What's Nature Bath ?
「Nature Bath」とは、毎回様々なゲストをお呼びして各回のトピックについて語り合うMeetupです。カジュアルな雰囲気でインタラクティブに参加者のみなさまと親交を深められるような会にしたいと思っています。森林浴(Forest Bath)からとった「Nature Bath」はMeetupを通して、Natureについても少しでも理解を深めてもらえればという思いで命名しました。
2020年12月2日に開催された第8回目のNature Bathは、「オールラウンドデザイナーのススメ」をテーマに、株式会社パーク 代表取締役 アートディレクター 佐々木 智也さん、クックパッド株式会社 デザイン戦略本部長 / UIデザイナー 宇野 雄さんをゲストにお迎えします。複数武器を持つことのメリット・デメリット、その中での難しさや面白さ、オールラウンドデザイナーのキャリアについてディスカッションしました。
オールラウンドデザイナーとしての歩み
株式会社パーク 代表取締役 アートディレクター 佐々木 智也
1979年生まれ。東京造形大学インダストリアルデザイン専攻卒。 外資系広告代理店、面白法人カヤックを経て、2015年PARKを設立。 広告とインタラクティブの幅広い経験を活かして新しい産業へのコミットを目指し、 スタートアップ・ベンチャーのコーポレート及びサービスブランディングを中心に、Web、パッケージ、プロダクト、グラフィックなど領域横断的に手掛ける。2020年夏、新規事業としてメンズスキンケアのD2Cブランド『LOGIC』を立ち上げる。
佐々木さん:僕のデザイナーとしてのキャリアは、広告制作会社3年、外資系広告代理店6年、面白法人カヤック3年と経験を積み、今のParkという会社を創業しました。これまでの仕事はコーポレートサイト、ブランドサイトなどのWeb系の仕事から、グラフィック、広告、動画の企画ディレクション、企業のアイデンティティ作成や、パッケージ、プロダクトのデザインなど、非常に多岐に渡っています。今ではこうしてオールラウンドに仕事の依頼がきて、刺激的な毎日を過ごしているのですが、これは挫折と生き残りをかけた歴史でもあります。
歴史を振り返ると、まず新卒一年目にしてデザインだけでは勝てないことに気がついたことがスタートです。どうしたら戦えるかと考えた時に、企画からできるようになるしかないと考え、アートディレクターになりました。一般的にクリエイティブディレクターは海外の賞を取ることを目指します。ただ、だんだんマス広告は衰退してきていている状況で、この先レガシーなマス広告をやっていては、いずれ淘汰されるのではと考え、デジタルやインタラクティブ性を求め、面白法人カヤックへ転職しました。カヤックでは「幅広い経験」を役立てられる面白い仕事があり、その手応えから同僚と一緒に独立をして、今では企業の課題を統合的に解決するような仕事をしています。ひとつの武器だけだと、同じ土俵に手強い相手が多すぎるのですが、たくさんの武器を持つことで、ここまでやってこられました。
スタートアップなどでは、デザイン、コーディング、もっと言うとサーバーまでいじれるフルスタックデザイナーが重宝される傾向にあります。ただ、僕の持論としては、フルスタックデザイナーは何でもできるが、デザイナーとしての成熟度が高まりにくいと思っています。便利屋のようになってしまうので、デザイナーとしての長いキャリアを考えているのであれば、あまりお勧めできません。
一方でWebデザイン、グラフィックデザイン、プロダクトデザインと、デザイン領域でオールラウンドに経験を積むことは、色々なジャンルのデザインに横展開がしやすく、シナジーも持たせられると思っています。〇〇デザインの専門家から、統合的なデザインの専門家になることで、結果的に長いキャリアを通して生き生きと仕事ができるのではないかなと思います。
デザイナーとしての軸(=強み)を持つことの大切さ
クックパッド株式会社 デザイン戦略本部長 / UIデザイナー 宇野 雄
制作会社やソーシャルゲーム会社勤務の後ヤフー株式会社へ入社。 Yahoo!ニュースやYahoo!検索などのデザイン責任者/デザイン部長を務める。 2019年2月よりクックパッドのデザインを統括。
宇野さん:クックパッドのデザイン戦略本部長をしながらUIデザイナーとして手を動かしています。僕は、小さなWeb制作会社からキャリアをスタートし、いくつか会社を回って、ソーシャルゲームなどに携わり、前職はヤフーに在籍していました。その中でもUIデザインにフォーカスしつつ、プロダクトマネージャーなどもやっていました。
クックパッドのミッションは「毎日の料理を楽しみにする」です。クックパッドはレシピ検索サービスが一番利用されていますが、それ以外にもビジュアルインターフェースが存在しないアレクサのスキルや、インターネットと関係のない物理的な子ども向けの食育の絵本まで多くのサービスがあります。「料理」と一口に言っても、色々な工程があり、レシピサービスだけで解決できるのはその中のほんの一部です。例えば、片付けや、洗い物があり、それが3食分あります。また、出産・結婚・食育・健康・フードロスなど、「料理」をキーワードにできることは、生活やライフステージによっても変わってくるので、まだやれることはたくさんあり、そこまで広げていきたいと考えています。このように「料理」は画面の中だけでは完結してくれません。例えば、この「OiCy Taste(オイシー)」というサービスは、クックパッドのレシピと連携して自動で調味料を計ってくれる機械ですが、こういったものはアプリのUIだけでなくハードウェアのUIにも関わる必要がありました。
ここで、「あなたはオールラウンドデザイナーですか?」と尋ねられると、こんな場にいてあれなんですが、僕はNoと答えます。器用貧乏なUIデザイナーなんですと答えます。人数が少ない時はデザイナーはありとあらゆることを何でもやらなくてはいけないので、印刷物、ロゴ、封筒のデザインなども手掛けました。僕はコードも書くんですが、結果的に求められて色々やってきただけの人なんです。
基本的にはスマホのUIデザインは市場も大きく今はそこにいるんですが、一方でこれから新しいものが出てくると思っているので、求められるのであれば、ハードデザインやARのようなところまで興味があります。UIデザインは閉じているのではなく、開かれているものだと思っています。ただ、僕が提供できる価値は”UIデザインである”ということは、ぶらさないで行きたいと思っています。
ベンチャーで二年半一人デザイナーをしてみてわかったこと
Nature Designer 長尾 友美
武蔵美術大学 工芸工業デザイン学科卒 8年間京セラ株式会社で携帯やIoT製品のプロダクトデザインを手がける。創業時からNature Remoのインダストリアルデザインを手がけており、現在はNatureのデザイン全般を手がける。
長尾:私はNatureに入社する前はインダストリアルデザイナーとして働いていました。セラミック塗装のタンブラーや二つ折りのガラケー、女子高生向けのPHSなど、コンセプトから3Dデータを作って色を決めて量産するということを8年ほど担っていました。他の領域の経験がほとんどない中でNatureに1人目のデザイナーとして入社しましたが、インダストリアルデザインはほんの一部で、それ以外の仕事がほとんどということが分かりました。今はハードの筐体のデザイン、カタログ、パッケージ、アプリや展示会のデザイン、HPや広告クリエイティブやブランディングまで行っています。ですので、私の場合は気づいたら越境していました(笑)。
越境とは何かと考えると、「課題に適したアプローチを選ぶこと」だと感じています。それはデザインだけでなく、課題があってそこにどうアプローチするかということに尽きるのではないかなと思います。例えば、「ユーザーにNatureの世界観を伝える」という課題があるとしたら、広告、販促品に加えて、量販店に配置してもらう際の配置方法なども細かく伝えることで、世界観が守られるような工夫をしています。また「製品のクオリティを上げる」であれば、製品のデザインと量産導入に加えてクオリティのコントロールまで行います。
私はインダストリアルデザイン以外は未経験でしたが、デザインの考え方は基本的にどの領域でも共通していると考えていまして、弊社では主に下記の3つを大切にデザインをしています。
1.ミッションに基づいて考える
どんなデザインでもそのミッションに基づくことで一本の筋が通ると考えています。
2.より少なくする
最小限まで要素を削ることで、コンセプトを強くすること意識しています。
3.恐れずに作りどんどんアップデートする
最初は作るもののクオリティが低くて自分でも嫌になっていましたが、後からアップデートすればクオリティは上がるので、まずどんどん作ってみることが大事だと考えています。
Natureでデザインするやりがいは3つあります。
1.デザインファーストで事業が進む
代表の塩出をはじめ、会社全体がデザインの重要性をわかっていて、デザイン=UXと考えているので、上流からプロダクトに関われるという点は特徴だと思います。
2.職種関わらずいろんな人と関われる
会社のほぼ全てのメンバーと関われて、色々な人の仕事を近くでみることができて、それぞれの考え方に触れられるので、とてもいい経験になると思っています。
3.ブランドをゼロから作れる
Natureはまだまだブランド的に認知が低い状態なので、これから取り組んでいく電力事業に向けて、ミッションをどうユーザーに伝えていくかを考えるのは面白いと思います。
弊社は「自然との共生をテクノロジーでドライブする」とうミッションを掲げています。スマートリモコンのイメージが強いと思うのですが、「エネルギーの未来を変える」というミッションを持っているので、そのミッションをデザインで実現していきたいです。
Talk session
ここからは、ご参加いただいた皆様からの疑問や質問にお答えするトークセッション行いましたので、その一部をご紹介します。
Q.オールラウンドデザイナーとして身につけるべきスキルと必要なスタンスは何ですか?
佐々木さん:僕は物事を深く見る=目の解像度が重要だと考えています。例えば、近所のお店が繁盛していたら、なぜ繁盛しているのか、具体的には店のメニューから客層、宣伝、PRのようなことまでのディテールをみることが大事だと思っています。今ではそれが癖になってテレビCMとか見るたびに制作費いくらかかってるのか計算したりしちゃいます(笑)。
宇野さん:自分の軸を持つことは大事だと思います。世の中のデザインには際限がないので、全てはできないですし、逆に浅くなりぼやけてしまいます。どこかに軸足があるとより安定するので、何かしらの軸を持ってピボットしていけばいいと思います。また、佐々木さんがおっしゃられたように、細かいところに目を配るのは重要だと思います。デザインの根本は何かを解決するためなんですね。なので、何を解決するのか、なぜこの課題がでてきたのかを考え続けると、では自分には何が足りないのか、このアプローチは正しいのか、などが見えてくると思っています。
長尾:私も、プロダクトデザインという一本軸足を持っているので、その軸があるのは大きいと思います。あとは、苦手な分野を聞ける友人を作ることは大事です。以前、パッケージデザインを佐々木さんにやってもらった時も色々聞きました。誰かに聞けるからこそ、自分にはできないと思わないことが重要だと思います。
Q.やりがいのある仕事だと感じるのはどんな時ですか?
長尾:オールラウンドで色々なことに対応できると、課題に対して適切な武器を使うことができるので、会社に直接的な貢献ができます。それによって、結果的に自分が作ったものを正しく届けることができるのはとてもやりがいを感じます。
宇野さん:僕は、一つ一つの持っているスキルが繋がる瞬間が嬉しいです。例えば、先程の「OiCy」を例にすると、ハードとアプリのインターフェースをシンクロさせられた時です。
そういった一気通貫の体験を提供できるのは複数のスキルを持っている人の強みだと思います。
佐々木さん:お二人に同意です。さまざまなスキルを持つことで、自分で商品を作って売るところまで、一気通貫でやれることの醍醐味は大きいなと思います。
Q.将来の展望、中長期的な事業展開の方針、今後取り組みたいことなどを教えてください。
佐々木さん:僕は「デザイナーが事業をやってみる」ということに挑戦しています。具体的にはBtoC商材のメーカーをやっています。デザイナーだからこそ、プロダクトのクオリティやどう伝えるかについてアドバンテージを作れることがわかったので、あとは経営や事業展開などが得意な仲間を探しつつ、事業にコミットしています!
宇野さん:きっと僕は今後もUIデザイナーと名乗り続けると思います。世の中に出てくるUIには全て関心があります。結果的にさらにオールラウンダーになっているというオチもあるのかもしれません。私の強みは、デザイナーとして様々なデザインを知っているからこそ、今このデザインには投資すべきでない、などの意思決定ができることだと思っています。UXへの影響力があるかなどの判断ができるのは今後大事な能力になっていくと思っています。このデザインは手を抜いてOK、ここのデザインは足りていない、などを判断する能力には広いデザインの知識が必要なので、そういった判断力はこれからも強みにしていきたいと思っています。
長尾:Natureでは、これからエネルギー事業をやっていきたいと思っていますし、今後はより認知されるようになって、Natureのミッションに共感して商品を使ってくれるような、ファンを作るデザインをしたいです。ぜひ一緒に働いてくれるUIデザイナーが必要なので、ご興味がある方は連絡を待っています!
おわりに
いかがでしたか。各社ともに人材を積極採用中です!
ぜひ、Natureに興味を持っていただいた方はお気軽にご応募ください。
募集一覧
また、年内は毎週Meetupを開催予定ですので、ぜひイベントへのご参加もお待ちしています!
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