【トップエンジニア対談/前編】業務や会社の枠を超えて、Microsoft MVPたちが積極的な情報発信を続ける理由
NTTデータには、さまざまな分野における第一人者が多数在籍しています。今回紹介する技術革新統括本部の石崎奏と公共・社会基盤事業推進部の高原伸城もそんなトップエンジニアの一員です。ふたりはマイクロソフトの技術コミュニティのリーダーに与えられる「Microsoft MVPアワード」をともに受賞。高原はData Platformカテゴリで、そして石崎はMicrosoft AzureカテゴリでそれぞれMVPとして認められています。「Microsoft MVPアワード」とはどのような賞なのか、どんな取り組みが評価されたのか。MVPたちが語ります。
石崎 奏
技術革新統括本部 システム技術本部 クラウド技術部 クラウド担当
<プロフィール詳細>
2008年、NTTデータに新卒入社後、基盤システム事業本部に配属される。TeSS(Technical Support Service)プロジェクトにて全社からの技術Q&Aを担当。以後15年にわたり、TeSSのサブリーダー、リーダー、相談役などに携わる。並行してMicrosoft系技術の案件支援やアーキテクチャレビューを実施。2020年から「Azure塾」の塾長を務め、次世代の技術者育成にも携わっている。
高原 伸城
公共・社会基盤事業推進部 プロジェクト推進統括部 技術戦略担当
<プロフィール詳細>
日系SIerを経て日本マイクロソフトに入社。直近では技術リーダーとしてエンジニアの管理、育成、採用活動、国内外の高難度案件に特化した対応を担当していた。2019年、NTTデータに転職。公共・社会基盤事業推進部に所属し、主にパブリッククラウドを利用したシステムの提案、設計、構築、およびWindows系の問題発生時のトラブルシューティング、グループ内の人財育成を担当している。TG(テクニカル・グレード)適用者。
技術コミュニティのリーダーを表彰するMicrosoft MVPアワード
――おふたりはともにMicrosoft MVPアワードを受賞していますが、まず普段の業務内容を教えてください。
高原
私は公共・社会基盤事業推進部に所属し、主に政府系のシステムや電力・テレコム分野などのプロジェクトにおいてMicrosoft AzureやMicrosoft 365、AWS、Google Cloudなどのパブリッククラウドを利用したシステムの技術支援や、NTTデータのグループ内における人財育成を担当しています。
石崎
私は技術革新統括本部(通称、技統本)において、高原さんと同じくプロジェクトの技術支援を行っています。そのほかには、社内の「Azure塾」の塾長として人財育成やマイクロソフト社とのアライアンス活動なども並行して行っています。
――Microsoft MVP同士、業務で交わる機会はありますか?
高原
MVPだからというわけではありませんが、連携する機会は多いですよね。石崎さんの所属する技統本は全社の情報を把握しているので、プロジェクトで参考にできる事例がないかよく質問させてもらっています。
石崎
実は技統本側にも同じようなニーズがあります。各分野のプロジェクトをすべて把握できているわけではないので、プロジェクトの実態や詳細をこちらからヒアリングさせてもらうこともあります。また、NTTデータにはクラウドのスペシャリストたちが集まるCloud Architect Community(CAC)と呼ばれるコミュニティがあり、そこでの接点もあります。CACには約40名のメンバーが所属しており、プロジェクトで得た経験・ノウハウや新情報の共有などを行っています。
高原
技術者同士のつながりや情報共有を支援するCACには技術Q&A的な側面もあります。クラウドのスペシャリストばかりなので、難度の高い問題にぶつかった際などには本当に頼りになりますね。
――部門を超えた連携やコミュニティがあるのはNTTデータらしい点ですね。おふたりが受賞されたMicrosoft MVPアワードとはどのようなプログラムなのでしょうか?
石崎
マイクロソフト社の製品やサービスの技術コミュニティに貢献をしたコミュニティリーダーを表彰するプログラムです。コミュニティリーダーとは、技術情報を発信したり、より良い技術利用への改善提案を行ったり、技術を利用する人同士の交流や成長機会の提案を行うなど、技術コミュニティに大きく貢献する人のことを指しています。
高原
アワードには11の受賞カテゴリがあり、私は2021年から2年連続でData Platformのカテゴリでアワードを受賞し、石崎さんは2022年にMicrosoft Azureカテゴリで受賞しました。NTTデータではクラウド技術を活用するトップエンジニアの育成に注力しており、先ほど紹介したCACには私たち以外のMVP受賞者も所属しています。
――Microsoft MVPアワードの具体的な評価ポイントについても教えていただけますか?
高原
マイクロソフト社が個人の過去12ヶ月間の技術コミュニティへの貢献に感謝の意を示して授与する特別な賞という位置づけです。具体的な活動例としては、技術コミュニティの運営や勉強会・イベントの開催・登壇、技術情報に関するブログやサイトの執筆、動画やPodcastの投稿、サンプルコードやツールの公開、次世代の技術者のメンターなどの取り組みがあります。また、製品やサービス、技術資料へのフィードバックなども対象とされます。
石崎
大きな特徴として、社内業務とは別の立ち位置のアワードであり、基本的に社外での活動がメインで評価されます。私も高原さんもMicrosoft MVPアワードを受賞しましたが、受賞のためには質と量のともなった貢献活動が必要とされており、技術情報の積極的な発信はもちろんのこと、技術のエキスパート人材であることも求められます。
技術ブログの執筆など、積極的な情報発信でMVPを受賞
――Microsoft MVPアワードの受賞において、おふたりのどのような取り組みが評価されたのでしょうか。
高原
私の場合はData Platform製品に関するブログ記事を数多く執筆したり、製品に関する技術情報をSNSなどで積極的に発信していました。また、Microsoft Q/A (旧 Technet フォーラム) サイトを通じて困っているコミュニティ メンバーからの質問に対応していました。当時、私が得意としている製品が社内であまり活用されておらず、「困っている人を助けて活用を促進したい」という気持ちで取り組んでいましたね。
石崎
私はMicrosoft Azureカテゴリでの受賞ですが、私の場合も一番ウェイトが大きかったのは技術ブログです。特に新しい機能を率先して利用し、検証した結果をまとめた「使ってみた」系の記事が多かったです。そのほか、英語の勉強も兼ねて公式のAzure Kubernetes Serviceのリリースノートを日本語に翻訳したことや、CodeZineでの技術記事の執筆・掲載なども評価されたそうです。
――MVPアワード受賞時の感想を教えてください。
石崎
過去にMVPを受賞されていた尊敬する先輩方に近づけた、という嬉しさがありました。その中には私の技術メンターだった先輩もおり、「身近だけど、とても高いところにいる人」という印象でした。私がアワードを受賞した時には、その先輩から「MVPになるまでコミュニティ活動に携わってくれて嬉しい」という言葉をもらえました。
高原
私は前職のマイクロソフトでさまざまなチャンスをもらい、大きく成長できたと思っていたので、受賞を機に少しでも恩返しができたかな、という気持ちでした。前職では製品やサービスのユーザーと直に接する機会が多くなかったため、NTTデータでの業務や技術コミュニティでの取り組みを通じてユーザーの声を聞くことができたのは個人的に印象深かったです。この受賞を活用して最先端の技術をもっと学んでいきたいと思いました。
――Microsoft MVPアワード受賞を通じて改めて感じたNTTデータの魅力を教えてください。
石崎
私は長く技術Q&Aの部隊に所属し、専門的な質問や問い合わせが数多く寄せられる環境にいました。MVP受賞にあたっては技術ブログのウェイトが大きかったと話しましたが、ブログのトピックになるようなまれな事象にも多く触れられたのはNTTデータだからこそだと思います。
高原
コミュニティ活動は基本的に業務時間外に行うため、ブログ執筆などの時間を捻出するのは大変です。その点、NTTデータでは柔軟に業務時間の調整ができ、空き時間を作って活動することも比較的容易だったのはありがたかったです。社外のイベントやセミナーにも参加して最新の情報を入手することができました。
石崎
私の上長もMVPを受賞するためのコミュニティ活動を尊重してくれました。業務時間の合間に活動できたり、イベントなどにも自由に参加できました。積極的に後押ししてくれるのがありがたいですね。
――業務の合間に社外活動を行うのはきっと多忙だったはずです。どのようなモチベーションで取り組んできたのでしょうか?
高原
私が転職した理由にまでさかのぼるのですが、私は日本に貢献できる仕事がしたいと思ってNTTデータに入社しました。前職で扱っていたマイクロソフト社の製品・サービスのみならず、NTTデータではLinuxやオープンソースソフトウェア(OSS)、AWSやGoogle Cloudなど、覚えるべきことがたくさんありました。追いかけるだけでも大変でしたが、私は新しいことを学ぶのが楽しくて。自分自身の市場価値をもっと高めるためにも、ITのトレンドになることは誰よりも早く触れたい、という考えを持って取り組んでいます。
石崎
私は純粋に知的好奇心が大きいです。新しい機能を使ってみたり、本を読んだりと、知ること自体が楽しいんです。また、私の場合は技術Q&Aの業務を通じて、誰かの質問に答えて、その人が次に進めるようになるというプロセスを経験できたことも大きかったです。そうした活動は、NTTデータの中だけで閉じる必要もありません。
高原
同感ですね。貴重なノウハウを独占せず、外に向かって発信していくことは、NTTデータのプレゼンスを高めることにもつながります。プロジェクトマネジメントだけではなく、高い技術力を持った会社だという認知が広まっていけば、優秀な人財の採用にもつながるでしょう。
石崎
たしかにそうですね。そういえば、私が塾長を務めているAzure塾の塾生のひとりは、「塾の活動とアウトプットできる環境があるからNTTデータで働いている」と語ってくれていました。技術コミュニティでの活動は業務外のものとはいえ、優秀な人財がNTTデータで働き続けるための良いリテンションになっているのだと思います。
前編ではMicrosoft MVP受賞に至る取り組みや、業務の傍らで積極的にコミュニティ活動を行う理由などを伺ってきました。続く後編では、そんなふたりのキャリアや人財育成にかける想い、トップエンジニア育成のヒントなどをお届けします。ぜひご覧ください。
※掲載記事の内容は、取材当時のものです