~新型コロナウイルス感染症流行による開院以来の大打撃~
2020年1月、日本で新型コロナウイルス感染症の発生が確認されて以降、私たち医療機関は未曽有の困難に直面しました。感染リスクを不安視し、受診をためらう人々の増加により、2020年度の患者数は著しく減少しました。特に、梅華会の運営する小児科・耳鼻科は、他の診療科に比べて最も大きな影響を受け、前年比マイナス30%(小児科)と、前年比マイナス20%(耳鼻科)という厳しい数字を記録しました。
この状況に直面した時、今後は従来の保険診療だけでは持ちこたえられない、と危機感を覚えました。将来にわたる組織の安定を考える際、いかなる逆境にも立ち向かえるような体制を築く必要があると感じたのです。そこで、保険診療以外の事業領域を複数確立することで、将来の不測の事態にも強く、梅華会が永続出来る体制を構築したいという想いが芽生えました。
~他のクリニックとの差別化を図る施策~
2021年の日本の年間出生者数は81万人となりました。この数字は、1973年の第二次ベビーブームの時に比べると、約1/3にまで減少しています。将来的にも日本の人口減少は続くと予測されており、それに伴い、私たちのマーケットも縮小することは明らかです。
このような状況下において、他のクリニックと差別化するためには、独自の施策を展開し、地域の皆さんにとって必要不可欠なクリニックになることが求められます。その差別化の鍵は、「梅華会」としてのブランド力の強化にあります。
そのために、私たちは農業やファスティング事業など、「予防・未病」をテーマとした、新たな事業に積極的に取り組んでいます。これにより、患者さんの健康を守るだけでなく、地域の皆さんにとって、身近で頼りになる存在となることを目指しています。私たちの使命は、心身の健康と豊かさを実現し、日本の未来を明るくすることであり、これまで以上に新たなチャレンジを続けていく覚悟です。
~患者さんに必要とされる、梅華会ブランドをつくる~
私たち医師は、患者さんとの関わりの中で、まずは治療のニーズに応えることが最優先です。しかし、その前に予防的な視点で考えることができれば、数ある耳鼻咽喉科の中から、あえて梅華会を選んでいただけると考えています。例えば、「花粉症に対して症状を抑える薬を出してくれるクリニック」という、単に治療をしてくれるだけでは不十分です。私たちが目指すのは、花粉症によるアレルギー症状を起こさせない為の食生活をアドバイスしてくれるというような、「きちんと生活のケアも考えてくれるクリニック」と思っていただくことです。こうして他と差別化を図ることで「健康について、本気で向き合うクリニック」という梅華会のブランドが認知され、「何かあった時には梅華会に相談しよう」と思って頂けるクリニックとなるのです。
~なぜ、予防・未病にこだわるのか~
人は皆、いつか老いて死を迎えることは紛れもない事実です。しかし、それまでの人生を幸せに過ごしたいと皆さん思っていることでしょう。幸せであるための一番の土台は、言うまでもなく「健康」です。私たちが追い求めるべきは、単に平均寿命を延ばすことではなく、健康寿命を大切にすることです。統計によれば、最後に寝たきりや身の回りのことが出来ない状態で過ごす時期は、平均して 7~8年あると言われています。そんな状況を少しでも避けるために、私たち医師はどのように関わるべきなのか、私は真剣に考えています。
私たち医者の多くは、大学で治療についてしか学んでいません。治療に関する知識や経験は積み重ねてきたものの、改めて「患者さんが本当に求めていることは何か?」という原点に立ち返ると、治療以前にできることがあるのではないかと思うのです。
私は現場での医療を実践する中で、病気の方々にはある共通の傾向があることに気付きました。例えば、アレルギー性鼻炎の方は副鼻腔炎になりやすい傾向がありますし、鼻かぜをひく方は中耳炎に罹りやすい傾向があります。また、ストレスや寝不足がある方は、めまいが起こりやすいでしょう。
こうした経験から、私は医師として治療の専門家である一方で、健康に対しても専門家でありたいと強く願うようになりました。従来の保険診療だけに頼らず、患者さんの健康の本質にアプローチしたいのです。「本当の意味で、人生を幸せに暮らせるための力になりたい。」そんな想いから、予防・未病に取り組む決意を固めました。
~増え続けるアレルギー疾患に対して、私たちが出来ることは~
戦前には、現在のように花粉症という疾患はありませんでした。そして、私たちが大学を卒業した頃は、花粉症は大人の病気でした。ところが、現代においては花粉症患者はますます広がり、世代を超えて増加しているのです。
今年は花粉の飛散量が例年よりも多いと言われていたこともあり、クリニックには多くの花粉症患者さんが来院されました。花粉症の患者さんを診察する中で感じることは、花粉症と食事の関連性が非常に深いということです。もちろん、戦後の植林の歴史も関与していますが、それ以外にも、近年の食生活(牛乳や小麦の摂取)が、免疫機能の低下や、体内の抗酸化物質の不足を引き起こし、花粉症によるアレルギー患者さんを増加さえているとされています。
ここでお伝えしたいのは、全ての方に牛乳や小麦を摂取しないように勧めているわけではないということです。私自身もチーズやバターが好きで、摂取しています。しかし、アレルギーの原因となるのは、牛乳に含まれるカゼインというたんぱく質であることは事実です。また同時に、日本人の8割は乳糖不耐症であるということも事実です。(※乳糖不耐症:乳糖という糖分を分解できない病気。牛乳や乳製品を摂取することで、お腹が痛くなったり、おならが出たりする病気です。)
つまり、日本人の中には、体質的に牛乳が合わない人が多いという仮説は十分成り立つのです。そのため、アレルギー症状が続き、苦しんでいる患者さんに対して、「牛乳の摂取について一度改めて考えてみては?」というメッセージを伝えることは、医師として非常に大切だと考えます。
とはいえ、私たち医師は、まだまだ病気の専門家であり、健康の専門家であるとは言い切れません。今後も日々知識をアップデートし、正しい情報を提供出来るよう努めていきたいと考えています。
~梅華会の取り組みと、今後の展開~
梅華会は、予防・未病に関する取り組みとして、農業、ファスティング事業、全国の医師による予防・未病コミュニティの運営、予防・未病に関する書籍の出版を行っています。さらに、今後は農作物販売の新たなプラットフォームの設立や、さらなる書籍の出版を予定しています。
私は「医食同源」というところから、農業に大きな関心を寄せています。地域の方々や、スタッフ、そしてその家族にも身体に良い食事を意識して頂くために、まずは身近な方々に食事に対する関心を持っていただく機会を作りたいと考え、大阪府八尾市と沖縄県宮古島市に有機JAS認定の農場の運営を始めました。農園では、農家さんの協力を得ながら、職員が実際に無農薬野菜を栽培しています。農業は、とても手間がかかる一方で、その分食事に対する感謝やありがたみを実感することができます。日本ではフードロスが問題となっていますが、私は米粒1つさえも無駄にしない、食材に対する感謝の気持ちを大切にしていきたいと考えています。また、フードロスや食糧問題も含め、医療と「食」を通じて、数ある耳鼻科・小児科の中から梅華会を選んでいただける、そんなクリニックになることを目指しています。
このように、地域の方々の健康維持に関して取り組みたいことは沢山ありますが、私一人の力ではどうしても限界があります。そのため、同じ志を持つ全国の医師たちと共に、予防・未病に関するコミュニティを作ることにしました。現在、50人の医師が参加しており、情報交換をしながらマスターマインドグループを作っています。自身の得た知識や経験を、自分だけの財産とするのではなく、他者と共有し社会的な価値として広めることで、自己概念の向上や社会貢献を実感することができると信じています。一人では成し遂げられないことも、仲間と共に取り組むことで、社会への大きな価値を生むことが出来るのです。
今後も、予防・未病に関する事業はますます拡大していく予定です。
私たち梅華会の想いに賛同し、予防・未病へ情熱を持ち、共に真剣に取り組んでくれる仲間を募集しています。