2020年12月から2022年5月現在で10→143名へと拡大してきた組織で、採用・オンボーディング・カルチャー浸透・制度設計などの組織作りを主導してきたのは、現人事責任者の宮代 隼弥(@ShunyaMiyashiro)です。
今回は、CEOのジョンがインタビュアーとなり、宮代に組織づくりの秘訣を聞きました。創業初期に気をつけていたことは。「100人の壁」をどう乗り越えたのか。リモート組織ならではの採用とは。
※こちらの記事は代表 ジョンのYouTubeチャンネル「#ねえねえジョンさん」の「CEO×HR Head対談」の動画を元に編集してお届けしています。
創業初期の採用基準は「長期的に働けるか」
ジョン:宮代さんがoViceにジョインしたのは、2021年の1月でしたね。
宮代:そうですね。求人媒体への入稿、候補者の面接、採用の意思決定、オファー面談まで、僕1人でやっていました。
ジョン:当時入社したメンバーのほとんどは、いまでも働いています。創業初期の採用のポイントはなんだったと思いますか?
宮代:「oViceで長期的に働いてる姿が見えるか」を基準に採用することです。スキルや経験も大切ですが、それ以上に、長い目線を持って会社を一緒に創っていけるかが重要。
具体的には、一例として以下のような人物像を設定しました。
・リモートコミュニケーションにおけるペインに共感→当事者として、課題を解決する為に頑張る→サービスが広がる→理想の生活を実現できる。といったモチベーションサイクルを自分で形成できる人
・スタートアップのカオスな環境下でストレスなく働ける人
とはいえ、その人が本当に組織でパフォーマンスを発揮できるかの検証も必要です。そこで、内定前に「1ヶ月間のお試し期間」を設けました。担当の社員を決めて「1ヶ月で8回の1 on 1」を実施するなど、密にコミュニケーションを取るようにしたんです。
※oVice入社前の「トライアル期間」についてはこちら
ジョン:その後、2021年の1月に発令された緊急事態宣言を機にサービスは急成長。人員が増えていくなかで、どのような「組織作り」をしてきましたか?
宮代:20人、30人と人が増えたので、そろそろ受け皿をちゃんと作ろうと「MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の言語化」に取り組みました。コアメンバーにヒアリングしながら、この会社が「どのような世界観を持って、どのような働き方を目指すか」を言葉にしたんです。
※oViceのMVVについてはこちらのジョンのnoteでもまとめられています。
ジョン:5月の合宿で、全社員へ向けてMVVを共有しましたね。
宮代:合宿を開催した背景には「組織の分断」がありました。新規で入ってくるメンバーは、採用プロセスを通してMVVにアラインします。しかし、前から働いているメンバーに新設したMVVを浸透させることは、なかなか難しい。両者の理想とする働き方に、微妙なズレが生じてきたので、合宿で認識のすり合わせをしたんです。
ジョン:スタートアップは、サービスが売れ始めるまで採用や組織作りについて考える余裕がありません。しかし、一旦売れ始めると急激にその必要が出てくる。状況に合わせて、最適な手を打つことが大切なんですね。
情報の透明性を高め、「100人の壁」を乗り越える
ジョン:続いて、2021年5月〜現在(2022年4月)に至るまでの組織作りを振り返ります。メンバーが続々と増えるなかで工夫したことはありますか?
宮代:8月頃にテレビCMの放映が決まり、リード増加が見込まれるなか、これまで以上のスピードで人を採用しなければ、せっかくのチャンスを取りこぼすことになるなと思いました。
特に、CSのメンバーを素早く採用し、即戦力として活躍してもらう必要があったので、「入社して2週間で一人前になれる」オンボーディングのプロセスを構築しました。
ジョン:「リファラル採用」にも積極的でしたね。
宮代:そうですね、当時のoViceは、伸びるかわからないバーチャル空間市場を狙う「将来性が測りづらい」会社。候補者の心理的なハードルを取り払うには、リファラル採用が適していました。
ジョン:リファラル採用とオンボーディングの強化によって、順調に人が増え、社員100名を超えたのが、2021年の年末。いわゆる「100人の壁」の存在を感じていますか?
宮代:組織が崩壊するまではいきませんが、いま、まさに壁に直面していると思います。一番の要因は「マネジメント層の不在」です。
初めからマネジメント層の採用が必要だと思っていましたが、現場で売上を作れる人が必要だったので、あまり力を入れられていなかったんです。
ジョン:マネージャー層の不足はスケーラビリティの問題ですか? それとも、カルチャー作りにおいても課題になっていますか?
宮代:マネージャー層があと1,2名いたら、カルチャー作りはもっと楽だったでしょうね(笑)。なぜなら、組織全体が同じ方向に向かうためには、理想とする全体のカルチャーを示し、マネージャーがそのカルチャーを汲み取った上で体現するリーダーシップが大切だからです。
ジョン:なるほど、全体と個別、両方のカルチャーが大事だ、と。その他に、課題に感じていることはありますか?
宮代:人が増えるほど、各部門がなにをしているのか、お互いに分かりづらくなっています。ですから、HRは、会社全体の方向性や各部門の役割を把握し、必要な情報を共有する役割にならなければいけません。「100人の壁」を乗り越えるには、EX(従業員満足)や情報の透明性を上げていく必要があると考えています。
「HRメタバース」を用いた、新しい組織の作り方
ジョン:これまで私たちは「フルリモート」で組織づくりをしてきました。リモート採用の良かった点を教えてください。
宮代:フルリモートだからこそ、住む場所に関係なく、優秀な人を採用できます。さらに、移動時間がない分、面談の枠数を増やしたり、新メンバーのオンボーディングに時間を割いたりと、HRのリソースを効率的に使うことが可能です。
ジョン:それに加えて、私たちはoViceを使って採用をしてきました。手前味噌にはなりますが、oViceだからこそできたことはありますか?
宮代:一般的なテレワークツールで面談をする場合、いくらオープンに話しても、実際に働いている姿を見せられるわけではありません。また、周到に準備しているからこそ、嘘くさく感じられてしまうこともある。
oViceなら、そうした課題を解決できます。たとえば、面談後に候補者にツアー(oVice上のバーチャルオフィス)を回ってもらう。すると、候補者は社内メンバーのコミュニケーションを聞いたり、自由に話しかけたりできます。会社のリアルな雰囲気を知ってもらえるんです。
(oViceのTourページ)
ジョン:表面的な部分だけではなく、インタラクションも見てもらえる。逆に、あえてoViceで採用することの「デメリット」を挙げるとしたらなんでしょうか?
宮代:候補者の人となりを把握するまでに時間がかかることです。もちろんカメラで顔を映すこともできますが、普段のコミュニケーションは声のみで行うことが多い。オフラインと比べて情報量が少なくなりがちです。
ジョン:つまり、面談や面接は気軽にオンラインで実施。その際、ツアーも見てもらう。そして、着地や内定後のオンボーディングは、用途に合わせて「オンライン・オフラインのハイブリッド」を使いわける。そんな使い方なら、オフラインの企業でも導入できそうですね。
宮代:そうやって採用・組織づくりにoViceを用いることを、私たちは「HRメタバース」と呼んでいます。動画やテキストのコンテンツをoVice上に配置し、リアルなオフィス空間を再現。あたかも社員になったような体験ができるようなスペースを作るイメージです。
この構想は、まだ自社で試している段階。その有用性が確認できたら、他の企業の皆さんに展開できるようにしていきたいです。
グローバルリーダーの採用を加速
ジョン:ここまで、私たちが実践してきた採用・組織作りについて話してきましたので、今後のことも話しましょう。次の1年で、oViceの社員数は300人くらいになります。さらに、グローバル展開にも力を入れていく。
日本、グローバルの両方で組織をスケールするうえで、まずは日本の組織作りのポイントはどこにありますか?
宮代:日本の組織作りで重要なのは「仕組み化」です。
これまでのoViceは「0→1」、「1→10」フェーズでしたから、とにかくスピード感を重視して、機能ごとの組織を垂直立ち上げしてきました。これから「10→100」フェーズにはいるなかで、成長し続けるためには、目標達成や仮説検証を持続的におこなう仕組みが必要です。
ジョン:グローバルはどうでしょうか?
宮代:グローバルは「0→1」フェーズです。日本と同様にPMF後は、垂直的に機能を立ち上げていきます。展開先の国ごとに、リーダーシップを持った人材の採用、PMFにつながる勝ちパターンの発見などが必要になってくるでしょう。
ジョンさん:現在、韓国チームはPMFが見えてきて拡大してきました。しかし、韓国と日本のチームを見ていると、お互いがまだ独立していて情報共有に課題があるように見えています。
宮代:同じ認識ですね。ですから、各国の連携を強めていく必要があります。各国で得たナレッジや経験を、他国にも共有することで、グローバル全体で伸ばしていかなきゃいけません。
ジョンさん:どうやって連携したらいいですか?
宮代:Notionに情報をまとめるだけでは、連携を強化することはできません。そこで、日本であれば、APAC(アジア太平洋)まで統括できる人材の採用が必要です。特に、セールス&マーケティング領域のナレッジを、その人がレポートラインとなって集約するような体制を作りたいと思っています。
(oViceの求人票より)
ジョン:英語を使えないとリーダーになれないわけですね。1年後にどんな状態なら、組織作りが成功したと言えますか?
宮代:グローバル全体のオペレーションを管轄するCOOと、グローバル横断でマーケティングやカスタマーサクセスのレポートラインとなれるリーダーが採用できたら成功です。
ジョン:結局リーダー層の採用が必要ということですね。HRの体制としてはどうなるのが理想ですか?
宮代:グローバルのHR全体を統括する、英語が話せて300名以上の組織を作った実績のあるCHROと、その下に、各国のEXに横串を通す人事企画責任者が必要です。
私は、採用側でも人事企画側でも、なんでもやるつもりです。私のもう一方の役割を担当してくれる方、そして、私の上に立ってグローバル全体を統括してくれるCHROの方がいたら、ぜひお気軽にご連絡いただければと思います。
▼今回の対談が行われた様子についてはYouTubeでも公開しています。もっと詳しい話が聞きたい!という方はこちらも合わせてご覧ください!
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