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エンジニアのために、会社ができること。

日本ナレッジスペースの経営者であり、健康経営アドバイザーの有資格者。松岡竜邦社長に聞いてみました。なぜ、こんなに社員の健康に気をつかうのか。福利厚生を充実させることに、どんな意味を感じているのか。

自分の健康に対してどんな意識を持つか

――これだけ手厚い福利厚生制度が整った会社というのは、IT業界は言うまでもなく、日本の企業全体を見渡してみても珍しいのでは?社員の健康について、ここまでこだわるのにはどんな理由があるのでしょう。

松岡/始業時間に社員が出社する。普通は当たり前ですよね。ところがIT業界ではそうではない。体調をこわして出てこられなくなる人、激務がたたって入院してしまう人がたくさんいる。これはおかしいぞ、と。それで自分で会社を立ち上げるにあたって、社員の健康管理を意識した会社をつくりたいと思ったのです。

――それで健康経営アドバイザーの資格を取得したのですか。

松岡/いろいろ調べて、まずは自分から動いてみようと。全国健康保険協会の健康優良企業、経済産業省の健康経営優良法人の認定を受けたのも、勉強するなかで決めました。健康管理はもちろん本人の意識が一番大事だと思います。しかし、会社にも手伝えることがあるのではないか。そう考えて福利厚生も充実させていきました。制度を整えることで、社員が自分の健康に対して、どういう意識を持ってくれるのか。それが何より重要なことだと考えています。

――残業時間が増えない工夫もあると聞きました。とはいえ同業他社のエンジニアも一緒に現場に入っている常駐開発では、なかなか難しいのではないかと思いますが。

松岡/残業時間の上限を超えてからでは意味がありませんから。45時間を超えないように、早めに状況を把握できるツールをつくりました。多くの会社は月単位でチェックしているようですが、私たちは週1回。現場のマネージャーに取りまとめて報告してもらっています。ツールでは残業時間が上限まで残り35時間になると、数字が黄色で表示され、注意を促すようにしました。45時間を超えてしまうと数字は赤く変わります。残業をまったくしてはいけないとは言いません。進捗の問題でせざるを得ないこともあるでしょう。しかし、日頃から気を付けるようにして、何かあった場合にはすみやかに手が打てるようにしておくことが大切だと考えています。

――それで実際の残業時間は、月どのくらいになっているのでしょうか?

松岡/2019年の上期は平均で月11.7時間でした。なお2018年上期は月8.8時間でしたので、前年同期比で悪化しています。良かったと胸を張れる結果ではないですね。

――じゅうぶん少ない残業時間だと思いますが。残業をしないことによって、生産性が悪くなっていることはないのでしょうか?

松岡/とくに生産性が落ちていることはありません。残業しなければならないときには、もちろんしていただきますが、現場のマネージャーには、しなくても良いように段取りをして、効率的に業務を回していけるようにお願いしています。それで生産性が低いという結果が出たことはありません。

本社オフィスに必要以上の広さはいらない

――ストレスチェック、インフルエンザの予防接種、花粉症予防の補助などに加えて、疾病入院医療保険への加入、2020年1月実用化の線虫がん検査など、さらに新しい福利厚生制度を導入して充実させています。下世話な話ながら、利益は減ってしまいますよね。

松岡/疾病入院医療保険は今回追加した施策のなかでも目玉となる制度。線虫がん検査も4月以降に受けられるようになることが決まっています。これからも、さらに充実させていくつもりです。会社の出費はそれなりにあり、利益は減ってしまいますが、ほかの部分にコストをかけていないのでご心配なく。たとえば本社オフィスなどは必要以上に広く、豪華であったりする必要はないと考えています。営業を担当するのも、東京は私、大阪にもうひとりいるだけ。間接費を抑えて、社員に還元する方針です。

――社員の交流会を頻繁に開催されていますね。食事代もすべて会社持ちということですが。

松岡/会社の全体会議は3ヵ月に一度。社員交流会も同じペースで開催していましたが、ここしばらくは開催が増えて、月2回ペースになりました。こういうのは必要な経費でしょう。

――これから先、考えていることはありますか?

松岡/社員の知的好奇心を刺激できるようなことを考えていきたいですね。電子書籍の読み放題もそうですし、自己啓発や能力開発につながるようなプログラムも、もっと充実させられれば。

――エンジニアが技術者として終わるのではなく、ビジネスパーソンとして、さらにキャリアアップしてほしい。そういうふうにおっしゃっています。そこには、どんな思いがあるのでしょうか。

松岡/私たちの会社の社員が、これから先、エンジニアとして仕事をしていくなかで、技術を究めてエキスパートになることを目指す人と、経営に携わることを選ぶ人と、両方出てくると思っています。その分岐点に差し掛かったときにどうするか。意欲のある人には新しい会社を立ち上げて経営してもらいたい。会社をグループ展開させていくことを見据えて、そんな思いを抱いています。

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