SF少年が抱いた夢。それを実現する器がインテグリカルチャー
小さいころからSF的なものに憧れ、音楽の教科書に宇宙船の落書きをしたり、ゲームで未来都市をつくったりしていました。
中高から理系の道に進み、大学院ではナノテクノロジーを選んだのもSFが理由。その裏返しとして「伝統や古風が上で、未来やSFは下」として扱うオトナに対する失望感もありました。
ドクター(博士課程)も終わりに近づき、就活をするにあたっては、これまで学んできたものを活かしてSFの世界を作ることに直接関わりたいと思いました。
その時に考えていたのは、21世紀半ばに緑の丘の上に並ぶソーラーパネルと風力発電、環境エネルギー技術。
そしてポスドク研究ではリチウム二次電池の正極材料の研究をし、その後は東芝で定置用大型蓄電池システムの開発をしていました。
「自分は化学専攻で来たが、SFを作る技術とは何か? バイオか、ロボットか、ナノテクノロジーか、航空宇宙工学か・・・」
行きついた答えは、様々な技術要素や部品を統合し、ハードとソフトを組み合わせ、冗長性や耐久性を組み込み、運営体制や人材育成もセットで何かを作る「システム工学」。
スマートシティーやアポロ計画を作る技術です。この気づきもあり、東芝では「システム技術ラボラトリー」に籍を置きました。
とはいえ「大企業の中では意思決定層に行くのにライバルが多すぎるし、最後は自分で何か始めないといけない。」とは思っていました。
そして2014年(29歳)の時、いよいよSFを作るシステムを作ろうと考えました。
宇宙船、マスドライバー、人工生態系、サイボーグ、色々と候補あれど、自分の化学の学位と、今現実に何があって何が無いかを見た結果、今は培養肉の時だと。
そうして「再生医療から宇宙農業へ」と銘打って同人サークル”Shojinmeat Project”が開始。
東洋思想を反映した”Shojin”の名称、アジアのZ世代に訴求する「Anime」スタイル、いち団体ではなく社会運動だと示す”Project"、英語での発音しやすさなどが盛り込まれています。
その中で、実は、インテグリカルチャー(株)は、試薬購入のためのペーパーカンパニー的に始まりました。(※Shojinmeat Projectは法人ではなく同人サークルのため、法人取引しかしない企業からは試薬を購入できなかった。)
「インテグリカルチャー」という社名は、小さいころからずっと想像していたSF世界の中で、300階建ての「集積高層農場」を運営している会社です。ちなみに、とある街づくりゲームでも発表したことがあります。
その後、インテグリカルチャーは、2017-2018年の資金調達を経て、Shojinmeat Projectからの正式なスピンオフ企業となります。
最終的に、「同人サークルShojinmeat Projectがムーブメントを作り、NPO法人細胞農業協会が政官学をつなぎ、インテグリカルチャーが事業化する」という、培養肉と細胞農業のエコシステムができるに至りました。
「まだ見ぬものを創りたい」このモチベーションがみんなを突き動かしている
弊社は研究開発から事業化のフェーズにあり、社内では大半が培養テクノロジーの基礎研究と商品開発に携わる一方、事業開発チームの立ち上げが進んでいます。
全社的にルーチン化には至っていない、何かを作り上げるフェーズです。
弊社のコア技術は、様々な細胞を安価に大量に培養可能とする、汎用大規模細胞培養システム、”CulNet System”です。
基礎研究チームでは、安価に培養血清を大量生産する方法や、様々な種類の細胞の培養方法、細胞組織の作り方などを研究しています。他社や大学との共同研究も行われています。
また、CulNet Systemを使った他社との細胞培養製品の共同開発も行っています。そしてこれらの連携にあたり、知財や国際標準化も含めた戦略作りをしています。
働いている人たちのモチベーションの源泉は様々。製品を開発して世に出すという経験をしたい人もいれば、環境問題や食料危機を解決したいという人もいます。
色々あれど、全員に共通しているのは「まだ見ぬものを創る」という点に集まっていますね。
オフはもっぱら二次元とネットカルチャーに没頭
10代半ば~20代半ばの人格形成期に、2ちゃんねるとニコニコ動画により自分の人格を作ってしまったため、頭の中が二次元とネットカルチャーで埋まっていますw
また、「音楽の教科書への宇宙船の落書き」や「ゲームで未来都市」などは根本的には変わっていません。使うツールが3DCGやVRになり、発表場所がネットやコミックマーケットに変わっているだけです。
インテグリカルチャー(株)やNPO法人細胞農業協会もでき、培養肉や細胞農業も真剣なまなざしで見られるようになりました。
しかしその一方、金銭や利害が絡むことで、忖度やナントカ責任などの「オトナの事情」を迫られ、培養肉・細胞農業に元来必要な理想論の居場所が無くなってしまう危機感もあります。
なのでそうしたことは、Shojinmeat Projectにて続いています。
あと、実は本を出版したことがあります(笑)ご興味ある方はコチラ↓↓↓