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教えて吉田先生!これからの健康経営を考える!16.エビデンスに基づく健康施策とは?

全20回シリーズでお伝えしています「教えて吉田先生!これからの健康経営を考える」。前回は「健康経営の民間サービスの紹介(2)SaaSサービスなど」でした。今回は「エビデンスに基づく健康施策とは?」をお送りします。

インタビューは2020年4月6日に都内にて行われました。

―――まず、Evidence-based Medicineという言葉を一般にも聞くようになってきたように感じますが、その流れから教えてください。

はい、私も改めて調べてみたのですが、医療においてエビデンス重視の潮流が出てきたのは30年ほど前、1980年代から医学情報のデータベース化が進み、世界中の医療関係者がその情報にオンラインでアクセスできる、という情報技術の革新が背景にあったようです。

日本ではEvidence-based Medicine「根拠に基づく医療」と訳されることが多いようですが、統計的根拠に基づいた医療行為なのかどうか、が重視されるようになった、と言うことですね。現代からすると当たり前の感覚ですが、逆にそれまではかなり医療者個人の勘と経験に基づくものであった、と言えますね。

そこから派生して Evidence-based Practice : EBP、Evidence-based Health Care:EBHC:科学的根拠に基づくヘルスケア、Evidence-based Health Policy:EBHP:科学的根拠に基づく健康政策などの概念が出てきた。

―――なるほど、Evidence-based Health Policy:EBHPまで来ると、次に訊こうと思っていた「データヘルス計画」の趣旨がわかってきたような。

ですね、今では健康政策に限らず、あらゆる政策に根拠が求められますので説明責任を果たすのは大変な時代になりました(笑)。さておき、厚生労働省のデータヘルス計画に関しては第11回でも触れましたが、2013年に第2次安倍内閣「日本再興戦略」の成長戦略として位置づけられたものです。以後2014年に経済産業省が「企業の健康経営ガイドブック」を公表、また2017年には再度厚生労働省が「コラボヘルスガイドライン」を作成しました。

「データヘルス計画」はそれら一連の政策の基礎をなすものです。国の成長戦略として、レセプト(診療報酬の点数情報)や健診結果情報等のデータ分析に基づき、効率的・効果的な保健事業を実施しなさい、と健康保険組合に義務付けられたのです。

―――ちなみに「健康会計」という言葉が、アマゾンで健康経営関連の本を買おうと検索したところでてきたのですが、これはどういった考え方でしょう?

はい、その話はきっと経済産業省のお役人が喜んでくれそうですね(笑)。実は「健康会計」という用語は「データヘルス計画」よりも古く、2008年に経済産業省が提唱したものです。

企業による健康への取り組みを評価する新しい会計制度の呼称で、従業員の健康増進のために企業がどれだけ投資したか、その「費用」と「効果」を定量的に把握、可視化する仕組みとされました。健康投資に対する適切な意思決定を可能にするとともに、健康づくりに積極的な企業姿勢を広くアピールできるようにする狙いがあったようです。

これなどは、提唱から10年以上経った2019年4月現在、経産省のワーキンググループで協議されている「健康投資管理会計ガイドライン」の趣旨に近いように感じます。皮肉でも何でもなく、我が国官僚制度の徹底ぶりには感心しますね。エビデンスに基づいた健康政策を、執念に基づいて世に問うているように見えます。政策担当者の強い意志を感じます。

(聞き手:株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介)

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