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作家、作品、ファンのためにすることすべてが、コルクの仕事の領域になる

株式会社コルクは2012年に創業。クリエイターのエージェンシーとして始動し、徐々に事業範囲を広げてきた。

2019年からは事業部制を導入。「マネジメント」「MD」「スタジオ」の三部に分かれ、連携を保ちつつそれぞれが事業伸長に注力している。

今回はマネジメントチームの中村から、受け持ち事業の内容、現状と見通しを開陳してもらう。

■マネジメントチーム 中村元 の場合

中村元はマネジメントチームの責任者を務める。

作家のマネジメントをする仕事は、コルクの創業時からあるもの。当初は所属作家からフィーをいただき、権利関係の管理およびプラスアルファをしていくという、いわゆるエージェントビジネスを手がけていた。

そのうちに扱う領域が広がっていく。作品世界を商品に落とし込んで現実世界に具現させ、ファンに喜んでもらうことも始めて、それはMDチームとなっていく。

さらにのちには、新人発掘・育成と新しい作品供給のあり方を模索するスタジオ事業も始動。そうした「自主事業」を盛んにしていくこととなる。

そんな中でもマネジメント事業は、コルクの根幹として変わらず継続されている。ただしそこにも自主事業化の波は到達。作品や作家のコアなファンにコミュニティを提供する「コヤチュー部プレミアム」(小山宙哉)や「文学の森」(平野啓一郎)などの運営が始まっている。

「IPのため作家のため作品のため、そしてファンのためになることなら、すべてコルクの仕事の領域になると認識している。だからこれからも事業として安定するレベルの活動があれば事業分化していくし、そうなるのが望ましい。『ドラゴン桜』に端を発する教育事業などは、事業部として独立していければ理想的ではある。

作家や作品世界の味わい方を深化させていき、それにつれて事業も広がっていくというかたちは、創業時から佐渡島が構想していたことだった。立ち上げのころからディズニーを意識した言葉はよく発していたので。5年ほどでエージェント事業を固めて、次のフェーズへ入っていって現在があると理解するのがいい。

だから、根本がエージェント業にあるのは変わらないでいるべきだが、単なるエージェント業からは脱却していかなければ」

中村がコルクにジョインしたのは2018年10月のこと。

前職は電通で、辞める直近はクライアントの新規事業創造を担当していた。

「かつて広告は社長案件だったが、メディアの変化で宣伝部長レベル案件ほどに価値を下げていた。電通としてはクライアントへ事業提案して価値提供能力をアピールしたかった」

事業は拡大傾向にあったが、クライアントごとに熱量の濃淡がどうしても出てしまう。自分の時間を100%好きなものに費やしたい気持ちが高じて、転職とあいなった。

転職後も、やっていることはそれほど違わないというのが実際の感覚だ。

「前職の仕事も、法人の価値定義をし直して、本来的な思想にあった事業は今において何かを探るものだった。たとえば隣のチームがやっていたPJで、スノーピークはアウトドアグッズを扱う企業だが、社長は人間回帰をしているのだとおっしゃっていた。ならばそのストーリをどう拡げ、事業として具現化していくかをいっしょに考えた。これは作品をリアライズしていくコルクの仕事と同じこと」

もちろんコンテンツに特化しているコルクでの事業のほうが、ピュアで展開も早く、そして持続的だ。

「コルクに所属してくださっている作家・作品は長く愛される本質的なものであるのが共通している。それ自体が価値だから、コルクの事業は持続的であることを常に気にする必要がある。誰かが困っているときに、寄り添ってくれたり元気付けてくれたりする作品・作家でありたい。人生の一冊になるというか、大学時代に出会った親友っぽい存在。しょっちゅう会わずとも、人生の節目に立ち返る場所であるような」

作家のマネジメントをしながら作品を深化させて事業化する。これは前例のない仕事だ。どう臨むかといえば、まずは作品の本質的な価値をちゃんと明確化し言語化すること。感想をつど言葉にすることは自分とスタッフで徹底しているところ。

作品を熱く語り、そのよさを信じることからすべてが始まる。そうすると、作品をリアライズする道筋も見えてくる。

たとえば『ドラゴン桜』をリアライズした、リアルドラゴン桜。学校で実際にドラゴン桜を活用した授業を展開するものだ。『ドラゴン桜』はエンタメ受験漫画だが、人は本来学習する生き物だし学習はおもしろいことだとの普遍的メッセージが含まれている。

そうした切り口で眺め直すと、この作品を誌面以外のどこで連載すべきで、どの部分を再編集するかが見えてくる。そのひとつとして、学校の教室という場が浮かんできたりする。

読み直し・再編集がいくらでもできるのが、コルク作品のいいところ。スタッフ間では、いい意味での誤読を積極的にしていこうと話している。作品は作家のものであるとともに読者のものでもあるのだから、この作品はこう誤読できる、社会的価値を創出できるぞと、よき誤読者になろうということ。

エージェントとしては、誤読を許してもらえるだけの信頼関係を作家と築いておく必要があるのは当然である。

近年の事業部の数字はどうか。

2年前の期に数字は落ち込んだ。作家や作品の周期としてどうしようもないことだが、大きい利益を上げるものがないタイミングとなったので。社員を採用したりと人材への投資も重なったこともある。

昨期はドラマ化などもあり、数字としては持ち直し。

今後の見通しは、ゆるやかな右肩上がりは期待できる。そのためのエンジンのひとつは、小山宙哉や平野啓一郎のファンクラブで価値を貯めていき、そこで生まれたコンテンツを外へ広げていく拡大再生産のしくみをつくること。

ただしそれで爆発的な伸びが期待できるわけではない。マネジメント・エージェント事業での劇的な成長は模索中であり、まずは着実に持続的に伸びるしくみづくりを確立したい。

現在事業に関わる人員は15人ほど。仕事内容は幅広い。作家のマネジメントは、文字通り作家の横にいてすべてのことをやる。作家担当以外だと電子書籍をつくる、ファンクラブの運営、ファンの新規獲得のための話題づくり……。

ゆえに採用時に求める能力は多様。ただ、誤読でいいから作品のよさをちゃんと自分の言葉で語れて、信じられるかどうかは必須といえる。

それにくわえていい人で頑張り屋、自分の考えに固執せぬ柔軟さも併せ持っていれば言うことなし。

今後の事業展開として、作品を濃く深くしていくコルクの特色は生かしつつ、あまねく広めていく機能の弱さを克服したいというのがある。つまりは新規顧客開拓。そこを担える人は積極的に求めている。PR会社でリアルの営業をしていた人、アプリの新規顧客開拓が得意だった人などをイメージ。

同じ理由で、ファンとコネクトするデータを見れる人もいい。アプリ・メディア系でコンテンツ編成をしていた人、コミュニティ運用ができる人などにも注目している。

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