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WEBメディアの多様化と変化の時代をどう戦うか。今こそ必要な「サービスの軸」ーUSEN Media 成内英介×コネヒト 高橋恭文対談

2022年4月1日、コネヒトの新経営体制がスタートしました。

本エントリでは、新代表の高橋恭文が株式会社USEN Mediaの成内英介社長と対談した模様をお届けします。

WEBメディアにはどのようなことが求められているのでしょうか。

今回はUSEN-NEXT GROUPの株式会社USEN Media(東京都品川区、以下USEN Media)代表取締役社長の成内英介さんとコネヒト新代表の高橋が「メディアとインターネットのこれから」について語りました。

グルメサイトの成長期を共に過ごした2人が、今後のメディアを考えます。「家族」と「食」の領域の違い、共通の課題から見えてきたこととは?

飲食向けインターネットサービスの拡大期を振り返って

―まず、成内さんのこれまでの経歴と高橋との関係性についてお聞かせください。

USEN Media代表取締役社長 成内英介氏(以下、成内氏):2000年に株式会社USENへ入社し、ネット系商材の営業を経験した後、人事採用担当となりました。六本木のミッドタウンのオフィスで「新卒500人採用」という上り調子だった2008年末、「リーマンショック」が起こり、ビジネス環境が激変し、会社存続を目的に現場に戻りました。

自分が採用に携わった社員のためにも活路を開きたいという思いもあり、料理人の顔が見えるグルメメディア『ヒトサラ』の前身である『グルメGyaO』の営業責任者を務めることになりました。

当初は赤字でしたが、売上が順調に伸びて、二期で黒字化に成功しました。

その要因として、飲食店向けの『グルメGyaO』と一緒に、カカクコム社の『食べログ』も一緒に代理販売をするという営業手法が大きかったと思います。

当時、カカクコムの担当が高橋さんで、2年半くらい毎週のように互いのオフィスを行き来していましたよね。

高橋:懐かしいですね(笑)。当時は『食べログ』の担当として、大変お世話になりました。

2000年代後半~2010年代前半は、グルメサイトの業界が大きく成長し、現在の飲食店向けのインターネットサービスの原型ができていった時期でした。
そのような中、飲食店向けの『グルメGyaO』 と顧客向けの『食べログ』の場合は、異なる価値を掛け合わせることで「1+1=2」以上のシナジーがありました。飲食店にもユーザーさんに向けても、異なる価値を掛け合わせた営業ができていたと思います。

成内:セット率7割という時期もありました。高橋さんは、会社の意向と代理店の意見をうまく調整してくれていました。USENには北海道から沖縄までの営業のセクションがあり、全拠点を回ってくれて現場感をとても理解してくれていたので、ありがたかったです。

高橋:『グルメGyaO』の事業に灯をともすことで、成内さんが人事採用として関わった人たちの活路を見出したいという志をリスペクトしていましたし、いい拡大の仕方だな、と思っていました。

USENさんは、飲食店とのつながりが深い企業で、成内さんは飲食店目線でのフィードバックをしてくれたのを覚えています。

―2012年には、『グルメGyaO』からシェフにフィーチャーした『ヒトサラ』にリブランドされています。

成内:じつは媒体名のネーミングの際、高橋さんの意見を参考にさせていただきました。

『グルメGyaO』という字面は検索エンジンの検索窓に入力しにくいという課題がありました。以前『食べログ』とネーミングした後に検索流入数が増えたと聞いていたので、『ヒトサラ』というシンプルな媒体名にしました。

高橋:当時は、グルメサイトは数多くありましたが、あそこまで料理人の世界観に振り切ったメディアは珍しかったですよね。

2社が目的を明確にしてすり合わせ「協業」に成功

―飲食業界向けのサービスを提供する別々の会社が、タッグを組んで成功した良い例だな、と感じました。

高橋:お店側の情報を持つ『グルメGyaO』とユーザーのクチコミを持つ『食べログ』の2つを合わせることで、外食体験や、外食産業の価値を上げていきたい、という目的が一致していたと思います。

「飲食業界に役に立つものを提供する」という視点から、「よい組み方をする」という選択ができました。

成内氏:「B to B」「B to C」の領域で、それぞれの顧客に求められることをしないと、事業が成立しないことがあるので、急がば回れで設計をしていました。

高橋:もちろん「収益」「事業化」という目的はあるのですが、そのときに「何のためにやるか」という軸を固めて、長期の目線を持つことが大切だと感じました。結果的に「協業」「共創」というところにつながっていったのだと思います。

『食べログ』はユーザーを持っていて、ユーザーを向いているサービスでしたが、サービスを通じたお客さんの体験が、お店側の体験にもなっていたと思います。

当時は明確に言語化していなかったかもしれませんが、お店か顧客かの二項対立じゃなくてもいいんじゃないか、と感じていました。ご飯が好きで、外食が好きなら「ターゲットを一方に特化しなくてもいいよね」というのは認識としてあって。それを次の時代に昇華させていきたいと思っていました。

高橋が感じた「食」と「家族」の違いとは?

―高橋さんは「食」から「家族」へと関わる領域が変わっていますが、違いは何だと思いますか?

高橋:まず、情報量が多いことがユーザーの自由につながっているかどうか、です。
『食べログ』はユーザーに機会提供をする媒体で、情報が多いほどユーザーに満足してもらえる構図がありました。それまで「情報はあればあるほど幸せなもの」だと思っていましたが、育児や家族の領域では「情報がありすぎると不安を招く」という側面があることに気づきました。

不安な気持ちにさせずに、どう寄り添っていくのか、それぞれの「ちょうどいい」にどう寄り添っていくのか、というところは課題だと思います。

もう1つ、食と家族の違いは「垣根」ですね。
食の場合、メディアやサービスの提供手段や内容は多様化していますが、選ぶ側は「ラーメンもイタリアンも和食も食べる」というふうに垣根はありませんし「お腹が空いたから、焼き鳥を食べたい」というように、欲求のかなえ方は比較的シンプルです。

成内氏:1日のうちに何度かお腹が空きますしね。

高橋:そうなんですよ。基本的に食を選ぶのは楽しいことだし、他者の選択に対しても寛容ですよね。正直、そこはうらやましいところでもあります。

家族の領域は「子どもがいる・いない」「結婚している・していない」「子どもを望む・望まない」などの属性によって、見えない垣根があるように感じています。
育児を食に例えると「ご飯を食べなきゃならない。本当は焼き鳥を食べたいけどお金がかかりそうし、体のためにもおむすびにすべきだ」みたいなマインドで中長期的な選択を迫られる場面もあります。

日本の「食」という領域に多様性・寛容性があるように、家族という領域も画一的なところからもう少し解放されて多様化されていけばいいと思いますし、インターネットサービスがその一助となればいいなとも思っています。

WEBメディアの「これから」

高橋:成内さんは、これからWEBメディアの業界はどうなっていくと思いますか?

成内氏:これまで以上に細分化されていくんじゃないでしょうか。

SNSを例にあげても、Instagram、Facebook、Twitter、TikTokなど、多岐にわたっており、みんなが共通のものを使うよりは、自分の好みのものを使うようになりつつあります。

例えば、少し前まではFacebookの利用が盛んで、ユーザー同士で連絡を取ることもありましたが、現在は若年層の利用率が減少しています。そのため、年代が異なると、共通のコミュニケーション手段がない、ということもあります。インスタ派、LINE派…というように分散して、みんながベーシックに参加するプラットフォームはなくなりつつありますよね。

今後、家族のマーケットも含めて、多様化はしていくと思います。みんなが使う共通のプラットフォームがなくなって、個々が好きなものを使う時代になっていくんではないでしょうか。

世界情勢でも、グローバル化からの揺り戻しで少し内向き志向の兆候が見られますし、ひとつの流れなのかな、と思います。

―「自分の好みのものを使う」という流れの中で、グルメ業界の多様性はどのように育まれていったと思いますか?

成内氏:グルメの領域では、フェーズが変わると別のペイン(不安や課題)が生まれています。

例えば、大手グルメサイトが作ったマーケットに対して、店側の発信だけだと偏りがあるので、ユーザーのクチコミ量が増えてきて、そうすると真偽不明な情報も書かれるので本当のことを伝えたいというシェフ側のペインがあり、匿名だけでなく実名のサービスやメディアも生まれています。

「このペインはこの方法で解決する」「次のペインをまた別のものが解決する」という感じで、サービスが多様化しているような感じです。

高橋:確かにそういう傾向がありますよね。一方で、家族の領域では「陰と陽」なら「陰」の情報が多く、「家族って楽しいよね」というメディアはまだ少ないです。不安を解消したいがゆえに、不安が多くシェアされています。

もっと言うと子どもがある程度成長した後も「こういう教育を受けさせる”べき”だ」という情報に追われることもあります。

実をとる領域と、価値観を育んでいく領域があるとして、僕らは後者の方の責任も背負っていると思うんです。価値観を育むことで「そうせざるをえないから、こうする」じゃなくて、「じゃあ、こうしよう」と前向きな選択ができるようになったらいいな、と思います。

ユーザーの感じ方を多様にしていきたいという理想はあるけれど、それをサービスとしてどう提供していくか、というのは今後の課題です。その答えはユーザーさんにありますが、僕らは少し先を見据えてユーザーに率直に向き合っていくことで、ビジネスになっていく、という順序は変わらないと思っています。


終わりに…

同じ「食」という領域を扱ったサービスでも、競合としてではなく、互いの強みを活かした「協業」という選択肢で提供できる価値を広げていく。これからより多様化されていく世の中だからこそ、サービスの軸を明確に持ち、複数の立場が互いの強みを活かしながらメディアパワーを強めていく動きが見受けられるようになりそうだと思いました。

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