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世界のデータサイエンス事情から捉える物流改革:アメリカ編

スタートアップハブで有名な3都市を視察して

 GROUND Incで次世代物流プラットフォーム構築を担当している小林です。6月下旬に米国視察に行ってきました。今回は、ボストン、シリコンバレー、シアトルの3都市を訪問し、各都市のスタートアップやデータ人材を輩出するインキュベーターを視察してきましたので、米国におけるデータ人材市場の現状をご紹介致します。

 人材が慢性的に不足していることもあり、データサイエンティストの採用コストが未だ高いという状況は以前とそれほど変わりありません。一方、DataRobot(https://www.datarobot.com/jp/)に代表されるような人工知能モデル作成支援ツールが商用化されていることなどから、近い将来データサイエンティストの需要は減る、という意見もあります。とはいえ、各都市で次々とスタートアップ企業が誕生し新しいプロダクトが生み出されているという米国の現状があります。どのような背景で特徴あるスタートアップ企業が各都市で誕生しているのかを物流系スタートアップ企業にフォーカスしてレポートします。

データサイエンスと共に発展・多様化する都市

 スタートアップ企業のメッカといえばシリコンバレーが真っ先に思い浮かびますが、米国には今回訪れたボストンなど、シリコンバレー以外にもスタートアップが多く集まる都市があります。各都市の産業構造、大学機関の充実度、大企業からのスピンオフ、と様々な要因から各都市の独自色が生まれています。

 例えば、ボストンといえばマサチューセッツ工科大学やハーバード大学が有名ですが、これらの大学から企業は有能なテック人材を獲得しやすく、ロボティクスを使った次世代物流を推進するスタートアップが次々と登場しています。さらに、官民学協同で結成したMassRoboticsという団体がボストンを世界のRoboticsセンターにしようと活動しています。ボストンにはマサチューセッツ工科大学やハーバードだけでなく、ノースイースタン大学、ウースター工科大学、マサチューセッツ州立大学、ボストン大学、など数多くのロボット工学に強い大学が集まっていますし、iRobot、Amazon Robotics、Symbotic、Locus Robotics、6 River Systems等130を超える数のロボティクス企業が集積しており、一大ロボティクス産業クラスターが形成されています。



 次に、シリコンバレー以外の西海岸の大都市に目を向けると、ロサンゼルス、シアトル、があります。ハリウッドに代表される映画産業で有名なロサンゼルスですが、カリフォルニア大学ロサンゼルス校、南カリフォルニア大学、カリフォルニア工科大学とボストンと肩を並べるような名だたる大学があります。ロサンゼルスは世界10位に入るロサンゼルス-ロングビーチ港があり、ロサンゼルス都市圏1,300万人の生活を支える物流拠点が存在しています。協調型搬送ロボットメーカーのInVia Roboticsはロサンゼルスを中心にビジネス展開しています。



 一方、シアトルはアマゾン、マイクロソフト、スターバックスが有名ですが、会員制卸売のCostco Wholesalesや百貨店大手ノードストロームが本社を置くなど、小売業とテクノロジーが融合しやすい土壌もあります。シアトルに本社を置く設立4年目のFlexe(www.flexe.com)は、必要な期間・必要な床面積だけを借りられる物流倉庫レンタルサービスを展開し全米で注目を浴びています。人工知能研究においてシアトルのワシントン大学ポールアレン人工知能研究所は世界屈指の最先端研究機関でもあり、シアトル独自の官民学協同プロジェクトが作り上げてきた研究環境が、シリコンバレーからの移住を後押ししていると言われています。このようにスタートアップ企業の集積地としてのシアトルの成長には目を見張るものがあります。

データビジネスが日々興亡する仕組み

 では、こうした都市のデータ人材はどのような活動を行っているのでしょうか。

 日本でもデータサイエンティストやエンジニアは就労時間後に同じ興味・関心を持つ仲間と集まって最近の市場動向の共有やスキルアップを行うことがありますが、このデータビジネス・データ分析技術に関するmeetupは、米国では開催頻度も集まる人数も日本よりも数倍多く、その結果、meetupへの参加者はどんどんスキルアップすることが可能で、加速度的な学習速度を体感できます。



 さらに、ここまで見てきたように、都市ごとにテクノロジーに専門性があり、その領域特化型のデータ分析技術が発達していくという正の連鎖が起きているのが、日本とは対照的な点だと思います。前述した通り、Roboticsや工場自動化といった機械工学系のmeetupはボストンで頻繁に開かれていますし、Blockchainといったセキュリティーの高い情報共有・可視化技術に対してはシリコンバレーと、今回は訪問できませんでしたがニューヨークなどで盛んです。

日本発の物流改革企業を目指して

 各都市の地域資源に差はありますが、海外で活躍している人材と日本で活躍している人材との間に能力的な差異はないと思っています。ただし、米国での開発スピード・開発環境と比べると、アルゴリズム開発までできるようなデータサイエンティストや機械学習エンジニアは日本ではまだ絶対数が少なく、採用するのは非常に難しいと感じています。

 今回の視察を通して、改めて日本でも、物流・SCM関連のデータ人材が集い、生のデータを使ったビジネス意見交換会や分析勉強会をもっと行って切磋琢磨していかなくてはならないと強く思いました。GROUNDはその牽引役になれるよう、データ人材のハブとなって開発を進めて行きたいと決意を新たにしました。

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