2022年、GLナビゲーション(以下、GL)は、一人目の執行役員としてバックオフィスから永島早紀さんを選任しました。役員が神田のみであった状態で、一人目の執行役員をバックオフィスから選任した理由やバックオフィスに対する業務への考え方、GLのバックオフィスが目指す役割について、代表取締役 神田社長と永島執行役員に話を聞きました。(聞き手:GLナビゲーション 広報)
■GL一人目の役員をバックオフィスから選任した理由
――GL一人目の役員をバックオフィスから選任した神田さんのお考えを聞かせてください。
神田:永島さんの選任前、会社には役員が私しかおりませんでした。GLにはグローバル企業の管理職経験者やコンサルティングファーム出身者など、高い実績を持っているメンバーが集まっており、皆さんすごく優秀です。その状況で「誰を最初に役員にするか?」と考えた際、永島さんを役員にすることが一番大事だと思いました。
新卒入社後、GLの激動の8年間を支えてきたことも大きな理由ですが、決して目立たない業務をずっと支え続けてきたことに大きな意義があると考えています。
GLが提供するサービスは決して私達が表に出るわけではありません。黒子に徹しながらビジネスパートナーを支えたり、個人や企業の成長を支援したりするサービスだと思っています。GLにおけるバックオフィスの業務がまさにそれを体現していますよね。そういった意味で、「バックオフィスの重要性を伝えていきたい」というのが私の思いです。
バックオフィスの業務は「出来て当たり前、出来ないと不満を言われる」ことも多く、物凄く理不尽な仕事です。失敗すれば「何でこんなことも出来ないんだ」「どれだけ大きな損失を与えるんだ」というように悪目立ちします。良いところは目立たないけど悪いところは目立ちますよね。
そして、自社サービスのユーザー(顧客)とのやりとりも発生します。ユーザーからの評価や顧客からの評価にも直結してしまいます。「責任感が高い割に報われない」と考える、世の中のバックオフィス業務に従事している方々も多いはずです。そして一般的にはキャリアにもなりづらく評価もされづらいイメージが先行しています。
一方、永島さん達の頑張りは間違いなく会社を支えています。私個人としても、表に出ることより、表に出ない業務を遂行することのほうがはるかに大事だと思っています。影になって支える人、人が見ていないところで何かをやっている人、目に見えないことや目立たないことを着実にやる人が、個人においても会社においても、成長するために一番大事なことです。
私は「ガワ」「形」だけをひたすら作るのではなく、土台や根っこがしっかり張っている会社にしたいと思っています。その土台や根っこは日々の細かいオペレーションの積み重ねで作られており、もっと言えば人が見えないところをコツコツ支える人達の存在あってのものです。
このような「影を支える人の重要性」社内外に伝えていくことと、永島さん自身の大きな成長のきっかけにしてもらいたいと考え、「まず1年間」と任期を設定し、執行役員に任命しました。
――永島さんは今のお話を聞いてどう感じましたか?
永島:恐らく、人からの見られ方と私が感じてきた8年間は異なるはず。私にとって「やるしかなかった」状況でした(笑)。ただ、一緒にやってきた神田さんがそう思ってくれているのは非常に嬉しいです。
神田:私は細かいことが非常に苦手です。永島さんのようなコツコツ何かを進めてくれる人の存在は大きく、個人の資質や能力の観点でも重要です。
■バックオフィスはビジネスを推進する上で重要な機能
――神田さんは創業期から今のようなお考えをお持ちだったのでしょうか?
神田:私自身も無責任なスタンスでバックオフィスの方達と向き合っていた時期があります。自分自身の得意な領域から「やるだけの業務」を切り出し、簡単な仕事を永島さんに依頼するようなことも多かったです。
永島:神田さんの中で変わったキッカケはありますか?
神田:会社を伸ばすために何が大事かを考えた際、自分の考えの根本に問題があると気づいたからです。会社をスケールさせようと思うと、物事を単純化して誰でも出来る、再現性を持たせる考え方に進みがちになります。経営としては正しい側面もありますが、バックオフィスの方達を「簡単な誰でも出来る仕事をやっている人」と位置づけていたことに凄く反省しました。
永島さんがやっている業務以外は自分で出来る自信がありましたが、永島さんがやっている業務を自分でやれる自信が全くありません。そう考えた際、GLの成長にとって大事なことを担ってくれている存在だと認識しました。
もう一つ、一緒についてきてくれる社員が誇りに思える会社にしたいと思っております。自分とある種、対極の位置にいるバックオフィスの方達が誇りに思える組織にするためにどうすればいいのかを考えたことも大きかったです。
永島:バックオフィスや営業に限らず、相手のことを想像して、思いやりを持って行動出来るかどうかは大事だと考えています。
例えば、世の中のバックオフィスの方が「営業は何でこんな雑に仕事を振ってくるんだ」と感じている場合、バックオフィス側が営業の細かい頑張りを想像出来ていないのが理由であることが多いです。全部お互い様ですよね。社員全員が想像力を持って働ければ、お互い気持ち良く働くことができ、結果的に組織の成長に繋がるはずです。
神田:垣根を無くすことが重要だと思います。バックオフィスの社員が各事業部門にいて、事業を推進する役割が理想の在り方だと思っています。
――「事業部門間の垣根を無くし、全社横断的に事業推進する役割」を実際に浸透させるのは難しいですよね?どのようなアプローチを考えていますか?
神田:「バックオフィスは事業成長において重要なオペレーション推進担当であり、組織における各チームと横並びである」という考えを根付かせていくことです。そのためにも、重要性や存在意義を私自身が先頭に立って社内に引き続き発信することが大事だと考えています。
あらゆる組織においてバックオフィスはノンプロフィット部門であり、コストセンターとして認識される傾向があります。どうしても立ち位置がすごく低いのです。
ところが、バックオフィスは社内外含めて色々な人と関わるので、実は顧客からの声や社員間のやりとりが一番集まってくる部門です。ちょっとした細かい動向をキャッチすることが、会社の営業やマーケティングに活きることを社員全員に伝えていきたいです。
■「会社を成長させたいという思い」が想像力を働かせる素地を作る
――永島さんに質問です。「想像力を膨らませる」とか「相手の立場に立つ」ことは大事ですが、それが出来る人と出来ない人の差はどこにあると思いますか?
永島:シンプルな答えですが、目の前の業務しか見ていないか否かだと思います。バックオフィスの業務は楽をしようと思えば楽ができます。わかりやすい例を挙げると、目の前の契約業務を早く進めることで売り上げが立ち、トップラインが伸びることで上場に近付くといった想像ができるかどうかだと思います。
神田:会社を成長させたいという思いを持っている人は、想像力を働かせる素地があるなと感じました。そう思うようになったきっかけを教えて欲しいです。
永島:私と一緒にバックオフィス業務をやってくれるメンバーが入社したのがきっかけです。自分だけが業務を回していれば良かった状況から、メンバーに依頼することを踏まえて仕事を進めないと指示が出来なくなってしまいます。外部環境がそうさせた点も大きいです。
神田:永島さんは会社が小さいフェーズの時から組織を支えてくれているので、もともと全社的な意識は否が応でも持っていたはず。ただ、やっぱり後輩に教える状況になって「売り上げに繋がる」というような言語化を求められるようになったのが大きかったということでしょうね。
加えて、私自身が永島さんと会社の方向性や会社の課題について会話をする機会が増えたのも大きい気がします。組織の課題を踏まえ、永島さんが各業務におけるラストワンマイルの役割を担い、また、業務を推進する過程で気づいた部分を吸い上げる役割も担ってくれています。
永島:たしかにそれは大きな要因かもしれません。神田さんが社員全員に同じ濃さでコミュニケーションを取るのは限界がありますから、私が経営者の悩みを踏まえて、メンバーへの伝え方を工夫する必要があると実感しています。
神田さんの悩みは「組織をより良くしていくために」とか「そのために今何が足りていなくて、それを埋めるためにどうしたら良いか」とか、組織に関するテーマが多いですね。
■GLのバックオフィスが目指す役割とは?
――組織課題の解決に対して、神田さんがバックオフィスにどのようなことを期待していますか?
神田:メンバー全員にとって同じ目線で事業を推進してくれる社内の心強いパートナーになってもらうことを期待しています。どんなビジネスでもオペレーションの構築は絶対に発生します。その基盤固めを各チームの一員として推進してくれる存在です。
具体例として、コンサルタントや営業が自分達の業務に集中するためのオペレーション構築をバックオフィスメンバーが主体となって推進する役割です。何かビジネスが始まる際、「営業がこういう動きをしているのであれば、私達がここまで出来ると、営業の業務に集中出来ますね」といった会話がバックオフィス起点で発信できるのが理想です。
社内的には、ITやシステム、ビジネスのオペレーションに詳しいバックオフィスチームにしていきます。そのためにも、セールス、マーケティング、ファイナンス、事業企画等の領域に関して理解している必要があります。
社外的には、GLのバックオフィス起点で各担当がコアな業務に集中できるオペレーションプロセスを構築していくサービスを展開したいと考えています。そのためにも色々な企業のバックオフィスをアウトソーシングしていくことも検討しています。
もう一つ、バックオフィスは社内の雰囲気を作るために凄く重要な存在だと思っています。バックオフィスがビジネスライクな組織は何だか嫌ですよね。
最近入社したメンバーに『フィッシュ!』という本を渡しました。一見すると簡単で、単純で、誰でも出来る仕事をすごく楽しみながら実行する組織に変わったら、その組織がすごく強くなり、付加価値になっていったという内容です。光が当たらない業務かもしれないけど、楽しく意義を持ってやっていくことで、周りの雰囲気を良くする事例に変わったということです。
つまり、オペレーションを組む会社の雰囲気を良いカルチャーに変える役割も担って欲しいです。それがビジネスとして外販できる水準まで磨いていきたいです。
永島:大変だと思いますが、凄くやりがいがありますね。結局それを実現するためにはバックオフィスが各業務を理解している必要があります。最初の話に戻りますが、想像力が求められますよね。
神田:GLに限らず、どの会社もバックオフィスにそういう役割を期待しているはずです。しかし、これまでバックオフィス起点でビジネスがスタートすることもなければ、テクノロジーが介入する領域になっているケースが取り上げられるることはありませんでした。一連で話したようなことを仕組み化していきたいです。
GLが各部門で実施している部門ごとの戦略についてじっくりと話し合う「じっくりミーティング」にも、バックオフィスには必ず参加してもらっています。ビジネス部門の方針をバックオフィスが把握することで「バックオフィスとして、組織内でこういう役割、機能を担おう」みたいな視点が生まれることを期待して設計です。
典型例として、「バックオフィスがSalesforceやMarketoのテクニカルサポートの役割を担おう」という動きがあります。実際、最近入社した2名のスタッフが、徹底してツールの勉強をしています。これが上手く機能すれば、ちょっとしたツールの運用はバックオフィスが対応できるようになり、営業が集中すべき商談や後追いにリソースを割くことができます。
永島:今日はバックオフィスの重要性や今後目指す方向性について、改めて聞けて良かったです。GLが自発的に動ける環境で、指示されたことに自分でプラスアルファして仕事ができる環境であることをメンバーに伝えていきます。良いアイデアは私も常に求めています。自分が提案できる環境で働きたい人にとって最高な環境が揃っていると感じました。
神田:バックオフィスが主体的に事業を推進する会社はまだ存在しないはずで、目指す意義があることを改めて実感しました。