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【アニメCGスタジオのお仕事 No.4】モデリング編

【アニメCGスタジオのお仕事】シリーズも早いものでもう第4弾となります😲

今回はモデリング編ということで3名にお話を伺いました!

では自己紹介を小川さんからお願いします。

小川:はい。Netflixシリーズ「鬼武者」でモデリングチーフをさせていただいてる小川 喬右です。 主にモデリングやセットアップ周りのディレクションを担当しております。

サブリメイションに入社して最初にやった作品は?

小川:最初に参加させていただいたのは「ひるね姫〜知らないワタシの物語〜」ですね。モブ車を数台モデリングしました。次の「Walking Meat」では、1人のスタッフがいくつも工程跨いでいたので、モデリング、キャラクターのセットアップ、アニメーションを担当しました。

工程を一通り経験したんですね。

小川:そうですね。その後は、「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System」でモデリングとアニメーション、「ドラゴンズドグマ」(Netflixにて好評配信中)ではスーパーバイザーの方の下でチーフ業の勉強をしながら、主にアセットの管理をしてました。

伊東さん、お願いします。

伊東:サブリメイション伊東です。主に「ラブライブ!」シリーズのキャラクターモデルを担当してます。参加は「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」からですね。その前は「シキザクラ」でもキャラをメインに担当してました。キャラばっかりやってますね(笑)。前職も一応アニメ会社にはいて、仕事としての比率は作画の方が大きかったかな。

では、深沢さんお願いします。

深沢:はい。今は「アイドルマスター SideM GROWING STARS(サイスタ)」のゲーム内3Dライブにモデラーとアニメーターとして参加させていただいてます。

なるほど。入社して1番最初のお仕事は?

深沢:えっと、パイロット作品のアニメーションの手伝いを数カットさせていただいて…。

モデリングじゃなくてアニメーション!?

深沢:そうですね(笑)。その後はスマートフォンのゲームのオープニングムービーのキャラモデリングとアニメーションをやって、少しだけ「シキザクラ」のバイクとキャラのモデリングをお手伝いをさせていただきました。

【モデラーとは】

では、モデラーのお仕事について教えてください。

伊東:人形劇やストップモーションでいう人形、舞台、小道具をデジタルで作る人ですよね。っていつも言ってる(笑)。

小川:まさにそうだと思います。

伊東:モデラーがいないと始まらないんですよね。素材を作ってますみたいな。

小川:設定画を基にキャラクターや小道具、背景などのモデルを作成するお仕事ですね。作品にもよると思いますが、うちの班ではモデラーがセットアップ込みでやって、アニメーターに渡すまでを担当してるって感じです。

フィードバックを受けて改良したり?

小川:要望をいただいた上でセットアップやモーフ、UVなどの調整が続きます。その関係で結構プロジェクトの終盤までいますね。

伊東さんのところはどうでしょうか?

伊東:モデル作ったら一応そこで終わりです。ただ、セットアップ班と密にコミュニケーションを取りながら、調整が必要な時は入れてくって感じですね。各部署との連携が大事になってます。

小川:そうですよね。

プロジェクトに関わってる長さも違いますね。

小川:そうですね、自分のところは少なくともアニメーターの作業が終わるまではいます。

伊東さんのところは?

伊東:リリースまでで、途中から次のプロジェクトですね。

【モデリングという工程】

次に作業工程など教えてもらえますか?

小川:デザインに1度目を通したあと、脚本やコンテを確認します。このモデルはどれぐらい使うのか、どこまで映るのか、寄りの程度とか、そういう情報を把握します。作業コストのコントロールの意味合いも含めて見ていますね。

出番に合わせてちょっと手を抜くという感じ?

小川:画面上に粒のような大きさでしか映らないけど、演出的に必要なモデルなどに対して、寄りで映るようなモデルと同じコストはかけられないので(笑)。

チーフとして、マネジメント面含めての考え方ですね。

小川:作業をお願いするときに、カットでの使われ方や3Dモデルになっている意図は伝えてますね。とはいえ、担当者にも1度脚本やコンテでの確認はお願いしてます。

伊東:そうですね。コスト感は確認はしときたいですよね。

小川:全然見えない線、めっちゃ時間かけて作ったとか。

伊東:めちゃめちゃ作り込んじゃったけど引きでしか使われないから線潰れちゃったよ、みたいな。

小川:ポリゴン削った方が綺麗に映った、みたいなこともあるので(笑)。

モデリング時の参考資料集めって、どれぐらいやりますか?

小川:これだけ集めないといけない、っていう基準は細かく決めてはないです。

どういった画像が資料として役立つみたいなアドバイスはあります?

小川:用意した資料に、参考になる要素がどれだけ入ってるかということは意識します。解像度が高いとか、見たい所が細部まで見られるものだと嬉しいです。それで結果として集めていったらメインキャラで100超えてるとか。

ディテールが分かる資料ということ?

小川:そうですね。細かいライン取りや、立体感とかも、ですね。他にも和服着てるキャラなら和服の着方を集めたりします。

アニメだからといって、設定画だけでは完結しないものなんですね。

小川:布のシワ感とか厚みとかの微妙なニュアンスは設定画などでは省略化・最適化されてたりするので、実写の参考も欲しくなってきます。 あとは、絵としての魅力みたいなのも同時にモデルに落とし込まないといけないとなると、なるべく上がってきたデザインに近い要素を持ってるようなイラストとかも、エッセンス的に十数枚集めて一緒に見れるような形にしておくと、立体造形と絵としての要素をモデラー側で足し引きできるので意識してやってます。

伊東:うんうん。

小川:リアルになりすぎると、今度は絵としての魅力が消えていくというか。

伊東:CGくさくなっちゃう。

小川:どこまでリアルにするか?という塩梅が難しい(笑)。

伊東:いつも考えることですね。逆にキャラクターをやっていると、リアルな立体として完全に成立してないなと思うんですよ。

小川:あ、めっちゃ分かります!

伊東:立体としてはおかしいんですけど、やっぱり2Dのケレン味(ハッタリやごまかしを利かせた演出)も大事にしたいから…。でも、設定画の通りに再現すると動かせないモデルになったりするから、その取捨選択がね。重要ですよね。

小川:難しいですよね。

伊東:めちゃめちゃ難しいですね!アレンジ力とか、デッサン力も必要だし…。

資料集めの次は、ボリューム感やシルエットの確認をラフモデルで行いますよね?それからディテールを作り込んでいくという認識であってますか?

小川:そうですね、詳細の前にラフですね。

キャラクターの場合は服を着てない状態、つまり素体を作ってからとか、少し踏み込んだ内容を教えてもらえますか?

小川:素体はなるべく作りたいと思ってますね。

伊東:作らないと他へのモデルの流用が難しいと思います。

小川:流用するってなった時に、その衣装で見えるところしか肌がない、みたいなモデルがデフォルトになってると…。

袖をめくると腕が無かったりとか。

小川:ズボンをスカートにしてくださいって時に足が無いから追加で作る、みたいなこともありますね。自分が意識してるところではあるんですけど、素体がない状態でキャラの服作り始めると、シルエットに説得力がなくなっていくっていう…。

伊東:そうですね。肩甲骨とかが無くなってる。シルエット上で必要な骨や肉が抜けてるというか。

体が服の下にあるように見えないということですね。

伊東:そうですそうです。

小川:首から襟元あたりまでしか作ってないモデルと、中を作って肩や僧帽筋など込みで作り、服をその上に載せに行っているのでは、人体の流れに沿って体に当たって布が垂れているとか、そういう表現の説得力が変わってきますね。こういう部分を意識してやって、初めてどんどん魅力的なキャラクターになっていくので。素体を作ること自体は、便利とか汎用性ももちろんあるんですけど、単純に良いモデルを作るためにもめちゃめちゃ大事だなって思いました。

伊東:絵でも同じですよね。見えないところをちゃんと認識して描いていないと崩れる。

小川:作画の方も素体を描きますもんね。

伊東:描きますね!最初服を着せてない状態で描いてからという風にやりますね。

小川:あれと似た認識はあると思いますね。

伊東:うん、そうですね。

作品やジャンルによって考え方が違うとは思いますが、キャラクターの作り分けはどうしていますか?

深沢:私の担当しているプロジェクトでは、キャラクターの顔を青年系と少年系とあっさり系と、それに当てはまらないもので、4つに分けて作っています。トポロジーをその4つに分けてモーフを入れやすくしてます。特徴があまりにも違うキャラクターのトポロジーを共通化するのは無理ですが、4種類に分類することでモーフの流用が可能になります。

小川:その分類は、監督のチェックで決まっていくものなんですか?

深沢:全員分をカテゴリー分けした仕様書のような表を最初に作って頂きました。

小川:へー!なるほど!確かにチーム内で認識が共通化されるのでニュアンスのコントロールしやすそうですね。

確かに!

小川:「鬼武者」では比較的、リアルかつ重厚的なキャラクターデザインのモデリングをしてるので、一応意識してる点としてはその他のデフォルメされた、いわゆるアニメらしいアニメよりも、人体や装飾的な構造の要素にリアル寄りなものを多めに入れるようにというのは意識してはいますね。

特に「鬼武者」の場合、主人公は実際にいる人物をモデルにしてるから、他のキャラクターもそれに負けないようにということでしょうか?

小川:そうですね。今回は嘘をつくためのトポロジーの流し方みたいなのも、あんまり意識していないです。立体造形としてちゃんと成立しているモデルをまず作るというのを方針にしていますね。

それは作品の特徴的な部分ですかね?

小川:少しはあると思います。その上で、画的な嘘をつくというのはもちろんあります。個人的には、作り方はジャンルごとの違いというよりは、キャラクターデザインの絵柄によって変わると思います。だから、同じジャンルでやったとしても、上がってくる画風が違えばそれによって違う作り方をすることもありますし。

和風アクションという枠は変わらなくても?

小川:そうですね。サブリメイションの中で培われてきたベースとなる作り方というのはもちろんあるのですけど、デザインを確認してそれに合わせて作り方を変えるということはありますね。どうしたらデザイナーさんの特徴をとらえられるか考えます。細かいところまで毎回同じ作り方というのはないですね。

なるほど。

小川:そんな中でも、やっぱりモデラーさんの個性ってのは残りますね。それを上塗りして、個性的な感じにしてくるアニメーターさんもいらっしゃいますけど(笑)。それはそれで好きなんです。あの人のカットだ!ってわかるレベルで顔面変えたりして(笑)。

伊東:ずるいよね、モデルやってる側からすると個性あんまり出せないから(笑)。

そうか、モデラーさんが個性出しすぎてキャラクター並んだ時にそれぞれ違う作品みたいになっちゃうと(笑)。

伊東:まずいですよ(笑)。キャラクターが並ぶ場面で、 作品としての印象の統一が取れてないといけないので。

そう考えるとチーム作業って大変ですね。1つの作品の中にいるキャラクターたちをそれぞれ違う人が作っているので。

伊東:そうですね。1人で全部作るとスケジュールがね…(笑)。最初の一体のベースモデルを作ったら、他のモデルもそちらに合わせて統一を測るために設定画から少しだけ印象を調整していく、みたいなことはやります。

【やりがい】

より絵的な表現がされてるデザインほど、ちょっと変えるだけでかなり変わりますよね?

伊東:変わってきますね。

小川:線1本の記号とかで全然変わってくるじゃないですか、あれ、すごい楽しい(笑)。

伊東:楽し!ってなる(笑)。

小川:楽しそうと思いつつ、大変だなとも思ってますね。こちらはリアルなものがモチーフなので多少の違いだと意外と雰囲気にバラつきが少なく見えてたりするので…。

伊東:逆にディテールが多く入ってるのでごまかしは効くかもしれないですよね。

小川:1個1個の記号に対する比重が多い作品って、それはそれで本当に難しいなと思ってて、他の作品見てると「これは楽しそうだよな…。」って(笑)。

ちょっとした要素で全然イメージが変わっちゃうってのは難しいところですよね。

伊東:1ピクセルで変わるじゃないですか。

小川:数年前まで「嘘だろ、そんなの」って思ってたんですけどね。そんなわけない、本当だった。

伊東:白目の空間がどれぐらい広いかというだけでも、めちゃめちゃ違いますよね。

小川:ちょっと小さくされると、なんか急に…あれ!?って。

本当に繊細な作業なんですね。

小川:やっぱりメイン級のキャラクターは、一体の詳細を詰めるだけで1週間~2週間、場合によっては1ヶ月使うこともありますね。、トータルで1ヶ月半かかっちゃいました、ということも多くなってくるので…。詰めた分だけちゃんとキャラに個性とか魂が込められていくみたいなのは楽しい部分ではあると思いますね。あれが1番楽しいですよね?

伊東:いいですよね!モデル作ってて、個人的に1番楽しいのは、だんだん完成に近づくにつれてキャラクターが動き出しそうになってくるじゃないですか!しゃべりそうになってくる…。そこ、良いですよね…!

小川:わかります、わかります!

伊東:モデラーじゃないと味わえないと思う。

小川:美少女美少年やってると余計楽しくないですか?おじさんにも違う魅力があるんですけど(笑)。単純に「うわこれ、めっちゃキュンキュンするわ」みたいなのは、美少女美少年のモデル特有のことだと思うんですよ。

伊東:キュンキュンしないとね!

小川:おじさんは「いい形になってきたな…」「あー、いいね、なかなか重厚な…」って品評家みたいな感じに(笑)。

伊東:いいですねぇ!作りがいはすごくあるだろうなって思いますね、おじさんはね。

小川:あると思いますね。より人体構造を深いところまで勉強して表現するものってのが結構あったりするので…。

伊東:嘘がないですよね。

小川:比較的少ないと思います。体に関しては、ほぼほぼないはずです。嘘つくのは顔ぐらいですかね。

伊東:美少女の鼻とか点ですからね。

小川:いやほんとに、あれ最高ですよね。

伊東:鼻無い方が可愛い。

深沢:可愛い顔や子供のキャラは点にしてくれって言われましたね。

小川:点だとキャラクターが可愛くなるのはなんとなく感覚的には分かるんですけど、なんで点だと可愛いんだろう?って意識したことあります?

伊東:それすごい思うんですよ!漫画のイラスト、デザインの歴史とか見てると、最初は結構鼻高いんですよ。

深沢:あー、そうですね!

伊東:そこから、だんだん鼻が無くなっていくんですよ。

小川:横から見たら、ちゃんとシルエットとしてあるくせに、正面から見た瞬間に無いなって。

伊東:小鼻の方が人間は好きなん…(笑)?

小川:鼻強調しすぎてると可愛くないなって、最近思うことがあります。特に美少女キャラとか、もちろん好みの話なんですけど。

伊東:可愛いの話に行くとね、かなり深いところまで行っちゃうんで…。

深沢:鼻筋が長いとかっこいい系の印象ですよね。

伊東:男性は線が多くて硬い。

深沢:うんうん。

小川:そういう記号に気づけた時のテンションの上がり方は半端ないですね。実際に取り入れて、チェックで違うって言われる時もあるんですけど(笑)。「あ、違ったんだ」って。

伊東:そうそう、これ違ったかって。

小川:自分の中の引き出しにしまって、ありがとうございましたって(笑)。

伊東:お仕事ですからね、求められることをやらないといけない。

小川:まずは、そのプロジェクトに合ったモデルをご提案するっていうのが大事なところですからね。

【どんな人に来てほしいか】

メイン級だと1ヶ月半ぐらいかかるという話でしたけど、手が早い方でそれぐらいでしょうか?

小川:そうですね。今回作ってるものに関しては、ゼロベースで素体からベテランの方にお願いしてキャラクターモデルのチェックをしてくださってる人のフィードバック込みで、フィックスしました、ってなるまでにキャラクターにもよりますが大体1ヶ月半ですね。用途や、どういった表現をしてほしいかなどのオーダーはしますが、表現できるモデルとして、魅力的なものをお願いします、みたいな感じで発注させていただいてます。

アニメーターだと1ヶ月半あったらそれこそ10カット15カットとか、数をこなしていきますよね。その点、モデラーはその1ヶ月半の間、1つに向き合わなきゃいけないということで、人によって向き、不向きがありそうですね。

伊東:根気のいる作業ですね。

小川:根気はいると思いますね。時間のかかるプロジェクトほど…。

伊東:のめり込んでく人が多い(笑)。

小川:1つにのめり込むよりも、形を早く作って、どんどん出していくみたいなのが好きな人も確かにいますね。

伊東:うんうんうん、速さも大事だから…!

どういう人がモデラーに向いてそうですか?

伊東:絵心とデッサンは大事。

小川:あ、よく言いますよね!

伊東:で、スピードも大事、コミュニケーション能力も大事だよ、みたいな(笑)。

やはりコミュニケーション能力になりますね。

伊東:みんな言うし、その通りだと思うんですよ。あると嬉しいし、仕事なのでそういう能力は身につけなきゃいけないかと。ただ、個人的には、 モデリングが楽しいとか、好きだって自覚がある人がやってくれると嬉しいですね。モデリングって本当にコツコツとした地味な作業が多いんです。花形って言われてるけど、そんなに…。設定画に合わせることが前提なので表現の幅も狭いし。

小川:アニメーターさんみたいに、これやりましたって伝えたときに、うわー!って盛り上がるような内容ではないですね。

伊東:そうそう、派手な仕事はもう隣でアニメーターさんがやってるんで…。それが羨ましいと思うんだけれども、やっぱりモデル作るのが好きだなって感じられれば。

小川:出来上がったキャラクターに対して、愛着がどんどん湧いていくという経験がある人はモデラーに向いてるとは思いますね。会社に入ってコツコツとやってればモデリングスキルは伸びてくると思うんですよね。そのためにリテイクの指示もちゃんと出しています。

伊東:知識もコミュニケーション能力も技術のひとつだと思うので、後からついてくるかなと。

小川:チェック物を確認する時にまず見てるのが、今のプロジェクトに対してどれだけ上げてくれたモデルが目的の仕様に沿ってるか、ということです。これは大事ですね。めっちゃモデルうまいけど、例えばポリゴン数かなり多く使ってるとか、色んなところがそもそもラインが出てないとか。そういうところを確認した上で、じゃあもうちょっとこうして良くしていこうかっていうようなチェックの仕方をしてます。

伊東:あとは、やっぱり後の工程のことを考えられる人がいいですよね。

小川:そうですね。結局、チームで動くので気遣いありきっていうのはあって。もちろんモデラーにもそれぞれやりたいこととか、早く次のステップに進みたいよとか、あんまりうまくできないんですよ、みたいなことを各々抱えてるのは重々承知しています。それも拾いたいなとはもちろん思うんですけど、その上でプロジェクト単位でまずはOKラインにたどり着くための情報共有の場っていうのが、自分はチェックの1つの役割だって捉えていますね。そういったことを加味した上で、どういう人にサブリメイションに入ってほしいかみたいな話を補足するとすれば、何よりも一旦伝えた内容を素直に受け取ってくれる人。

伊東:大事!めちゃめちゃ教えてもらいやすくなるから!

小川:「わかりました、一回やってみます」って言ってくれる人の方がやっぱ伸びてくるイメージはあります。

リテイクなどをちゃんと受け取って、咀嚼して、解釈してくれる人ですね。

小川:実際には心の中で「いや、これはこうなんですよ」って思ってることがあるのは、めっちゃわかります。そういう人も実際にたくさんいらっしゃいますし…。

クリエイターだから、それはもちろんありますよね。

伊東:でも、我が強くていいですよ(笑)。

小川:表現したいことはたくさんあってもいいんですけど、その前に仕事なので1回ちゃんと話を聞いてくれた上で、こうしたらもっと良くなりますよっていう提案をしてくれると嬉しいですね。その段階で出てくる提案は、良いものならば採用したいと思っています。

伊東:良くしたいから提案してくれるんですもんね。

小川:そうです。実際それで通した案とかもいくつかありますし。なので仕事としてそこのバランスさえ取ってくれるのであれば。

伊東:(深沢さんは)めっちゃ素直!

小川:まさにこういう人が伸びるんだろうなって、思いますね。

深沢:勉強中です…!

小川:新しく入ってくる人みんな優秀で、本当に助かってるんですよね。

深沢:私もサブリメイションに入る時、ロボットとかそういう機械系がやりたくてモデラーとして入ったんです。 だけど、最初にやったのが人のモデルで、できるのかなって、最初不安で…。でも、じっくり教えていただけたのもあって、諦めないで続けていけてます。

コツコツ積み重ねられるかどうかですね。

深沢:メンタル強い人が…(笑)。

伊東:メンタル強い、最高。

小川:積み上げただけうまくなりますからね。

伊東:地道な作業で、抜け道がないんですよ。やればやるだけ上手くなる。

小川:あとは、どれだけ気づきを得られるかというところはあると思いますね。気づけずに、焦ってがむしゃらやりすぎて、貴重な気づきを逃し続けるなんてことも…。

伊東:経験としては無駄ではないのかもしれないけど、そのお仕事としては無駄になってしまうかもしれない…。

小川:ただ、やってみて「意外といけちゃった…!」みたいなのも確かにあるので、あまり諦めすぎないで欲しいです。

伊東:自分で限界を早々に決めるのはもったいない!

小川:あ、それは確かに。とはいえ、聞いてくれたら教えるので!そのうえで「小川さんのやり方ダメだった」って言われても別にいいと思いながらやってます(笑)。その上で別な方法を模索して、プロジェクトがより良い方向に回るんだったら、自分はむしろそっちに乗りたいとすら思ってます。

風通しがいいよね。

小川:そうですね、すごいフットワークの軽い会社ですね。

うちが元請けでやってるという違いはあるかもしれませんね。

小川:ワークフローにもよりますよね。こっちはそれが許されるワークフローってのはあるかもしれないですね。

伊東:コミュニケーションが一番難しいんだから…!

単発ものとシリーズものでも違うのかなと思っていて、シリーズものだと続いてきたものを守らなきゃいけないですしね。

伊東:そうですね。作画と乖離するのが1番嫌なんですよね。CGだってバレるのが1番嫌!

小川:「(作画からCGに)変わった!」みたいな(笑)。

伊東:好きでCG作ってるのにね(笑)。

小川:見てて思うんですけど、「ラブライブ!」シリーズは本当に切り替わり自然ですよね。

シリーズ追うごとにどんどん違和感がなくなりますね。

小川:あ、変わってた!?みたいな(笑)。やりがい系的な話に一瞬だけ戻ると、自分が作ったモデルを後工程の人たちが動かしてコンポジットして撮影して映像になった時は、自分の作ったモデルにこんなに魂を込めてくれるのすごいな!という感じで、めちゃめちゃテンション上がる瞬間ではありますね。

伊東:本当にそうですよね。本当に魂入れてもらったんだみたいな。

小川:結局、モデラーはAポーズTポーズまでしか用意できないので、そこから先っていうのは、モデラー目線でもめっちゃ面白いですよね。

深沢:チェック動画見て感動してます、いつも。

伊東:嬉しいですよね、あの瞬間。

小川:命どころか、そのアニメーター本人が出てくるときもある(笑)。

伊東:後ろにアニメーターさんの姿が見える!(笑)。

小川:「お前か!」みたいな(笑)。あの瞬間、めっちゃ面白くて(笑)。で、多分チェックとかで直ったんですかね。次のテイクで「引っ込んだな」ってなります(笑)。

伊東:抑えられましたね(笑)。

小川:あれはすごく面白いですね。アニメーターの方が放映された後のみんなの反応を見るのが楽しいとかって言ってくださるように、自分たちはそれのさらに前の段階から楽しめてるっていうのは醍醐味の1つで、すごい贅沢な仕事だと思うんですよね。

伊東:確かに、アニメーターさんが作ってくれたカットを見るのがいつも楽しみ。

深沢:わかります。いっつも見てます。

伊東:だからこそアニメーターさんが動かしやすい、触りやすいモデルにしたいっていう意識は常にあります。

小川:うん、確かにありますね。

時間がそろそろなのでまとめましょうか。伊東さんからお願いします。

伊東:モデラーって色んな業種で存在してると思うんですよ。アニメの現場に限らず、ゲームだってそうだし、普通の映像だってそうだし…。でも、アニメのモデラーって、CGのモデラーとしてはすごく邪道だと思うんですよね。

小川:あー、言わんとしてることは分かります(笑)。

伊東:だけど、アニメに携われる、セルルックが作れるっていうのはすごく楽しいので!ぜひ、興味ある人、アニメとモデリングが好きな人は来てほしいなって思ってます。

ちなみに今の”邪道”というのはどういう…?

伊東:うーん、なんていうか、立体造形としては結構崩れてるものを作ってるなっていう意識があって。アニメ作ってるから絵を描いてるのと一緒で、絵のためのモデルなんで、基礎は同じなんですが一般的なモデラーらしいモデリングはしてないと思うんです。単純に小道具とか背景とかはがっつりCGっぽいモデリングだなと思うんですけど、殊更キャラに関しては、 フィギュアほどどこから見ても綺麗ってわけじゃないし、アニメらしさを表現するためのモデルに特化してるので。

<伊東さんの席に置いてあった本>

そう言われると、なるほど、と思いますね。深沢さんはどうでしょう?

深沢:元々ものを作るのが好きでCGを勉強し始めて、 サブリメイションに入ってからも髪や顔のパーツの作り方とかテクスチャ描いたりとか学校では教えていただけないこともめちゃめちゃあって。そうやって色々教わって、さらにモデル作るのが楽しくなったので。モデリングやってて楽しくて、もっと知りたいなって思う人は会社に入っても知識が増えるのでもっと色々楽しめるんじゃないかなと。

では、小川さんお願いします。

小川:これから入ってくださる人には、常に楽しんで仕事してもらいたいなってすごい思ってて。チーフ目線になっちゃうんですけど、楽しんで仕事をするっていうのを意識してもらいつつ、チームで仕事する上でスケジュールやクオリティ、仕様など、他の工程のスタッフとのコミュニケーションを丁寧に取っていくっていうのが大事だと思ってます。丁寧に積み上げていって、結果として自分の興味のあることにどんどんフットワーク軽く飛びついていけるようなクリエイターになっていってほしいと思ってます。とはいえ自分もまだチーフとしては新人の立場なんで…あの、正直なところ言うと、一緒に勉強させてください!

伊東:ほんと勉強させてください!

小川:本当にみんな思ってることなんで!色々言うんですけど、今一緒にいる方に関しても、勉強させてください、一緒に頑張りましょうみたいなスタンスですね。

自分以外の視点が入ってくるのは新しい気づきがありますよね。

小川:クリエイターとして上も下もなく、お互いに尊重できるような環境ってのが1番いいとは思ってるので。モデラーは、1番最初に経験できるセクションだと思うので興味ある人は、ぜひぜひぜひっていう感じです。

ありがとうございました!
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