私は2010に当時順風満帆だったリクルートの職を辞し、2011にベトナムに渡りました。28歳の時でした。 売上げ0円、借金6億円、従業員3名(私、リクルートの後輩、ベトナム人立ち上げメンバー)の状況から現在売上げ20億円超、グループ1000名まで事業を成長し今もなお事業は成長し続けてています。 そんな6年と3ヶ月の経験から若手の皆さんに伝えておきたいことがあります。 この文章のメインの対象を25歳くらいをイメージしています。ですのでもしご自分の年齢から参考にしようと思うならそれを念頭において多少補足をしてもらいながら読み進めてもらえればと思います。
さてそれでは、本題の「若者にこそアジア、ベンチャーに挑戦して欲しいと思う理由」について書きたいと思います。
1.2030までに経済の中心はアジアにシフトする。
2.成長し続ける未成熟で大きな市場と人材ポテンシャルがアジアにある。
3.その環境の中でもさらにチャレンジングな環境で働くことが自身の成長を作りだす。
4.リスク(特に短期的な)は年齢とともに大きくなり、取りづらくなる。(そして結果的に中長期的なリスクを取ることになる。)
5.若者にとってその経験は大変なだけでなく刺激的で楽しい。
それぞれについて少し細かく補足をすると
1.2030までに経済の中心はアジアにシフトする。
これについては事実ベースでどんな予測モデルを使っても定説的に言われていることなので、説明はいらないと思う。ただ一つそれを元に日本の若者目線で伝えれば、彼らがビジネスマンとしての最盛期にその時代が訪れるということである。 この事実が今の若者が念頭に置くべき最大の前提条件だと思う。
2.成長し続ける未成熟で大きな市場と人材ポテンシャルがアジアにある。
日本にいたとしても事実ベースや感覚として感じている人は多いと思う。まして成長するアジアのど真ん中で6年以上どっぷりやってきた身としては、確信をもってそれを言い切れるし、そこで勝負し続けたいと思う。 人材で言えば、例えばソルテックベトナムの習熟したベトナム人の工場作業員はもはや日本の若手の作業員と比較して技術も勝っている。そして貪欲な成長意欲を持つ若者がたくさんいる。しかも人件費は日本の1/10程度。実際ソルテックベトナムから日本に送り出しているベトナム人従業員は日本の工場ですら即戦力として機能している。(ソルテックベトナムの作業はライン作業などではなく、フルーオーダーメイドで大型の工場向けの設備を図面を見ながら作っていく習熟度とスキルを問われる作業) それをまとめる管理者やエンジニアもポテンシャルは高く、知識の吸収の早さも非常に早く英語、日本語などの外国語を話すものも多い。
また、例えばエボラブルアジアでいえばエンジニアの実装スキルは日本の大手ウェブサービスの会社から日本の社員と遜色ないレベルとまで評されるにいたり、トップクラスの人材はそれに加えて日本語や英語での母語以外での上流工程までも完璧にこなす。 そういったエンジニアを設立5年のベンチャーが本気になれば500名という単位で確保を実現できている。これがいかに凄いことか先進国の優秀なIT人材の確保の難しさを知る人なら理解できると思う。
そして、そういった優秀な人材が年々昇給して稼ぐ所得が旺盛な消費に回り、圧倒的に成長し続ける市場を作りだす。結果としてほとんど全ての市場が成長するエキサイティングな環境でチャンスをつかむことが出来る。それが現在のアジアの新興国市場だ。
3.2のような環境の中でも圧倒的成長率で伸びるベンチャーが点在する。
私たちの企業グループもその一角にいると自負している。従業員数で言うならば、6年で3名が1000名超の組織になるということは333倍の成長率ということだ。 それに伴ってポストも事業のチャンスも無限大に拡大していく。優秀でポテンシャルの高い人材と急拡大していく市場の中で圧倒的成長率で成長するベンチャーには無数のチャンスが存在する。「機会が成長を創る」というのが特に優秀な人材に対しての私の信念だが、まさにそれを体現できる環境があると思っている。もちろん同様の成長を遂げているベンチャーは他にも存在する。 自分でリスクを取って事業を行うチャンスも無限にある。
4.リスク(特に短期的な)は年齢とともに大きくなり、取りづらくなる。(そして結果として中長期的なリスクを取ることになる。)
若いうちには感じにくい心理として、数年スパンの短期的なリスク(例えば当初3年間の給与が先進国に比べて下がる。レガシーな一部の企業から保守的に海外でのキャリアを判断される可能性など。)がある。これは若いうちなら例えば収入は自分一人が新興国で生活していけばいいと割り切れば比較的簡単に取れるリスクだが、家族が出来ればそこまで簡単には判断しづらくなる。時間が経過すると自分が日本で築いたものに心理的にすがりたくなる結果、そのレールに外れたリスクは取りたくないという気持ちが現実的に強くなる。 しかし、実際はどうだろうか?アジアとの事業の関わりは日本の市場が小さくなり、少子高齢化による労働人口が減少する局面でこれから30年、40年のビジネスを行う若者がアジアを経験していないこと、その経験を積極的に評価しないような企業に大手であっても所属することは極めて長期的な(10年ターム程度で)リスクがあると感じないだろうか?? つまり自分が短期的なリスクを取って3のような状況で大きく成長すれば、今後拡大していく可能性の高い企業で働いたり、もしくはそういった事業を自分が創りだすことができるようになっていくことは長期的リスクを回避する為にも、ポジティブにいえばそのリスクよりも遥かに大きなリターンを得る為にも必要なことだ。
5.若者にとってその経験は大変なだけでなく刺激的で楽しい。
そしてこれが極めつけでもっとも大事だ。新興国は成長すると同時に未完成のものがたくさんあるいわば「未完成の絵」だ。先進国の「完成された絵」を眺めるのも楽しい。それにぴったりの額縁を考えたり、彩ることも楽しいだろう。だけども若者にとって「未完成の絵」に書き込む楽しさや「未完成の絵」が完成されていく過程を見届ける楽しさは多少の不便さよりもクールでかっこいいことではないだろうか? 同じ絵を眺めてもその絵を捉えることが出来る感性が歳を取ると無くなって来たり、その絵を眺めたり描いたりする労力よりも完成された絵を便利で綺麗な場所で眺めることを優先したくなるかもしれない。 今最も熱いアジアで自分の時間を過ごし出来るなら、未完成で成長する社会を一緒に創ることに参加するのは最高にクールだと私は思う。