2021年Vookに入社し、プロデューサーとして活躍している中島さん。
それまで映像業界でキャリアを積んできた中島さんは、映像プロダクションから、どのような思いでVookに飛び込んだのか。どのような経験を経て、今のお仕事と向き合っているのか。
Vookで担当したプロジェクトについて聞いていくと、中島さんがご自身の力を開花させるまでの軌跡が浮かび上がってきました。
中島将太
Vook メディアパートナー事業部 プロデュースグループ マネージャー
株式会社共同テレビジョンでTVCMやインフォマーシャルなどの制作に携わり、プロダクションマネージャーとして従事。その後、AOI TYO Holdingsに転職。SUZUKIやサッポロビール、サッポロ一番などの大型TVCM案件を担当。現在はVookで、企画をメインに、映像コンテストやウェビナー・LP制作・映像制作などのプロデュース全般を担当している。
力量を示す指標がないというコンプレックス
ーー中島さんは、Vookに入社するまで映像プロダクションにいらっしゃったんですよね?
◆中島:はい、ずっとテレビやWebの広告制作をしていました。最初に入ったプロダクションでプロダクションマネージャーを経験し、そこから大手の映像制作会社に移って、より大きなクライアントの広告制作に携わるようになりました。
ーー順風満帆のご経歴に見えるのですが、なにか転機があってVookに入社したのでしょうか?
◆中島:その会社で4年くらい経った時、ふと気づいてしまったんです。どんなに大きな仕事をしても、CMなどの広告は見てもらえる期間が限られているんだなって。膨大な時間とお金と人手をかけても、契約上1〜2ヶ月しか放送されないことも多く、疑問を感じ始めていました。
最初は現場が楽しかったし、自分が携わったものがテレビで流れるだけでも嬉しかったんです。でも、毎朝3時まで働いて、また朝11時に出社するという生活を送るうちに、辛さばかり感じるようになっていました。撮影に入ると、建て込みやアングルチェックなどで7日間家に帰れないなんてこともざらにあって。
こんなきついのに、もしかしたら誰にも見られていないのかもしれない、誰にも響いていないのかもしれないのでは?と思ってしまうこともあり。この、ただ消耗しているかのように思える日々が続き、なかなか意味を見出せない、そんな状態になっていたんですよね。
ーー「消耗」ですか。
◆中島:あの頃の私には、生活を削っても作ったものは残らないし、自分の経験も蓄積されていないように思えました。
たとえば、「プロダクトマネージャー」ってできることはたくさんあるのに、仕事内容を文字にすると「スケジュール調整」や「予算管理」という、ありきたりな作業に見えてしまうんです。実際にはそれらの積み重ねがハードワークになっているんですが、力量を表す指標がなくて、履歴書に書こうとすると内容が薄いのではというコンプレックスがありました。
それに、この業界の知識しかないから、自分は社会人として一般企業で通用するのだろうかという不安は常にありましたね。
ーーそうですよね。苦労して培った現場の知見があるのに。
◆中島:そんな時、映像業界の労働環境を改善したいとVook代表の岡本が言っているのを聞き、自分に合うかもしれないと思ってVookに入社したんです。
映像の知見が、プロジェクトを成功に導いた
ーーVookでは、どのようなお仕事をされてきましたか?
◆中島:入社してすぐ、Nikonさんのプロジェクトを担当しました。これは、カメラ業界で地位を確立しているNikonさんが従来のスチール撮影に加えて、これからもっと映像にも力を入れていこうということで、その認知拡大のために行ったものです。
いくつかの中から私の企画案が採用されて、「Vertical Movie Award 2022」という縦型動画のコンテストをやることになりました。
https://vook.vc/c/nikon-vertical-movie-award/
ーーなぜ、縦型動画だったのでしょうか?
◆中島:当時は、スマホ特化型の縦型動画配信「smash.」ができたり、映画監督の岩井俊二さんがLINE NEWS VISIONで縦型のドラマ作品を制作されたり、縦型のミュージックビデオが作られたりと、縦型動画が盛り上がり始めた頃でした。
まだ縦型の映像作品だけのコンテストはなく、大きいコンテストの一部門でしか開催されていない状況だったんです。
Nikonさんの製品は、描写力が特徴です。だからこそ、本格的な映像作品にはぴったりだと思い、縦型の作品に絞ったコンテストを提案しました。
先方にお話ししたタイミングもよく、決裁者の方がちょうど海外から帰国された時でした。海外では縦型動画が盛んだし、ぜひやろう! ということで、すぐにプロジェクトがスタートしたんです。
ーー中島さんの日頃のアンテナがあったからこそ、時代に合った提案としてクライアントさんに受け入れられたんですね。
◆中島:プロダクション時代から自然に考えていたことが、この企画につながりました。これまでは代理店を経由したやりとりが多かったので、企画の意図を直接クライアントさんに伝えられる良さを実感しましたね。
ーー提案のあとは、どのようにプロジェクトを進めていかれたのでしょうか?
◆中島:まずは、どうやって応募作品を集めるかに注力しました。
単に集めるだけではなく、Nikonの製品の良さを作品を通じて発信したかったので、クオリティの指標も設定しました。TikTokのようにすぐスワイプされてしまうものではなく、作品としてのクオリティが高いものにしたい。これは、当初からNikonさんと話していたことでした。このコンテストに関わる作品を、消耗される映像にはしたくなかったんです。
コンセプトは「縦型動画の基準をアップデートする」。縦型動画の代名詞となる映像を決めるコンテストであることを発信し、Nikonは本気なんだという姿勢を見せていきました。
力のある若手クリエイターさんにクオリティの高い作例動画を作ってもらい、サイト上で公開もしました。さらに、縦型動画作品の制作経験があるクリエイターさんに直接声をかけて、その方から構図の作り方を教えてもらうウェビナーも、Vook内で複数回開催しました。
ーーそれは、学びの事業も行っているVookならではの視点ですね。
◆中島:Vookの根底には、クリエイターさん同士やクリエイターさんと映像の知識をつないで映像業界を盛り上げたいという思いがあるので、その軸はぶれなかったと思います。
結果的にクオリティの高い作品がたくさん集まって、クライアントさんにもすごく満足していただけました。
ーープロジェクトの始めから終わりまで、ずっと関わっておられたのですね。
◆中島:何をするかだけでなく、どう見せるかというところも含めて、全面的にディレクションしました。
たとえば、サイトのトップには動画を持ってきて、極力文字を減らしています。感度の高いクリエイターさんほどあまり文字を見ないという感覚があったので、とにかくワンビジュアルで伝わるものにしようと提案したんです。
その動画自体のディレクションも行っていて、なぜ写真撮影では縦向きの構図が一般的に行われているのに、映像では縦向き撮影がメジャーではないのかを考えました。
写真ではメインの媒体である「雑誌」が縦向きのことが多く、撮影時も縦向きで撮影することが多いことに気づきました。なのでキービジュアルになる動画のモチーフも、最終的に「雑誌」に落とし込まれるストーリーにしました。
ーー中島さんの提案が、すごく受け入れられているように見えます。
◆中島:一見、プロデューサーの役割は広告代理店と似ているように見えるかもしれませんが、Vookと代理店の大きな違いは、「上下関係」がないことだと思っています。
代理店の案件では、クライアント・代理店・制作会社と上下になっているのが一般的ですが、Vookのプロジェクトでは、すべて対等で横並びの関係です。
私たちは、クリエイターさんのことを下請業者だと思っていません。制作がどれほど大変かわかっているので、クリエイターさんへのリスペクトが根底にあります。
また、良いものを世に出すためには、クライアントさんにきちんと意図が伝わることが大切です。クライアントさんは広告や映像の専門知識がない場合もあるので、映像に特化したVookだからこそ、プロジェクトの中で判断して導いていくような役割を担えるのだと感じています。
未来につながる今をつくっている
ーーこのプロジェクトを経て、ご自身の中でどんな気づきがありましたか?
◆中島:これまで、自分には汎用性の低い知見しかないと思っていましたが、映像プロダクションの外に出ても役に立てるんだと気づけました。
実は先ほどのプロジェクトには続きがあって、実際にLINEで配信する作品を制作できる「LINE NEWS VISION賞」という賞を設けたのですが、その賞を受賞した作品が、今年公開される予定なんです。
このプロジェクトをきっかけにクリエイターさんの活躍の場が広がっていくのが、すごく楽しみです。
ーーコンテストの期間が終わっても、ずっと続いているのですね。
◆中島:そうですね。自分の担当したプロジェクトによって後に残る作品が生まれたり、新たなクリエイターさんが育っていたりと、未来につながっている感じがします。
プロダクション時代は納品したら終わりだったので、単発で終わらないことが嬉しいです。「未来につながる今をつくっている」という実感があります。
ーーすごく、視野が広がった印象を受けます。
◆中島:映像って、すごく奥深いんです。その奥深さゆえ、きつい労働環境にいると、一見キャリアが狭まっているように見えてしまうかもしれない。
でも今は、映像制作の場を経験したからこそ、貴重な知見を培ったのだと思えるようになりました。
これまで自分が日常的に考えたり理解したりしていたことが、全然常識ではないという場面が、今ではたくさんあるからです。Vookには映像業界出身ではない人も集まっているので、その中ですごく重宝してもらえています。
ーー外に出たからこそ、気づけたことですね。
◆中島:そうですね。場所を変えれば、特殊な業界だと思っていたコンプレックスが、むしろ強みになります。だから、もし映像業界の労働環境に悩んで行き詰まってしまったとしても、自分の知見に誇りを持っていてほしいです。
そして、そんな人にぜひ、Vookに来てほしい。
ここでは、「消耗」される存在は求めていません。どんどん仕事の幅も広がっているので、メンバー全員がキーマンになれる会社です。
映像が好きで、アンテナを高く持っている人であれば、きっと活躍できると思います。
僕自身、Vookで自分の知見を役立てられましたし、新たな目標もできました。これからはマーケティングなどの力をつけて、さらに企画力を高めていきたいと思っています。
こんなこと、数年前には思えていませんでした。今ではしっかりと生活できているので体調も良いですし、忙しさが苦痛ではないんですよ。
自分を「消耗」するのではなく、力を「蓄積」して成長し続けられる環境が、ここにはあります。
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ここまでお読みいただきありがとうございます。
Vookでは、共に映像クリエイターが活躍できるプロジェクトを進めるパートナーを募集しております。
今回、ご紹介した「Vertical Movie Award 2022」の他にも、日々さまざまなプロジェクトが立ち上がり進行しています。
ぜひVookの目指す、映像クリエイターを支える事業に興味がある方がいらっしゃいましたら、まずはお声がけ下さい。
共に映像業界をより良くしていくための、仲間を募集しております!