FIVE は「動画配信テクノロジー」と「モバイルファースト・クリエイティブ」を組み合わせて、スマートフォンでの映像流通を一手に担う事業を展開しています。
そんなFIVE社が「life at FIVE.」と題し刊行するインタビューシリーズ。
これまでにCEO菅野、CTO小西、クリエイティブデザイナー糸井への独占インタビュー、そしてエンジニアによる機械学習をテーマにした座談会の模様など、各人のバックグラウンドや想いなどを通して、現在FIVEが行っている事業と実務、働き方や今後のビジョンを中心にお届けしてきました。
<前回までの記事は以下のライブラリよりご確認いただけます>
今回はFIVEの主軸の一つであるクリエイティブ面の統括を行い、チームのマネ―ジャーとして活躍している中根めぐ美にインタビューを敢行しました。FIVEの創業期よりクリエイティブデザイナーとして参画し、事業拡大に多大な貢献を果たしてきた彼女の語るデザイン、キャリア、働き方とは。そして間もなく産休を迎える彼女が目指す今後のFIVEとは。その赤裸々な思いを語っていただきました。
中根(林) めぐ美
ファイブ株式会社 Creative Designer Manager
多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後、グラフィックデザイン、ウェブサイト制作、システム開発のディレクションなどを経て、企画提案及びクライアントの広告運用に携わり、クライアントのリアルな成果を意識したクリエイティブの制作に取り組む。
2015年、立ち上げ間もないFIVEへクリエイティブデザイナーとして参画。現在はクリエイティブチームのマネージャーとしてデザインの統括を行っている。
菅野:それでは中根さん、よろしくお願いします。
中根:よろしくお願いします!
菅野:正直どこから話そうか迷っていますけど (笑)。中根さんはFIVE立ち上げ最初期からのメンバーで、もう長い付き合いになるので。
中根:一番最初の関わりはFIVEのロゴを作る時でしたね。2014年に菅野さんから「起業をしたので会社のロゴと名刺のデザインをお願いしたいです」と唐突に連絡をいただいて (笑)。
菅野:渋谷のクリスピークリームドーナツに朝の8時に集まって。
中根:本当にFIVE立ち上げの直後だったと思います。
菅野:実は、その時から「中根さんをFIVEへ誘おう!」という気持ちはあったんです。
中根:結果すぐにジョインしましたね!たしか、一番最初のオフィスは...薄暗かったですね (笑)。
菅野:六本木のね...なんか...怪しいワンルームマンションでしたね (笑)。
「世の中にないのであれば自分たちで作ってしまおう」
中根:前職ではウェブの広告運用にも携わっていたことから、制作したクリエイティブの配信結果を追ってあれこれ改善していくといった流れに理解があったので、FIVEへお誘いをいただいた時は良いタイミングだったなと。
菅野:中根さんはもともとグラフィック畑で。学生時代は美大に通っていたんだよね?
中根:そうですね。八王子の山の上の方にある大学でエディトリアルやピクトグラム、タイポグラフィなどのグラフィックデザインを学んでいました。WEBに関する授業もあって、そのあたりも。時代的にFlashが全盛期で。
「エディトリアル」
情報そのものとその価値を導線を用いて伝えることで読者にメッセージを届けるためのデザイン手法。新聞や雑誌などが代表的な例。
「ピクトグラム」
言語を用いずともメッセージを直感的に理解させる視覚記号の一つ。「絵文字」「絵単語」などと呼ばれている。
「タイポグラフィ」
活字配列を適切に行うことで読みやすさや美しさを表現する技術のこと。
菅野:フラッシャーとかが当時流行ってましたよね。そのあたりの経験もあって、WEBデザインにキャリアをシフトしたのですか?
「フラッシャー」
2000年代初期のインターネット黎明期に急速に普及したグラフィックソフト「Flash」(開発:アドビシステムズ株式会社)を使用して、WEBコンテンツ(主に映像やゲームなど)を制作するクリエイターの呼称。
中根:最初の就職先はとあるグラフィックデザイナーさんの事務所で、企業のCI(コーポレートアイデンティティ)デザイン、アーティストのWEBサイトなどの制作に携わっていました。 そんな中で「WEBの方がこれから色々とできる事も、作れるものも増えていくだろうなぁ」と思ってITベンチャーに転職をして、いろんな制作を経験して。そのくらいの時期に菅野さんとお会いしました。
WEBサイトを制作して「こういう広告でこういう風に集客しましょう」というのを自分でクライアントに提案して。広告の先のLPも作って、広告配信も自分で運用をして…という”プチ・一人代理店”のような仕事もしていたので、そういった背景もあってFIVEに流れ着いたというか。気付いたらここにいたっていう感じですね。
菅野:ちなみに中根さんは、FIVEに来るまで動画クリエイティブの制作に携わったことはあったんですか?
中根:Flashでの経験やGIFアニメといった動画の制作はありましたが、いわゆる「動画」としての制作に携わることはほぼなかったですね。
菅野:そこからのギャップはあまりなかった?
中根:FIVEが制作しているモバイルでの動画広告は、いわゆる「動画」と「バナー」のちょうど中間かなって思っていて。映像としての世界観や作品性という部分よりも、バナー的なキャッチ―さや”引き”などにもフォーカスする必要もあるかなと。「ハイブリット感」があるって印象なんですけど。
従来のバナーだと表現できなかった事や、今までバナーでは実現が出来なかったブランディングという要素に対して、動画というフォーマットになったことで表現・実現ができるようになったというか。なので、これまでに培ってきたグラフィックやWEB制作のバックグラウンドは生かせる点もあるのかなっていう感じでしたね。
菅野:そう考えたら、動画は「1フレームの絵の連続」だもんね。
中根:高速紙芝居みたいな。根本的な考え方自体は今まで携わってきたデザイン領域と大きな差異はないのかな、という認識です。
菅野:なるほど。そうやって振り返ってみると、中根さんが入社した2015年当時は市場的にも「モバイルに適した動画があまりない」という課題意識がありましたね。FIVEとしても、テレビCMなどを始めとするモバイル以外のために作られた動画素材がそのままモバイルに配信されることもあったりして。だからこそ「世の中にないのであれば自分たちで作ってしまおう」というテーマの下、中根さんが中心となってクリエイティブを作り続けて来ているという。
中根:最近はモバイルでの視聴環境を意識した動画クリエイティブが増えてきたのかなという感じですけど、入社した当時はとても少なかった印象ですね。
菅野:最初は配信する動画がなくて、僕も含めたファウンダー陣3人で慣れないAdobe Premiereを使って動画を作ってたもんなぁ (笑)。
中根:作ってましたね (笑)。
菅野:中根さんがクリエイティブ全般をすべて担っていた立ち上げ期を経て、その後はメンバーもどんどん増えてクリエイティブチームも確立されました。
中根:デザイナーの採用については、FIVEが事業的にスケールしていく中で、クリエイティブを作るためのリソースが不足していたという背景があって、積極的にインターンを受け入れ始めたり、私とは異なるバックグラウンドだったり、違った表現を得意とする方などを積極的に採用して。この一年をかけて個々の特徴や強みがバランス良く配分されているチームになってきたのかなと思っています。
長い距離を一気通貫しているクリエイティブを求められている
菅野:ここまで振り返ってみていかがです?個人としてのキャリアも、チームのマネージャーとしての役割を通じて、当時の自分と比べて何か変化はありましたか?
中根:一人で作業してる時には「自分でどうにかしないと」という気持ちが先行していましたが、マネージメントという立場になるとそれぞれのできる事やチーム単位のこの先のビジョンも含めて考えるようになりました。そのメンバーの好きなこと、得意なこと、伸びしろのある所をどのようにサポートをすれば一番最短で成長してくれるかな、とか。
FIVEが取り組んでいる動画クリエイティブって、映像一つを完成させるために辿る道がとても複雑だなって思うんです。そもそもFIVEが扱うクリエイティブが「モバイル向けであるという背景」も理解していなければなりませんし、「どのような方針で何をするのか」をディレクションしなければいけませんし、それを「デザインに落とし込んでいくスキル」も必要です。且つそれにモーションを加えて ”映像” という尺のあるモノに作り上げていく。更に配信を行った上での広告としての数字が表れるので、その数字に対してのフィードバックを繰り返して改善を行う。
そのような一連の制作に関するサイクルが今のFIVEにはあるのですが、私世代のデザイナーの感覚というか今までのやり方として「分断された領域の一部を担う」というやり方が多かったんじゃないかと思います。デザイナーはアートの領域を、分析する人はディレクションを、みたいにそれぞれの仕事を請け負っていたように思います。FIVEでは一通り全ての領域を理解して取り組むことが求められているので「やること結構多いんだな...」という印象をメンバーに持たれているんじゃないかと思いますが、「長い距離を一気通貫しているクリエイティブを求められている」ということをまず最初に理解してもらうようにしていますね。
社内にはセールスもエンジニアも近い距離にいますので、きちんとその背景だとかやるべきことを会話しながら理解して着実に進んでいけると思ってます。
また、それぞれ得意の分野があって、私の場合はグラフィックデザインやウェブデザインの領域に長く携わってきたので、その領域についてはメンバーに教えつつ、他のメンバーの得意領域については私も勉強させてもらいながらチーム全体の能力を高めていければ、という感じです。
菅野:そうですね。フェーズとしても総合的な表現力を追求していく時ですよね。
中根:はい、職人ばかりを集めるというイメージではなくて、良いモノを作る際にその背景や求められていることをきちんと理解していて、もちろん手も動かしつつ的確なディレクションが出来る人が増えていくと良いのかなというイメージです。
「その動画を作って、どうしたい?」という目的に対するアプローチ、クリエイティブだけに限らず配信の方法やデータとの組み合わせなども全て含めたコミュニケーションの提案
菅野:いわゆる映像制作会社との明確な違いはどこにあると思いますか?
中根:FIVEの制作には「その動画を作って、どうしたい?」という目的が明確に存在しているという部分ですかね。「こういうモノを作りたい」という前提がすでにあって制作が進むといったケースも多いと思うんですけど、FIVEの場合はクライアントの要望や課題をヒアリングするタイミングからクリエイティブチームも介入して話をします。また、クリエイティブだけに限らず配信の方法やデータとの組み合わせなども全て含めたコミュニケーション全体の提案をしていくので、そこが大きな違いではないかと思います。
菅野:テクノロジーとクリエイティブを両方組み合わせるモデルが意外と世の中に少ないので、広告配信の技術だけではなく、クリエイティブも一緒にプロダクト化していく事でユーザーに奉仕できるクリエイティブを創出する事ができますよね。
中根:FIVEが取り組んでいる事をデザイナーの方に説明する機会があっても、なかなか理解がされにくいというか。同じような取り組みをされている方は少ないのかもしれないですね。
菅野:入社当時に比べて今は配信先のユーザーの数もすごく増えてきています。自分たちがデザインをした映像体験や動画広告がより多くの方に届くようになってきました。そのような事実に対してどのような感情を抱いたりしますか?
中根:「それ見た事ある!」と言ってくださる方が増えたなという印象です。世間的には煩わしいと思われがちのモバイルの広告ですが、そういう広告をなくすために取り組んでいるつもりなので、貴重なフィードバックをいただく機会に巡り会えたりとか。
菅野:やっている事の影響力が増すにつれて、身が引き締まりますよね。
中根:「変なモノは作れない」という感じですね。別に変なモノを作る気はないですけど(笑)。配信をするメディアの事も考えて、クライアントの実現したい事も取り入れて、その両軸の間でバランスを考えつつその先のユーザーからの見られ方も追求していくことが大切なのかなと。
「仕事最優先ではなく自分の人生最優先で」というスタンス
菅野:そんな中根さんなんですけど、なんと、間もなく産休に入ります。
中根:この6月から。(※6月下旬から産休に入ります)
菅野:妊娠5ヶ月目まで気づかなかった。という (笑)。僕はそのような人に初めて会いましたけど (笑)。
中根:年末に忘年会シーズンで胃がもたれているのかな?って思って普通に過ごしてたんですけど、しばらくして実は妊娠しているという事実が発覚しまして…
菅野:創業期からずっとFIVEを支えてきてくれて、ライフステージの変化もあって。中根さん個人として、これからの将来をどのように考えていますか?
中根:FIVEの創業メンバーが「仕事最優先ではなく自分の人生最優先で」というスタンスを取られているので、凄く近い将来の話ですが、安心して育児に望めるかなと思っています。自分の人生を最優先にして「仕事はベストを尽くそうね」という考え方なので、私自身も出産した後も如何様にも仕事はできるんだろうなってイメージもあります。その辺の心配は一切してないですかね。とはいえ、まだ産んでないのでわからないんですけど (笑)。
菅野:ははは!(笑)
中根:育児をしながら時短勤務をされている方や、普段は在宅業務をされていてミーティングの際だけ出社される、などそれぞれの人生に沿った様々な働き方をFIVEは肯定してくれていますし、私自身は仕事の幅を限定的なものしたくはないと思っているので、復帰後も引き続きクリエイティブチームのチーム力を上げていくというミッションに取り組んでいきたいと考えています。
菅野:まずはね、無事にお子さんをローンチしていただいて (笑)。
中根:ローンチ(笑)。
菅野:ただ、復帰後にも大変な事はあると思うのでそこは一緒に解決していきたいですね。
中根:メンバーが増えていく中で当然女性の社員も増えてきているので、みなさんが安心して仕事を続けていけるような基盤を身をもって作っていきたいですね。
菅野:落ち着いたら会社にお子さんも連れてきていただいて。
中根:その頃には、プロダクトも変わっているかもしれないですね。
菅野:そうだね。この業界は半年ですべてが変わるからね。
中根:たしかに今までを振り返ってもそんな感じですね。それでもベストを尽くす事を忘れずにやっていきたいと思ってます。
菅野:引き続き一緒に頑張っていきましょう。中根さん、本日はありがとうございました。
中根:ありがとうございました!