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【南インド】 自立循環型コミュニティを目指すスリスティ・ビレッジとは

Photo by Zoe Schaeffer on Unsplash

スリスティ・ビレッジ とは

Sristi Village(以下、スリスティ)は、南インド、タミルナドゥ州ポンディシェリーにおいて、異なるギフト(知的障害および発達障害)を持つ子供たちが社会で自立して暮らしていけるスキルを身につけるための団体として、心理学者G.カーティケヤン氏(以下、カーティケヤン氏)によって2013年に設立されました。

ココカラ共同経営者のムルガンさんは、団体発足当時より、ドナーとしてスリスティの成長を支援してきました。

理不尽な社会を目の当たりにした原体験

創業者のカーティケヤン氏は幼少期を、障害のある子供と障害のない子供たちが共に生活をする孤児院で過ごしています。そこは、障害者と知的障害者、社会から疎外された子どもたちを養育する施設で、障害の有無に関係なく、みんなが平等で、一緒に遊んで助け合いながら暮らしていました。

やがて、カーティケヤン氏が仕事見つけて社会に溶け込んでいったころ、同じ施設で兄弟のように育った障害をもつ友人たちはなかなか社会に受け入れられませんでした。ある兄弟(友人)の一人は、学校へ行く機会に恵まれませんでしたが、自動車整備士になるための職業訓練に参加してスキルを身につけました。しかし、社会で自立しようとチャレンジをした彼は、彼の可能性よりも障害のほうに注目した雇用主によって不採用にされ、雇用の機会を奪われてしまいました。

インドにおける障害者の置かれた現実、社会的自立の難しさ、地に足をつけて生きようとする人を受け入れない理不尽な社会を目の当たりにしたことがカーティケヤン氏の原体験となり、知的・発達障害を持った人たちの可能性を引き出す方法を模索し始め、やがて循環型コミュニティであるスリスティ・ビレッジの構想を思いついたのです。

カーティケヤン氏は知的障害に特化した心理学を学んだ後、同じ孤児院に戻って医院長を務めながら、障害のある人が日常生活や社会的スキルを学べる学校を設立。手工業やガーデニング、有機野菜の栽培などを行なっています。その後、社会から疎外された人々や知的障害を持つ大人が平等に暮らし、誰もが村の発展に貢献できるような村としてスリスティを設立しました。

PROFESSOR YESHWANTRAO KELKAR YOUTH AWARD 2021


創業12年目を迎える現在では、インド政府や各種団体からその功績を認められるまでに至っています。(左から5番目がカーティケヤン氏)参照URL:Sristi Karthik Facebook

ヒトと自然が繋がり、環境も人もサステナブルに

農業、生活技能訓練、教育を組み合わせた自立支援

スリスティ・ビレッジでは、一緒に暮らすメンバーそれぞれの人権が尊重されています。農作業、動物飼育、教育、生活技能訓練などを組み合わせ、一人ひとりの特性にあった仕事を割り当てることで、各自の自尊心を高めつつ、自立を促しています。

ビレッジでは夜明けとともに目覚め、住民全員で農作業をして一日のスタートをきります。自分たちの食べる物は自分たちの手で育て、通年の食料を確保する。農業は、持続可能なライフスタイルを送るためのコミュニティの軸となっています。

また、鶏、うさぎ、馬、牛などビレッジ内の多様な動物たちは、環境改善の一端を担うビレッジの資産であるとともに、健全な生態系の保護にもつながっています。

人とともに自立するコミュニティを

ビレッジ内の農業では、自家製の有機肥料を使っています。また、10年の歳月をかけて構築したドリップ式灌漑システムを有しており、水資源として貯水した雨水などを最大限に活用しています。電力は、屋上に備え付けたソーラーパネルによる蓄電に加え、牛糞から生成されるメタンガスを使ったバイオマスエネルギー生成にも取り組み、自立循環型コミュニティを形成しています。新築の施設では、焼成レンガではなく圧縮レンガを使用することで、素材から環境に配慮した設計へと進化しています。

施設はレンガ造りで、自然光と風の流れを活用し、電力を最小限に抑える設計


日本の生物学者宮脇昭氏が提唱する「宮脇方式」の植樹を採用

スリスティビレッジは、植物も水もない荒地からスタートしました。

荒れた土地に緑を増やすためにさまざまな試みがされた後、多種多様な植物を混ぜて植樹をする宮脇方式が採用されています。混在する多様な植物によって小さな森をつくる「混植・密植型植樹」は、植物が短期間で自立的に成長し、そして淘汰されてゆく、極相的な自然林を再生していきます。これは、他者や個性の違いを受け入れながらより良い環境を作り上げていくビレッジのコミュニティのあり方と重なるものがあります。

「タレントショー」で才能を発掘

コミュニティメンバーは、読書をはじめとする基本的なスキルを身につけたり、職業訓練活動に参加したりします。その他、コミュニティメンバーたちの才能を引き出す機会として、3ヶ月に一度タレントショーを開催し、それぞれの中に眠る才能や可能性を発掘していきます。


環境にも人にもサステナブルな「Proud to be a Cyclist」運動

ビレッジでは、「Proud to be a Cyclist」という運動を実施しています。これは、みんなで自転車に乗ろうという運動で、環境負荷の大きい乗り物を避けることで環境汚染を減らそうという試みです。また、サイクリングをして体を動かすことで運動能力を強化して、免疫力を高め、更には精神的な安定にもつながります。

農業ベンチャーで経済的自立へ

近年、スリスティで活動をしていた、障害を持つ12人のコミュニティメンバーが、「Thulir(以下、トゥリール)」(タミル語で植物の最初の葉という意味)という農業系ベンチャーを立ち上げました。トゥリールでは、オクラ、ひょうたん、ほうれん草、ヒマワリ、ドラムスティック、スイカ、ターメリック、ハーブなど、さまざまな野菜を生産しています。

トゥリールで生産された野菜をスリスティ・ビレッジが購入することで、メンバーはそこから得た利益を自身の銀行口座に貯蓄できるようになりました。収入を得るということは、経済的・精神的な自立を促し、それが彼らの自信にもつながっていきます。

スリスティ・ビレッジとココカラが生みだす希望

スリスティ・ビレッジは、障害の有無や人種、性別などに関わらず、全ての人が自分の可能性を最大限に発揮できる機会(雇用)を与えられる、包括的で環境に配慮した世界を目指しています。

インドには160万人もの知的・発達障害を持つ人がおり(2011年国勢調査)、そのうちの約75%が農村部で暮らしています。彼らの雇用率はとても低く、生活費もかさむため、インドの中でも貧しい生活を強いられています。

創業当初よりスリスティの活動に力を注ぎ、スリスティ・ビレッジのアドバイザリーボードメンバーである、ココカラ共同経営者のアルール・ムルガンさんは言います。


インドには、人とは異なる特性や、恵まれない環境に生まれたことで一般的な教育や生活を送ることができない子供が数多くいます。特に、田舎ではそれが顕著で、社会から目を向けてもらう機会もありません。


障害があるというだけで、世間から隠され、蔑まされ、成長する機会さえ与えらない子供たちもいます。


私は、日本で物理学者として仕事をする機会に恵まれました。今、ココカラを通して日本のお客様や社会からいただいた対価をソーシャルビジネスに循環させ、雇用創出、教育の機会提供、コミュニティ形成によって、多くの人に希望の種をうえる活動をサポートさせていただいています。


さまざまな環境にいる人たちが、限りある自然と共存しながら幸せに生きることができるサステナブルな世界を目指して、ココカラは、インドの雇用状況、就業環境の改善の一助となれるよう、これからもスリシティ・ビレッジの活動を支援していきます。

参考文献

ココカラ 合同会社では一緒に働く仲間を募集しています
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