし、親子4人で1室1万円からという経済的な料金が、成功の十分条件というわけではありません。お仕着せの中途半端なサービスを行わず快適に泊まれるという機能に特化すること、マイカー旅行者が誰でも気軽に宿泊できる立地と部屋の広さなど、事業のコンセプトやポリシーを明確にし、維持していることが、大切なことだと考えています。

なぜやるのか

フロントのあるラウンジ、レストランや売店はありません。
客室は25㎡のスペースにクイーンサイズベッドが2台。
会社設立の目的であり、存在意義として掲げているのは「シンプルで自由な、旅と暮らしをサポートする」ということです。 その根本には、以下のようなみっつのこだわりと使命感があります。 ひとつ。それは、宿泊業は「個人の自由」の象徴であり、その最大の使命はこれを支え守ることではないか、ということです。 考えてみれば、一般庶民が好きな時に好きな所へ自由に出かけられるようになったのはここ数十年のことです。今でも世界中の多くの人が政治的、経済的理由からその自由を享受できていません。我々もいつその自由を失わないとも限りません。 かつてオイルショックの時、不要不急の個人のマイカー旅行は自粛しましょうというキャンペーンが張られたことがあります。最近はエコの問題です。背景は違いますが、重要な国際会議が開かれる前になると警察から宿帳の閲覧を求められることがあります。それぞれの大切さはもちろん理解できるのですが、少なからず違和感を覚えます。「自由」は人類が何千年もかけてようやく獲得した貴重な財産です。宿泊業に携わる者は、まずこのことの重みを肝に銘じておくべきだと思うのです。 ふたつ。それは「旅」は予定調和的に自己完結しないリアルな時間と空間であり、これを支えるのが宿泊業の本質ではないかということです。 CDや書籍といった情報商品はもちろん、出来上がった物を販売する小売業はネット社会の中で存在の必然性を下げていますが、「旅」は実際に移動し空気に触れなければ成り立ちません。バーチャルな情報で置き換えたり、ITで省くことができないものです。ですから、宿泊業は21世紀においても本質的にその価値を失わない稀有なビジネスに違いありません。とすれば、宿泊施設が大切にすべきアピールすべきポイントは何か。お仕着せのパッケージ化されたサービスの提供や、効率性だけを求めてネット上で完成品のようにカタログ販売されることの是非を問い直してみるべきだと思います。 「旅」はそれぞれのライフスタイルや価値観の反映です。多様性を受け入れ、これを豊かにする存在でありたいと思います。 みっつ。それは宿泊業が間違いなく永続的に地域に密着し貢献する事業だということです。 宿泊業が提供しているのは周囲の街や村との関わりです。人が行き交い、人が出会います。同時に、宿泊施設は地域の資産活用や雇用創出にも寄与します。中央から地方への一方的な投資ではなく、地域に根を下ろし地域経済を支える存在でありたいものです。 ・・・日本じゃ無理じゃないの。利用者は喜ぶかもしれないけど、ビジネスとしては成り立たないと思うよ。結局はラブホテルのようになってしまうかも。だって、うまく行くなら、大手企業がとっくに始めてるはずだよ。 そんな否定的な意見が多く、不安いっぱいのスタートでしたが、「こんな宿が出来るのを待っていたよ」というお客様の声に支えられ、店舗もようやく60を超え、全国各地に広がってきました。 こういうスタイルの宿泊施設を想定していない各種の法令、役所の無理解、さまざまな予断と偏見、何度も何度もそんな壁にぶつかりながらの悪戦苦闘でしたが、思い描いたとおり多様な方々にご利用いただき、少しずつ世の中に受け入れられてきたようです。

どうやっているのか

「蔵前駅」近くにある本社、スタッフは十数名です。
「東京新木場店」の支配人。研修担当も兼務しています。
ご利用者のニーズとこれに対応するサービスは以下のようなものです。 ●経済的かつ気兼ねなく旅行したいという小さな子供連れのご家族 → 親子4人で1室1万円からという料金や広めの客室など ●アクセスしやすく広めの部屋でくつろぎたいというビジネスマン → 道路沿いの立地、無料駐車場、25㎡のスペース ●地域の食事や温泉などを自由に楽しみたいという中高年の夫婦 → 宿泊特化に徹して食事や温泉や物販サービスを行わない ●時間に縛られず、マイペースで気ままな旅を自由に楽しみたい → 食事時間の制約がなく、23時までのチェックイン、11時までのアウト ●プライバシーが守られ、気兼ねなく自由に旅したい → サービスしないのがサービスと割り切って宿泊者へ干渉せず、外出自由 ●必要な基本的機能は確保してほしい → 洗浄便座、全室無料ネット接続、客室数分の駐車場、朝軽食サービス、コインランドリーなど ●障がいのある方や老人・幼児、ペット同宿など → バリアフリールームや誰でもトイレの設置 しかし、会社経営において本質的に重要なことは以下のようなことです。 ●ローリスク事業モデルの確立と堅持 ・付加価値による売上増を求めず、ローリターン・ローコストによるローリスク経営を実現。  住み込み支配人2名で運営できる規模、集客力の低い地域でも収益を上げられる事業モデルの確立 ・運営ポリシーを徹底するため、フランチャイズではなく全店直営として展開。  当社正社員による運営。独自開発の運営ソフトやマニュアルによる運営業務の標準化と効率化 ・ブランドイメージの統一化と醸成を図るため、広報業務の社長直轄部門への一元化と社内での実施 ●自由な旅をサポートするため、採算性重視ではなく多様な利用者を受け入れるハードとソフトの整備 ・車椅子対応室、誰でもトイレ、ペット同宿可能室、禁煙室、EV充電コンセントなどの設置 ・非常時のシェルター機能を維持するための、非常用LPG自動発電機の設置 ・アメリカMOTEL視察研修やユニバーサルマナー研修の実施 ●周囲に調和し、環境負荷の低い施設形態と運営 ・オープンでヒューマンスケールな施設。1,000㎡前後の敷地に平屋もしくは2階建ての建物 ・使い捨て用品の最少化。アメニティグッズの限定、紙コップの不使用など ●明朗・公正でシンプルな料金システム ・旅行代理店に依存しない直接集客と、ルート別価格の設定や値引きを行わない料金体系 ●地域貢献を重視した出店システム ・利用困難な地方の小規模遊休地の「建て貸し」方式による活用 ・家賃長期保証、メンテ費用の当社負担などによる安定した長期収益事業の実現 ・インフラ施設としての役割を重視し、収益性の高い大都市中心でなく地方の郊外を重視した出店 ●ITやICTの活用による業務の効率化 ・省力化と情報の一元管理・独自開発の店舗運営ソフト(フロント・会計システム) ・運営ソフトやグループウェアを社内ネット上で運用、情報の一元管理とコミュニケーション強化 ・ウェブサイトを活用した直接集客。 ●(支配人の場合)人物優先の採用と人材育成システム・中高年を中心に、学歴・職歴ではなく、人物本位で採用 ・(支配人の場合)平均年齢50歳以上、定年65歳、70歳までの嘱託採用 ・代行支配人(支配人休暇時の代行要員)制度によるOJT研修 ・アメリカMOTEL視察研修やユニバーサルマナー研修の実施 ●公正で透明な経営・監査法人による会計監査、四半期報告、適時開示の継続 ・・・「シンプルで自由な、旅と暮らしをサポートする」というのは、お客様に対することだけではありません。 アメリカのMOTELを泊まり歩きながら感じたのは、表面的なビジネスのノウハウだけではなく、多様性を受け入れ、ひとりひとりが自立した価値観で生きていく自由な雰囲気です。 また、ベンチャー企業は、小さな大企業ではなく、古い制度や価値観にとらわれず合理的で新しい方法論を貫くべきだと考えています。 学歴や職歴を問わず人物本位で社員を採用してきたこと、社員を信頼して遠隔地の店舗を任せていること、非効率ではあってもコネに頼らずしがらみにとらわれずに困難を乗り越えてきたこと、情報開示を徹底し公正で透明な経営を心がけてきたこと、法令の問題点を愚直に問題提起し続けてきたことなどが、当社の存在意義です。 これらは様々な規制に直面する場合が多く、目先の利益に反する場合が少なくありません。 まだまだ発展途上の会社ですが、本社のスタッフは、こうした志や姿勢を共有して広く世の中にメッセージを発信していきたいと考えています。