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十三夜
本年10月15日は、十三夜。
上弦の月から十五夜月に向けてこれから満ちていく月…
その途中の十三夜月、これは十五夜月に次いで美しいと云われる月である。
これから満ちようとする、ほんの少し欠けた月なのだ。
今年の十五夜月は、見ることが出来ただろうか。
その年の収穫を感謝する十五夜と、来年の豊作を願う十三夜、両方を見ることが出来れば縁起が良いそうだ。皆々様ぜひ。
未完の大器
中秋の名月、十五夜は中国より伝来の文化に対し、十三夜は日本で独自に発展した文化である。
少し欠けた月を愛でるその心は、完璧でない未完成ゆえの可能性、愛しさを、日本人は感じているのだろうと考えられている。
「未完の大器」と作品名に銘打ったのは、そんな日本人の情緒を写したものである。
未完といえば、日光東照宮にある国宝「陽明門」が名高い。
陽明門を支える12本の柱の中で、1本だけ施された彫刻が逆さになっている柱がある。
これが世に知られた「逆さ柱」である。
ご存知の方、ご覧になったことのある方も多いだろう。
これは奏の宰相、范雎(はんしょ)の言葉「月満つれば則ち欠く」に由来する。
月を建物に置き換えれば、建物は完成と同時に崩壊が始まるという。
故にあえて完成させずに(柱を1本逆さまにして)、わざと未完の状態にすることで災いを避けようとする謂わば魔除けの意味が込められているのである。
さて前置きが長くなったが、我々、青工逢山の十三夜の華道作品をご覧いただきたい。
十三夜はまたの名を、栗名月、豆名月と云う。
この時期の収穫物、栗や豆を供えることになぞらえて付けられている。
本作品のために、直径12㎝を越える神奈川県南足柄産「いが栗」と、栃木県小山産「石化大豆」を手に入れた。
どちらも特大サイズだ。
この作品を完成と見ただろうか。
否、上下を逆さまにして飾っても良しのデザインとしている。
無論、本作品が完成と同時に崩壊へと向かうのを阻む目論見だ。
これを以て今年の十三夜月に来年の収穫を願いたし。
大切な願い事をする際には、古来より特別な供え物や賽銭がつきものだろう。
本作品を皆々様の来年の収穫および大切な願い事の供え物として据えていただければ幸甚である。
おわりに
毎年十五夜は雲がかかることが多く、ちらりと十五夜月が顔を覗かせるのを心待ちにすることが多々ある。
一方、「十三夜に曇りなし」と云われるほど十三夜は晴れの日が多い季節だそうな。
さて今年の十三夜にも期待したい。
古の日本人に倣い、満月の前の、少々欠けた十三夜を愛でてほしい。