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【モンラボ解剖シリーズ#2】デザイン講師は、生徒から学び、デザイナーとして成長することができる仕事。モンスター・アカデミア講師 村田インタビュー

「モンラボ解剖シリーズ」第二弾です。今回はモンスター・アカデミアで講師を勤めている村田健介さんにインタビューしました。

村田さんは現在、2019年2月に開校した、セブ島初のデザインスキルと英語を学べる学校、Monstar Academia(モンスター・アカデミア)の講師として活躍されています。

子どもたちに夢がないと嘆いていたけれど、自分だって夢を追っていないじゃないかと気づかされた。

写真上:村田、写真下:田中(インタビュアー)


ー村田さんのご経歴を教えて下さい。

はい。大学は経済学部の出身で、就活していたときに銀行に内定をもらったんです。ただ、僕は絵を書くのが好きで、それとは「なんか違うな」と思って、結局内定は辞退してしまいました。

辞退したものの当時はクリエイティブ職には就かず、塾講師をしていました。それが社会人のスタートです。


ー今の村田さんのご職業とはかけ離れていますね。

そうなんですよね。塾講師をしながら、中学生の進路相談に乗ることが多くあったのですが、「何になりたいの?」と聞くと「公務員」とか言うわけです。そう言う理由は「安定しているから」。”安定しているのが良い”、という考えってそれどうなの?と思ったんですね。日本の子どもたち、夢がないなぁって。

僕は「君がミュージシャンになりたいなら、親御さんが認めてくれるように自分も一緒に土下座するから!」みたいな熱血タイプだったんです。一方で、絵を書くのが好きなのに美大に行かなかったのは「絵を書いても飯は食えないしな」という諦めの面もあったんですよね。偉そうに生徒に話している僕だって、諦めの精神でそのときは塾講師していたわけで。夢を語れないのに先生やっているって、それこそどうなの?と思うようになりました。

そこからノースキル、ノー経験の状態でデザイン会社に応募しまくりました。そこからクリエイティブ職としてのキャリアがスタートします。


ーなるほど。クリエイティブ職のスタートはどんなものでしたか?

応募しまくった結果、地元である三重県のフリーペーパーの会社に無事就職できました。その会社は医療介護専門のデザイン会社で、名刺やパンフレット作成などなんでもやらせてもらいました。その時の肩書は「デザイナー」ではなくて、「制作部」所属でした。

そこでは人数が少なかったので、本当になんでもやってました。”デザイン”にまつわる仕事でいえば、お医者さんや介護施設の方々にヒアリングをして、想いを聞いてロゴをつくったり。一方で会社の経営に関わる数字も見ていたので、利益率なども含めてシビアに作るものを決めて、デザインしていました。

そのときにデザインをビジネス観点から考えるスタンスが身につきました。今でもデザインの考え方に大きく影響していると思います。

「27年間、この信号待ちの景色を見ているな」とふと気づいて、海外留学を決めた。


ーその後、セブ島留学を決意されるんですよね。

はい。僕の父親が船乗りで、海外で働くということがどんなことなのかをずっと聞かされていました。父が、「海外に出なさい、日本は狭いぞ」とずっと言っていたんですね。なので、僕もどこかで海外で働いてみたいと思っていました。でも、僕は絶望的に英語ができなかったので(笑)、無理だろうとどこかで諦めていて。20代の後半になって、思い切って留学することにしました。


ーなるほど…!なにがきっかけで留学を決断したのでしょうか?

27歳くらいのときです。自分の地元にジャスコがあるんですけど、ジャスコに行った帰りに信号待ちをしていて、「27年間、ずっとこの信号待ちの景色見ているな」って思ったんです。今でもあの瞬間は明確に覚えてます。もうずっと同じ土地にいて、同じ友達と遊んで、ずっと同じ景色を見ているなってハッとしたんですよね。もう20代も後半だったので、やるなら今しかないなとふと思って。それで留学を決断しました。


ーセブ島に留学してみて、どうでしたか?

当時はセブ島で絶対に働かないだろうと思っていました(笑)。海外で初めて長期滞在したのがセブ島で、ちょっとこんなところで暮らすのは無理だな…と思って。アジアのダイナミックな成長をリアルタイムで感じたいなと思っていたので、留学後からベトナム、タイ、シンガポール、インドなどのアジアを中心に転職活動をはじめました。無事にベトナムのWeb制作会社から内定をもらい、ベトナムにて海外就職を叶えました。

ベトナムで「世界で彼らには勝てない」と悟る

ーベトナムではどんなお仕事をされていたんですか?

ベトナムに飛んでからは、2社ほど在籍していました。どちらもディレクション業務がメインで、クライアントの依頼を橋渡ししてベトナム人メンバーに業務を遂行してもらっていました。

僕は英語が完璧にできたわけではなかったのですが、言語はコミュニケーションの一部で、絵で指示したり、間違えがないように調べながらテキストコミュニケーションを強化したりと、”英語ができること”より大事なことをベトナムで働きながら学びました。


ーステキですね。その他に学んだことはありましたか?

ベトナム人は真面目で、とても親切で、丁寧に仕事をしてくれました。彼らってすごいんです。イラストの依頼をすると、依頼したテイストに合わせてどんな絵も描いてしまうんです。個性を出しすぎずに、柔軟性高く仕事ができるスキルに驚きました。そんな彼らが日本人よりも人件費が安く、仕事を仕上げるスピードもめちゃめちゃ速い。

そんな彼らと仕事をしてみて、世界的に見て、僕たちは彼らには勝てないと思いましたね。「日本語でできるから」とか、「日本人だから」という理由でしか世界から選ばれないと思いました。日本は抜かれてしまうだろうなと、今でも危機感をもっています。その時の危機感が、今教えるという仕事をしていることにつながっているのかもしれません。

教えながら、自分自身が生徒から学んでいる。デザイナーとして成長していると思える。

ーベトナム就職後からセブ島に来るまでの経緯を教えてもらえますか?

もともと持病があって、そのせいで時間固定で働くという働き方が難しいだろうなと思うようになり、ベトナムから帰国してからはフリーランスでイラストを中心に仕事を請け負っていました。フリーランスをしているうちに、デザイン事務所に勤めてスキルをもっと上げたいな、デザインの見識を深めたいなと考えるようになって。そんな風に思っていたときに、モンスター・アカデミアで働いている、セブ島留学時の友人に、講師の仕事に誘われたんです。


ーそうだったんですね。それこそ時間固定の働き方になりそうですが…。

持病のことも伝えて、まずは3ヶ月契約をお願いしました。正規での雇用ではなくて、外部社員のような形で勤務を決めて、講師業務以外の時間をフレキシブルにしてもらったんです。

今だから言えますが、持病のことはもちろん事実ですが、セブ島に勤めるなんて1年も持たないだろうなと思っていましたね(笑)。


ーデザインの見識を深めたいという想いと、講師という仕事に矛盾を感じるような気がしましたが、そこはどう考えて講師業務を始めたんでしょうか?

それが、全然矛盾しないんですよ。塾講師の経験からもよく知っているのですが、教えるほうが身につきますね。知識を集めて、それを相手にわかるように伝える。教えることと知識を深めることは同じことなんです。もともと僕は教えることも好きですし、好きなことをしながらデザインの見識を深められるという絶好のチャンスだと思いました。


ー講師という仕事の面白さについて教えて下さい。

モンスター・アカデミアのカリキュラムは頭を使うことが多く、手を動かすよりも思考につかう時間が多くなります。教えていても思いますが、デザインの本質ってそういうところにあるんですよね。一社目の会社でも、デザインをビジネスの側面から考えるようなことをしていましたが、自分のキャリアパスと今教えていることがつながっているような気がして、なんだか楽しいです。

それから、技術は絶え間なく発展していくので、自分が今教えていることすら陳腐化していくなと感じます。自分もアップデートしていかないと古いことを教えてしまうなという強い危機感がありますね。デザイントレンドをキャッチアップすることにとどまらず、ビジネスとデザインのあり方を自分のなかでアップデートし続けていることが将来的な自分のキャリアにもつながっているなと思います。生徒さんと一緒に”学び続ける”ということが楽しいですね。


ーなるほど…!

デザインの講師をしてみて思いますが、”デザイン講師と生徒”という関係よりも、”デザイン講師とパートナー”という考え方のほうがしっくりきますね。生徒さんはビジネスマンとして僕よりも経験や知識がある人が多くいて、僕こそ生徒さんたちから学んでます。デザインはあくまで手段でしかなく、それをどうビジネスに還元していくかという思考プロセスは人によってそれぞれで、そこから見える新しい景色に、いつもワクワクさせられています。講師をしながら、いちデザイナーとしても成長していると感じます。

1年も持たないだろうなと思っていたセブ島での仕事。気づいたら人生で一番楽しいと思っている。


ー今後の展望を教えて下さい。

まず前提として、デザインそのもののポテンシャルを強く信じていて、今後もデザインそのものの需要は高まると思っています。まだまだ日本国内でも市場は形を作っている最中で、デザイン学校を卒業してもデザイン事務所に入社するというのが王道ルールとなっています。

一方で、一般企業のデザインには「隙がある」とよく思います。企業にクリエイティブをコントロールできる人が1人でもいれば、会社のカラーやブランディングを統一して世界に届けることができると思うんですよね。そういう考えが日本に浸透していってほしいし、そういうことを将来的に担っていくのが今の生徒さんだとも思います。そんな”デザイン思考”を持った人を多く増やしていきたいですね。


ー最後に、どんな人に講師に来てほしいですか?

まずはクリエイティブが好きな人。次に、モンスター・アカデミアのカリキュラムのファンになってくれる人がいいですね。僕は教えているカリキュラムに惚れていて、教えれば教えるほど「良いカリキュラムだなぁ」と思ったりしています(笑)。

仕事の始めは、3ヶ月の契約で1年も持たないだろうなと思っていたと伝えましたが、今や1年を越して、人生史上一番楽しい仕事だと思っています。教えがいのあるカリキュラムを教えているということがこの仕事を楽しいと思える理由の1つです。カリキュラムのファンになりながら、それを生徒さんに伝播して、自分たちもデザイナーとして成長していく。そんな仕事を一緒にできる人、お待ちしています!

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