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五色と桔梗色

七月七日 七夕。
ご存知、一年に一度だけ彦星が織姫のもとへと天の川を渡れる日である。
この日に降ってしまった雨は、天の川を渡れなくなってしまい二人が流す涙になぞらえ、催涙雨という。
更に、七月六日に降る雨は洗車雨と呼ばれ、織姫に会うため彦星が自らの牛車を洗っている水だと言い伝えられている。
ロマンを感じるだろうか、はたまた微笑ましく感じただろうか。

七夕の和歌

この一年に一度だけという究極の逢瀬は、貴族達にとって格好の和歌の題材となり、「万葉集」「古今集」をはじめとする多くの和歌集に、七夕を詠んだ歌が幾多も残されている。
貴族達は、織姫、彦星に成り代わって、あるいは自らの恋をこの伝説に重ね合わせ、恋の歌を詠んだのである。
その中で、特に小生の目を引いた和歌を紹介したい。
今回の華道作品のモティーフにもなっている。

 織女(たなばた)に 朝(麻)引く糸の乱れつつ 解く(疾く)とや今日の暮を待つらん

訳は「織姫が朝引いた(麻の)糸が心のように乱れている。そのもつれた糸を解きながら、一刻も早くと、今日が暮れるのを待っている」となる。
七日の朝、心乱れて機を織る手も疎かになる織姫の姿を詠んだ歌だ。
「朝」に「麻」、「解く」に「疾く」をかけて、二重の意味が汲み取れる、技巧を凝らした歌となっている。あっぱれなり。

五色と桔梗色

五色の短冊を飾る風習は江戸時代から始まったと云われ、それまでは五色の糸を通した針を供えて願い事をしたそうだ。五色の各々の意味を参考までに記す。

  赤:目上の相手に尽くすこと
 白:ルールを守り義務を果たすこと
 緑:他者を思いやること
 黄:正直であり、約束を守ること
 紫:優れた知識・知恵を持つこと

本作品では五色の糸を纏った「桔梗」を作品の主とした。
桔梗はしばしば星に見立てて七夕に飾られる。
今回は星、特に夜空に浮かぶ天の川を表現した。
桔梗色と呼ばれる冷涼な色と、星型の愛らしい形とのギャップも楽しんでほしい。
桔梗だけだったなら暗く沈んで見えるところに、五色の糸が祭りらしい華やぎと作品全体の広がりを作り、果てしなく広大な天の川が表されるのである。


おわりに

最後に桔梗の花言葉を紹介したい。「永遠の愛」である。
口に出して言うには気恥ずかしさを覚えずにはいられない言葉だが、七夕の華としてドンピシャだろう。
例年七夕の日は曇りや雨が降ることが多いが、そんな時は雲の上に広がる天の川に想いを馳せてみては如何だろうか。
ただの雨曇りの日ではなくなることだろう。


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