インフルエンサー・マーケティングは、新たなマーケティング手法として捉えられていますが、実は昔からある手法ということに気づいてましたか?あるモノを「気に入っている」、「使ってみたらとても便利だった」と紹介をするのがインフルエンサー・マーケティングの主流ですが、この手法は、「広告」という分野が確立する前から存在していました。というのも、我々は、普段から何かを購入しようとするときに友人や家族の意見を求め、良い評判を聞けば、商品の購入に向けて前向きな影響がでます。
にもかかわらず、なぜインフルエンサー・マーケティングは未だに「新たな手法」として言われているのでしょうか?
インフルエンサーを作り出すかつての試み
先に述べたとおり、「インフルエンサー」の存在はマーケティング分野の発展前からありました。そのため、マーケティング業界は、インフルエンサーの立ち位置を明らかにしたり、適切に推進、またはコミュニケーションをとることができなかったのでしょう。現在のインフルエンサー・マーケティングのモデルを最初に活用したのは、ブランドアンバサダーの起用による商品の宣伝でした。ブランドアンバサダーは、企業のブランドやアイデンティティ、価値観を体現し、代表する企業のポジティブなイメージにつなげることが重要な責務でした。
例えば、俳優のレオナルド・ディカプリオは以前、高級時計ブランドのタグ・ホイヤーのブランドアンバサダーに起用され、ジェームズ・ボンドとして出演した映画に同社の商品が多く利用されました。時計や、車、携帯電話など、比較的高価な商品に関してはこの手法が効果を発揮できたようです。しかし、化粧品、食品、消耗品などの安価な商品には、同じ手法では良い宣伝効果を得ることはできませんでした。
ブランドアンバサダーは起用される有名人に限られるものではありません。あるブランドの商品に満足し、支持する人々は自ら商品やブランドの宣伝を行います。報酬の無い宣伝の効果は想像がしにくいかもしれませんが、Apple社のような巨大ブランドにはそういった宣伝の効果が見られます。Appleの独特なセールスポイントや、質の高い顧客体験はブランドへの信仰を生み出し、忠実な顧客層を確保しています。しかし、そうした顧客の行動は予想ができず、制御することも不可能です。もしもある程度顔の広い顧客の信頼を失ってしまったら、ブランドに傷がつくことは避けられません。
インターネットによる進化
Googleが検索結果の中に広告を表示するなど、インターネットの登場により広告の形も大きく変わりました。しかし同時に、SNS上での明らかな宣伝行動や、しつこいポップアップ広告に対して消費者が不信感を抱き始めていたことも確かです。2010年の前半までには、それまでのメディア広告の手法は良い効果よりも悪影響を生み出していることが明らかになり、またウェブサイト上広告のパフォーマンスの低下なども相まって、マーケティング担当者たちはウェブサイト上での広告の効果を疑い始めました。
新たな時代のインフルエンサー
ニールセン社の調査結果によると、およそ92%もの消費者が、マーケティング戦略よりも友人や家族の意見を商品選択の際に参考にすると答え、複数の相談やレビューの後、ようやく十分に情報を得たと感じ購入決定を下すという事実は変わらないままでした。
そしてウェブサイト広告の低迷にもかかわらず、消費者は変わらず複数の商品をうまく比較する新たな術を求めていました。すると、商品を利用した感想を正直にブログへ投稿する流れが始まり、そうしたブロガーの商品レビューは正直に述べられているため、インターネット利用者の多くがそれを信用し始めました。
するとすぐに、マーケティング企業等がSNS上で台頭し始めたインフルエンサーに声をかけ始めました。インフルエンサーには企業が宣伝をしたい商品が提供され、中には秘密裏にブランドアンバサダーとしての契約を結ぶ人もいました。しかし、特定の企業があまりにも過大な評価を受けていることを消費者が察知し始めたため、この手法も長くは続きませんでした。
後に、多くのフォロワーを持つSNSインフルエンサー達は高品質かつ継続的な投稿には莫大なリソースが要求されるため、スポンサーコンテンツに料金を設定するようになりました。そうしたインフルエンサーはプロにも負けない品質のコンテンツを制作して、企業のブランド力を促進、同時に特定のターゲットへのリーチを実現することができていました。
また、インフルエンサー達は消費者に従来のマーケティングよりも関連性のある、生の情報の提供が可能でした。そのためモバイル広告主はSNSページ上でインフルエンサーが提供している広告手法に徐々にシフトしていき、現在のインフルエンサー・マーケティングの発展へとつながったといわれています。