1
/
5

ワンテンス経営者が語る創業ストーリー、そして今後の展開について(coki様による取材)

外科手術で心臓を洗えるくらい安全で、除菌に加えて創傷治癒もできる電解水「IELU」。25年間にわたる大学や医療機関等での実証エビデンスに裏打ちされ、肌荒れ・創傷治癒効果への期待から化粧品会社・医療・介護の現場で数々の導入事例も。

開発・製造元の株式会社ワンテンスと高砂電気工業は目下、「IELU」を製造する装置の小型化に取り組んでいます。両社が協働の先に描くのは、メンテナンス性を高め、大規模施設から一般家庭まであらゆる場所で「蛇口をひねれば『IELU』が出る」世界。

「電解水で世界を幸せにしたい」という同社の永田寛明CEOと片山貴嗣COOに、同社の取り組みと「『IELU』のある暮らし」で叶えたい未来について伺いました。

ウイルスや細菌に強い電解水『IELU』で世界を幸せにする社会変革を

― まずは、御社の事業内容と強みについてお聞かせください。

片山さん:弊社は、“世界最高水準の安全な電解水”を製造できる電気分解技術「3室ダブルイン型電気分解技術」を持つ技術ベンチャーです。

この電気分解技術は、もともと私の父が、弊社の前身にあたる株式会社レドックス(以下、レドックス)で研究開発してきたものです。私がこれを引き継ぎ、CEOの永田と一緒に2019年2月、弊社を設立しました。スタートアップでありながら、25年のエビデンスの蓄積がある技術を有しているという、特長あるベンチャー企業です。

弊社では、この「3室ダブルイン型電気分解技術」で生成する高機能酸性電解水を「ONETENTH IELU」(商標名)と名付けました。現在、高砂電気工業株式会社(以下、高砂電気工業)さんと協働で同技術を「IELU製造装置」に実装し、大規模施設から一般家庭まで、世の中のあらゆる場所に「IELU(イエル=癒える)」を浸透させるべく、取り組みを進めています。

将来的には、途上国での皮膚病の治癒などの分野での貢献も視野に、「『IELU』のある暮らし」で社会に変革をもたらしたいと考えています。


25年間にわたるエビデンスの蓄積、大学・研究機関との共同研究で実証

―「IELU」のもとになる技術を裏付ける「25年のエビデンス」とは、具体的にどのようなものでしょうか。

片山さん:「IELU」のもととなる技術は、当初、再生医療現場における課題を解決するための研究としてスタートしました。初期の研究のひとつが、東京大学大学院医学研究科の新領域創生学科との共同研究です。

<電解水「IELU」は再生医療の現場で使う目的で開発された>


― それがこの資料に記載された内容ですね。MRSA*1 感染者の心臓外科手術で、従来の手術方法*2 では生存率が31%だったところ、「IELU」で体内を殺菌洗浄しながら手術すると生存率が90%と著しく向上したことが確認されたとあります。これが「心臓を洗えるくらい安全な水であり、しかも高純度の電解水であるが故に除菌効果も期待できる」ということを意味しているわけですね。
*1 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症。メチシリンとは黄色ブドウ球菌に効く抗生物質のこと。ヒトや動物の皮膚、鼻腔、咽頭や気管にも存在する無害な黄色ブドウ球菌が、高齢者など抵抗力の弱い人が感染すると重症感染症の原因になることがある。
*2 うがい薬などに使用されているポビドンヨードで皮膜面洗浄を行い、生理食塩水で体内洗浄をする方法。

片山さん:ところがあるとき、手術を施していたお医者さんが、「縫合した傷口の治りが早い」ということに気が付かれて、そこから創傷治癒の観点からも研究するようになりました。そして、「創傷治癒世界会議」や「世界水フォーラム」など学会で発表し始めたのが、2002年~2003年頃のことです。そのころから、いろいろな方面から共同研究の申し出をいただくようになりました。


<「IELU」の角質補修効果を示すエビデンスの一例>


片山さん:「IELU」は大学や研究機関等での実証データと様々な分野への応用の可能性がある画期的な電解水なのですが、なにせ見た目も透明で無味無臭。一見するとミネラルウォーターと変わりません。これを商品化するには、圧倒的なエビデンスが必要だと考えて、我々はこの25年間、ひたすらエビデンスを集めてきました。

これまで、東京大学大学院、三重大学医学部、コロンビア大学、北海道大学歯学部など、計20を超える大学、大学病院、研究機関との共同研究を重ねてきました。

― その結果、先述の東京大学大学院医学研究科との心臓外科手術における共同研究に加え、近年では清涼飲料水の規格基準適合、ラット皮膚全層欠損モデルにおける創傷治癒効果、ウイルス・一般細菌・真菌の不活性化など、「IELU」の安全性と機能性に関するエビデンスが蓄積されているのですね。

片山さん:現在はこうした技術実証のフェーズを終え、現在はこれを世の中に広めていくための社会実装段階に入っています。実装段階では、高砂電気工業さんとの協働で、「IELU」の製造装置を開発しました。 すでに約260の医療・介護施設、約50の保育園、約40の自治体施設、約20の教育・研究施設、約1,000の美容院・エステサロンに、「IELU」が導入されています。これらの利用実績の中から、より大量に使いたいという声があり、これらが製造装置の導入へのポテンシャルとなっています。


<「IELU」は、医療機関、保育園、自治体など安全対策が不可欠な命を守る施設で導入されている>


壮大なビジョンに突き進む熱源は「社会変革」への思い

―「『IELU』のある暮らし」を新しい当たり前にするという、壮大なビジョンに向かう熱意は、お二人のどういったところから生まれているのでしょうか。

片山さん:ひとつは、「社会に対してこのような貢献をした」と、身近な人たちに対して自信を持って言えるようになりたいという気持ちがありますね。たとえば一緒にこの事業に取り組んでいる永田や、高砂電気工業さんの平谷社長に対して。このような気持ちがひとつのエンジンになっているので、尊敬できる人たちに囲まれて仕事をすることができている今、日々人に育てられていると感じています。

それから、社会貢献を一番に夢見ていた父の影響もあると思います。私が子どものころ、父はひたすら研究に打ち込んでいて、あまり家にいない人でした。それでも「親父の背中」のようなものは感じていました。それで、私が社会人になろうというとき、就職活動で自己分析するにあたって、父にどんな仕事をしているのかを初めてきちんと質問してみたのです。

すると、「知ってるか?」と。「おまえが風呂上がりに顔に使っているこれ(IELU)は、実はすごいんだぞ。ニキビができたことないだろう」と言われて。そのころはまだ、「IELU」という名前でもないし、ふつうのボトルに入れられて、当たり前に洗面所に置いてあるものでした。父が使っていたので、私もとくに意識することなく使っていました。なので、その効果性にあまりピンとこなくて、「またまたー」なんて不信の目を父に向けました。

すると父が、「嘘だと思うならお医者さんを紹介するから話を聞いてみろ」と言いだして、お医者さんの話を聞くことになり、詳しく聞いて「たしかにすごいんだ」と、ようやく私も理解しました。

しかし、これを友人らに話してもなかなか信じてもらえず、それで先ほどの「エビデンスを集める」という話にもつながっていくわけです。

こうして父の話を聞いたことで、私の中で将来的に父の会社を継ごうと決めたわけですが、まずは一旦社会に出て修行するために、コンサルティング会社に入社しました。エビデンスを作るために愚直に研究に取り組む父のために、私は給料の一部を研究資金の一助になればという思いで使ってもらっていました。

レドックスが研究してきた電解水で私が将来的にやりたいことは、社会貢献でした。たとえば、「『IELU』の製造装置を発展途上国で使えるようにすれば、安全な水がない場所でも、飲める水や傷を治す水を作れるじゃないか」と、父の話を最初に聞いたときから、そんなふうに思っていました。


永田さん:私はとにかく、「世の中の生活に変化を与える」ということが、やりたくて仕方がなかったですね。私の性格上、「こうしたい」と決めたものに対しては、そこに向かわずにはいられなくて(笑)

ワンテンスという会社がやろうとしていることは、まさに世の中を変えることです。なので、「ワンテンス」をやるために我々が集まったというよりは、やりたいことがいくつもある中の、ひとつがワンテンスかなと。ワンテンスは、まさに10分の1。

― それで社名がワンテンスなのですか?

永田さん:ワンテンスという社名の由来は、もともとは電解水「IELU」の分子のサイズにちなんだ名前です。

本来、水は分子間の結合でつながっています。「IELU」は、その水の分子間結合を電解して単分子サイズにした分子で構成された水なのです。

これが、ものすごく小さい、ナノメートルの10分の1のオングストロームという単位。それで当初は社名をオングストロームにしようと思っていました。でもオングストロームは商標がとれませんでしたので、だったら「10分の1」を意味する「ワンテンス」にしようとなったのです。


ワンテンスのSDGsへの取り組み、途上国で「移動式IELU」の構想も

―「IELU」の原点には「社会に役立ちたい」「世の中を変えたい」との想いがあるとのことですが、SDGsの目標に関連する取り組みについて詳しくお聞かせください。

片山さん:父から最初に「IELU」のルーツとなる技術について聞いた際に私が抱いた思いに立ち返ると、やはり、弊社の事業は「すべての人に健康と福祉を」という目標に密接に関係すると考えています。

25年にわたる研究結果とエビデンスにより、「IELU」は様々な医療・介護などの現場で利用されています。「IELU」は手術時の内臓の洗浄にも使われるほど非常に高純度の電解水で、食塩や塩酸などの不純物を一切生成しない特許製法で作られています。また、成分の体内残留もなく、アルコールや除菌剤のように正常細胞への悪影響を人体細胞に及ぼしません。

このため、子どもやお年寄りなど細菌やウイルスに脆弱な方々の健康を守ることができます。実際に、衛生管理、感染症対策、口腔ケア、汚物処理、器具洗浄、加湿器、皮膚の治療など、様々な目的で、病院や介護施設に「IELU」製造装置が導入されています。

また、化学物質過敏症のアレルギーをお持ちの患者さんにもご利用いただけます。これは、化学物質過敏症分野の権威である渡辺一彦小児科医院における約15年間の「IELU」使用実績によって実証されています。

日常生活においても、一般家庭に「蛇口をひねればIELUが出る暮らし」を普及させることができれば、各家庭で諦められていた家庭内感染症のまん延やアトピーなどの外的要因による皮膚疾患などの影響を最小限に抑えることができるのです。

「IELU」の効果を、より多くの方に実感してほしい。小さな命を守りたい。その想いで赤ちゃんにも使える除菌剤や化粧水、ペットにも使えるブラッシングスプレー、乾燥を防ぐスキンケアミストも販売しています。


<東京工業大学が開発した空気浄化システムとIELUの組み合わせで、実際の空間に浮遊する新型コロナウイルスも99.975%の不活性化に成功している>


<ハンディスプレーガンタイプのIELUなら気軽に空間噴霧ができる>

永田さん:また、現段階のビジョンとしては、途上国において皮膚の感染症が原因で亡くなってしまう子どもたちを、「IELU」のお風呂に入れてケアをすることもできると考えています。

水道が整備されていない地域でも、現地の水をろ過したうえで製造装置を使えば、その場で「IELU」を作ることができます。具体的構想もあって、バンのような車に「IELU」製造装置、ろ過装置、組み立て式の浴槽を搭載して、現地に赴くというようなことをイメージしています。それで現地の水を使ってその場で「IELU」をかけてあげられる。これによって、皮膚の感染症などで亡くなる子どもたちの命を救うことができるのではないか。そんな未来を描いています。

また、日本ではまだまだ、水のありがたさに対する感謝の気持ちが少ないように感じます。海外では、日本以上に、機能性と安全性を備えた水が求められています。たとえば、アルコールが禁じられているイスラム圏などがそうです。電解水にはまだまだできることがある。「電解水で世界を幸せにしたい」。そんな思いで、「IELU」の普及に取り組んでいます。


片山さん:大学や民間の研究機関などとの共同研究をはじめ、各方面と協働関係を育みながら、持続的に「IELU」を製造・供給し続ける方法を追求しています。

安全性と機能性を兼ね備えた電解水「IELU」を世に出すことができたのは、共に研究に取り組んでいただいた研究機関や、実装のための装置開発を担っていただいた高砂電気工業さんのような存在あってこそです。

弊社には「ミネラルウォーターの基準をクリアするほど安全でクリアな電解水を製造可能」「イオン種をコントロールすることで目的に応じた様々な機能・役割をもつ電解水を製造可能」という稀有な特長をもつ特許技術があります。

これは、「3室ダブルイン型電気分解」という電気分解技術で、この技術を使うと、高機能酸性電解水「IELU」だけでなく、高機能アルカリ性電解水も製造することができます。「IELU」以外にも、まだまだ活用可能性のある技術だと自負しております。

今後も、こうした研究・開発を継続し、世界に向けて画期的な技術を発信し続けたいと考えております。


―最後に、今後の課題と展望について教えてください。

永田さん:一般家庭にあまねく「IELU」がゆきわたるような、「IELUのある暮らし」構想を実現するためには、メンテナンス網の構築がひとつの課題です。

現状の仕様では、月に1回ほどのペースで、電解質の供給が必要とされています。また、3~6カ月に1回程度、電解層の定期チェックと交換をしなければなりません。このため、家庭で安定的に「IELU」を供給し続けるためには、これらのメンテナンスを行うための仕組みづくりが求められます。高砂電気工業さんのお力も借りながら、クリアしていきたい課題です。

また、研究・開発費を確保するためにも、収益性の向上が課題といえます。最終ステージとしては、「IELU」を家庭に広げ、世界も視野に入れています。しかし、そこに進むまでの前段階として、まずは工場用用水を「IELU」に替える、化粧品に使われる精製水を「IELU」に置き替える、そうしたことに一つひとつ取り組んでいきたいところです。並行して、潜在的に見えている家庭用のニーズを、より大規模な市場調査を通じて深堀りしていきます。

次のステージに向けて、技術的側面と市場的側面の両輪で克服すべき課題は多々ありますが、「IELU」が世界の幸せに貢献できることを信じてやみません。「『IELU』のある暮らし」の実現に向けて、邁進していきたいと考えています。

以上。(執筆者名 Erina Avril)

株式会社ワンテンスでは一緒に働く仲間を募集しています
2 いいね!
2 いいね!

同じタグの記事

今週のランキング

片山 貴嗣さんにいいねを伝えよう
片山 貴嗣さんや会社があなたに興味を持つかも