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ジミーをめぐる冒険(1〜4話)

2/28に起こった自分の身に起こった出来事がベトナムで起業をして過ごした今までの中でもベトナムはやっぱり素敵な国だなと思えたことなので、ベトナムで生活を考える人そうでない人にも知ってもらうための実話を物語として書きました。

この物語が誰かの新しい物語を生むきっかけになってほしいと思いながら。

もし良ければ最後までおつきあいください。20話で完結する物語です。

(プロローグ)

今、ダナン空港の国内線ラウンジにいるんだけどこの2時間半の間に起こったちょっとしたドラマをどうか聞いてほしい。

少し小説のような書き方になるけれどどうか許してほしい。
この2時間半のドラマを書こうと思ったときに自然とこんな書き方になってしまったから。



(第一話)
2時間半前僕はダナンのオフィスで仕事を終えて出発時間の19時まで少し時間があることに気づいた。

というよりも仕事中から順調に仕事を終えたら少し時間があるなと思って、思い当たるいくつかの店を思い起こしていたという方が正しいかもしれない。

とにかく順調に仕事を終えた僕には約1時間の自由があったことは確かだ。

オフィスのエレベーターホールで下に向かうためにボタンを押す頃にはすっかり一杯やりながら早めの夕飯にありつくことに決めていた。

そんな僕は2週間以上前にホーチミンの自宅を出てから、東京ーセブー東京ーハノイーダナンを経たうんざりするくらいの大荷物を抱えていた。というよりも引きずっていた。

地上に降りてからタクシー乗り場まで少しがたがたとした歩道をスーツケースを引きずり、ボストンバッグを肩にかけビジネスバッグとクラッチバッグを小脇に抱え、さらに真冬用のダウンコートを抱えるというスタイルに辟易としながらも歩いていた。

歩きながら2つあった候補の店から一軒を外す。なぜなら交通ルール上その店の道を挟んで逆側に降ろされたあとにそのスタイルで道を渡ることを考えるとその店の本格スタイルのバーガーもしっかりとしたポーションのサーモンのグリルを豪快にのせたサラダも色褪せるくらいには憂鬱になることが想像できた。

タクシーに乗り込むときには選択肢は一つに絞られ、その店名をスマホで検索してタクシーのドライバーにつげていた。

(第二話)
タクシーは迷うことなくその店に向かい10分もしないうちに到着した。
少し誤算だったのは、その店の前の道路も店と逆側にしか着けれなかったということ。
それでも万が一その状況になっても交通量と道幅はもう一つの候補と比べるまでもないことは意識をしていたのだから誤算というのは大げさな表現かもしれない。

その時の時刻は17時を少し過ぎた頃で、道に向かってオープンなその店にもまだ他の客の姿は見えない。

はやる心を抑えながら、それでもいつもより少し足早に道を渡る。
渡り終えて、歩道を塞ぐように止めていた一台のバイクに少しばかり苛立ちながらもスーツケースがなければ十分な隙間かもなと思える余裕がその時の僕には確かにあったことは間違いない。

店内にはやはり他に客はおらず、一番道路よりの4人席に道路側を向いて贅沢に一人で腰掛ける。
荷物は放り出すように席の横と向かえのイスに置く。

振り返るようにして店員を呼ぶと一番奥にひとかたまりで座っていたのでもしかすると繁盛店の混雑前のひとときを雑談でもして楽しんでいたかミーティングでもしていたのかもしれない。

それでもすぐにその店の特徴ある新聞に似せたメニューを持って駆け寄ってくれた。
新聞に似せたメニューを見ながら、来るたびにハイセンスだなと思う店内を少し古くなったGalaxy7で撮影しようと思った。

特に意識もせずパシャパシャと2カットほど撮った写真の出来栄えに気分を良くして早速インスタグラムに投稿する。

メニューに目を通しながら、なんとなくもう一つの候補のバーガーに未練がましく思ったのか一見メニューに見当たらないバーガーを店員に確認するように聞いてみる。

申し訳なさそうに「ソーリー、ノー」という店員にサラダはあるかと聞き、いくつかのサラダからチキングリルのサラダを選び、まだ早い時間だしなと自分に言い訳しながら、カルボナーラも頼んだ。

ドリンクは白ワインを1/4サイズという表記に珍しいなと思いながら、ちょうどいいかなとそれを頼む。
最後にウォーターをと頼んだときにボトルで?と聞き返された僕は有料なんだなと思いながらボトルでと返した。

この時まで本当に幸せな仕事後、フライト前の時間を満喫していた。


(第三話)
少しの時間注文した品を待ちながら、スマホでメールやチャットをチェックしていた。
2、3の返信を送信する頃にはサラダが届く。チキンのグリルが思ったよりも大ぶりでいい匂いがする。
4枚のスライスされたパンも一緒にテーブルに運ばれ、きっとこれは残すだろうなと思った。

あー期待以上だと思ったときに店員が片手にボトルを片手にグラスを持ちながらテーブルに来る。そういえばあまり聞いたことのない品種だったなと思いながら確認するように見せるボトルのエチケットが思いの外かわいくて、飲む前からあたりだなと思う。
グラスにきちんとテーブルで注いでくれるスタイルもカジュアルな店ながらしっかりとした接客で好感がもてる。
エチケットを見せ、クラスをテーブルに置き少しの間、店員がコルクを抜こうと格闘するがどうもうまくいかない。
僕の方をみて少し困ったようにはにかみながら、向こうで空けてきていいかと尋ねる。
僕は少しの愛らしさすら感じなから、もちろんとうなずく。

サラダを一口、二口頬張るうちに彼女は戻ってきて僕のグラスにテイスティングにしては少し多めのワインを注ぐ。
こういうときにテイスティングにしては、少し多めの量を口に含むのは生来の貧乏性なんだと思う。
少しアルカリ分を強めに感じる個性のある味わいに悪くないなと満足しながら彼女に向かってうなずく。
彼女はすぐにグラス一杯分のワインを注いだ。

しばらくワインとサラダを楽しんでいるとワインクーラーにボトルを入れて彼女がテーブルに置く。あーそういえば、1/4というにはさっきの量はいやに少なかったなと納得しながら、ボトルごとテーブルにキープしてくれるそのスタイルに感心した。
そしてサラダも少しを残す頃に彼女はグラスにもうグラス一杯分程度のワインを注いだ。


(第4話)
今思えば今日の数奇な運命の始まりはこの時だったのだと思う。
少しの冷静さがあればすぐにでも気づけたことだった。真っ先に届きそうな水がまだテーブルにないこと。明らかに目分量で注ぎ足されたワイン。

それは1/4のワインとボトルの水のオーダーが誤ってボトルのワインの注文になっていることを示していた。
でも、その時の僕は長旅の最後に取る食事に水をさされたくはなかったのだろう。彼女に嫌な思いをさせて自分が嫌な思いをしてまでそのことを争いたくはなかった。
だから僕は残り30分ほどの時間で味わいながら飲むには多すぎるワインをそのまま受け入れることにした。

もちろん、こういった瞬間に「ベトナムだから」とよぎる気持ちがないと言えば嘘になる。ただ日本で英語でそれをした時に十分に起こり得ることなのだと冷静に判断できる良識と経験を7年以上に渡るベトナムでの生活で持ち合わせている。

そして何より健気に減ってきたグラスを見計らってワインをつぎに来る彼女にも運ばれてきたたっぷりなカルボナーラにも満足していた。

そうとなったら残された30分足らずの時間でたっぷりのワインとカルボナーラを楽しむに尽きるとばかりに、さっきまでのペースからさらにピッチを上げる。
気がつけば最近はめったに完食することのなくなったパスタを思わず完食する程度に酔はまわっていた。

6時10分前に流石にそろそろ会計をと思い、チェックと告げて運ばれてきた金額は950,000VND。日本円にして約4000円のその金額はワインをボトルで空けて2品を頼んだのだから、仕方がないとはいえ一人のフライト前の夕食としては高すぎた。

その思いが生来の貧乏性と相まって会計を待つ間さらにワインをぐびぐび空けさせ、UBERリクエストをして1分もせずに来たドライバーをさらに1分待たせて、名残り惜しそうに最後の一口を飲みながらボトルに少しのワインを残して店を後にした。
スマホのデジタル表示は17:59をつげていた。


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