サムネイルは2年前に参加したOpneNetworkLabというアクセラレータープログラムのDemoday直後、疲れ過ぎて絶妙な表情になっている創業メンバーの写真です 笑(ピッチは2冠達成しました!)
初めまして。AGE technologiesの塩原です。
弊社は「高齢社会にテクノロジー革命を起こす」をミッションに掲げ、超高齢社会となった日本に起こる課題をテクノロジーによって解決し、人生100年時代を支えるNo.1テックカンパニーを目指す会社です。
3年半前にこの領域で起業した私ですが、「なんでその領域で起業したの?」と聞かれることがたまにあります。スタートアップの創業者には、(1)強烈な原体験があってそのマーケットで起業した(2)原体験は無いが特定マーケットを選んで起業した、の2パターンがあると思いますが、自分は後者です。
私はちょうど今年30歳になった世代で、幸いまだ両親も健在で、相続において何か特別な経験をしたことはありませんでした。ではなぜこの領域で起業したのか?起業前に考えていたことや経緯について、簡単に振り返ってみました。
一次情報を得るために起業を諦め、転職を決意
経歴を簡単にご説明すると、新卒でインターネット広告代理店に入社し、その後アプリ開発を行うスタートアップを経て、前職は中小企業の相続・事業承継に特化したコンサルティング企業で働いていました。代理店では広告運用実務を経験、スタートアップではその流れでマーケ担当としてアプリのマーケ業務に取り組んでいました。
実はこのスタートアップを退職するタイミングで起業をしようと考えていました。しかし当時起業することは決めていましたが「どの領域で起業するか?」については全く決めておらず、アイデアベースでは浮かぶものの、それはあくまでもアイデアでしかなく、業界知識が無いためそれ以上の解像度へ踏み込めず悩んでいました。
その頃いわゆるスタートアップのシード期を経験していた私は、創業初期において「解像度の高い一次情報を持っているか」がいかに大事かを理解しており、そこで考え続けた結果、一旦起業することを辞め転職することにしました。
どうせ起業するなら「◯◯×IT」のように、テクノロジーの入る介在価値や幅が大きい分野で起業したいと考えていたので、それまでに経験してきた広告、アプリ、エンタメなどの領域を避け「できるだけ非ITな領域」と考えて入社しました。※いま振り返ると、課題にしてもプロダクトにしても「ITかどうか」はそんなに重要では無いので、この選び方で起業するのは危険かもしれません。。
課題を抽象化して辿り着いた、”相続手続きの非効率”という課題
前職では、主に中小企業経営者の「事業承継」という課題に対するコンサルティングを行っておりました。
余談ですが、この仕事では金融機関を始めとした様々なパートナー(弁護士、会計士、税理士など)と協力して取り組む仕事が多く、そこでいわゆる業界のメカニズムや業界特有の力学(ざっくりですが、誰が誰に対して商売をしているのか、何をもってwin-win-winが成立するのか、みたいなもの)を学べたのは、後の起業経験に役立ちました。
日本には400万社以上の中小企業がありますが、後継者不足による団塊の世代(1947〜49年生まれ)の経営交代率が年々低下し、それによって経営者の平均年齢は年々上昇しています。後継者が既に決まっている企業は全体のわずか12.4%で、また廃業予定、どうするか未定という企業が70%以上を占めています(2018年当時のデータです)。
この課題はGDPの将来的な減少にも大きく影響する課題で、仕事を初めてすぐにマーケットの課題の深さに気付き「何かしらの形でイノベーションを起こせないか」と考えました。
しかし、実際に経営者の方や、その子世代の方々と現場での面談を重ねていると、この領域(当時は事業承継)はテクノロジーによるイノベーションというよりも、優れた弁護士、会計士など、マンパワーが集まることで解決する分野なんだなと、考えるようになりました。※もちろんこれは当時の考えなので、その後徐々に業界にITサービスも浸透し始め、今では当時と異なる見え方もあります。
そこで経営者の後継者問題に取り組みながらも、「人が死を考え始めた時に起こること」というかたちで、軸をやや抽象化しながら考え続けた結果、資産5,000万円未満のアッパーマス層・マス層に区分される方々の「相続手続きの非効率」という課題に辿り着きました。
起業する前にぼんやり考えていた、3つの条件
このように前職の経験を軸に、初期エントリーするマーケットは「相続領域」とほぼ決めていた私ですが、それとは別に「起業するならこんな軸でやりたい」と当時ぼんやり考えていた条件があります。
(1)課題やマーケットが十分な大きさになっているか
(2)課題と解決策がシンプルに定義できるか
(3)タイミングが適切であるかどうか
と、整理していました。
課題やマーケットが十分な大きさになっているか
起業するなら少なくとも10年、20年は続けられる分野と考えていたので、どうせやるなら大きな課題、大きな市場でと初めから考えていました。またどちらかというと、ワンプロダクトの提供というよりも、一つのエントリーポイントを皮切りに、その周辺領域を全部やる、という思想や戦略が好みで、その意味でもマーケットの大きさや課題の多さみたいなものは重視していました。
現在私たちが取り組んでいる相続手続きというジャンルは、見方によってはややニッチとも思われる方もいるかもしれません(人が亡くなることは個人単位では頻繁に発生することでは無いですからね)。が、私たちが最終的に張っているマーケットは「高齢社会で起こる課題の解決」であり、相続だけでなく、医療、介護、予防、住まい、生活サービスなど幅広いジャンルがあり、また日本は世界でも稀な超高齢社会であり、そこにはたくさんの課題と大きなマーケットがあると考えました。
課題と解決策がシンプルに定義できるか
世の中で成功しているサービスは多くがこの条件を満たしているので、ある意味説明が難しいのですが、スタートアップでサービス運営をしていた時に「課題と解決策がシンプルじゃないと、人って使わないんだな」と日々感じていました。これだけ世の中に便利なサービスが増えていくと「一握りの無くてはならないサービス」にならないと人は使い続けません。
ここを外さないことを条件とした時に「煩雑でアナログな相続手続き」を「テクノロジーで解決する」というシンプルな課題と解決策に落とし込むことができ、またその課題の背景には「人の死」や「高齢化」という普遍的でより大きな課題が存在していたのも決め手となりました。
タイミングが適切であるかどうか
市場の参入タイミングは、起業の教科書的な本にもよく書かれることですが、これもスタートアップの経験で「ここを外すといくら優秀なメンバー・プロダクトでも無風で終わるから特に気を付けたい」と考えていました。
実は私たちの領域では、一昨年に相続法が40年ぶりに改正されたり、現在取り組んでいる不動産の名義変更手続きでも今年に入って義務化の法案が可決されたりと、国の重要なアジェンダとして、変革が続いています。本音でお話しすると、法改正を起業前に予測していたかと言えばそれは言い過ぎですが、リサーチをかけた結果「国が真剣に課題として捉えているな」という肌感は抑えており、これから波が来るだろう、という予測はありました。
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以上が、原体験が無かった自分がこのマーケットに辿り着いた背景です。
本当はもっと細かく、上記に書いていない理由もあるので、続きはぜひ面談等でお話しさせて下さい!
人生100年時代を支える、テックカンパニーを創る
ここまで最もらしく、起業背景やドメイン選定について語ってきましたが、正直最初はどんなかたちでPMFできるか、探り探りな部分も多かったです(創業期に経験したことは、またどこかで整理して公開したいと思います)。
が、創業から3年半が経ち、既に累計で7,500件以上の不動産の相続手続きで利用されているという実績も合わせ、日本で最も相続手続きに詳しいITスタートアップであるという自負があります。先月リリースした”AGE technologies”への社名及びリブランディングに関してもそのような決意表明の意味がありました。
しかし、中長期で実現したいミッションに対しては、事業・組織どれを取っても、まだまだ足りないことだらけです。
人が亡くなった時、お通夜・お葬式などの法要行事から始まり、預金の払い戻し、不動産の名義変更手続きなどの相続手続き、年金や保険などの役所手続き、また故人の遺品整理手続きなど、細かいものまで含めると50種類以上の「やらないといけないこと」があると言われています。また各種手続きでは、証明書の取得、申請書の作成などの煩雑な作業が必要で、非効率な手続きとなっています。
現在、これらの課題を解決するために「そうぞくドットコム」というサービスを提供しており、まずは不動産の名義変更手続きから取り組んでいますが、今後はそうぞくドットコムを1つのブランドとして、預貯金の名義変更、相続税の申告など様々な手続きに対応する予定です。
さらに、手続きが大変なのはエンドユーザーだけではありません。相続手続きのDXを加速させるには、金融機関、自治体など手続きの対応者機関にもイノベーションが起こる必要があります。様々な法律や制度によって成り立っている分野なので、一朝一夕には変えられませんが、手続き市場で培ってきたノウハウやデジタルアセットを使って、この領域にも取り組んでいきます。
そして、相続は「人が亡くなる前」、いわゆる生前から課題は発生しており、ここは手続きの問題だけでなく、認知症や介護などの問題が発生します。遺言のように制度としては素晴らしいが、それが十分に活用されていないなどの課題もあり、この領域についても取り組んでいく予定です。
上記以外にも、解決したい課題、やりたい事がたくさんあります。
少しでも興味を持って下さった方がいればまずはお気軽にお話ししましょう!