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【Tech Trend Talk vol.4】社外向け勉強会「メディア制作者が“共犯”にならないために知っておきたい情報発信の落とし穴」を開催しました!

はじめまして。先日からGIGにインターンとして入社しましたキシリトールです。季節も夏へと変わりだんだん暑くなってきましたが、GIGブログ読者のみなさまはいかがお過ごしでしょうか。

6月20日に、社外からスピーカーをお招きした勉強会「Tech Trend Talk vol.4 メディア制作者が“共犯”にならないために知っておきたい情報発信の落とし穴」を開催しました。


メディア関係者が”共犯”にならないためには?

今回の講師は、医療記者として活動している朽木 誠一郎さん。メディアの制作にたずさわるクリエイターが、悪質な情報発信に手を貸さないために気をつけるべきことを教えていただきました。

朽木 誠一郎:2014年群馬大学医学部医学科卒。同年にメディアを運営する運営制作会社へ入社した。2015年に有限会社ノオトへ入社し、記者・編集者として基礎からライティングや編集を学び直す。現在は医療記者として活躍。2018年3月に書籍『健康を食い物にするメディアたち』を上梓。


Web上に誤った情報が発信されつづけている

情報の正しさが確かめられた情報発信と、クライアントが望む言葉を連ねた情報発信。クリエイターのあなたは、どちらを優先させますか? クライアントの指示を優先するあまり、誤った情報を発信してはいませんか?

たとえクライアントが望もうと、誤った情報を発信すれば、その責任は情報発信者に降りかかります。メディア制作者も、誤った情報発信に加担すれば、その責任を逃れられるものではありません。

悪質な情報発信に加担しないためには、その情報が受け手にどのような影響を及ぼすかを考えながら、メディアの制作をおこなうことが大切です。近年、いわゆる「WELQ問題」をきっかけに、特に命にかかわる健康・医療の分野で、情報の信頼性を問う動きが広がっています。WELQ問題の追及に関わった朽木さんは、「法の目をかいくぐってまで悪質な情報発信をしようとする業者はあとを絶ちません」といいます。

たとえば、2018年6月1日に改正医療法が施行されました。改正医療法とは、Web上の医療情報の信頼性の向上を目指したもので、主に広告を規制するものです。Webでの誤った医療情報の発信に規制がかかったと思いきや、Web業界には、改正医療法の抜け道を探している業者がいます。朽木さんは、SEO(検索エンジン最適化)がその抜け道の一つとして使われてしまう可能性があると指摘します。

朽木さん:「Web業界で働く人以外には、そもそも検索エンジンがどのようなルールで情報を掲載しているか、そのルールを攻略するSEOの知識があまりありません。検索エンジンの仕組み上、SEOよって上位になっている情報が、必ずしも信頼できるわけでないということに、気がつけない場合もあるでしょう。医療に関する情報を提供する場合、その先には、わらにもすがる思いの患者さんがいます。すなわち、医療メディアの運営は命に関わる責任を伴うのです。もし、医療情報の提供に関わる場合、依頼された仕事に着手する前に、その媒体は胸を張って人に見せられる、家族に勧められるものか、考えてみてください」


十分な根拠のある情報はどこへ?

一般的な病院には、院内でWebサイトを制作したり、広告などによる宣伝をしたりする余裕がないこともある、と朽木さん。一方で、効果に関するエビデンスが乏しく、かつ高額な「治療」を保険適用外でおこなっている病院もあり、そのような病院は、潤沢な資金や人的リソースを確保できます。朽木さんの調査によれば、治療費を資金に外部のSEO業者に依頼し、自社のWebサイトが検索上位に掲載されるようにしている病院もあるそうです。

この状況に歯止めをかける一つの手は、発信される情報の信頼性を自分で判断できない仕事を依頼されたWeb制作者が、きっぱりと仕事を断ることです。クリエイター自身が、情報を精査するフィルターとしての役割を担う必要があります。


健康・医療情報の見分け方

情報発信に関わる仕事を依頼されたとき、また自分たちが読者として、インターネットを使って情報収拾をするとき、どのようにして正しい情報を見分けるべきでしょうか。朽木さんは「5W2H」の考え方を提唱しています。


(Ⅰ)5W2H

違和感に気づくための方法は、情報をさまざまな角度から具体的に精査すること。まずは、5W2Hをおさらいしましょう。

  1. 何の情報か(What)
  2. 誰の情報か(Who)
  3. いつの情報か(When)
  4. どこの情報か(Where)
  5. なぜこの情報が発信されているのか(Why)
  6. いくらの情報なのか(How much)
  7. 情報の中にある数字はどんなものか(How many)

例をあげて考えてみましょう。「10年間“デブ”と呼ばれ続けた私が〇〇をするだけで奇跡の大逆転をしたんだがwww」という内容の記事があるとします。

その記事を読む場合、5W2Hを意識すると、以下の点が知りたくなります。

  1. この記事では、肥満の解消に対して、どんな方法を選択し、どんな効果が得られたと謳っているか(What)
    →この方法に科学的な根拠がない場合、信頼性は低い
  2. この記事では、誰によって効果が保証されているか(Who)
    →一般人の体験談の場合、医師や病院などの発信と比べて、信頼性は低い(ただし、医師だからといって、絶対に誤りがないとは限らない)
  3. いつ公開された記事か(When)
    →古い情報はすでに否定されている可能性があるので、信頼性は低い
  4. 信頼のおけるメディアに掲載されている情報か(Where)
    →国や厚生労働省、大学などの研究機関、大手新聞など報道メディアと比べて、個人ブログなどは信頼性は低い(ただし、信頼性が比較的高いところからの情報発信も、絶対に誤りがないとは限らないし、信頼できる医師の個人ブログもあるだろう)
  5. サプリメントなど商品の宣伝を目的とする記事ではないのか(Why)
    →広告は利益のために内容に偏りが生じることもあり、信頼性は低い
  6. 商品は適正な価格で販売されているか(How much)
    →法外な値段のもの、あまりに高額なものは、信頼性が低い
  7. 記事中の数字は適切か(何日で達成、何kg減量など)(How many)
    →「3日で30kg減量」など過剰な数字があれば、信頼性は低い

Webに関わらず、健康・医療情報を収集をするなら、まずはこのように、5W2Hをチェックしましょう。

(Ⅱ)簡単なスクリーニング方法

健康・医療情報を見分ける上ではこれらのポイントが重要ですが、すべてを細かくチェックするのは難しいこともあります。そこで、簡単なスクリーニング方法を教えていただきました。

1. NGワード


朽木さん:「人間の体は複雑です。すぐに、ラクに、簡単に、痩せたり、重い病気が治ったりなど、効果が出るなんてことが本当にあるでしょうか?」

『最先端』『最新』『奇跡』のように「すごそう」なワードや、『オメガ脂肪酸配合』『アスタキサンチン配合』のような、いかにも科学的根拠がありそうに聞こえるワードにも注意。例えば『オメガ脂肪酸』は、特別な成分のように聞こえる言葉ですが、一般的な物質です。当たり前のことをそれらしく表現しているものには注意しましょう。

2. 因果関係

朽木さんは、因果関係のとりちがいにも注意すべきだと話しました。

朽木さん:「『メタボ健診を受けた人は長生きした』というデータがあるとします。これだけをみると、”メタボ健診を受ければ長生きできる”というように聞こえます。ですが実態は、“長生きをする人はメタボ検診を受けるような健康志向の高い人である”と考えることもできます。AだからBであるのか、BだからAとなったのか。AだからCで、CだからBなのではないか。因果関係をしっかりと見極めることが重要です」

3. エビデンスのピラミッド


(出展:国立国際医療研究センター

科学的根拠には、有無だけでなく強弱があります。朽木さんは科学的根拠の強弱を考える上で、エビデンスのピラミッドを例に出しました。個人の体験やマウス実験で効果があったとしても、多くの人間に効果があるとは限りません。

強いエビデンスをもつのは、多くの人に対して研究がなされており、かつ統計学的に正しいデータを得られている研究です。エビデンスの強弱を考え、現時点で「できるだけ確からしい」医療情報を取捨選択しましょう。


クリエイターに求められる「相互監視」とは


情報を提供するということは、情報の受け手に対しての責任が発生します。そしてその責任は、クライアントやメディアの担当者だけが負うものではありません。コンテンツを制作するクリエイター、さらにはその情報発信の媒体(メディア)を制作するクリエイターも、情報の正確性を監視する責任を負ってほしい、というのが朽木さんの主張です。

朽木さん:「知りて害をなすなという言葉があります。今の時代、たくさんの情報が溢れているからこそ、クリエイターもまた、発信されている情報が正しいか、検証をする役割を果たしてほしい。少なくとも、自分が信じられない情報の発信に、クリエイティブの力を貸してはいけないのではないでしょうか」


懇親会で乾杯!

勉強会のあとは懇談会のお時間です! 参加者の皆さまは各々お酒やソフトドリンクを手に、乾杯しました!某有名中華料理店のオードブルを囲み、団らんのひとときを過ごししました。参加者は朽木さんに質問したり、また各々ネットワーク作りに励んだりしていました。社内外関係なく交流できる場は、とても貴重です。

まとめ

GIGでは月1回のペースで社外向けの勉強会を開催しています。ライターに限らず、デザイナーやディレクターなども勉強会に参加しており、全社的なスキル向上の機会となりました。

インターンとしてGIGにジョインして間もない私ですが、クリエイターのあるべき姿を学べるいい機会となりました。「知りて害をなすな」という言葉を大切に、記事づくりをしたいと思います。

GIGでは機械学習、IoT、ブロックチェーンなどの最新トレンドに関する勉強会を今後も定期的に開催していきます。イベントの詳しい情報は、connpassのGIGページをチェックしてください!

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