2015年に創業したカウンティア株式会社は、ITや財務事業の開発を行う、いま注目のベンチャー企業。代表取締役の姥貝賢次さんは、学生時代にフリーランスのプログラマーとして活躍し、その後、公認会計士の道へと進んだ異色の経歴の持ち主です。姥貝さんに創業までの歩みと、今後の展望についてうかがいました。
姥貝 賢次(うばがい けんじ): 1980年、長野県生まれ。学生時代からフリーランスのプログラマーとして活躍。早稲田大学大学院会計研究科を卒業後、公認会計士資格を取得。2008年に監査法人トーマツに入社し、会計監査やシステム監査に従事する。2015年にカウンティア株式会社を立ち上げ、財務事業に参入。
公認会計士をめざしたのは、チームで仕事をして経済の最前線にチャレンジしたかったから
――なぜ、プログラマーから公認会計士に転身したのですか?
きっかけは「自分と社会との繋がりを広げて、もっと大きな事業にチャレンジしたいな」と思ったからです。
じつは高校生のときからパソコンオタクで、学生時代は秋葉原に通ってパーツを集め、自分でパソコンを組み立てて楽しんでいました。そのうちプログラミングにも興味が出てきて、独学で勉強し、ウェブサイトの運用と実装が一通りできるようになったんです。時代は、NTTドコモの携帯電話IP接続サービス「iモード」が流行りはじめた頃。ためしにiモードサイトをつくってみたら、多くのアクセスが集まってきて、それがうれしくて(笑)。もちろんお金にもなったのですが、何よりプログラミングそのものが楽しく、ますますのめり込んでいきました。やがて仕事としてECサイトなどの受託開発も手がけるようになり、昼は授業、夜はプログラミングという生活を卒業まで続けました。
自分自身でキャッシュフローを回す事が楽しくて、4年生になっても就職活動はまったくせず、大学卒業後もそのままフリーランスのプログラマーを続けることにしました。でも1年ぐらい経った頃から、ふと「社会の一員になって働きたい」と思うようになりました。毎日、ひとりでパソコンと向き合うだけで、誰とも会話をしない。部屋から出ることもあまりないから、社会性が欠落してしまう。「この生活を続けていたら、社会から取り残されてしまう!」という危機感が強くなる一方で、「仲間と一緒に仕事をしたい。スーツを着たビジネスマンになってみたい」という気持が芽生えてきたんです。
一人で仕事をするのは、なんだか物足りない。そのことが、フリーランスとして働いてみて、よくわかりました。次の職業として公認会計士を選んだのは、もともと「経済」が好きで、コンサルティング業務にも興味があったからです。
――でも、難関といわれる国家試験に合格しないと、公認会計士にはなれませんよね?
ええ、それでさっそく公認会計士資格の専門学校に入って試験勉強を始めたのですが、授業がチンプンカンプンで……。「これは、本気でやらないとまずいぞ!」と思って、運営していたサイトを閉鎖。受託開発もやめて勉強一本に絞り、早稲田の会計大学院に進学しました。そこで貯金を食い潰しながら2年間勉強を続け、2008年に卒業してどうにか公認会計士試験にも合格できました。その後、晴れて大手監査法人のトーマツに入社が決定したときは、「やったぞ〜!」と叫びたい気持ちでしたね。
――トーマツではどんな仕事をしていたんですか?
おもに大手企業の監査です。監査とは、企業の公開している財務情報が適正かどうか判断する仕事です。財務情報は株価などにも影響が出るため、「監査」は経済のなかでもとても重要な業務です。やりがいを感じていましたね。
でも、3~4年経ったころから、クリエイティブな仕事もしたいという思いがふつふつと湧いてきて。企業が行った経済活動の監査ももちろんやりがいはありますが、それよりも自分で商品を生み出して、それに世間が反応して、キャッシュフローが生まれて、またそのお金を使って商品を開発して……というようなビジネスをやりたくなったんです。「ああ、やっぱり自分は“ビジネスの仕組みづくり”が好きなんだな」と、公認会計士になったことであらためて実感できましたね。
新たなチャレンジとして、2014年にトーマツを退職して起業することにしました。
新しい財務の仕組みをつくりたい
――いよいよ、カウンティア株式会社の立ち上げですか?
いえ、トーマツを辞めたあと最初に立ち上げようとしたのは、ファンド事業でした。ファンド事業とは、高い成長率が見込める未上場会社に狙いをつけて資金を提供する投資会社のことで、公認会計士としてのキャリアも生かせると思いました。
設立に向けて、先輩会計士から日本を代表するキャピタリストの方を紹介してもらい、資金集めなどについての助言をいただきました。知人のつながりから政府系金融機関や大手広告代理店とパートナーシップを組み、20億円程度の資金提供を受けられる寸前まで話を進めたのですが、最後の最後で話がまとまらず、ご破算に……。結局、ファンド事業は立ち上げることができませんでした。
そのことを先輩会計士に相談すると、「もう一度チャレンジするのもいいけど、姥貝くんはITが得意なんだから、そのスキルを利用して新しい財務の仕組みをつくれば良いのではないか?」とアドバイスをしていただきました。「IT×財務」領域のイノベーションは、当時はまだ日本でフィンテックという言葉や概念は浸透しておらず、僕は手探りで「財務とITが融合した事業領域」を探し始めました。
それから図書館に通いつめて、「IT×財務」のヒントになりそうな資料を読みあさりました。3か月経った頃、おぼろげながら新しいビジネスの形が見え始めてきたので、2015年3月、カウンティア株式会社を立ち上げるにいたりました。
――「カウンティア」にはどのような意味が込められていますか?
計算するという意味の「カウント(count)」と、未開拓領域を切り開くという意味の「フロンティア(frontier)」を組み合わせた造語です。「財務の未開拓領域にチャレンジしていこう!」という気持ちを込めました。ただ、会社は設立したものの、スタッフはもちろんゼロ。しかも、僕がプログラミングをやっていたのは、10年も前のことだったので、最新技術がわからない。まずは先端のITに精通した仲間を集めることから始めなければいけませんでした。
――どんな創業期でしたか?
まず最初は、会社としてキャッシュフローを成立させる事を目指して収益事業を作る事にしました。そこで公認会計士とWeb事業経営の経験を活かして、他社の財務管理や資金調達などの財務戦略のアドバイスを行う「財務事業」をスタートしました。ベンチャー経営者に寄り添い成長へコミットする業務は、やりがいもありますし、今も会社として重要な事業の一つとして存在します。
ベンチャー企業の財務支援をし、いくつかの会社に出入りするうちに、新しい事業に一緒にチャレンジしてくれる3人の仲間と出会いました。その3人の協力を得て、2017年からはイノベーション事業開発に本格的に取り組むことにしたのです。
考えながら動ける人材に来てほしい
――いま、どんな人材を求めていますか?
IT×財務領域は新しくてまだ成熟されていないので、ゼロベースで考えて構築できる人材が欲しいですね。目安として実務経験が3年以上ある方が望ましいのですが、スキルよりも、自分自身の頭で考える習慣が身についている方に来ていただきたいです。
いま、カウンティアでは、セキュリティや最先端技術を駆使するほか、規制や財務管理アルゴリズムなどに対してもみんなで意見交換しながら進めています。
海外の文献などを読みながら最新のテクノロジーを使いこなすバイリンガルのエンジニアや、最新の金融規制を解釈して実践に落とし込む弁護士や会計士もいます。そういった人と一緒に仕事をするのは、本当に学ぶことが多く、楽しいと思いますよ。自分のスキルを磨きたいという人にもおすすめの環境です。
――最後に、今後の目標を教えてください。
新事業の開発に力を入れていきます。「財務事業」も継続して行い、自ら企業ファイナンスの最前線に立つことで現場のファイナンスへのニーズへ最前線で深く理解していきたいですね。財務の現場をもっと深く理解し、新しい事業を次々に創っていきたいと思います。
数年後には、新しい事業に次々とチャレンジを続けることで、財務の未来を切り開き、新しい産業を作っていく会社でありたいです。
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