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web3に携わるには、知識も価値観もアップデートし続けなければ生き残れない

「すべてのモノをブロックチェーン上でやりとりできる世界をつくる」というミッションを掲げる株式会社Decentier。同社の共同創業者の1人であり、名だたる大手企業でキャリアを積み重ねてきた岡嵜は、金融やテクノロジーの最先端に長く関わってきた。その彼からweb3に出会った軌跡と、これからDecentierで成し遂げたい未来を語ります。

ーー岡嵜さんはDecentierの共同創業者の1人ですが、これまでどのようなキャリアを歩んできたのでしょうか。

2009年に新卒でNTTデータに入社し、その後プライスウォーターハウスクーパース(現PwCコンサルティング)、デロイト トーマツ コンサルティングでキャリアを積みました。テクノロジーや金融領域を中心に様々なプロジェクトに携わった後、2016年に起業。引き続きコンサルタントとしてweb3テクノロジーを活用した新規事業開発等を中心に、様々なプロジェクトに携わっています。

ーー岡嵜さんがweb3領域に興味関心を持ったきっかけなどは覚えていますか。

最初に意識したのはデロイトで働いていた頃ですね。当時、ビットコインの価格が10万円近くまで暴騰したという話題が金融チーム内で広がり、空気がざわついていたのをよく覚えています。とはいえ、当時はそうした噂が耳に入る程度で、自分自身でホワイトペーパーに目を通すといったことはしていませんでした。

その後、ビットコインについて改めて深く調べるきっかけになったのは、デロイトのコンサルタントとして携わった、国内銀行連合とデロイト、ブロックチェーンスタートアップがコンソーシアム型で実施した実証実験プロジェクト。銀行ビジネスにおけるブロックチェーンの実用性検証というテーマのもと、ビットコインの仕組みを調べていく中で「サトシ・ナカモトは天才だな」と衝撃を受けました。従来の仕組みや概念を大きく塗り替えるポテンシャルを秘めたテクノロジーに魅了され、それ以来、暗号資産やブロックチェーン……現在のweb3領域にどっぷりのめり込むきっかけとなっています。

例えば、既存の仕組みだと、世界中の銀行間で膨大な数の資金のやり取りが行われており、ここに関わる手数料だけでも膨大な金額になっています。銀行連合を交えた実証実験では、「銀行間のやり取りにブロックチェーンを活用することでコストを大幅に圧縮できるのではないか?」という仮説に基づき検証を進めており、ポジティブな結果を得ることができました。「これが実現できれば世界が変わる」と呼べるものでしたが、やはり既存の仕組みを大きく動かすことは容易ではありません。検討段階まで進んだものの、私たちの生活レベルまで浸透するにはまだまだ多くの時間がかかるだろうと考えています。これは今、ステーブルコインというものに形を変え、複数の銀行が普及に向け検討を進めてる認識です。

ーー岡嵜さんがこの分野で働き始めて7年近く経過していることになりますが、過去と現在を比べて業界内に感じる変化はありますか。

この数年で様々なテクノロジーが生まれ、市場が形成され、ユーザーが増え……というポジティブな変化はどんどん生まれている一方で、ガードナー社のハイプ・サイクルをはじめ、各種リサーチ機関のレポート等では「ブロックチェーンがマスに浸透するのは5年後、10年後」と記載され続けている、というのがweb3業界の現状を端的に表していると思います。新しいものが生まれ続ける現在においても明確な市民権を得ているのはビットコインだけ、というのがリアルな感覚です。ただ、2010年代の感覚を思えば、それすらも大きな変化です。ビットコインの登場と認知拡大が、世の中の価値観を大きく塗り替えた存在であることには違いありません。

そしてクライアントと日々相対していると、彼らの温度感は数年前と比べて明確に変わってきています。プロジェクトの大半が新規事業室などが主体となった実証実験レベルで終止していた時代は終わり、大手企業からスタートアップに至るまで、大小様々なクライアントの経営レイヤーの方々と対面しながら新たなサービスプラットフォームの企画立案や、サービスローンチに向けたやり取りなどが増えてきました。小畑、市薗が参画していたNOT A HOTELはまさにユーティリティNFTの1つの成功例としてビジネス的にも成功を収めていますし、日本においては世界に先駆けた法整備などが進む中、ステーブルコインやセキュリティトークンを活用した実例なども生まれだしています。

暗号資産の価値暴落など、冬の時代が続いた時期もありましたが、やはりweb3に対して本気で取り組む人たちが努力し続けてきた結果、着実に市場が広がってきており、国内においては金融庁も含めて業界全体がより前のめりになってきたと感じていますし、「web3にまだ着手していないのはまずい」という危機感を覚えているクライアントも確実に増えてきています。取り扱う業界も金融のみならず、不動産やメーカー、マスメディア、ゲームなど広がりを見せ始めており、独自のサービスやプロダクトを生み出そうと真剣に議論を交わしています。サービス基盤としてイーサリアム、NEM、Hyperledgerなどといった限られた選択肢がなかった時代と比較しても、玉石混交しながら、エコシステムが拡大し続けている現在はマーケットのポテンシャルを見てもとても魅力的ですし、そのポテンシャルは常に拡大し続けていると感じます。Decentierとしても、まだまだ未知の領域は多くあると思いますし、そうした新しい世界に挑戦するのはとても楽しみでもあります。

ーー外資系コンサルティングファームや国内最大手SIerなどで働かれてきた岡嵜さんの目から見て、Decentierの特徴とはどのようなものがありますか。

Decentierの事業の柱はコンサルティングサービスですが、クライアントとの距離感の近さは過去在籍していたファームとは比較にならないかもしれません。「クライアントと伴走する」といった表現がよく用いられますが、それは「じっくり検討フェーズの期間を設けてディスカッションする」「定期的にミーティングを行い、進捗を確認する」といったニュアンスだけを含めている事もままあると思います。その点、Decentierはクライアントと膝を突き合わせ、世の中にまだない新しいマーケットや成功事例が存在しないプロダクトをゼロから作り出すためにアイデアを捻出するところから始まります。文字通り「捻り出す」ことがクライアントからも求められているため、アウトプットの期待値が高い分、プロジェクトの難易度は段違いです。ですが、そうした困難さが吹き飛ぶほどに、固定観念に縛られないサービスやプロダクトを一緒に作り上げていける醍醐味は、Decentierらしいなと思います。

ーー最後に、岡嵜さんから見て、この瞬間のweb3業界の魅力とは何なのか教えていただけますか。

web3の世界は常に新しいニュースが飛び交い、トレンドが目まぐるしく変化し続け、1ヶ月前に読み込んだペーパーが陳腐化するようなテクノロジーが台頭することも珍しくないため、インプット量は他の分野よりも格段に多いのは間違いありません。

ただ、私は「今、この瞬間にweb3の世界にいられることはとても幸せなこと」と感じています。自戒も込めた話になりますが、私達が向かい合っている業界は経験年数がどれだけあろうとも、そこに少しでもあぐらをかいてしまえば置いてけぼりにされるほどのスピードで変わり続けていて、常に自分自身の知識や常識、ビジネスに対する向き合い方もアップデートし続けないといけません。それはとても大変で、難しいことであるものの、それだけ変化に富んだこの業界の成長や拡大に、1人のプレイヤーとして少しでも貢献できていること、その経験自体がすごくハッピーで、自分にとっても貴重な財産になると確信しています。そして、Decentierというチームはそういう気持ちを共にできる仲間が集まる場所にしたいなと考えています。

ハイプ・サイクルに関する話題にも触れましたが、web3の世界は常に目まぐるしく変化し続けているが故に、今からチャレンジしたとしてもまったく遅くないですし、5年後、10年後に振り返った時に「あの時に飛び込んでおいて良かった」と間違いなく思えるはずです。これから作り出されていく歴史を間近に見られる特等席にいられるのは、今この瞬間にweb3に携わっている人間の特権ですし、この景色を一緒に見てくれる仲間を増やしていけたら良いなと思います。

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