ウェブデザイナーを志して、いろんなウェブデザイン会社やクリエイティブエージェンシーを希望されている新人ウェブデザイナーさんへ向けてメッセージです。
私はこれまで24年間ウェブデザイナーとして働いてきました。チーフデザイナーとしてお客様のウェブサイトをおそらくは数百件規模で制作いたしましたし、その後ウェブディレクターとしての案件も含めると相当な制作に携わってきたと思います。
そのなかで、新人デザイナーがプロになるための段階について、ある程度具体的に想定できるようになりました。実は今までこういうことは一切公開というか、一部のデザイナーにしか伝えてこなかったのですが、今回は心機一転、新しくデザイナーとして活躍される方たちにエールをこめて、私が大事にしてきたプロフェッショナルデザインの秘訣をお伝えしたいと思います。
デザイナーの成長過程
私はデザイナーの成長過程には3つの段階があると考えています。
- 1:素人から、「決まった感」の理解まで
- 2:「決まった感」をベースにした、クライアントの要求に沿うものが作れるまで
- 3:クリエイティブが結果を出せるまで
もしかすると、デザインの4原則とか、色彩なんかの話を期待されかもしれません。
そういうものは、すべて1を実現するために内包されています。それも含めて解説を行います。
1:素人から、「決まった感」の理解まで
まず、突然出てきた謎ワード「決まった感」ですが、そこから解説します。
Webデザインでもロゴでも、ポスターでもそうですが、プロが作った制作物には、そのもの自体がしっかりと認識されるような雰囲気があります。すごく抽象的ですが、あなたの好きなブランドや作品のビジュアルをなんでも良いので思い出してください。高級ブランドかもしれないし、ゲームかもしれない。でもそのもののもつ雰囲気に何かグッとくるものを感じていますよね。それです。
デザインを学ぶ際に、一般的にはデザインの技術自体を学ぶことからスタートしますが、
この「決まった感を作れる」ことをゴールに設定して技術を学ぶことが重要なことはあまり知られていません。モニターに表示された白いキャンパス、photoshopでもIllustratorでも、figmaでもなんでも構いません。その白いキャンパスに何をどのように配置して「決まった感」までたどり着くか。これが理解できるところまでがデザインの第一過程です。では、どうやったら身につけることができるのでしょうか。
この段階で重要なことは「決まった感」を自分の作品とどのように乖離しているのかをひたすら考え、デザインの基礎を愚直に学ぶことです。デザインの基礎は、現在では非常に多くの先輩デザイナーが動画や書籍で教えてくれています。そういうったものを参考にしてください。
ただし、この段階で1つ絶対に気を付けるポイントがあります。それは、「決まった感」について自分自身の力のみで身につけることが恐ろしく難しいということです。
そのため、一般的には技術やテクニックとは別に「決まった感」を作り出す方法を教わる必要があります。稀に自力でこの段階を攻略していく猛者を見ることがありますが、実はその人たちは後の3番で大変に苦労することになります。
2:「決まった感」をベースにした、クライアントの要求に沿うものが作れるまで
さて、自分自身の理解で、「決まった感」を理解できたら次はそれは「当たり前」のベースとしてクライアントの要望に適うデザインを作っていきます。
この段階で重要となるのは、その案件自体の理解です。
今から作り上げるものが一体なにを目的にしているのかをとにかくよく考えることです。だいたいうまくいくデザインは、そのデザインが利用されているシーンまで鮮明に思いつく物です。
そして、当然のことながらあなたがFigmaで美しくデザインしたものは、HTMLに変換されてウェブサイトとして公開されます。逆をいうと、HTMLで変換されてはじめて価値が出てきます。そのため、詳細にWebの技術を学んでおく必要があると私は考えています。実際イーストクリエイティブでは、ウェブデザイナーとコーダーの両方の技術を十分に会得したクリエイターがウェブディレクターとしての肩書きをつけることができます。
少し話が脱線しましたが、決まった感は、一度つかむと不思議なことに自分自身で「決まってない」が分かるようになります。そのため、クライアントから提示された素材を利用したり、時には新しく自分自身で素材を作り上げていく力が必要になってきます。
そして、最後に限られた時間のなかでデザインを制作する力を身につけるということです。
デザインに対しての要望は特別な環境で働くデザイナーを例外にすれば、突然依頼が来ることが日常茶飯事です。その依頼に対していつでも感度よく対応していくことが必要になります。
3:クリエイティブが結果を出せるまで
ここがクリエイターの本懐となりますが、つまり、2の段階で残念ながら止まってしまっているデザイナーの方は多く存在します。もちろんプロとして第一線で活躍しているデザイナーの方はこの3番を常に実現することで価値を持ち続けているとも言えます。
さて、クリエイティブが結果を出すとはどういうことでしょうか。
2番までの技術があると、美しく、見た人に「素敵!」「かっこいい」「上手!」と言われる状態になっています。決まった感を理解し、引き出しが多く、自在にデザインを進めていくことができます。
これは一種のパフォーマンスです。お客様の目の前でパッと煌びやかなものも見せることが重要なのではありません。そうです、最もデザインで重要なことは、そのクリエイティブが「結果」を出せるか否かということになります。
クライアントの要望をどういった「やりかた」で解決したのでしょうか。
そのクリエイティブが「ただの美しさ」「ただのインパクト」になっていないでしょうか。
残念ながら、都内の新しいショップの看板などをみると、本当にそのデザインでお店のお客様に対して伝えたいことが正しく伝わっているのだろうか?ということが多くあります。そのデザイン自体は美しく、考えられているものに限って、私は致命的にずれている感じることがあります。
この結果を出すためのデザインは、クリエイターの本懐です。クライアントが実現したいものを深く理解し、その手段としてのデザインができた時、あー、ほんとによかったな。と、安堵してはまた次の制作物に取り掛かるわけす。
さて、いままでにあまり語られていなかったようなデザインの成長過程を公開してみました。
あなたが取り組み、目指すプロのデザイナーとして少し理解が深まったのなら幸いです。
そして、当社イーストクリエイティブではこの3番を常に重要視してお客様とのコミュニケーションを大事にしています。デザインのプロを本気で目指す若いクリエイターの応募をお待ちしています。