「ふるさと納税のクレームゼロを目指して」
山梨県、ふるさと納税返礼品の品質向上に向けた取り組み強化
山梨県は、ふるさと納税を通じて返礼品として贈られる県産果実、特にシャインマスカットをはじめとしたブドウや桃、すももなどの品質確保に向けた取り組みを強化しています。これまで、一部の返礼品が受け取った納税者から「品質が悪かった」「果実が傷んでいた」などの苦情を受け、県産フルーツの信頼が揺らいでいました。こうした状況を受けて、県は市町村と連携し、品質を確保するための新たな仕組み作りに着手しました。
返礼品品質の不満が浮き彫りに
山梨県は、全国有数の果物生産地であり、ふるさと納税の返礼品としてもその地元産の果実は人気を集めています。しかし、寄せられた評価によると、昨年度、返礼品として送られた県産果実に対して約21%が低評価を受けており、今年度も高品質を目指したにもかかわらず、依然として約14%が「不満足」とされる結果となりました。
納税者からは「味が悪い」「傷んでいた」「実が小さい」といった具体的な苦情が多く寄せられ、山梨県産果実のブランド価値が損なわれる恐れが出てきました。このため、県は、返礼品としての品質向上と信頼回復を最優先課題と位置づけ、迅速に対応策を講じることになりました。
県、市町村、関係団体が一体となった取り組み
山梨県は、市町村や県、ふるさと納税サイト運営会社、輸送業者、そして地元農業団体と共同で「山梨県ふるさと納税返礼品(県産果実)品質確保協議会」を設立しました。協議会では、過去のデータを分析し、どのような状況で品質が低下していたのかを徹底的に調査しました。その結果、果実の取り扱いに関するガイドラインを策定し、今後の品質向上に向けた方針を打ち出しました。
ガイドラインの主要内容
新たに策定された「ふるさと納税返礼品(県産果実)取り扱いガイドライン」では、次のような内容が盛り込まれています。
- 品質基準の厳格化:県の青果物出荷規格に基づく厳格な品質基準が設けられ、果実の糖度や色沢(色の具合)を確認することが求められます。糖度や色沢は、品種ごとに決められた基準を満たさなければならず、これにより果実の品質が確保されます。
- 返礼品提供事業者への支援:返礼品を提供する事業者には、検品担当者を配置し、検品体制を強化することが求められます。また、事業者は「目合せ会」と呼ばれる規格研修会に参加し、品質基準を共有し理解を深めます。
- 配送方法の改善:果実の取り扱いには細心の注意が必要です。適切な梱包やクール便の利用を義務づけ、配送中の果実の品質を保つための措置が強化されます。さらに、配送業者に対しても果物として丁寧に扱うよう指導が行われ、外見から果実と分かる表記を貼付することが義務付けられました。
- クレーム対応と品質管理の強化:万が一、品質に問題が発生した場合には、迅速に対応できる体制が整備されます。苦情情報を関係者間で共有し、検査や抜き打ち調査を実施するなど、品質管理体制が一層強化されました。
ブランド価値の回復を目指して
山梨県は、全国でも特に生産量が多く、高品質な果物を生産していることで知られています。ふるさと納税を通じて県産果実の魅力を広める一方で、品質の低下によるブランドイメージの悪化を防ぐため、今回の取り組みは非常に重要です。県産果実の品質を守り、返礼品として受け取った納税者に満足してもらうことが、山梨県の農業にとっても大きな利益をもたらすと考えています。
この取り組みにより、山梨県産果実が持つ本来の価値が再評価され、納税者の信頼が回復することが期待されています。また、今後も品質向上を目指した取り組みを継続的に進めることで、ふるさと納税返礼品としての魅力をさらに高め、より多くの寄付を集めることが可能になると県は予想しています。