こんにちは、Full Commit Partnersの鈴木です。第一弾の記事ということでとても緊張していますが、今後VCとして注目している領域について、少しずつ情報発信していけたらと思いますので、よろしくお願いいたします。
今回は、FCPの投資理念である「IT武装」をテーマに、日本の第一次産業の抱える課題解決について見ていきたい。
日本の農業は、高齢化による担い手の不足や農家の所得の低さによる農業従事者の減少など将来の不安定な産業の一つとしてあげられる。
それらによる耕地の放棄も問題になり、ソーシャルシェアリングのモデルを農地や農業就労者のマッチングに導入したスタートアップも見られるようになった。
株式会社アグリメディア都市と農業をつなげる、と言う観点で遊休農地を用いた市民農園などを経営
都市農園など、首都圏の田畑や屋上を利用した野菜や花を栽培も進んでいる。 これらは、都市住民にとってのリクリエーションの場となったり、収穫体験などを通した子供たちの食育の場となっている。
だが、このようなモデルは、本質的な第一次産業の課題解決にはなっているのだろうか。 限られた土地と限られた労働力で「農業の生産性を上げる」には、どのようにすれば良いのか。
農業にエネルギーを組み込む
千葉大発のベンチャー起業である「千葉エコ・エネルギー株式会社」は、第一次産業でとどまることなく、農業にエネルギーという領域を掛け合わせた。
ソーラーシェアリングは少し前から新エネルギーとして注目を集め、政府も補助金を用いて普及を促進している。
同社はもともと地域活性化を業務とした企業でソーラーシェアリング事業に携わっていたが、その中で農業従事者の減少や耕作放棄地の拡大・過疎化などを目の当たりにし、企業としての農業参入を決めた。
同社の画期的なところは、「農作物の育成に害を与えることなく、完全に付加価値をつけることができる」という点だ。
農地がエネルギーを生み出す場に
千葉エコ・エネルギー株式会社のソーラーシェアリングは、水田や畑などの農地に支柱を立てて太陽光発電設備を設置し、農業と発電事業を同時に行う新しい形の農業モデルだ。
同社は、「農作物によって光合成に必要な光の量が異なる」ということに着目し、余剰な太陽光を太陽光発電に転用する仕組みを生み出した。
太陽光発電の最も大きなハードルは、初期投資とその回収率、収益化へのプロセスであろう。
営農型の発電設備の設置には1000㎡あたり約1200万円かかり、年間の発電の売電金額は約100万円と言われる。この初期投資の条件さえクリアすれば、太陽光発電自体はおよそ10年で初期投資が回収できると言われている。この電力は地方の電力会社に販売されるが、農作物の収入自体は減ることがないので、必然的に農業従事者の所得向上につながるのだ。
政府も積極的に推進
内閣府による「未来投資戦略2018」や環境省による「第五次環境基本計画」にもソーラーシェアリングが謳われるようになり、行政からも注目を集めている。
日本では、農地転用は3年と法律で制限されていたが、ソーラーシェアリングに取り組む場合、10年に延長されるため、導入した場合の手続きの労力も大幅にカットされる。
VCにとっての展望
このようなソーラーシェアリングモデルは、産業向けの発電事業に比べ、農業とエネルギー事業の二つの事業にまたがる新しい領域であるため、魅力的な投資機会と言えるだろう。
千葉エコ・エネルギー株式会社はクラウドファンデングにて資金調達を行なったが、さらなる新技術の開発に力を入れており、また、より多くの認知と理解を得るために、「sola share」というソーラーシェアリングポータルサイトによる情報発信も行なっている。
ここで、ソーラーシェアリングをより普及させるためにも鍵を握るのがVCの資金と言えるだろう。
このモデルのハードルは、初期投資の回収や農業との両立への不安、すなわち農業従事者にどれだけ受け入れてもらえるかだ。
VCの握る資金によって、発電事業と農業を両立しうるノウハウを持つ事業者が増えシェアが拡大すれば、さらなる利益が見込まれる。この事業によって大きく成長するベンチャー企業が今後登場してもおかしくない。
繰り返しになるが、このモデルは「あくまで農業を続けることを前提にし、他の領域を農業の中に組み込んだ」という点で革新的である。
また、今後ソーラーシェアリングに限らず、他の分野を農業に取り込むという新しい構造の可能性を示唆するものと言えるだろう。
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