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カルチャードリブンデザイン

こんにちは。やまもとです。

今月のブログは、リセノのオリジナル家具のデザイン
についてお話しようと思います。

つい先日、社内メンバーからのインタビュー依頼が
あって、答えてきました。

至福のソファー「AGRA」はなぜ生まれたのか? を開発者の山本さんにお伺いしました。

このスタッフは、穏やかな口調で、人の気持ちを
引き出すのがとても上手なので、僕も自分の記憶を
たどりながら、頭の整理をするのにとてもいい機会
になりました。

このインタビューの中で、リセノの家具デザインは
どのような流れで出来ていくのかという質問があり、
はてと、改めて振り返りました。

リセノの家具デザインは、いまはほとんどを僕が
企画・デザインをしていて、Shadeで3Dモデリング
を行い、それを工場と連携して、製品化に持って
いっています。

このブログを読んでいただいている方はご存じの通り
僕は、もともとデザイナーでもなければ、家具デザ
インの勉強をしてきたわけでも、職人でもありません。

ですから「デザインをする」というのは本業では
ありませんし、上手とも思っていません。

「美しいお絵かき」をする能力としては、ごくごく
一般的な人とさして変わらないと思います。

ただ、学生時代のアルバイト時代から、長くサービス
業に携わってきましたので、

「この人にこうしてあげたら、喜ばれるだろうな」
「ここがもっとこうなら、使いやすいだろうな」

というようなギバー的思考は、癖づいています。

なので、僕の場合は「見た目をデザインする」という
よりは、世の中の「不」を無くして「いいやん」に
変える「プロデュース」という感覚です。

インテリア業界も、22歳で就職してから、早20年が
経ちますので、その点においてはたくさんの知識の
蓄えもありますし、たくさんの「不」への気づきも
あります。

ですから、デザインの立脚点は、見た目を整えること
ではなく「不を解消できる工夫をして、その後に、
見た目を整える」という流れを必ず汲んでいます。

そして、イメージしたものを自らの手で3D化して
可視化し、それを360°あらゆる方向から見ながら、
細かな点を修正して、具現化していく感じです。

この立脚点の違いが、ほかの家具ブランドのデザイン
手法とは大きく違う点かなと考えています。

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さて、デザインの流れに話を戻しましょう。

そして、ある程度PC上でデザインが固まってきたら
工場へサンプル製作依頼を出すのですが、このあたり
までは、割と軽やかに行います。

3Dで作ったものは、あくまで画面上でのデザイン
なので、実物をまずは1回作ってもらうようにして
います。

この工場への打診~サンプル製作については、社内
の専任担当者の仕事ですので、僕は細かな点は
知りません。

ただ「不の解消」というところから立脚している
デザインですので、普通はやらないような仕様が
多く、専任担当者は、工場への依頼を苦心しながら
やってくれているのだと思います。

担当者は、とにかくいいヤツなので、そんな苦労は
おくびにも出しませんが、製品リリース前に、社内
向けに苦労した点を話している時に、僕もはじめて
聞いて「そんなにややこしいことやってたんだ」と
驚くことも、ままあったりします。

本当に頼もしく、感謝しています。

そして、デザイン出し~サンプル製作まで、待つこと
数か月。サンプルが出来上がってきます。

そして、この出来上がってきたサンプルについて、
今度は、バイヤーチーム、品質管理チーム、そして
ときには、たまたま近くで仕事をしているあらゆる
スタッフと一緒に、検証していきます。

検証のポイントは、

・画面と実物のイメージの差はないか
 ・見た目が好みか(自宅にお迎えしたいほどか)
 ・使い心地は良いか
 ・品質の改善点はないか

などなどです。

ざっくばらんに、まずはみんなに意見を出してもら
って、僕はふむふむ。と耳を傾けます。

バイヤーは、センスの視点からの意見が多く、
品質管理は、問題になりそうな点を的確に指摘します。
その他メンバーは、自分がどう思うかを発言します。

この点においては、みんなが思ったことをずばずば
言いますし、若い女性スタッフなどは忖度すること
なく言ってくれますので、僕が苦笑いすることも
しばしばです(笑)。

ただ、うちのメンバーは、自分自身がインテリアを
楽しんでいるひとが多いので、これらの意見は、
的を得ていることがとても多い印象です。

購入いただくお客様 = うちのスタッフ と同じ様な
年齢層の方が多いですので、製品化する前にリアル
な声を聴くことが出来て、それを次のサンプル製品
の改変に活かしていけるのは、強みです。

この点についても、手前味噌ながら自負しているのは
僕はデザイナーではないので、デザインをダメ出し
されることや、それによって自身のデザインを改変
することに反発する心が少ないということです。

これがデザイナーであれば「僕のデザインなんだから
素人がとやかく言うもんじゃない」というような
思考もあると思います。

実際に、最初に就職した会社では、商品を仕入れて
くるMD/バイヤーチームと、店長をはじめとする
店舗チームは、責め合っていることが多くありました。

MD/バイヤーは「店舗のスタッフが、商品について
きちんと理解してくれないから、売れない」と言います。

店舗メンバーは「MD/バイヤーが良い製品を作って
くれないから、売れない」と言います。

お互いのすれ違いがあるからこそ、その製品は魅力
をきちんとお客様に伝えることなく、売れない製品
になってしまっていたと思います。

その点に置いて、僕はデザイナーとしてのプライドが
低く、逆に「社内の人が良いと思わないのなら、お
客様にも伝わらないだろう」というプロデューサー
目線で、家具デザインを捉えています。

だからこそ、柔軟にデザインを変化させていくこと
が出来ます。

初回サンプルから、最終サンプルはまったく違う
意匠デザイン(見た目のデザイン)であることも
あります。

このように製作段階にて、たくさんの人の目を通して
いることで、完成前に製品をブラッシュアップでき
るのは、リセノの家具デザインの本質的な強みの
部分だろうと思っています。

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そして、たくさんの人の目を通しながら、セカンド
サンプル、サードサンプルと、徐々に完成に近づけ
ていく中で、できる限り自宅で自らサンプル品を
使ってみることにしています。

ダイニングテーブルやチェアーならご飯を食べたり、
リビングから、夜にぼーっと眺めてみたり。

照明なら、夜に灯けてお酒を飲んでみたり、逆に
お昼に点灯していない姿を見てみたり。

「このチェア背もたれ低いけど、深く腰掛けたらいい感じ」
「その分、テーブルの下に入れたら、歩きやすいやん」
「この照明は、まぶしいから思ったよりイヤやな」
「家においたら、でかっ」

などなど。

生活者の目線で、使ってみて感じること、分かること
は、たくさんあります。

会社や撮影スタジオで「よそ行き」の状況で見るの
とは、また違った顔を見せてくるから、不思議です。

そしてその経験をもとに、気になるところは、再度
設計し直して、さらにまた出来上がったものについて
みんなで、よってたかって推敲する。

そして、いよいよ製品デザインとして、完成するのです。

ただ、僕たちの家具デザインは、実はここで完成で
はありません。

むしろ、製品が完成して、実際に撮影するために
スタジオに届いて、というこの時点で、半分くらい
というイメージです。

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ここから、リセノの家具として完成させるために
「編集」という仕事に移ります。

大きく分けて、

・製品の企画経緯とコンセプトを紐解くブログ
 ・使用イメージを可視化する撮影
 ・スタッフの主観ブログや、お客様の声

といった感じでしょうか。

これらが、リセノの家具を構成する、重要なあと半分
の要素です。

紐解いていきましょう。

まずは、僕が「製品の企画経緯とコンセプトを紐解く
ブログ」ライティングに着手します。

前述のとおり、僕のデザインする家具は「不」の
解消を最優先に置いたものですから、どこが工夫を
凝らした点で、どういう生活の「不」を解消したい
かを、しっかり伝えることが重要です。

生活の「不」は、毎日当たり前すぎて、自分自身でも
気づかないものが多いですから、そこをしっかりと
紐解くことが重要だと考えています。

例えば、新作照明のコンセプトを紐解く際には、
日本の照明の歴史から紐解いて書いたりしました。

「BRASS FLOOR LIGHT」の企画経緯とコンセプト設計についてお話します。

このようにまずは、この製品についての思いを言語
化し、そこに「こんなイメージで撮影してほしい」
というト書きのようなものを入れます。

そして、そのト書きに沿って、撮影チームが撮影を
してくれるのです。

ト書きは、例えば

///ソファーの横で、リラックスする空気感で照明を。

などという、イメージ先行的なものです。
良く言えば、撮影チームの表現する写真を信頼して
いますし、悪く言えば、丸投げです(笑)。

ただ、撮影チームは、僕のことや、リセノのことを
よく理解していますし、インテリアが好きであり、
インテリアの基礎を学んでおり、リセノの提案する
スタイリングを誰よりも理解しています。

なので、撮影してもらったものは、僕がイメージして
いたものよりも、良いことも多いのです。

なので、僕がその写真を見て、製品の「見てほしい」
「気づいてほしい」「理解してほしい」部分に、あら
ためて気付かされたりします。

そして、その点において、さらにブログを加筆し、
撮影も追加で行う。

こんな風に、ブラッシュアップをしていきます。

さらに製品によっては、スタッフが気に入って、
自宅にお迎えしてくれて、そこから、さらにその
スタッフなりに、その製品が日々の暮らしにどの
ように関わるかを、ブログにしたり、動画にしたり
してくれます。

Re:CENO Mag|僕と私の愛用品

これらで書いてくれる内容は、非常に主観的な表現
が多く、なによりも、自宅というのは雄弁な主観表現
ですので、企業として打ち出すメッセージよりも
よりピュアで、より誠実で、よりリアルなものです。

ですから、多くのお客様の共感を得られるのだと
思います。

そして、さらには、その製品を購入したお客様も
自宅で使っている様子を、レビューでくださったり、
自身のSNSにあげてくださったりする。

これらの利用レビューによって、製品のさらなる
新たな魅力に気付いたりして、そこをヒントに
より使いやすいように製品に改変を加えたり、
新しい製品企画のアイディアになったりします。

ここまでを含めたものが「リセノの家具デザイン」
と言えるのだと考えています。

暮らしは、本当にひとそれぞれ、千差万別なんだから
絶対的に良いデザインなんてものはなくて、みんなが
共通して思っている「不」のかけらを見つけて、解決
するのが良いデザインだとする思考です。

僕や会社の各部署のスタッフ、お客様まで含めて
デザインしていく。これこそがリセノの強みの
芯の部分なのかもしれませんね。

そして、この強みは「一般意思」という言葉でも
表現できることを、先日知りました。

以下は、山口周さん著の「武器になる哲学」からの
抜粋です。

一般意思

集合的に情報処理に基づく意思決定が、個人のそれとは比較にならないほど高い品質の意思決定を可能にすることがあるのも、また事実です。

1968年、地中海で実施された軍事演習を終えたのちに行方不明になった原子力潜水艦スコーピオンを捜索するにあたり、捜索活動の指揮をとった元海軍士官のジョン・クレーブンは、確率論を応用した手法によって沈没位置を特定するというアプローチを採用しました。

クレーブンは、数学者、潜水艦の専門家、海難救助隊などの分野の知識をもった人たちを集め、スコーピオンにどんなトラブルが発生し、その結果、どのように沈降し、海底に衝突したかについてのシナリオを作成されたうえで、これらの断片的な予測をベイズ確率によって重ね合わせていき、最も濃い点となるポイントを推測沈没地点としました。

クレーブンによばれて参加したメンバーの中で、クレーブンが最終的に算出した地点を選んだものは誰もいませんでした。

つまり、最終的に描き出された推測沈没地点は、純粋に集合的なものであって、誰かが予測に収れんしたわけではない、といことです。

実際の沈没地点は、予測から200mしかずれていませんでした。

このエピソードは、集合的な意思決定がうまく機能すると、その集団の中にいる最も賢い人よりも、クオリティの高い意思決定が可能になる、ということをよく示しています。

つまりは、たくさんの人の意見を集約したほうが、
正解に近いということです。

ここからも、リセノの家具デザイン手法は、
「一般意思型」と言うか、「推敲型」と言うか、
デザイナーの感性に任せるようなものではなく、
社内カルチャーとして「インテリアを好きな人」が
多く、その人たちみんなで、意匠デザインから、
情報の編纂、レビューの救い上げまで含めて、
みんなで作り上げていく手法です。

こういうスタイルのデザイン手法は、なんて表現
するのでしょうね。

ここでは、格好よく「カルチャードリブンデザイン」
とでも表現しておきましょうか。

割と良いデザイン体制じゃないかなと考えています。

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というわけで、今回は、リセノの家具デザインの
流れをご紹介してきました。

リセノの家具は、非常にシンプルな意匠デザインです。

ただ、その中には「不」を解消して、みんなの日々
の暮らしをよりよくしたいという思いがこもって
いて、直接的・間接的含めて、みんなで協力して
デザインしています。

僕ひとりの力ではなく、リセノの人が思いを込めた
文字通り「ブランドの総力」を結集したデザインで
あり、それは世の中にたくさんある「見た目を整
えたデザイン」とは、一線を画すものです。

これからも、スタッフの総力を結集した家具を企画
していく中心として、僕自身が研鑽を積むとともに、
スタッフ自体のレベルをより上げていく活動を進める
ことで、よりたくさんの人たちにインテリアの楽しさ
を届けていきます。

みなさんの日々忙しく、心も体も疲れるような毎日に
少しでも、お家で安らげる時間を届けられればなと
思っています。

リセノの家具が、みなさんの生活の一助になりますように。

では、また来月に。

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