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Forbes Japan 世界を変える「30歳未満の30人」選出 代表取締役 久世大亮

https://forbesjapan.com/articles/detail/22925


地方出身の非大卒向けに東京での衣食住を無償で提供し、ビジネススキルを学ぶ機会を提供する人材育成事業、その名も「ヤンキーインターン」を手がけるハッシャダイ。2018年4月にDMM.com(以下、DMM)の子会社となった彼らが挑む「日本の教育を変える社会実験」の全貌を、代表取締役 久世大亮が語る。

10年かかることが3カ月で可能になるかもしれない

──最初に、ヤンキーインターンを始めたきっかけを教えてください。

ぼくは京都で生まれ育ったのですが、高校時代は友達がほぼヤンキーという環境でした。ほとんど学校に通わず、パチンコやアルバイトに明け暮れる日々で。このままではいけないと思い、一念発起して猛勉強をして大学に通ったんです。大学でも勉強はあまりしなかったのですが、インターンでさまざまな経験をしたことが自分を成長させてくれました。

その後に地元に帰ってみると、友達は高校のころと何も変わっていなくて。ぼくが経験したことを友達も経験すれば変わるのか、どうすればこうした「体験格差」をなくすことができるのか、という好奇心から始めたのがヤンキーインターンでした。

ヤンキーインターンでは、地方にいる非大卒人材に東京まで来てもらい、衣食住を無料で提供しながら、3カ月間でビジネススキルを学んでもらいます。これまで約300人が参加し、就職を希望した9割以上が就職先を見つけています。

──2018年4月にはDMMの子会社となりました。何か変化はありましたか?

何もないですね(笑)。ただ毎日、DMMの亀山会長に相談をするんですよ。昨日も3時間くらい喋りましたし、週に何回かは直接会って話をさせてもらっています。

──資本提携を決めた理由は?

資本提携を行う半年前くらいから亀山会長から声をかけられていて、最初はのらりくらりとかわしていたのですが、話を聞くうちにできることの違いが明確にあると気付いたんです。つまりハッシャダイだけでやっていたら10年かかることが、DMMと組むことで3カ月で可能になるかもしれないと。

2020年の東京オリンピック以降、日本の景気は確実に悪くなると思うんです。その前にハッシャダイとしてのブランドを構築し非大卒市場を大きくしようと思い、子会社化を決めました。


原宿のオフィス。約30人のスタッフはほとんどが20代だ。

「移動」と「教育」の社会実験

──ヤンキーインターンによって、いまの社会の何を変えたいと思っていますか?

最終的に目指したいのは、18歳になるときの選択肢に「ハッシャダイ」が加わること。現状は、大学に進学するか、地元の企業に就職するという選択肢しかありません。

しかし、高卒で就職しようとするとひとりの生徒が応募できる企業は1社までとする「1人1社制」という慣行がある。そのうえ「Fラン(=Fランク大学)」と呼ばれる大学は増え続けていて、そこに属する学生ほど奨学金を借りる割合が高いという現状もあります。大学卒業後に就職できなければ、収入がないのに借金を数百万抱えている、といった負の連鎖が起こっているのです。

ぼくらは「移動する体験」を提供することで、こうした状況を変えていきたい。移動をすることによって経験が増え、さまざまな人の価値観に触れることができるからです。やっぱり家族や友達といったいつもの集団のなかにいると、人間はなかなか変わることができないですから。

──ヤンキーインターンで東京に来てもらうのも、移動をしてほしいからなんですね。

そうなんです。2018年6月からは、東京以外の選択肢として「ハッシャダイリゾート」という事業も始めています。交通費と滞在費を負担することなく、リゾート地でアルバイトができるというプログラムです。

これはぼくにとっては大きな社会実験で、将来的には高校でも実践できるようなプログラムにしたいと思っています。

──社会実験というと?

ヤンキーインターンを通じてわかったのですが、地方の非大卒の人々をオンラインで啓発して東京まで来てもらうというプログラムでは、最初から「変わりたい」と思っている人にしか情報を届けられません。しかし多くの人はそもそも「変わりたい」と思っていないので、いまの方式には限界があるなと。言い方は悪いですが、彼らを啓発するのではなく、意識の低い状態のまま移動させて自然と学んでもらうのが、この事業でやりたいことなんです。

具体的には、プログラムを通じて彼らをリゾート地に移動をさせるだけでなく、就業地域の観光ガイドの育成プログラム提供等、若い就業者に凡用性の高いスキルの取得を支援し、スキルの習熟レベルに応じて時給が上がる仕組みを導入することで、「時給UP」という目の前の目標を追っていくうちにいつのまにかスキルが身についている、というモデルが機能するかを試しています。

教育者の方からは不純と思われるかもしれないですが、これはぼくたちが本当にヤンキーインターンに参加してほしかった人たちに教育を届けるための方法だと思っています。というのも、頭のいい人から「勉強しろ」と言われても人はなかなか変わらないですよね。ぼく自身も高校生のときはいわゆるヤンキーで、ほとんど学校に通わずに勉強をしていませんでした。でもアルバイトの時給を50円上げるためには、ひたすらマニュアルを読んで勉強をしていた(笑)。

だから、お金を稼ぎながら、夏は北海道、冬は沖縄に行けるだけでなく、現地で仲良くなった友達と一緒に勉強を頑張ることで時給も上がるような環境があったら、知らない間に人の可能性が広がっていく仕組みがつくれるかもしれない。最終的には、この成果を論文にまとめて国の認可をとり、高校という枠組みのなかで提供していけたらと思っています。

──今後は、伝統的な「教育」の領域にも切り込んでいくと。

はい、ハッシャダイリゾートを始めた理由は、既存の教育の仕組みが敗北したと思っているからなんです。そうしたなかで、ぼくたちの取り組みは最初は理解されないと思いますが、少しずつ「新しい学校のかたち」をつくっていきたい。意識の高くない人たちが意識の高くないまま向上していく──そういう仕組みこそが、いまの教育には必要だと思っています。

今後日本には、アジアからの移民も、欧米のトップ人材も来なくなる可能性がある。言葉の壁もあり、経済も成長せず稼ぐことができないからです。さらに日本の優秀な人たちもどんどん海外に出ていってしまい、地方ではますます少子高齢化が進んでいく。そのときに日本を支えるのが、経済を支えるために大きな価値を発揮できるのが、いまはスポットライトの当たっていない、地方の非大卒の子たちになるんじゃないかとぼくは思っているんです。



久世大亮◎1993年京都生まれ。ハッシャダイ代表取締役。京都で生まれ育った自身の経験から、地方と都市の「体験格差」を埋めるための非大卒向けプログラム「ヤンキーインターン」をスタート。2018年4月にDMM.comと資本提携を行い、DMMの子会社となる。https://hassyadai.com/

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