XaaS モデルの最前線で実績を持つ、紣川 謙さん(後半) | 株式会社Definer
Definer 代表の阪本は、アドバイザーとしてご支援いただいている、 株式会社CustomerPerspective代表の紣川 謙(かせがわ けん)さんへインタビューいたしました。 ...
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Definer 代表の阪本は、アドバイザーとしてご支援いただいている、
株式会社CustomerPerspective代表の紣川 謙(かせがわ けん)さんへインタビューいたしました。
現在はデジタル戦略・マーケティングのアドバイザーとして活動されています。
今まで戦略コンサルティング会社、海外MBA、外資系銀行でのネットバンキング立ち上げや、Amazonのマーケティングやプライム部門の責任者などを経験して独立。デジタル戦略・マーケティングの軸で一貫したキャリアと実績の裏側に隠された、素顔と信念、哲学に迫ります。
阪本
「紣川さん、こんにちは! 本日はインタビューのお時間をいただきありがとうございます!いつも、メンバーシップに関わるサブスクや、XaaSモデルの戦略について、ご経験・知見をもとにアドバイスいただき、大変助かっております。」
紣川さん
「そう言っていただけると、とても嬉しいです。こちらこそ、楽しみながらお仕事をご一緒できて光栄です。」
阪本
「いえいえ、、それでは早速、インタビューに入らせていただければ幸いです! 本日は、普通のインタビューではなく。。。どちらかというと、プロフェッショナルの内面に迫る、本質的な内容、IT業界の歴史であったり、そういった奥深いインタビューができればと感じております。」
紣川さん
「わかりました。印象に残る経験や、私が大切にしていること、仕事に対する考え方に至るまで、しっかりと整理をした上で、お伝えできるように努めます。ご質問があれば何でも聞いてください」
阪本
「まずは、簡単にキャリアと経歴をお伺いできれば幸いです。」
紣川さん
「現在株式会社CustomerPerspectiveの代表として、デジタル戦略・マーケティングの分野で様々な企業のアドバイザーをしています。ご支援している企業はDefiner Inc.のようなスタートアップから一部上場の大企業まで。キャリアのスタートは、新卒で入社したBooz Allen & Hamiltonという戦略コンサルティング会社(現PwC Strategy&)です。その後、MIT SloanでMBAを取得し、Citigroupでのインターネットバンキングの立ち上げやカードのマーケティングを経験しました。イーベイ・ニューベンチャー株式会社の代表を経て、2007年にアマゾンジャパンに入社。アマゾンでは経営メンバーを11年間務め、その間コンシューマーマーケティング、アマゾンプライムの責任者をしていました。2018年に自分の会社をつくって独立し、今日にいたっています。」
阪本
「誰もが夢を持つような華々しいキャリアですね。戦略ファームからMBA取得、その後、戦略ファームに戻らず、事業会社に行かれた理由はございますか?」
紣川さん
「『自らの責任で戦略を実行したい』と考えたのが大きな理由です。コンサルティングの仕事はスピード感があり、コミュニケーションや分析など、ビジネスに必要な多くの基本を学ぶことができました。さまざまな業界のプロジェクトに参加し、『マーケティングは面白い』と感じたのもこの頃です。しかし当時は戦略・計画の実行や、新規事業創出などの経験が自分には足りないと考えたのです。MITでの1年目・2年目の間にシティバンクジャパンでサマーインターンをすることにしました。」
阪本
「MITへの留学は1995年から1997年ですね。。世界中でITバブルが弾ける前の。。笑」
紣川さん
「はい。95年頃よりアメリカでもインターネットを活用した新しいビジネスが急速に立ち上がり始めていました。当時チームメイトとHigh Tech Marketingというクラスの準備で新しいビジネスモデルを話し合うことがありました。その時”Amazon.comという面白いサイトがあって、どんな本でも買えてすごい。物でもサービスでもオンラインで情報を入手し、取引できるようにすれば、今までにない便利なサービスがつくれる”などと話していました。当時はまさか、後で自分がアマゾンで働くとは思っていませんでした。」
阪本
「オンラインで何でも買えるというのは、Amazon創業期からつづく世界観ですね。当時のCitibankでのネットバンキングの立ち上げに関して、お伺いしても良いでしょうか?」
紣川さん
「分かりました。当時日本の銀行のサービスは横並びで大きな差がない時代でした。そんな中で、Citibankは他行とは違うサービスで明確な差別化を志向していました。サービスとは具体的には世界各国の通貨による外貨預金、24時間365日使えるATMやテレフォンバンキング、世界で使えるキャッシュカードなどです。インターンをしていた時、インターネットチャネル経由の口座開設が少数ながら急速に伸びていて、”これは大きな事業機会につながる”と肌で感じました。」
阪本
「Citibankのネットバンクの立ち上げにはどうして携わることになったのでしょうか?先進的な取り組みで、重要なプロジェクトを任されるなんてすごいですね!!」
紣川さん
「シティに入社後、私はマーケティング部門で上司であるアメリカ人のマーケティングのヘッドと様々なプロジェクトに携わっていました。ネットバンキングの事業リーダーが開発中に会社を離れることになり、上司に”Ken, やってみないか?”と言われたのです。急な話で驚きましたが、”またと無いチャンス”と感じ、”やらせてください”と言いました。」
阪本
「プロジェクトはどんな風にすすんだのでしょうか」
紣川さん
「専用のヘルプデスクをつくって顧客対応できるようにした上で、テクノロジー部門と協働してネットバンキングの開発とテストをすすめ、ローンチにこぎつけました。もう四半世紀前になりますが、真夜中のローンチの瞬間を今でも鮮明に覚えています。最初に片手で数えられるくらいのユーザーが使い始め、急速にユーザー数が伸びていった時のワクワク感は忘れられません。テクノロジー部門は日本・米国・インドのチームで構成されていましたが、マーケティング部門で事業を担当するのは最初は私一人。その後人を採用してチームをつくり、マーケティングで利用者を獲得し、サービス・機能も改善していきました。」
阪本
「当時の開発はどんな感じでしたか」
紣川さん
「アジャイル開発が生まれる前ですから、ウォーターフォール開発です。要件定義書で徹底的に詳細を書き出していくと、すぐにバージョン20程度、厚さ1cm位の書類になりました。関係者全員でサインオフしてさあ開発スタートという流れです。ただし前例のないサービスを設計するわけですから、どんなに事前に詳細をつめても、開発が始まってから不都合や変更点が出てくる。テクノロジー部門からは『一旦サインオフしたら要件変更はしないでくださいね』とリクエストされています。どうしても変更が必要な時は交渉してすすめました。」
「日本の企業では一部のIT企業を除くと今でもウオーターフォール開発が主流です。変化への対応に時間がかかることが多く、当時の開発を思い出します。米国の企業ではアジャイル開発が当たり前になり、顧客ニーズやテクノロジーの変化に柔軟に対応できる。この違いは、日本の企業では開発の外注が一般的で、請負契約になっていることも原因だと考えています。」
阪本
「我々も日本企業にアジャイル開発を実現するための解決策を提供したいですね。 苦労して立ち上げたCitibankのネットバンキングは、その後どうなったのでしょうか?」
紣川さん
「幸い当初の想定をはるかに超える多くのお客様に使っていただき、すぐにシティバンクで最も使われる取引チャネルのひとつになりました。メディアでも注目され、日経金融や日経コンピュータでネットバンキングのランキング評価1位をいただきました。背景を説明すると、他行のインターネットバンキングは、CD-ROMでソフトウェアをインストールするなど、ユーザーが面倒な作業を強いられていた。私が良くつかう表現で言うと、利用者の「つまずきポイント」がたくさんあったのです。この点、Citibankは暗証番号と暗証コードを使えば、すぐにユーザーが使えるようにユーザー体験を変革したのです。外貨を売買できるという、当時はどのネットバンキングにもなかったサービスを提供していたのも理由でした。」
阪本
「まさに、Customer First、顧客体験をビジネスの中心に、ですね。これは、大きな事例として、勉強になります。」
紣川さん
「私にとってとても貴重な経験でした。顧客視点で徹底的に使いやすいサービスを創ることが大切だと知りました。そして顧客が求め、他社にないユニークな価値を提供することが事業の成長に直結する”ということも学びました。」
阪本
「少しずつ、Amazonとの価値観の類似が伝わってきました。ぜひ、Amazonでのご経験もお伺いできれば嬉しいです。」
前半は、ここまでです。後半は、Amazonでの経営経験や、紣川さんが大切にしている価値観、そして哲学に迫ります!